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僕らの終末旅行日記  作者: ワサオ
第2章 四国上陸編
74/125

修学旅行8日目 午後7時50分


 午後7時50分……


 雅宗は布の中で、この状況を伸二に聞く。


「何が起きてるんだ?この状況?街の方もだが、お前達も」

「あぁ……それが……」


 伸二は雅宗に昨日と今日の行動を簡潔に話した。


「あいつがあのおっさんの元カノに似てたから?変な話だ」

「本当だよ……」

「それに自衛隊が追ってこなくなった……」

「フェリーの事件は知ってる?」

「いや……そこまでは」


 伸二はちょっと躊躇ったが、雅宗に話した。


「僕達が九州で乗るはずだったフェリーが感染者によって……」

「嘘だろ⁉︎」

「本当だよ……そこには僕達のクラスメイト達が……」

「……そうか……」

「君の方はどうだった?」


 雅宗も病院で起きた事や、いままでの事を話した。


「里彦は……まだ病院に……」

「船木っておっさんは、そう言ってた……それに他のみんなは収容所にいるらしい……だけど、真沙美と幸久から連絡が来て、真沙美は明日にここ香川県に来るらしい……」

「こんな状況で⁉︎」

「あぁ……ヘリで来る。多分ヘリが止めてる場所があるはず……うわっ⁉︎」

「ひぃ‼︎」


 車が激しく揺れた。綾音が外を覗くと人が逃げまくり、道路も走るのが困難になっている。綾音は弱音を吐いた。


「日本全体が感染者によって……」

「そんな事言うな‼︎今はみんなと何としても合流して、北海道に帰るぞ‼︎」

「う、うん……」


 そして伸二は雅宗にスマホを見せて来た。


「10分前のニュース……」


 ーーーーーーーーーーーー


 女性アナウンサーがとある橋の上でレポートをしていた。


「ここは岡山県の現在の瀬戸大橋です‼︎香川県に感染者が発生した事で政府は本州へとつなぐ橋、瀬戸大橋、大鳴門橋、来島海峡大橋の封鎖を余儀なくされました‼︎」


 大きなフェンスが設置され、人が通れないように施されている。

 そして今度はヘリからの映像が流れた。大渋滞を起こし、多くの車が動きを止めて人が降り、瀬戸大橋を渡ろうといている。


「これは香川県瀬戸大橋の現在の映像です。多く国民が瀬戸大橋を渡ろうとしています。機動隊が出動し、暴動を収める模様です。九州の感染者鎮圧の遅れもあり、四国全体の国民の不安が高まっているようです」


 ーーーーーーーーーーーー


 このニュースに雅宗は思いっきり軽トラックの荷台を殴った。


「またかよ……頑張って九州脱出したのに今度は四国かよ‼︎くそ……」

「……今はとにかく安全に避難するが最優先だよ……考えるのはそれからに……」

「それしかないのかよ……くそぉぉ……」


 トラックは再び山の中へと隠れていった。


 ーーーーーーーーーーーー


 それから時間は流れ、午前0時……由弘がいる病院。2階の病人部屋から怒鳴り声が聞こえてくる。


「ふざけるな‼︎」

「何だとぉぉ‼︎この野郎‼︎」

「お前のせいで‼︎」

「死ねぇぇ‼︎」


 それは由弘と昇太の2人の部屋からで、静かな廊下や外にも響き渡るほど大声だった。

 1階の休憩所でトランプをしながら、テレビを見ている隊員達も気になり始めた。


「おい……今日も誰か騒いでるぜ……お前行ってこい‼︎」

「はぁ〜い……めんどくせぇな」


 一人の隊員が重い腰を上げ、鍵と拳銃を持ち2階へと向かっていった。そして由弘の部屋のドアを思いっきり蹴り静かにされようとする。


「おいおい‼︎静かしろ‼︎」

「馬鹿野郎‼︎」

「痛っ‼︎殴りやがったな‼︎」


 だが由弘達は争いをやめなかった。業を煮やした隊員は鍵を開けて、ドアを開けた。


「お前ら‼︎いい加減に……⁉︎」

「うぉぉぉりゃぁぁぁ‼︎」


 ドアを開けた瞬間、由弘のパンチが隊員の顔面に直撃し、地面に倒れる直前に昇太が隊員を掴み、そのまま部屋の中へと連れ込んだ。


「気づかれてないか?」

「大丈夫のようです……」


 そして昇太は気絶した隊員のポケットから鍵を取り出し、拳銃も奪い取った。


「へへへ、由弘、中々の演技だったぜ」

「昇太さんこそ、よくこの作戦を成功しましたね」

「ここの隊員は夜中に誰か騒ぐと1人だけしか来ないことは調査済みでね……」

「流石ですね……」


 由弘は下の階の隊員にバレてないか、階段の何度も確認し、他の部屋を開ける事にした。すると他の部屋の人達も小声で由弘に話しかけた。


「俺達も助けてくれ……」

「分かってる……静かにして待ってろ……」


 由弘は2階全部の部屋のドアを開け、計13名が廊下に出た。小さな小学生もいれば、歳をとったおじいさんもいた。


「こんなにも人がいたなんて……」


  そして昇太が静かに話しかける。


「俺と由弘と一緒に下の階を制圧する。他に力自慢のある奴はいるか?」

「俺も行こう」

「俺も」


 ガタイの良い男子学生2人が手を挙げた。


「俺達も行くぜ」

「死ぬかもしれないぜ」


 昇太の言葉に2人はニコリと笑う。


「ここにずっといるくらいなら死ぬ方がマシだ」


 その言葉を聞いて昇太は安心した。そして残った人達に忠告する。


「他の人達はとりあえず部屋に戻っていてくれ。俺達が制圧してから呼ぶから……もしこなかったら……諦めてくれ」


 全員は覚悟した顔で静かに頷いた。


「じゃあ行くぞ……」


 下の階では2階の異変には気付かず、未だトランプをしていた。建物の中の見張りの多くは就寝しており、外の見張りも少なく、絶好のチャンスだ。


「それにしてもアイツ遅いな?」

「トイレでも行ってるんじゃないか?」

「でっけえのかもな‼︎はっはっは‼︎」


 休憩室で呑気に過ごしている隊員達。すると休憩室のドアがすっと開いた。


「おっ?来た遅いぞ……⁉︎」


 部屋に入って来たのは拳銃を構えた昇太と由弘だった。


「貴様ら‼︎」

「ふん‼︎」


 小銃を取ろうとした隊員。そこに由弘が瞬時に反応し、その隊員の手に蹴り飛ばした。


「ぐっ‼︎」


 隊員の手から銃は離れ、地面に落ちた。


「動くなと言ったはずだ」

「警備がザルで良かったですね……」

「所詮は臨時の病院って訳だ……」


 この部屋にいた隊員4人は昇太の指示で手を挙げ、壁に顔を向けた。


「外には気付かれていないようです」


 学生2人が昇太に言うと、その間に昇太は銃を奪い取った。


「あんたらもこれを」

「ありがとうございます」


 学生2人にも拳銃を渡し、由弘にも渡した。そして病院の廊下窓から外を確認し、車の場所を確認した。


「入口から出て左……か……」

「でもどうします……10人以上いるんですよ……」

「あぁ……これは結構な難易度だな……」


 ーーーーーーーーーーーー


 その頃大杉の輸送船では……


「大杉さん‼︎ヘリ部隊が指定空域にて待機しています」

「分かった」


 5台ものヘリが感染者を生み出したフェリーのはるか上空を旋回している。未だに多くの感染者が船内部に取り残されている。

 輸送艦もフェリーからかなり離れた場所に、待機している。大杉は無線でとある場所に連絡を入れた。


「輸送艦おおすみ安全圏内に入った。作戦開始を命令する」

「あいわかった」


 命令と同時に近くに待機していた、護衛艦ひゅうがから、とある物が発射された。

 それは……魚雷だった。


 魚雷は水面下を真っ直ぐに進み、フェリー目掛けて直進する。

 そして魚雷はフェリーの下降部に直撃した。爆音と共に水上から大きな水しぶきぎ飛び、フェリー後方からは炎が燃え上がって行く。


 更に何発も発射され、船内部は火の海と化した。そして船は後方より徐々に沈み始めた。


「……」


 大杉も色んな想いと共に沈んでいくフェリーを、見つめていた。

 多くの犠牲を出したフェリーはこの時間に沈んで行った……


 この時、午前0時7分……

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