修学旅行8日目 午後7時19分
午後7時19分……
四国は感染カラス達の襲撃に遭い、大混乱を起こした。雅宗がいる観音寺市にも感染カラスの魔の手が忍び寄り、雅宗は感染者に襲われた。何とか逃げることが出来、電車に飛び乗った……
「はぁ……はぁ……」
乗客は雅宗の姿を見て、変な者を見る目で見ている。雅宗の服や顔には血が付いており、先端に血のついたモップを握っている異様な光景に乗客は唖然としている。
中年のサラリーマンが雅宗に心配そうに話しかけて来た。
「ど、どうしたのかね……」
「はぁ……何でも……ないです……」
疲れ果て、息を荒げている雅宗。
その後ろの車両では……
「ぐっ……痛え……」
若い金髪の男性が、苦痛の表情をあげ、右腕を抑えて座り込んでいる。右腕からは大量の血が流れて出ており、乗員が対応している。
「大丈夫ですか⁉︎」
「噛まれた……狂った女に噛まれた……」
周りの乗客はざわざわと騒ぎ始め、男性乗務員は乗客を落ち着かせる。
「落ち着いて下さい皆さん‼︎皆さんは後ろの車両へと向かって下さい‼︎この方は私が手当しますので、皆さん後ろの車両に‼︎」
「はぁ……はぁ……」
雅宗は隣の車両がざわざわしてる事に気づき、ドアの窓から覗いた。
そしてその車両の乗客は怪我した男性と男性乗務員を残し、後ろの車両へと移った。
怪我した男性はぐったりとうつ伏せに倒れた。
「お客様大丈夫ですか⁉︎お客様‼︎」
雅宗はドアを開け、顔を覗かせながら男性乗務員に話しかける。
「乗務員さんその人はもうダメだ‼︎感染者に噛まれたんだ‼︎早くこっちに来るんだ‼︎」
「な、感染者に⁉︎」
乗務員が雅宗を見て話していると、倒れた男性の目が突然開いた。目に血が滲んでおり、焦点が合っていない状態だ。口からは血が流れ出ている。すぐさま乗務員は男性に話しかける。
「お客様大丈夫ですか‼︎」
「もう手遅れだ‼︎早く‼︎」
「あっ……‼︎」
感染者となった男性は突如乗務員の首元を噛み付いてきた。乗務員は必死に離そうとするが、感染者は離そうとせず、更に強く噛み付く。
「い、痛い‼︎離して下さい‼︎お客様‼︎」
「くっ……もうダメか……」
雅宗は乗務員を諦めて、ドアをそっと閉めた。すると雅宗と同じ車両の人達が騒ぎに気になり、ドア前に集まっていた。先ほどの中年サラリーマンが話しかけてきた。
「君……乗務員さんが何かあったのかい?」
雅宗は渋ったが、話す事にした。
「後ろの車両に……感染者がいる……」
「えっ⁉︎」
車両は騒然とし、ざわざわと騒ぎ始めた。そこで雅宗は全員に怒鳴り散らした。
「静かにしろ‼︎」
誰よりも大きな声を出した雅宗に、その車両の全員が静まり返った。
「感染者は声や姿に反応する……下手に声を出すな……みんな伏せろ……」
すると別の若いサラリーマンが雅宗に食って掛かる。
「何で君がそんな事を言う資格があるんだい?今はあの乗務員さんを助けないと‼︎」
「あんたニュースを見たのか⁉︎感染者に噛まれたら、そいつもものの数分で感染者に変わってしまう事を‼︎」
「……」
そして雅宗が話している間、感染者がいる車両の後ろの車両では
「乗務員が噛まれたぞ‼︎」
「た、助けないと‼︎」
乗務員が噛まれてるのを見て助けようとしていた。感染者だとは分かっていないようで、ドアを開けて男性数名が感染者を取り押さえている。1人は手を噛まれているが必死に抑えている。もう1人入ってきた女性は倒れていた乗務員を起こす。
「大丈夫ですか⁉︎」
「……」
雅宗はすぐにこの状況を確認し、ドアを開けて大声で叫んだ。
「何やるってるんだ‼︎そいつらをほって置いて車両に戻れ‼︎」
雅宗の言葉に全員が静まり返った。だが女性は雅宗の言葉に怒りを表した。
「何言っているのよ‼︎怪我人よ‼︎」
するとぐったりしていた乗務員が顔を上げ、女性の首を噛み付いた。
「キャァァァァァァ‼︎‼︎」
「くっ……残った奴も早く戻れ‼︎」
「う、うわぁぁぁぁ‼︎」
残った男性達も戻ろうとするが、1人の男性が感染者に足を掴まれ、倒れた。
「うわっ‼︎は、離してくれ‼︎‼︎」
「くっ……‼︎」
必死に車両に戻ろうと這い蹲る男性。だが、同じく這い蹲って近づいてくる感染者に足を噛まれた。
雅宗は悔しそうにドアを閉めた。
他の男性はドアを開けたまま、もっと後ろの車両へと逃げて行った。乗務員の感染者はそのまま後ろの車両へと歩いて行き、這い蹲っている感染者も後ろの方へと移動していった。
「くっ……久し振りの電車は最悪だな」
電車はそのまま北へと走って行く……
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由弘と若き船乗りの昇太も、感染者騒動で外が騒がしくなっているのに気づいていた。
「嫌な予感がするぜ……」
昇太が言うと由弘も言う。
「昼頃から隊員達の様子が明らかにおかしいですね……」
「感染者がこの四国に来た可能性がある……」
「⁉︎」
「あくまで予想だがな……だけど昼頃から何かよそよそしくしてるが気になるんだ。飛んでいるヘリの量が増えているし、昼からずっと外を見ていたが別に新しい収容者が来たわけでもない……それに特別偉い人が来たわけでもない。強いて言うなら金髪の女性医師が来た事……くらい……か」
そして昇太は、色々と考えてとある作戦を提案した。
「なぁ由弘、一つ俺の作戦に乗るか?」
「作戦?」
「あぁ……ここから脱出だ……」
「えぇ⁉︎」
その昇太が考える作戦とは?
「一体どうやって……?」
「俺にいい考えがある……」
監視カメラはあり、銃を持った自衛隊員もいる。そんな中で、一体どうやって脱出するのか。昇太に、ニコっと不敵に笑うのであった。
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収容所の部屋にいる真沙美は1人九州のニュースを見ていた。皇はアディソンの件や感染動物の件で色々と対応に追われている。
そのニュースの内容は
多くの九州にいる国民は、自衛隊や警察の指示により学校や病院などの広く、多くの物資がある避難所へと避難している。未だ避難していない国民の捜索もあり、困難を極めている。そして感染者によって壊滅した避難所も無数にある。
感染者は予想よりも多くいる事が分かり、鎮圧には困難を極めている。多くの隊員や国民が死亡しており、国民からは九州を放棄しろという非難の声が上がっている。
四国は自衛隊により、感染者の捜索及び鎮圧が行われている。高知県四万十市・土佐清水市などの地域が避難対象とされており、高知県内の交通機関は明日には全て一時停止する模様。皇氏も明日には香川県に移動すると述べている。
そのニュースに真沙美は怒りを覚える。
「こんな……見たこともない人達が……何を……」
コンコンコン
ドアを叩く音が聞こえてきた。真沙美が恐る恐る開けると、気が弱い隊員林がいた。
「貴方は?」
林は周りを確認して真沙美にコソッと小さな紙を渡して来た。
「幸久君からの伝言です……これを見て下さい……」
「幸久から⁉︎って貴方は?」
「この事は内緒に……」
そして林は、そそくさと退散して行った。
「……一体何なの?」
真沙美が渡された紙を開くと荒い文字で書いてある。
真沙美へ
俺達はとある人物の協力を得て、お前の状況を把握する事が出来、スマホを手に入れる事に成功した。由美達とは連絡が取れない。もしお前が連絡出来る状態なら連絡してほしい。
幸久より
「とある人物……さっきの人?……それより、幸久に連絡しないと……」
この時、午後7時27分……