修学旅行8日目 午後1時21分
午後1時21分……
雅宗は電車に乗り、宿毛駅から電車を乗り継いで香川県の金蔵寺駅まで来たが、どうすればいいか分からずに何時間も近くの大きなスーパーでうろついていた。現在は椅子に座って烏龍茶を飲んでいた。
「はぁ……」
スマホをいじっていると、ある記事を見つけた。
「四国に……感染者⁉︎」
記事には高知県四万十市の海岸にて感染者の目撃情報が入っており、周辺住民は外出を控えるように指示されている。
そして予測だと先日に多くの死者と感染者を出したフェリーから落ちた感染者が流れ着いたと書いてある。フェリー近くにいる輸送艦艦長、大杉正治郎氏と感染対策本部長、暁綾二氏と臨時収容所、署長皇万采氏は対応に追われている。
「……高知県は南の方か……」
下にスライドを動かすと、目撃された地域が貼られているリンクがあり、そこをタッチしようとすると
「……うげっ⁉︎充電が……」
タッチしようとした瞬間、電源が切れたのだ。
「そういや、九州ホテル出てから充電してないもんな……」
5日目にホテルから出る直前に充電してから今日まで充電をしておらず、今ここで充電が尽き果てたのだ。
「はぁ……」
雅宗は今いる大型スーパー内の電気屋に移動する。
電気屋の前には大型テレビが置かれており、そこからテレビが流れている。そこに雅宗は釘付けになった。
昼のワイドショーで、とある会見を中継していた。コメンテーターも真剣な表情で中継を見ている。
アナウンサーが汚らしい廃校の前で、報道している。他局のカメラマンも多く揃って、会見を待っている。
「ここは四国臨時収容所前です。午後1時30分から、署長皇万采氏の会見が行われる模様です。九州の感染者鎮圧も順調に進んでいる矢先に起きた自体に、ここ四国も九州同様、隔離地方に指定されると予測されております……あっ、来ました‼︎皇氏が収容所から出て来ました‼︎」
先頭の皇と他の制服を着た隊員数名が収容所のドアから出た瞬間に、大量のカメラのシャッター音とフラッシュが画面いっぱいに埋め尽くして来た。ニヤニヤと不敵に笑う皇。
そして用意された大量のマイクが置かれた机の前で止まった。そして深刻な表情に変えて話し始めた。
「ゴホン‼︎現在この四国に感染者が目撃されたと言われています。最初に報告を受けた8時頃から今までに20件以上も報告を受けています。被害は今のところ不明、ですが幸いにも他の県からは報告がなく、現在捜索隊が編成され、周辺地域の安全確保に向かっています‼︎感染者を撲滅し、皆様の安全を確保します‼︎」
「……」
被害が大きく出てないことを安心した反面、この皇という男がいる場所に仲間達がいると思うと何だか複雑な気分になる……雅宗はその場を後にし、携帯充電器を買った。
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輸送艦の方では、艦長大杉はフェリーの対処に迫られていた。ここ数日全く眠れず、目の下にはクマが出来ていた。
輸送艦とフェリー周辺にはテレビ局のヘリが何台も飛び回っている。
会議室で大杉は頭を抱えて1人悩んでいる。すると若き隊員光井が慌ただしく入って来た。
「大杉さん‼︎」
「どうした……光井……」
「政府からの連絡が入りました‼︎」
「とうとう来たか……」
操縦室へと戻り、電話を取ると
「はい……はい…………分かりました……」
電話を切ると、生気が抜けたように椅子に腰をかけた。
「大杉さん……」
「あぁ……やはり人類は感染を止める事は出来ないのか……」
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「真沙美……本当にどこに行ったんだろう……」
由美が悲しそうに鉄格子を掴みながら言う。真沙美が消えてから、元気が無くなっていき、今日の朝も食事を残していた。
そんな由美を見て、南先生は由美の所へ行こうとするが、優佳が先に走って由美の所へ行った。
「大丈夫よ‼︎絶対に……絶対に大丈夫だよ‼︎」
「うん……」
「待とう‼︎真沙美ちゃんが戻ってくるのを‼︎」
必死に励ます優佳を見て、南先生は辛い気分になる。そして一緒の部屋になった梨沙が南先生に話しかける。
「由美ちゃんにとって真沙美ちゃんは相当大事な存在のようね……」
「学校でも2人はとっても仲良しでした。真沙美ちゃんら雅宗君って子とも仲が良くて、とても明るい子です……」
「……いくら心配しても、意味はないさ……何か証拠があれば……」
梨沙は前日に翔子の信者が言っていた、隊員の1人が連れて行ったと言う話を少しばかり信じていた。
「やはり……隊員の1人が……」
そして今日は、やけに外に隊員が集まっている。
「それにしても、やけに多いが騒がしいね?」
「何かあったのかしら?」
外では隊員達100名ほどが集められ、その中には気の荒い木田がいたが、気の弱い林はいなかった。
「くそっ‼︎何で俺がこんな事を」
林は収容所内に残っていた。林は収容所内の監視を命じられており、収容所内の隊員は10人も満たない状況だ。
そして外にいる隊員達は、皇の指示の元、四国にいる感染者を撲滅に向かった。
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そんな林は収容所のとある管理室にいた。暗く、誰もいない静かな部屋に林はこっそりと入った。林は電気もつけずに何個も並べられた机の上にあるいくつもの箱を漁っている。
「確か……ここら辺に……」
林は幸久に言われたスマホを探していた。箱の中には、哲夫のスケッチブックもあれば、みんなのスマホも入っていた。
「どれだ……幸久君のは……」
パチン‼︎
「⁉︎」
突然、部屋の電気がつき、部屋は明るくった。びっくりした林はすぐさまドアの方へ振り向いた。
「何をしてるのかな⁇」
「か、神咲……さん⁉︎」
それはこの収容所副署長である神咲だった。ニコニコしながら林に近づく。
「何かお探しかな?」
林は手足の姿勢を正し、敬礼した。
「は、はい‼︎す、皇さんに頼まれて女性の荷物を持って来いと‼︎」
身体中から冷や汗が雪崩のように流れる。そして神咲は林の肩を軽く叩いた。
「……ならよし、鍵の締め忘れにご注意を」
「は、はい‼︎」
神咲はそのまま部屋を出て行った。
「ふぅ〜」
油断した瞬間、またドアが開き、神咲が覗いてきた。
「あぁー聞き忘れてたけど、君の名前は?」
「は、林です‼︎林謙三です‼︎」
神咲は軽くうなづき出て行った。
「ふぅ〜驚いた……」
そして林は、幸久の思わしきスマホを見つけてこそっとポケットへと隠した。
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臨時病院へと行ったアディソンはズカズカと隊員の言葉を無視して、船木がいる病室へと行った。
開けるや否や、アディソンは椅子に座っている船木の机を強く叩く。
「あなたが船木さんですよね」
余裕ある表情で船木は答えた。
「あぁ……そうじゃが?何か?」
アディソンは真剣な表情で問いただす。
「教えて貰いましょうか?あなたが2日で作り上げたワクチンの事を……」
「ふっ……嫌だ言ったら」
するとアディソンはポケットから一本の注射器を取り出した。注射器には赤くどす黒い血のようなものが入っていた。
「これは感染者から取り出した血よ。あなたに刺したら、すぐさま感染者へと変わりゆくわ」
「ふっ……」
船木は軽く笑い、両手を上げた。
「……まぁ……よかろう……さぁ話そうか」
この時、午後1時39分……