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僕らの終末旅行日記  作者: ワサオ
第2章 四国上陸編
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修学旅行7日目 午後7時0分

 

 午後7時0分……


 雅宗は病院の船木の手助けにより、脱出した。理由は分からないままだが、雅宗はみんなを探すために動く。


 7時頃……幸久達は収容所2日目に入り、全員やる事もなく、退屈な時間を過ごしていた。

 幸久が鉄格子から空を眺め、1人呟く。


「1日が経ったが出られる気配は全くないな……」

「一日中こんな部屋に閉じ込めやがって‼︎外の状況や時間すら分かんねえよ‼︎」


 里彦と同じサッカー部で、かつキャプテンの蒼一郎はストレスが溜まり、一日中壁を蹴っている。そこに西河先生が止めに入る。


「落ち着け蒼一郎君‼︎怒りに身を任せても何も解決しないぞ‼︎」

「だがよ‼︎こんな所にずっといたら頭おかしくなるぜ‼︎」


 教頭も爪を何回も噛み、自分を説得している。


「私は生きるぞ……私は助かるぞ……私は……」


 たった1日だが、みんなが少しずつ荒れ始めていく……そんな状態をいつまでも続けると大変な事になる……幸久自身もそうだ。

 仲間の安否が分からない状態で多少イライラしている……


 だが龍樹だけは、ずっと横たわって寝ていた。逆にそんな龍樹を羨ましく思う幸久だった。


「……」


 すると廊下から男の怒鳴り声が響いてきた。


「何トロトロ歩いているんだ‼︎早く運べ‼︎」

「は、はい〜‼︎」


 そして幸久達の部屋に入って来たのは、食事が入ったワゴンを運ぶヘラヘラと笑って誤魔化す若手隊員と、怒っていた先輩隊員だった。


「食事の時間だ‼︎おら林‼︎さっさと運べ‼︎」

「はい‼︎すみません木田さん」


 オロオロと戸惑う若手隊員林。それにイライラと足踏みする先輩隊員木田。手には銃を持っている。


「何だあいつ?」

「ウルセェな……」


 不思議そうに林を見る蒼一郎に、木田の大声に起きる龍樹。


「はいどうぞ……はいどうぞ」


 ゆっくりと丁寧に配る林にイライラする木田。配り終えた時、銃の弾倉で頭をど突かれ、その場にしゃがみこむ。


「いでっ‼︎」

「おら‼︎さっさと立て‼︎次があるんだから戻るぞ‼︎」


 幸久と西河先生は頭を抑える林を気遣う。


「大丈夫ですか?」

「えへへ……大丈夫です……ふげっ‼︎」


 笑って誤魔化した林だが、今度は顔を蹴った木田。流石に幸久もこれには激怒した。


「そこまでする事ないだろ‼︎」

「幸久落ち着いて‼︎」


 西河先生が抑えるが幸久の怒りは治らない。


「あぁん?銃を持ってる俺に楯突く気か?お前が反乱行為を見せればいつでも撃っていい許可は出てるんだぜ?」


 そう言うと木田は幸久に銃を向ける。


「木田さんもう大丈夫です……行きましょう。時間がありませんので……」

「ちっ……次楯突いたら撃つぜ」


 林の言葉に、木田は腕時計を見て、舌打ちをしながら先に立ち去った。

 林も去り際に幸久達に礼をして部屋から立ち去った。不思議な気持ちになる幸久だった。


「……」


 ーーーーーーーーーーーー


 その頃、雅宗は病院の医師である船木の手助けで病院から脱出した。そして車に乗せられて高知県宿毛駅前に降ろされた。服を渡された。


「服を着ろ、制服じゃまずい」

「分かった……」


 渡された服とズボンを着て、マフラーを首に巻き、車から降りた。


「ここで降りるんだ」

「……ありがとう……」


 船木は雅宗の財布とスマホを渡した。雅宗は財布の中がやたら膨らんでいるのに気づいた。


「⁉︎な、何だこの金は⁉︎」

「わしからの選別じゃよ」


 財布には1万円札が10枚も入っていた。


「これも忘れてるぞ」


 船木が投げてきたのは、弟にあげる予定だった。小型の木刀キーホルダーだった。


「これは……」

「お前さんのポケットに入っていたんじゃ」

「何から何までありがとな……」

「明日までに電車移動するんじゃ……バレるの時間の問題だ」

「分かった……感謝するぜおっさん。最後に1つ聞きたいが、幸久達はどこだ。俺の友達の場所を……」

「これを言うと君は行くだろう……だからあえて言わないさ」

「……まっ、そうだよな……ありがとうなおっさん」


 そう言うと雅宗は笑顔で一礼し、駅の奥に走って行った。


「それにしてやる事がないな……幸久達の場所も分からないままか……」


 駅前に来たのはいいがやる事がなく、暇を持て余している。するとお腹がゴロゴロとなった。


「腹減ったな……とりあえず腹を満たそう……」


 コンビニでおにぎりと暖かいお茶を買い、寒い外のベンチで食べながらスマホで情報を集める。

 九州の感染者鎮圧、高校生3人の逃走、フェリーが感染者によって壊滅した……


「たった数日気を失ってただけなのに……こんなにも……電話をしよう……幸久に」


 幸久へと電話を掛けるが、幸久のスマホは没収されており、電源を消されて保管室へ置かれていたのだ。

 もちろん電話に出るわけもなく、雅宗は電話を止めた。


「くっ……繋がんねぇ……何が起きてるんだ⁉︎……真沙美は……大丈夫なのか……」


 雅宗は次に真沙美へと電話を掛けた。


「頼む……出てくれ……」


 ガチャ……電話に出た……


「もしもし真沙美か⁉︎」

「ま、雅宗⁉︎」


 出て来たのは真沙美だった。


「意識が戻ったの……」

「あぁ……何とかな……それで今、俺は宿毛駅って場所にいるんだが、お前は収容所にいるのか⁉︎」

「うん……」

「幸久達もそこにいるのか⁉︎」

「うん……別の部屋にいて、会えないの……」


 弱々しい声の真沙美に違和感を覚える雅宗。


「大丈夫か真沙美⁉︎声が疲れているようにも聞こえるが」

「大丈夫よ、何だか嬉しくて……」

「俺に出来ることはあるか⁉︎」

「……今すぐ四国から逃げて……」


 プツッ‼︎

 電話が突然切れた。


「おい‼︎真沙美‼︎おい‼︎……何なんだ⁉︎逃げろって‼︎」


 雅宗の大声が駅に響く……


 ーーーーーーーーーーーー


 収容所……小さな会議室。布団、机、椅子やお菓子や飲み物が置いてあり、皇が用意した真沙美専用の部屋だった。


「な、何するのよ‼︎」


 真沙美が電話してる途中に、神咲が入って来たのだ。


「だめですよ……機密事項を漏らしちゃ……」

「……」

「今日は携帯は没収だよ……ふふ……」


 神咲は真沙美のスマホを持っていき出て行った。


「雅宗の意識が戻った……何とかしてみんなに報告しないと……」


 ーーーーーーーーーーーー


 宿毛駅から病院へと帰る途中の船木に電話が鳴った。


「はい……船木です……」


 電話の奥から聞こえてくる声は


「杉影だ……」


 幸久達が捕獲した時に、いた監視塔の曹長であった。


「被験体は離したか……」

「はい……次の被験体も傷が治り次第外に放ちます」

「わかった……」


船木はそのまま病院へと戻っていった……


 この時、午後7時26分……


 時は流れて、午前7時……


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