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僕らの終末旅行日記  作者: ワサオ
第2章 四国上陸編
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修学旅行9日目 午前10時27分

 

 午前10時27分……


 雅宗は突如謎の超人的能力が発揮され、感染者から逃げ切った。そして幸久と連絡を取り合い、近くの広い公園で落ち合う事にした。

 だが、その裏で同じ時をして、高松市に到着した一行がいた。


「あのヘリは?」

「あれは……自衛隊のヘリか」


 幸久達のヘリを見つけたのは、政府の病院から逃げ、アディソンの海外製の黒いSUVに乗った漁師の昇太と由弘、そしてその後ろには自衛隊のトラックに乗って同じく逃げてきた

 人々であった。

 由弘はまだ幸久が乗っている事には気づいておらず、追ってきた自衛隊と思い込んでいた。


「どうします……あのヘリ」

「だが、あのヘリ何処かへと降りようとしている。一旦様子見をしよう」

「……分かりました」


 昇太は手でジェスチャーをし、後ろのトラックに止まるように指示した。車も一旦停車した。

 由弘は辺りを見渡して、感染者がいない事を不思議に思う。


「ここら辺には感染者があまりいないようですね」

「あぁ、普通は車の音に引き連れられて来るはずだが……」

「あそこをみて下さい、あの病院の屋上を」


 ーーーーーーーーーーーーーー


 屋上では、皇達のヘリが飛び立とうとしていた。神咲が来るのが遅いのか、足踏みをして苛立ちが募っていた。神咲を待ってると言うよりも、真沙美を待っているのが正しい。

 だが、皇自身は真沙美がもう逃げたことをまだ知らないのであった。


「ちっ神咲の奴はまだなのか?連絡もない、真沙美ちゃんに何かあったんじゃ」

「すみません皇さん、ちょっとしくじってしまいました」


 屋上に上がって来たのは、自分の右肩を抑えている神咲だった。肩からは血が流れて、体は震えていた。自衛隊員の1人が神咲の元へと駆け寄った。

 そして皇はすぐに神咲へと聞く。


「何があった」

「相手も銃を持っていたので反撃されて撃たれてしまいまして……」


 雅宗達は神咲に向けて銃を撃ってはいない。これは神咲の自演だった。本当は先程自分で自分の肩を撃ち抜いたのだ。


「くっ……それで真沙美ちゃんは」

「ご覧の通り、逃げられました。ですが、逃亡には雅宗と言う名の高校生くらいの少年が関与していました」

「ふん‼︎とりあえずこの四国から撤退するぞ‼︎早く乗らんか‼︎あのヘリも目を離した隙に逃げよって‼︎」


 神咲は隊員に肩を支えられながらヘリに乗り込み、ヘリは由弘達がいる場所とは反対側の遠くへと飛んで行った。

 ヘリ内では苛立ちを隠せない皇が隊員に威圧的態度で話しかけた。


「それより、大阪の対策本部はどうなっている‼︎」

「現在、通信が混み合っており、まだ連絡は取れないようです」

「ふん‼︎とにかく大阪の対策本部へと飛べ‼︎」

「はい‼︎」


 目的地は大阪、そこを目指してヘリは飛んでいく。


 ーーーーーーーーーーーーーー


 雅宗は幸久と合流すべく元太の軽トラ公園へと向かっている最中、雪菜が荷台で話しかけて来た。


「お前、よくあんな感染者がいる中を逃げ切ったな」

「この手の事は結構慣れてるんでね」


 だが内心は複雑だった。自分に何が起きたのか、これをみんなに言っていいのか?と言い出せなかった。

 そんな時、雅宗は同じ道路の遠くにある車を見つけた。


「あの車……」


 それは由弘達が乗る黒い海外製のSUVだった。数日前にアディソンと出会った時の車だった。だが、雅宗は遠くにある為、後ろの自衛隊のトラックには気づかず、そして車に人が乗っていることも気づかなかった。


「気のせいか……」


 それは由弘達も同じ事を思っていた。


「軽トラが近づいて来ますね……」

「火事場泥棒かもしれん、様子を見るぞ」


 由弘達は静かに待機して、警戒しつつ様子見をする。由弘達からも雅宗達は見えず、ガタイのいい身体を伏せて、目より上を出して確認している。

 そして雅宗達が乗る軽トラが由弘が乗る車に近づき、横を通過しようとした。

 由弘はその荷台にいる人らを睨みつけていた。それは雅宗や雪菜達、車内には真沙美で、由弘は目を疑った。


「……あれは、雅宗⁉︎」


 由弘はすぐに窓を開けて、大声を上げた。


「雅宗‼︎雅宗‼︎」


 その静かな町に響く大声、そして聞きなれた声に雅宗が気づかない訳がなかった。


「ん?この声?……由弘⁉︎元太さん‼︎車、止めて止めて‼︎」


 軽トラの窓を荒く叩き、元太はとにかくトラックにを止めた。雪菜達は気づかず、雅宗だけに気づいた。雅宗は車の窓から出てる久しぶりの由弘を姿を見て、本物と確信した。

 そして雅宗は軽トラから飛び降り、すぐさまそのSUVへと笑顔が溢れんばかりの顔で走っていった。


「嘘だろ、由弘が‼︎やったぜ‼︎‼︎」


 由弘も生存確認が出来なかった雅宗のとの出会いに自然と涙と笑顔が溢れて来た。そして雅宗も思いっきり強く抱きしめたのだ。


「雅宗……‼︎お前がこんな所に、いるなんて……まるで夢みたいだ」

「いたい‼︎いたい‼︎離せよー‼︎由弘ー‼︎」


 2人は笑いながら久しぶりの出会いを喜び合った。そして雅宗はすぐに今の状況を説明した。真沙美の事や、幸久達の事などを簡潔に説明した。


「なるほど、幸久達が奪ったヘリか……後ろの人達も載せれるかな?」

「えっ?」


 後ろのトラックに今気づき、後ろを確認するとみんなが乗っていた。


「……とにかく、行こう‼︎」

「あぁ‼︎」


 雅宗はSUVを運転した昇太に向けて感謝の礼をした。


「由弘をここまで連れてきてくれてありがとうございます‼︎」

「君が雅宗君か……話は小耳に挟んだが、本当に凄い奴のようだな」

「いや、みんなのお陰でもありますよ」

「とんだ奴だぜ。


 ーーーーーーーーーーーーーー


 大きな砂場の公園には感染者はあまりいない事が分かり、そこで待ち合わせをする事になった。軽トラの後ろに由弘や他の人達も連れたトラック達を連れて公園に行く。


 広く木などもない草むらにうまく着陸したヘリから幸久と由弘、由美や真沙美が再会を果たした。


「幸久‼︎」

「由弘⁉︎大丈夫だったのか、お前⁉︎」

「あんなくそったれな病院簡単に抜けてやったぜ‼︎」


 2人は笑って、強い握手をした。そしてヘリの中からは、龍樹が微笑んでみていた。

 真沙美と由美は再会を果たした。真沙美の目から自然と涙が流れて来た。2人は抱きしめ合ってお互いの無事を喜び合った。


「良かった……由美とまた会えて、嬉しい」

「私も……本当に良かった……」


 その裏で、軽トラから出た元太を見て、理沙はトラックから出て来た。そして元太の方へと歩いていく。


 この時、午前10時40分……



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