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僕らの終末旅行日記  作者: ワサオ
第2章 四国上陸編
80/125

修学旅行9日目 午前9時42分

 

 午前9時42分……


 男子トイレから侵入した雅宗と雪菜、早速個室トイレのドアが激しく乱暴に壁を引っ掻いて唸り声をあげていた。その様子に2人はすぐに分かった、この人はもう感染していると。

 雅宗はゆっくりとトイレ出口のドアをそっと開けると、広々とした廊下は暗くて非常口看板の照明しかなく、緑色に発光している不気味な雰囲気が醸し出されている。


「これは暗いなぁ……」


 感染者もいる事が分かり、トイレから出るのを渋っていると、雪菜が懐中電灯を渡して来た。


「これを渡しとく、あんたが先頭で行け」

「……ありがとう、ならこれを持て」


 雅宗が用具入れから取り出したのは、モップだった。


「お前……またモップかよ……」

「これで3度目だけどな」


 渋々武器を構えた雪菜と意気揚々にモップを構える雅宗はドアをゆっくりと開け、屋上へと目指した。雪菜の額からは冷や汗が出てきた。

 広々とした待合ロビーの奥は感染者を通さない為のバリケードが施されているが、人のいる気配が一切感じない。殆どの人は感染したのか?と2人の脳裏に浮かんでくる。

 バリケードを退かそうとするが椅子や机を紐でキツく結んでいる為、結びを解こうとも無理だった。


「エレベーターを探そうぜ」

「エレベーターは危険だ、それに相手は自衛隊だ。銃を持っている可能性も高い。音で気づかれる……」

「ならどうやって銃を持った奴らを倒すんだ」

「……背後からモップで一撃……」

「そんなもんで倒せた苦労しないっての、顔を殴れ顔を‼︎主に喉や顎をな‼︎」


 雪菜が言うと謎の説得力を感じてしまった雅宗であった。


「……わ、分かった、とりあえず上に向かおう……地図か何はないか?」

「探すか」


 地図を探す為、2人は暗い病院内を散策する。血が飛び散っている院内は不気味な光景であり、静かなのが更なる恐怖を掻き立ててくる。

 2人は感染者にバレないように、壁に張り付きながらゆっくりと進む。そして角を曲がった瞬間、右の角に目の前に女性感染者が立っていた。いきなりの感染者に雅宗はおもわず大声を出してしまい、尻餅をついた。


「う、うわぁぁぁ‼︎」

「な、何⁉︎」


 静かな空間の中で響き渡る雅宗の大声、それはバリケードを突破し、3階へと向かう皇達にも聞こえていた。


「ん?下の階から声が?」

「多分生存者でしょうね……我々のヘリを見てここに来たのでしょう、どうしますか?」

「ふん、万が一にも邪魔は排除しろ、おい」


 1人の兵士に顔で指示をし、兵士は1人で1階へと向かって行く。そして残りは3階へと行き、例の物を取りに向かった。


 雅宗は驚きのあまり、尻餅をついた。その雅宗に襲い掛かり、覆いかぶさる。噛もうとする感染者の顔を無理やり手で押さえる。


「ぐっ……‼︎」


 必死に押さえつけて応戦するが、感染者の力強さに押され気味になる。雪菜はいざ感染者を目の前にしてモップを握るが、襲われそうになっている雅宗を見てある事を思い出した。

 修学旅行4日目の始めて感染者を目の前で見た時の事を。取り巻きが感染者に襲われたあの日、雪菜本人は取り巻きを身代わりとして使い、自分が逃げるように生き残った。それにあの日以来、毎晩夢の中で取り巻き達が、自分を呼ぶように促していた。あの時の恨みなのか、雪菜自身の心を傷付けていた。


 だが、ある事を境にその夢は見なくなった。それは元太や伸二達と行動を始めた事だ。いつも何もかも自分一人で考えて行動していたが一匹狼が、今は1人ではなく誰かと共に考え、共に動いている。今までに感じなかった気持ち……仲間。

 それに元太の優しさもあり、人の優しさ、そして雅宗の真っ直ぐな心が雪菜の心を揺さぶっている。


「……」


 襲われている雅宗、雪菜は決意した。


「うおぉぉぉぉぉぉ‼︎」


 雪菜はモップを両手で強く握りしめて、ゴルフのスイングする時のポーズのように、思いっきりスイングした。モップの先っちょは感染者の脳に突き刺さり、そのまま何メートル先にナイスショットをかました。

 あの時の自分とはおさらばすると意味も込めたショット、これからの自分を見つける新たなる挑戦へと向かう。


「はぁ……はぁ……」

「す、すまない……助かった……」

「さっさと……行くんだろ……大切な人の所に……こんな所で躓く気か?」


 そっと手をさしのばす雪菜、それを強く掴んで起き上がる雅宗。雪菜も今までに見せたことも無い微笑みを浮かべている。雅宗もそれを見て微笑んだ。


「あぁ……躓く訳には行かないよな」


 そして2人は地図を探しているとエントランスを見つけた。広々としたエントランスには2階へと行くエスカレーターも発見した。2階側のエスカレーターにもバリケードが設置されており、どかさないと通る事が出来ない。


「感染者もあまりいないな……」

「よし、行くぞ……⁉︎」


 雪菜が2階から何か急ぎ足でこちらに向かってくる足音を聞きつけた。


「何か来る……懐中電灯を消せ」

「分かった」


 2人は懐中電灯を消し、そっと隅へと隠れて身を潜めた。その足音はエスカレーター前で止まり、そこから懐中電灯で1階を照らし始め、地面各地を調べ始めた。2人はコソコソと話す。


「あれは……」

「あれは自衛隊だ……」


 その人物は、2階と1階へと呼びかけを始めた。


「誰かいるのか‼︎いるなら出てこい‼︎今なら助けてやる‼︎」

「信じるか……?」

「九州から来た俺達を捕まえた奴らだ……助けてくれる訳ない……あれは罠だ」


 自衛隊の呼びかけに対し、2階の何処からか何人かの看護師が出て来た。出てきた看護師達が自衛隊員に近づいた瞬間、ポケットから拳銃を出し、無言で全員の頭を撃ち抜いた。


「う、撃ち殺した⁉︎」

「始末されたってのか……」


 そして自衛隊員はそのまま2階の捜索を始めた。その隙に雅宗達はエスカレーターへとコソコソと向かった。


「下手に見つかったら殺される……」

「だけど、あいつを放って置いたらアタシらが殺される」

「どっちにしろ、倒さなきゃ行けないって訳か……」

「あぁそうさ私が囮になる、その間にアイツの後ろから一撃やれ」

「お前が囮に⁉︎」

「あぁ‼︎頼むぜ‼︎」


 そう言いながら雪菜はエスカレーター前に置かれたバリケードを突破し、看護師達の死体から目を背けながら隊員の跡を追う。雅宗も困惑する中、雪菜の策に乗るために頭を整理しながら別の道から動いた。

 そして雪菜は追いついた自衛隊員に向けていて言い放つ。


「おい‼︎」

「⁉︎」


 懐中電灯を照らす隊員は、雪菜に向けて銃を向ける。


「アタシを殺すつもりかい?」

「ふん……」

「あんたらの目的は?」

「……」


 内心焦る中、平然を装って銃を向けてくる相手に、雅宗が来るまでの間時間を稼ぐ雪菜。

 引き金を引こうとした瞬間、背後よりモップを空高く掲げている雅宗が隊員の頭めがけてモップを振り下ろした。


「うぉぉぉりゃぁぁぁ‼︎」

「⁉︎」


 モップは頭に直撃し、体勢を崩しその場に膝をついた。だがぶつかった衝撃で銃の引き金が引かれ、銃弾が雪菜へと放たれた。弾は雪菜の頰を擦り、そのまま雪菜は隊員の元へと向かった。雅宗は拳銃を取り上げようとすると、隊員はすぐに気を取り戻した。そしてすぐに雅宗に銃を撃とうと銃を構えた。


「貴様らぁ‼︎」

「何⁉︎」」

「オラァ‼︎」


 走って来た雪菜がそのままスピードを止める事なく、スピードを乗せた強力なパンチを隊員の顔へと食らわせた。強力なパンチは、脳を揺さぶりそのまま気絶した。


「ふん‼︎」

「助かった……」

「礼はいいからさっさと銃を取れ、行くぞ」

「……あぁ」


 この時、午前9時48分……

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