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僕らの終末旅行日記  作者: ワサオ
第3章 狂乱大阪編
89/125

3月2日 修学旅行10日目 午前7時37分

 

 午前7時37分……


 大阪に来て一夜が明け、雅宗は目をゆっくりと開けた。そして寝ている状態から思いっきり背伸びをした。


「ふぁ〜寒っ‼︎」


 3月になっても寒さは治るどころではなく、電気がないせいで暖房などが付かないせいで寒さがより感じやすくなっている。

 充電が残り少ないスマホを見ると7時38分を指していた。7時というといつもなら起きる時間。今は起きてもやる事がない。だがそこは人間、一応起きる事にした。

 横では暗いなら真沙美が横たわって寝ているのが見えた。取り敢えず軽く揺すって起こすことにした。


「おい、真沙美。朝だ。起きろ……⁉︎」


 雅宗は驚いた。目を疑うほどに。なんと隣で寝ている真沙美の隣に知らない人が寝ていた。顔はうつ伏せで寝ているから、はっきりとは見えない。だが、絶対に知っている奴ではない。


「だ、誰だ⁉︎お前⁉︎」


 まだ眠気が残っていた雅宗だったが、謎の人物の存在に一気に眠気が吹き飛び、飛び起きた。

 その声に真沙美もまだ眠気が残ったふわふわとした状態で、目をこすりながら起きた。


「ん?……どうしたの雅宗?」

「お、起きろ‼︎真沙美‼︎横を見ろ‼︎」


 雅宗に言われるがまま、ゆっくりと横を見た。そして今初めて隣に人が寝ている事に気付いたのだ。


「うん?……きゃぁ‼︎」


 真沙美は叫びながら思いっきり足をバタバタして、隣で寝ている人物の毛布を弾き飛ばした。まるで変質者を見るような目で。毛布を弾き飛ばされた人物の顔を雅宗が見ると、自分と同じ歳くらいの男性だった。


「俺らと同じくらい……だな」


 流石の状況に寝ている人物を恐る恐る揺すって起こそうと試みた。ゆっくりゆっくりと何度も揺すった。


「お、おい……起きろ、起きろよ」


 そして、やっとこさ男性は目を開け、ムクッと起きた。上に跳ね上がった濃い茶髪、癖っ毛なのか至る所が跳ね上がり、口からはよだれが垂れていた。そして目が冴えてない状態ながら、雅宗達を一度確認し、何事もないように背伸びをした。


「う〜ん‼︎よう寝た、よう寝た‼︎」

「お前誰だ‼︎勝手に隣で寝てやがって‼︎」


 雅宗が男性に指すと、男性は自分の頭を撫でながら笑って答えた。


「いや〜‼︎昨日の屋上でこんなべっぴんさん初めて見てな。俺惚れやすいタイプだから、よし‼︎バレんように寝たろと思ってな‼︎悪気はないんや‼︎許して〜‼︎」

「……いや、ちょーー」

「顔的には俺らとタメか?俺、17歳の9月12日生まれの乙女座なんだわ‼︎はっはっは‼︎こんな所でタメと会えるなんて本当に光栄やわ‼︎ぎゃははは‼︎」

「話を聞ぃてーー」

「お前ら昨日来た奴らやろ?どこから来たん?九州?北海道?アメリカ?」


 ベラベラと喋る倒すせいで、雅宗達に喋る暇を与えず、ずっと見境もなく無邪気に楽しそうに喋っている。

 呆れ果てるが安心する雅宗達。とりあえず変な奴だけど、悪そうな奴じゃなさそうだ。

 そして


「所でお前ら名前は?」

「俺は……須藤雅宗」

「私は赤羽真沙美。貴方は?」


 そう言うと青年は照れて、自分の頭を撫でながら自己紹介をする。


「べっぴんさんに聞かれちゃあしょうがねぇ‼︎俺は黒崎秀光(くろさきひでみつ)‼︎よろしくな〜」


 そう言って思いっきり真沙美の両手を握り握手する秀光であった。雅宗も真沙美も驚いているが、本人は御構い無しのようだ。


「えぇ此方こそ……」


 そして雅宗も手をさしのばすと、秀光は雅宗とも握手した。だが、何故か秀光が手を握られるとやたら苦痛な顔と共に叫んだ。


「痛たたた‼︎イタイって‼︎」

「よろしくな‼︎秀光君よ‼︎」


 雅宗はちょっとキレ気味で強めに手を握っていた。


 ーーーーーーーーーーーーー


 そしてなんやかんやあって秀光と話す事となった。


「君も昨日の夜、このショッピングモールにいた訳?」

「俺はちゃうよ、昨日の夜、近くの公園を自転車で走ってたら、変な奴らが人を襲っとるのを見て、まるでゾンビ映画や‼︎って思ってたらそのゾンビらが俺まで襲おうとしたから、このショッピングモールに逃げたんや」


 元気そうに言う秀光に雅宗は冷静にツッコんだ。


「なのにエライ元気そうだな……」

「決まっとるやろ‼︎こんな非ぃ現実的な事が起きとるんやぞ‼︎ゲームや映画の世界にいる、悲しんでいたり、嘆いていたってしゃあない‼︎そないな事考える暇があるなら、少しでも笑って過ごした方が、俺的には気が楽や‼︎」

「親とか大丈夫?」


 真沙美も聞くと、秀光は真沙美の目を見て、更に笑顔を振りまいて答えた。


「母ちゃん大丈夫やと思うで、あんなゴリラみたいにパワー全開のマシンで出来てる肝っ玉母ちゃんと変態ハゲ親父がそう簡単にくたばる訳がない‼︎友達らからも連絡が来て全員無事なのが分かったし、安全安全‼︎あとはポリがなんとかするって‼︎」


 こんな時でも明るい秀光に雅宗達も少し微笑みを取り戻した。

 そして秀光が朝のラジオ体操をしながら話してきた。


「お前らにここの事をもっと詳しく教えてやろうか?」

「なら、1つ聞きたいんだが、あの屋上にいた厳つい男達はなんなんだ?」

「あぁアイツかぁ……あれに関わってはアカン。関わるとろくな事あれへん」

「やっぱり変な噂とかあるのか?」

「そりゃそうや、あのグループのドン茂尾って奴は変な奴らつるんで、暴力したり、カツアゲしたりとか、いい噂を一個も聞かへん。この付近でも嫌われて奴や。親はあんな偉い議員さんなのに、なんであんな息子がいるんだが〜」

「……」

「まぁまぁそんな話より、さっさとフードコーナーに行こ行こ‼︎」


 秀光は雅宗と真沙美の腕を掴んで、無理やりフードコーナーへと連れて行った。雅宗達は抵抗などはせず、引っ張られるがまま連れてかれた。


 ーーーーーーーーーーーーーーー


「はぁ……結局、あんまり眠れなかったなぁ……」


 2階にある暗い本屋の中で、薄っすらとした蝋燭の火を照らしながら、漫画雑誌を見ていた男がいた。

 彼の名は赤松哲夫。九州で雅宗達と出会い、ずっと一緒に行動していた漫画家作画希望の若いメガネを男性である。

 哲夫はため息を吐きながら漫画雑誌を見ながら、スケッチブックに人物絵の練習をしていたのだ。すると蝋燭の火がフッと消えた。


「はぁ……消えちゃったか」

「あの〜絵を描いてるんですか?」

「ん?」


 後ろから懐中電灯を照らしてくる哲夫と同じ程のメガネの男性が声を掛けてきた。しかも、哲夫のスケッチブックに興味津々のようだ。


「え⁉︎それはまさか⁉︎」


 突如、そのスケッチブックを取り上げて、その人物が絵を顔を近づけて凝視していた。いきなりの事で哲夫自身は唖然として、その男性を見上げていた。


「え?ええ?」


 戸惑う赤松、すると男性は赤松の顔をじっくりと見て言った。


「あ、貴方は……まさか、赤松さん⁉︎」

「え?何で僕の名前を⁉︎」

「原作をやらせていただく予定の須恵藤雄(すえふじお)です‼︎」

「え⁉︎貴方が⁉︎」



 この時、午前7時44分……

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