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僕らの終末旅行日記  作者: ワサオ
第2章 四国上陸編
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修学旅行8日目 午後1時39分

 

 午後1時39分……


 アディソンは船木の元へと向かい、船木との対面を果たした。


 船木とアディソン、睨み合う2人の部屋に銃を構えた隊員が数名入ってきた。


「貴様は何者だ‼︎」

「今すぐ出て行け‼︎」


 荒々しい声で脅す隊員に、アディソンはため息を吐きながら、アディソンの手帳を見せた。


「これで分かった?」

「……し、失礼しましたぁー‼︎」


 アディソンの手帳を見た瞬間、隊員達は血の気が引いたように部屋を出て行った。

 出て行ったのを確認するとアディソンは、船木に聞く。


「さぁ……話してもらうわよ、ワクチンの事を……」


 船木はお茶を一口飲み、真剣な表情で話し始めた。


「ワシはある怪我をした少年にワクチンを打った」

「その少年はここにいるの?」

「少年はもういないさ」

「いない⁉︎どうゆう事よ‼︎」


 慌てふためくアディソンに、船木は話を続けた。


「彼はもう外に放ったさ……実験のために……」

「実験……⁉︎なんの?」

「この世界を救う実験じゃ……」


 船木は引き出しから黒い液体が入った試験管を取り出した。


「それは?」

「感染者の研究をしていたのはあんただけじゃないさ。これは感染者の血……あんたが持ってるのと同じじゃよ……」

「まさか……それを」

「いや……この血に特殊な菌が含まれている。君もお分かりだろう」

「えぇ、その血の中にある菌が正常に動く人体の血液に混ざる事で、正常な細胞を食い荒らし、新たなる感染細胞を生み出し、肉体をも食い荒らす……そして最終的には脳細胞すらも食い荒らす……」

「正解……」


 冷静になったアディソンは船木に少年の事を聞く。


「御託はいいから、さっさと答えて頂戴」

「その少年にこの菌をワシなりに作り変え、彼の体内に吸収させたのさ」

「どうゆう事?」

「彼の切り傷は予想以上に深かった……下手をすれば、植物人間状態に陥ってたかもしれない……そこで私は研究材料として渡されたこの菌、通称レイド菌を少年の身体に打った……」

「……何かしらの作用はあるの?」

「それはじゃな……」


 ーーーーーーーーーーーー


 それから数時間後……自宅待機を命じられた土佐湾付近の山や住宅街には人影がなくなり、静まり返っていた。


 皇の収容所から派遣された隊員達も曇った天気の中、目撃された砂浜付近で銃を構えつつ探索する。砂浜には多くの感染者が倒れており、遺体が腐り始めている。木田もその中に混じっていた。何やら不満そうな顔で


「ちっ……何で俺がこんな寒くて、臭い中あ探さなきゃなんねぇだよ‼︎……雪?」


 雪がチラチラと降り始めた。


「たださえ寒いのに余計に寒くするんじゃねぇよ‼︎くそったれ‼︎」


 周りにも聞こえるくらい大きな声で愚痴を撒き散らす木田。その声に周りの隊員達もあきれた様子で無視する。


「感染者探すくらいならかわい子ちゃん探した方がマシだぜ……ん?」


 すると、砂浜の駐車場に一台の車が停めてあるのを見つけた。だが、その車に血塗れでボロボロの服を着ている1人の男性が車の窓を覗き込んでいた。


「何だあれ?」


 そして1人の隊員が、男の背中を叩いて話しかける。


「あの〜大丈夫でしょう……か……⁉︎」


 男が振り向くと、顔面血だらけの感染者と化した男だった。すぐさま男は隊員の方を噛み付いた。


「う、ウギャァァァ‼︎」

「な、何⁉︎感染者だとぉぉ⁉︎」


 周りの隊員は恐怖で慌てふためく。銃を向けるが、もちろん感染者はやめるそぶりを見せない。隊員達は周りに確認するが、どうすればいいか誰にも分からない。


「ど、どうする⁉︎」

「だってまだ……」

「噛まれたら、感染者になるんだぞ‼︎」


 全員が言い争っている内に、感染者が見ていた車の中から女性が現れ、窓を必死に叩く。


「助けてぇ‼︎早く‼︎」

「民間人1人発見‼︎逆側のドアから出ろ‼︎」


 女性が感染者がいるドアの反対方向から出て、木田が役者の如く優しい演技をし、怯えている女性を保護する。


「大丈夫ですか⁉︎」

「は、はい‼︎」

「今は私の後ろにいて下さい‼︎」


 噛まれた隊員は口から血を垂らしながら、その場に倒れ、死亡したのを全員が確認した。


「あ、あぁ……」

「くっ……感染者を撃てぇ‼︎‼︎」


 車の前にいる感染者に向かって一斉に撃つ。銃弾は感染者の身体全体に直撃し、血を吹き出しながら感染者は倒れた


「はぁ……はぁ……倒したのか……」

「やったぞ‼︎感染者を仕留めたぞ‼︎」


 木田の後ろに隠れた女性も、木田の背後から顔を覗かせた。


「あぁ……私の彼が……」


 木田が女性をギュッと抱きしめた。


「ご冥福をお祈りします……今の私でよければ何かお役に……」

「ぎゃぁぁぁ‼︎‼︎」

「ど、どうしたのです……⁉︎」


 抱きしめた女性の足を別の感染者が噛み付いていたのだ。女性は倒れ、周りの隊員達も慌てふためく。


「うわぁぁぁ‼︎」


 大声を聞きつけ、周りから感染者達が何十体をも超えるに現れ、隊員達を囲むように浜辺へ追い詰める。


「お、おい‼︎どうなってんだよ‼︎話と違うじゃねぇか‼︎こんなに居るなんてよ‼︎」


 あまりにも多くの感染者に隊員達の統制が取れなくなった。逃げ始めた者や、腰を抜かした者までいる。女性はそのまま噛まれて、絶命して。


 別の場所でも、同様の事が連鎖的に起きていた。山の方でも同じく、別の隊員達が襲撃されていた。


「うわぁぁぁ‼︎」

「い、痛い‼︎‼︎やめてくれぇぇぇぇ‼︎」


 数分前まで静かな山の中は一気に阿鼻叫喚の叫び声が広がった。感染者に足を噛まれた隊員は横たわり何処かへと荒々しい息を吐きながら、無線を繋いだ。


「こちら3班……山は感染者が予想を遥かに超える量が確認……他の班も全滅……」


 そして無線を落とすと、隊員の眼球は消え、白くなり変わり、ゆっくりと立ち上がって小さな唸り声をあげながら何処かへと歩き始めた。


 ーーーーーーーーーーーー


 夜7時になり、幸久達は隊員が帰って来ない事に何かしらの疑問を持った。


「自衛隊の奴ら全く帰って来ないな……」

「事故ってんじゃねぇのか?」


 コンコン


 ドアを叩く音が聞こえてきた。幸久が確認すると食事を運んできた林だった。ドアを開け、静かに食事を渡す。


「幸久さん……これを……」

「これは……」


 それは小さく包まれた紙だった。


「後で読んで下さい……それと……」


 そう言うとポケットからスマホをこそっと渡した。


「あ、ありがとうございます」


 そして林が立ち去ると、全員が集まり、手紙を見た。蒼一郎が読み上げた。


「なになに……今は四国にいる感染者撲滅の為、人がいないから監視カメラは機能してない……だと⁉︎四国に感染者がぁ⁉︎」

「とうとうここにまで、来るなんて……脱出しないと……何としても……」


 この時、午後7時04分……

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