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僕らの終末旅行日記  作者: ワサオ
第2章 四国上陸編
62/125

修学旅行7日目 午前10時49分

 

 午前10時49分……


 山に隠れている雪菜達は、全員ぐっすり寝ていた。そこに唯一起きていた元太は、外で何やら魘されている雪菜を起こしていた。


「おい起きてくれ‼︎」

「はっ‼︎」


 真っ青な顔をして息を荒げる雪菜。元太は心配そうに話しかける。


「どうしたんだ?辛そうな顔して」

「いや……なんでもない……」


 まだ雪菜の夢の中に、あの九州で死んだ取り巻き3人が夢に出て来るのだ。それにまだ悩まされていた。


「そうか?まっ、もうすぐで11時だ、起きろよ」

「……そんな時間か……ってあんたは寝たのか?」

「こんくらい大丈夫さ」


 そして車の中で寝ている伸二と綾音も起こして話し合いが始まる。始めにまだ眠気が取れていない目をしている雪菜が口を開く。


「……これからどうするつもりだ?」


 元太は腕を組みながら考えてる。


「う〜ん……」


 悩む元太に伸二がそっと手を挙げ言う。


「あの〜元太さん……」

「何だい?」

「スマホか何かありますか?」

「あるけどどうしたんだい?」

「ちょっと貸してくれませんか?」


 伸二か何するか分からないが、元太はスマホを取り出し、伸二に軽々と渡した。


「ありがとうございます‼︎」

「何調べるんだ?」

「SNSですよ。現在の状況把握の為に」


 伸二はSNSやネットニュースを使い、自分のアカウントで調べて始めた。九州の事を調べ始めた。


「確か九州に軍を派遣するって言っていたはず……その情報を……」


 九州は現在、感染者が増え続けている模様。感染予想人数は約10万規模にも及ぶ模様。

 九州の感染者鎮圧は本日2月28日の昼に行われるらしい。

 そして四国の事を調べた。感染予備群は200人を超え、全員四国臨時収容所に送られている模様。そして感染の疑いのある人物は四国臨時病院に送られた模様。


 そして現在3人の九州から来た高校生達が、四国在住の大岩元太氏の軽トラックに乗って、逃亡中との事……元太の写真がネットに公開されている。全員指名手配中とのこと。


 この記事を見て、元太は目をまん丸にした。


「嘘だろ⁉︎俺まで指名手配かよ⁉︎」

「すいません僕達のせいで……」

「いいって事よ‼︎これも雪菜ちゃん、そして君達の為さ‼︎」


 もう一つ、四国沖にいるフェリーで感染者が大量発生した。そこにいる多くの人達が感染し、船は放棄された。そこには時忠高校の生徒たちもいたと……


「嘘だ……僕達の高校が乗っていた……なんて……」

「みんな……そんな……」


 綾音も心を痛め、自分の胸を抑える。そして伸二は時忠高校生のネットで拡散されている日記も見た。


「うっ……もし僕達もフェリーに乗っていたら……こんな事になっていたのか……」

「どっちみち今と変わんねぇじゃえか」


 雪菜が平然とした顔で横槍を入れて来た。


「あたしらも今じゃお尋ね者……感染者になるか、自衛隊に捕まるか……どっちも良くねぇよ」

「……」

「……でも亡くなったみんなの為にも……私達は帰らないと……」


 ずっと口を閉じていた綾音が勇気を振り絞って口を開けた。


「んだよ」

「伸二君も雪菜ちゃんも家に帰りたいでしょ……私も帰りたい……お母さんやお父さんに会いたい……そして他のみんなと帰らないと……」

「……」


 元太がその中混ざって来た。


「そうか……そのフェリーにいた学生達は……」


 そして雪菜も一言素っ気ない風に話題を変えた。


「ふん……どうするもこうするも指名手配されてちゃ簡単には動く事出来ねぇよ」

「……軽トラックってバレてるしな……」


 更に10分ほど考えて、考えた結果は……


「……とにかくまずは山から下りるぞ‼︎みんな乗れ‼︎」

「……」


 雪菜と元太は帽子を被り、伸二と綾音はトラックの後ろに隠れて、トラックは山を降り始めた。


 ーーーーーーーーーーーー


 午前11時49分……


 九州付近の海では大型輸送船が何隻も航海している。


 そして自衛隊は福岡県、鹿児島県、長崎県、大分県に派遣された。

 自衛隊はボートで陸に上陸を始め、ヘリも何十機と出動し、自衛隊の7トントラックも大量に出動し、まるで戦争でも始めるようだ。


 事前に一般市民には屋内退避を勧告しており、感染者以外いない状態だ。

 だが九州には感染動物達もいる。人間の感染者と違い、的は小さく、俊敏性もある。そんな感染動物達に人類は勝てるのか?


 そしてネットでは今回の政府による鎮圧は世間的には期待されておらず、ネットアンケートでは約10万人程の投票で、成功するが18%、失敗するが68%分からないが14%である。


 海外の国々もこの初の事例に大いに注目している。日本にいる在日米軍も大統領命令でこの件には関わらないと表明した。


 四国の輸送船にいる大杉達、収容所にいる皇、逃走中の伸二達、九州に残っている人達……そして日本国民もこの鎮圧に注目しているのであった……


 ーーーーーーーーーーーー


 午後0時……各地で自衛隊による鎮圧作戦が一斉に始まった。


 1番感染者の数が多いと思われる鹿児島では、多くの自衛隊が出動し、激戦区と化した。


 普通の人間とは違い、銃を前にしても恐れという概念がなく怖さを感じず、ただ真っ直ぐに突っ込んでくる。


 発生源となっている鹿児島港付近には大量の感染者がうごめいていた。自衛隊のボードやヘリを見かけると街中の感染者達は一斉に海の方へと移動を始めた。


 自衛隊は、迫り来る感染者達に一斉射撃を浴びせつつ、街中へと前進する。何台ものヘリも機関砲で感染者達に、一斉に攻撃を始める。一進一退の攻防が繰り広げられる。


 はたして人類は未知なる感染に勝てるのか?


 ーーーーーーーーーーーー


 同時刻、四国臨時収容所の所長室……机の上に巨大テレビで鎮圧の生中継を見ている収容所所長の皇がいた。生中継を見てニヤリと不気味な笑みを浮かべる。


「ふふふ……始まりおったか……」


 そして皇は机の前のソファーへと目を向ける。


「こっちに来て君も見ないかい……」


 そのソファーに座っていたのは……


「真沙美ちゃん……」

「……」


 それは哀しげな目で下に俯いている真沙美だった。真沙美の気持ちも分からない皇は軽く話しかける。


「どうしたんだい?そんじゃそこらのゾンビ映画より過激な映像だよ?真沙美ちゃんも見ようよ」

「私はいい……」


 ソファーの前には真沙美のスマホが置いてある。


「何をそんなに不満そうな顔をするんだい?君のスマホは返した。それにこの収容所での自由な生活。満足だろう?」

「友達がいない自由なんて不自由と変わらないわ……」

「ふん……最近の子は分からんなぁ……」


 すると、皇の携帯電話が鳴る。


「あぁ皇だが……ふんふん……あぁ分かった……そっちも残念だったな」


 何かを惜しんでいる声だが、顔を笑っていた……


 この時、午後0時4分……



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