異世界生活はただの苦行だよ
異世界サバイバル開始
「・・・っ!ぐっ・・・かはっ・・・っふっふぅ・・・っふ、ぐぅぅぅぅぅぅぅ・・・」
頭が!頭が割れるっ!アあ"ァぁァァっ!
それに知らない言葉が一気に頭・・・おぇっ気持ちわるっ。
これほどか、確かに寝込むわ!
周りが涙でまともに見えない、視界が歪む!やばいやばいやばいっ!ヤバイ!
文芸部員の上司(仮)さんは転移させる場所は、野生動物が居るヒト気のない場所だと言っていた。
しかも、目の前には川の流れる音。明らかに野生生物の縄張り。
そんな中、苦しいからと大声上げて刺激したくないっ!
せめて視界だけでも・・・くそっ、涙が止ま・・・アタタタっ!ガンガンくる!
ダメだ、耐えられんっ!
「あああぁぁっ!!くっそっが!」
唸りながら体を反り、頭を掻きむしり、転げ回っては頭を何度も地面に打ち付け、その勢いのまま目先の川に全身飛び込んだ。
水温は思ったより低めで、流れもそこまで急じゃない。
頭蓋骨の内側からガンッガン!と痛むその激痛を最初に比べたらまだマシ、と言える程に川の水が癒してくれる。
「ぷはっ!意外と浅いな・・・水深1メートルぐらいか?いや、大分体が縮んでる・・・分からないな」
11歳・・・だっけ?
・・・・・・・てか、何で裸なんだよ。
しまったな・・・頼めばいけたか?道具とかも?・・・身一つかよ。
あッ!?イタタっ痛いわ!くそっ!
とにかく上がらないと・・・。
衣服は普通にあるモノだと思ってた・・・また難易度が上がってしまったのか。
やっぱり知ってる異世界転移と違う。
「森?・・・山じゃない、かな多分。まだ陽は射してるけど薄暗いし、枝が深いな・・・かなりマズい」
見渡す限りでは下草は少なく、苔が多いのは差し込む光が少ないからだろう。
あまり長居すると、その内地滑りに会うかもしれない。
空を見上げれば日が昇っている事が分かるが、夕方前には他所よりも早く暗くなるだろう。
別の星だと言っても肉食の夜行生物は居ると思うし、見回りに来る鹿が居れば食料確保に繋がるけど・・・まだ難しいな。
蚊が一番怖いが、とりあえず危険性が高い夜行生物は熊に蛇、カバが居たら最悪だな。
人が出入りした事があるならイノシシは夜行動するだろうし。
でも、人が踏み入った形跡は無さそうだ・・・。
日本にはこういう場所は少ないな。
正直かなり怖い。
知床半島の森をナイフ無しで生き抜け、と言われてるかのような感覚。
セミのような鳴き声がする。今は夏なのか?
でも、森の中とはいえ気温はそこまで高く感じない。
生態系が分からないのがキツい。
生えてる木々を見ても赤道付近じゃないと思うが・・・マラリアやデング熱にかかってしまっては終わりだ。
魔法なんて無いって言ってるんだから、ヒールもケ〇ルもキア〇ーも期待できないな・・・。
「早く穴を掘らないと・・・」
あそこの崖下が良い。横穴を開けて寝床にしよう。
あまりにも続く激痛に吐き気まで出始めたのに、休んでいられる理由がなかった。
文芸部員の上司(仮)さんは2、3日は身動きが取れないって言ってたけど・・・そんな場合じゃない。
身近に転がっていた枝と平たい石を持ち、水に濡れた重たい体を必死に支えて、川の反対にある崖の下部まで足元をフラつかせながらも何とか辿り着く。
「断層は岩じゃないし、土もそこまで硬くない・・・頑張ればいける」
崖と呼ぶより大き目の段差だったが、細かい事を考えてられる余裕が俺にはない。
ただ、無心で壁側を棒でほじくり、平たい石で土を掻き出す。
もし今、野生動物が近づいても気づかないと思う。ガンガンと続く頭痛に、体力はどんどん持っていかれ、それを無心で穴を掘る事で疲労を隠していた。
「よ、よし・・・、なんとか・・・ふぅ。体を丸めれば全身スッポリ入りそうだ。けども・・・無理」
何分、何時間掘ったか分からない。ただ辺りはすっかり暗くなり、目の前は手探りによる感覚と震える手。
頭痛だけでなく体力的にも限界で、今すぐにでも気絶してしまいそうだった。
「石器時代をクリアするのは頭痛が治ってからだな・・・」
次の日熱が出た。
穴掘っただけです。
名前はまだ。
SFに近いのかな・・・ハイファンタジーでいいのか不安になってきた。