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僕らの終末旅行日記  作者: ワサオ
第2章 四国上陸編
82/125

修学旅行9日目 午前9時56分

 

 午前9時56分……


 屋上ドアに雅宗と雪菜、止まっているヘリには真沙美と里彦、そして上空には幸久達が乗るヘリが飛んでいる。

 幸久達のヘリを見た隊員達はすぐさまヘリに銃を撃ち放った。


「撃て撃てぇ‼︎」

「くっ‼︎一旦離れろ‼︎」


 銃弾はヘリの外壁を凹まし、窓を貫いた。幸久はすぐにドアを閉じ、ヘリはバランスを崩す。

 撃たれているヘリを見て、雅宗はすぐにドアから出て、撃ったことない小銃を向け、背中を向けている隊員達に警告した。


「おい⁉︎撃つのをやめろ‼︎」


 振り返ろうした隊員達に雅宗は焦って引き金を引き、小銃を隊員達へと撃ってしまった。弾は隊員の足元に当たり、1発は隊員の足に当たってしまい、膝をついて倒れた。


「ぐはっ……‼︎」


 弾は真沙美が乗っているヘリの外壁にも当たって真沙美は怖くなって悲鳴をあげた。


「きゃあぁぁぁ‼︎」

「このバカ‼︎自分の女に当てる気かよ‼︎」


 雪菜も飛び出てもう1人の隊員へと銃を向ける。


「あんたも同じように、なりたく無ければ……銃を地面に置け‼︎そして両手を頭の後ろに置け……そうしたら何もしない‼︎」


 雪菜の警告に、使い慣れてはいないとは言え、2対1の状況に危機を感じた隊員は銃を置き両手を後ろの頭に置いた。

 そして雅宗は銃を隊員に向けた状態で真沙美に声をかけた。


「真沙美‼︎大丈夫か‼︎」

「う、うん……それより里彦君が……」

「隊員の銃を拾ってくれ……俺が里彦を担ぐ……」


 真沙美はすぐに小銃と拳銃を取り、雅宗に渡した。雪菜が隊員に銃を向けている間に、雅宗はその銃をそのまま柵の向こうへと投げ捨てた。


「雅宗‼︎早く行きましょう‼︎皇がこっちに来る‼︎」

「真沙美をここまで連れてきた奴か……ぶん殴りてぇ所だが、早く逃げないとここに感染者が来る……急いで逃げるぞ‼︎真沙美を銃を持ってくれ‼︎」

「わ、私が⁉︎」

「大丈夫……持ってるだけで良いから……撃たなくてもいい」


 雅宗は隊員の首元を強く殴り気絶させた。そして里彦を担ぎ、そのまま屋上を後にした。4階へ階段を下っていると、3階から足音が聞こえて来た。


「皇達よ……」

「一刻を争う……別の階段から逃げるぞ」


 雅宗達は4階の別階段を目指し、走って行った。

 皇が屋上にたどり着くと1人の隊員は足を撃たれ、もう1人は気絶していた。そして真沙美も里彦もいなくなっていた。


「クソっ‼︎やはり侵入者か‼︎」

「それに裏切り者もいるみたいですね」


 怒り狂う皇に神咲は遠くのヘリを指差した。神咲には遠くのヘリの中に乗っている人ら全員が見えた。


「くぅ〜‼︎貴様、侵入者はどこに行った⁉︎」


 皇は怪我している隊員の胸ぐらを掴み振り回しながら聞く。


「まだ病院の中に……このまま逃げるみたいです……」

「追え‼︎神咲‼︎侵入者を殺せ‼︎そして被験者と真沙美ちゃんを救出しろ‼︎行けぇ‼︎」

「はいはい……分かりましたよ」


 へこへこと頭を下げながら神咲は走って雅宗達を追って行った。

 皇は倒れている隊員達を叩き起こす。


「何倒れておるんだぁぁぁ‼︎早く起きろ‼︎」


 ーーーーーーーーーーーーーーー


 無事に別の道から階段を下り、2階に辿り着き廊下を歩いている雅宗達。雪菜が銃を構え、後方を確認しながら歩いている。


「追っ手は来てないようだな……」

「追っ手は来なくても感染者は来るかもしれないけどな……」


 すると顔を下げている真沙美が手を震わせながら雅宗の裾を強く掴んで来た。


「どうした真沙美?疲れたか?」

「ううん……違う……みんなにまた会えて本当嬉しかった……雅宗とももう会えないかと思ってて……」


 雅宗が真沙美の顔を覗くと、涙が目に溜まっていたのだ。ずっと1人で皇の元にいて、そして仲間達と離れ離れされた。そして雅宗の安否も分からず、1人寂しくしていた真沙美は今まで我慢して来た涙腺が一気に崩壊した。


「ごめん……こんな時に泣いちゃって……」


 真沙美は必死に目を擦り、涙をふいた。


「……泣けばいいさ……俺だってこんな時は泣きたいさ……嬉し泣きって奴が出てくるよ」


 雪菜も2人を見て軽く微笑むが、後方を見て急に目が鋭くなった。


「こんな場面で、感動してる暇はないぜ‼︎お2人来たぜ‼︎」

「な、何だ⁉︎」


 廊下の両側から無数の感染者達が、押し寄せて来た。


「この状況で感染者……ちっ‼︎走るぞ‼︎雪菜、銃で道を切り開くぞ‼︎」

「クソっ‼︎」


 雪菜は先頭に立ち、前方から来る感染者に慣れない手つきで小銃を撃ちながら走る。あの時救えなかった取り巻き達の亡霊をくぐり抜けるように……

 雅宗は里彦を担いだ状態で、前方の感染者へと拳銃を雑に撃ちながら正面突破を試みる。


「撃て‼︎ここは何としても突破するぞ‼︎」

  「当たりやがれぇぇぇ‼︎」


 2人が慣れない手つきで放った銃撃は、正面から来る感染者達の手足や頭に当たり、仰け反った感染者がドミノ倒しのように倒れていく。


「今のうちに突破しろ‼︎」

「えっ⁉︎感染者が倒れている道を⁉︎まだ生きてるよ‼︎」


 倒れている感染者は手足が痙攣していて、まだ意識はあるようだ。怖じ気付いている真沙美に雅宗は必死に説得する。後ろから感染者が迫る


「死んでるよ‼︎ジャンプして行け‼︎絶対に大丈夫だから‼︎」

「……うん……分かった……えい‼︎」


 雪菜と雅宗が先に飛び、倒れている感染者の上をジャンプした真沙美。


「ふぅ……」


 着地し、ひと息つき歩こうとした瞬間、足に冷たい感触が、真っ青な顔になった真沙美が足元を見ると、感染者の1人が足を掴んで来た。


「きゃあぁぁぁ‼︎」

「離せこの野郎‼︎」


 真沙美の叫び声にすぐさま雅宗が駆け寄り、感染者の頭を蹴り飛ばした。

 だが、その叫び声は別の人物をも呼び寄せた。


「ふっ……そっちですか……」


 それは神咲だった。拳銃を持った神咲は真沙美の叫び声の場所を予測してすぐさま動いた。

 雅宗達は更に後ろから迫ってくる感染者から必死に逃げていた。特に里彦を担いでいる雅宗にとってはかなり体力の消費が激しいものであった。


「はぁ……はぁ……」

「大丈夫雅宗?」

「お前を救えたんだ……こんくらい……」

「あと少しでトイレに着く、そこから出るぞ‼︎」


 1階に着き少しずつ見える希望、雅宗や真沙美の顔にも少しずつ笑顔が戻って来た。あと少しで出れるこの闇の中から……


「もうすぐで……みんなと……」


 と言った瞬間、暗闇の背後から猛スピードで迫って来る無数の感染者が現れた。雪菜はすぐに銃を構えて、銃を放とうとした。引き金を引くが弾は出なかった。


「……⁉︎嘘だろ……こんな時に弾切れ……」

「くっ……‼︎」


 雅宗が一生懸命銃を撃つが暗闇から迫る感染者に一向に当たらない。焦る雅宗、真沙美も銃を構えるが、震えて撃つ事が出来なかった。雅宗達と同じく銃を使った事はもちろんない、ましてや感染者と戦った事ない真沙美には恐怖でしかなかった。


「無理するな真沙美‼︎逃げ切るぞ‼︎」


 トイレまでの距離には100mもないが、後ろから迫る感染者達に、追いつかれてしまう。


「くっ……」


 逃げ切る事が出来ない……そう覚悟した時、何発もの銃声と共に迫って来た感染者達が一斉に倒れた。

 雅宗達は呆気に取られた、助かったと思った反面、誰が撃ったんだと疑問に思った。そして暗闇から出て来たのは一体。


「あ……あぁ……」


 気を引き締める雅宗と雪菜だが、その人物を見た時、真沙美が1人怯えた。それは……感染者達の血に塗れた神咲だった。


「見つけましたよ……真沙美さん……それに被検体の方……さぁ私のところに戻りましょう」


 血に塗れているその姿は、ニコニコしているその顔はいつもの倍以上の不気味な雰囲気が出ていた。

 まさに万事休すである……


 この時、午前10時4分……


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