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僕らの終末旅行日記  作者: ワサオ
第2章 四国上陸編
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修学旅行9日目 午前6時38分

 

 午前6時38分


「……起きて下さい……美さん起きて下さい」

「ん……うわっ‼︎」


 男の声を目覚めた真沙美。パジャマも着ていて、目の前には神咲が立っていた。真沙美を起こしたのこの男だろう。


「どうしましたか?」

「い、いや……なんでも……」


 真沙美はこの男のニコニコした顔があまり慣れず、ちょっと不気味な雰囲気を出している。


「8時半頃に出発しますのでお早目の準備を……朝食も署長室にて……」


 そういうと一礼し、部屋を出て行った。


「……」


 そして真沙美は髪を整え、綺麗に畳まれた制服に着替えて署長室にて食事をした。


「さぁさぁ今日は香川県のとある病院に行くから、いっぱい食って体力をつけよう‼︎」

「……」


 元気のない真沙美に対し、子供のように元気が有り余っている皇。だが、真沙美はとある事を聞いた。


「今四国は……」

「大丈夫‼︎大丈夫‼︎真沙美ちゃんは気にしなくていいの‼︎私達に任せてちょうだい‼︎」

「それと本当に収容所の友達やクラスメイト達を助けてくれる約束も……」

「……あぁちゃんと助けるさちゃんと……」


 謎の間があるが、助けるとちゃんと約束を守ろうとする皇に少し疑念を抱く。

 真沙美は食事を終えて、トイレへ向かう。それを神咲が見届けた後、真沙美がまだ廊下に残ってないかを確認し署長室に入る。


「貴方も本当に悪ですねぇ……今じゃ無理に等しいことなのに……」

「ふっ……輸送途中で事故って死んだ事にすればいいさ……真沙美ちゃんさえいれば私は、うひひひ」


 トイレの鏡の前で一人佇む真沙美、自分だけ早く逃げていいのだろうか……由美が今の自分の事を知ったらどう思うんだろう……助けて、雅宗……そう心に訴えかける真沙美だった。


 ーーーーーーーーーーーーーー


 そして午前7時10分……外が明るくなり始める頃、幸久達囚人の起床時間となった。

 女子部屋では優佳や南先生がいつも通り起きるなら、夜の由美を見た梨沙は由美を疑念の目で見ている。

 だが、由美はいつも通りに優佳や南先生に優しく接していた。昨日の事を話そうとする気配はなく、まるで隠しているように見えた。


「……ん?」


 外から風を切るような音が聞こえて、外を覗くと大型輸送ヘリコプター3台が飛んでおり、2台は入り口付近、もう一台は屋上に着陸した。

 外のヘリが気になり、外を覗いていると背後から多くの視線を感じた。

 ふと振り返ると景仔とその信者達が梨沙を睨みつけていた。一切目を離そうとせず、恐怖すら感じた。


「……」


 そんな事を知らない優佳はとある事に気にかかった。


「この時間なのに朝食運ばれてこないね……」

「多分、遅れているんじゃないかしら」


 そう言い返す南先生だが、外のヘリが気にかかってしょうがない。


(あのヘリ……まさか……)


 ーーーーーーーーーーーーーー


 7時半になると収容所内は慌ただしくなって来た。

 外の輸送ヘリに隊員達が慌ただしく、書類やその他の物を積んでいる。皇の部屋でも荷物をまとめた真沙美と皇が話をしていた。


「他のみんなもちゃんと本州に連れて行くでしょ⁉︎」

「あぁもちろんさ他の輸送ヘリが後で来るさ……絶対にね」


 そして自衛隊の1人林はこの状態に、別の隊員に聞く。


「な、何があったのですか⁉︎」

「あぁ?北の病院との連絡が繋がらないんだ。多分感染者によって壊滅した。だから我々もここから撤退する事に決まった」

「収容されている人達は……?」

「さぁな皇署長が言うには、置いて行くって小耳で聞いたけどな」

「置いて行く⁉︎」

「当たり前だ。そんな荷物が増える事を皇署長がOKって言うと思うか?」

「……」

「さっさと準備しろよ」


 そんな適当な先輩を見て、林は渋々と荷物保管室の荷物準備を始めた。


 ーーーーーーーーーーーーーー


 幸久ももちろんこの騒ぎに冷静ではいられなかった。窓からの光景が、幸久達に焦りを見せた。

 それに他の部屋からも出せ‼︎家に帰らせて‼︎などの叫び声が上がってきた。


「荷物を詰めてやがる‼︎」


 すると龍樹は幸久に言う。


「ここの奴らが俺達を助けてくれる思うか?」

「俺達は多分見捨てられるだろうな」


 お互いに冷静に言い合う2人に、1人端っこでガタガタと体を震わす教頭がいた。


「私は終わりだ、私は終わりだ……」


 そして8時30分……真沙美の荷物もヘリに詰められ、残った荷物は僅かしかなく、屋上のヘリには真沙美、皇、神咲が乗り込み、そして地上でも殆どの隊員がヘリに乗り込んだ。


「さぁもうすぐで出発するよ真沙美ちゃん」

「……」


 教頭が鉄格子からそのヘリに大声で叫ぶ。


「助けてくれぇぇぇ‼︎私だけでも‼︎助けてくれぇぇぇ‼︎」

「ちっ……性根が腐ってるぜ」


 西河先生も哲夫も静かに外を見ていた。蒼一郎も元気がなく、寝転んでいた。


「あ〜あ……ここで終わりかぁ〜」


 そして外ではヘリの最終確認がさせられていた。1人偉そうな隊員が最後の確認をしていた。小銃を握った兵士達5人が並んでいた。その中には林もいた。

その偉そうな隊員が小声で全員に言い放った。


「ここでの最後の任務だ……ここの囚人を全員殺せ……」

「⁉︎」


 衝撃の発言に驚きを隠せない林だった。


「彼らは事故死扱いとする。分かったな。」

「はい‼︎」

「は、はい‼︎」


小銃を持った5人の兵士が2階へと上がって来る。この外の光景に殆どの人が不安を覚えたのであった……


 この時午前8時34分……


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