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僕らの終末旅行日記  作者: ワサオ
第2章 四国上陸編
61/125

修学旅行7日目 午前7時1分

 

 午前7時1分……


 廃病院・収容所ではそれぞれ起床時間となった……


 廃病院……由弘と部屋で出会った若き船乗りの男性、和昇太は病室に閉じ込められていた。


 日が昇りだした朝、ドアを荒々しく叩く音と共に由弘の目が覚めた。


 ドン‼︎ドン‼︎ドン‼︎


「うっ……朝か……?」


 布団から起き、部屋を見渡すと、昇太の姿がない。


「昇太さん……?」


 窓の外を覗くとそこには雅宗が無表情で立っていた。


「雅宗⁉︎お前大丈夫なのか⁉︎」

「……」

「雅宗‼︎」

「……」


 雅宗はそのまま由弘から離れるようにその場から去って行った。由弘は必死に鉄格子を握りしめて叫ぶ。


「雅宗‼︎雅宗‼︎」


 すると後ろから人の気配を感じた。体全体から冷や汗が流れてくる。そしてそっと後ろを振り返ると……


「⁉︎」


 昇太と雅宗、そして里彦が無表情で血まみれの状態で立っていた。


「うわっ⁉︎」


 大声と共に意識が戻り、気づくとベットの上だった。


「はぁ……はぁ……夢……か……」

「随分と苦しそうなお目覚めだな」


 由弘が部屋を観ると、壁に寄り添っていた昇太が話しかけて来た。


「すごい(うな)されていたけど大丈夫か?」

「……変な夢を見て……」

「まっこんな状態じゃ変な夢も見るよな……」


 2人はそのまま沈黙した。



 ーーーーーーーーーーーー


 その頃、由美や優佳や南先生、そして収容所で出会った梨沙達も隊員達のドアを叩く音で起きた。


 ドンドンドン‼︎


「うわっ⁉︎」


 先に飛び起きたのは、優佳だった。慌てて起き、周りを見渡す。


「何何何なの⁉︎」


 そして目を擦りながら起きた由美は、まだ眠そうな声で話しかける。


「優佳ちゃんドアの音だよ」

「あぁ……って何あれ?」


 驚愕の様子の優佳が目と口を大きく開けてみていたのは、謎の宗教団体の長である麻垣景仔の周りに信者達がひざまづいて崇拝していた。

 一風変わった光景に唖然とする優佳だったが、起きた梨沙が優佳の前に現れ一言言った。


「あんなの放っておけよ。関わんない方がいいって……それより真沙美ちゃん……だっけ?この部屋にいない気がするけど?」


 南先生も部屋の周りを確認する。


「真沙美ちゃんが居ないわ……」

「真沙美‼︎どこなの‼︎真沙美‼︎」


 部屋の中で大声を上げる由美。すると麻垣が由美達に向かって怒鳴りつける。


「うるさいわね‼︎私たちの朝の祈りの邪魔をしないで頂戴‼︎」

「私の友達がいないのよ‼︎」


 すると物静かな若い信者の1人が由美に一言言い放つ。


「私……見たわ」

「えっ?」

「夜中にここの隊員の1人がその子を連れて行ったのを……」

「本当に⁉︎」


 信者は静かにうなづいた。だが景仔は嘲笑うかのように微笑む。


「その子隊員に体を売ったんじゃないの?」


 その言葉に由美が顔を赤くして怒り、景仔の方へと歩き出す。


「そんな事真沙美がするわけないでしょ‼︎」


 そこに南先生と梨沙が由美を止めに入る。


「由美ちゃん落ち着いて‼︎」

「きっと何か事情があるはずよ……」

「くぅ……」


 悔しがる由美は座り込む。優佳も由美を慰めた。


「由美ちゃん……真沙美ちゃんは大丈夫……多分……」



 ーーーーーーーーーーーー


 その頃、大杉達の輸送船では、艦長大杉と海外の学者アディソンが会議室でフェリーでの生存者が目を覚めるのを夜通し待っていた。


 大杉は机に座りブラックコーヒーを飲みながらジッと待っている。アディソンはノートパソコンで何やら調べている模様。するとアディソンが立ち上がり、大杉に話しかける。


「大杉さん……」

「何だ」

「今日は九州全域で感染者排除が行われるらしいですが……」


 コーヒーカップを置き、静かに語る。


「私は成功するとは思えない……」

「大杉さんもそう思うか……」

「私は平和を望んでいた……そしていつもの明るい明日が来ると思っていた……フェリーに行くまでは……」


 フェリーの内部……夥しい数の感染者達……そして感染者に殺された部下達……全て目の前でみた全ての光景が目に焼きついた。


「事を簡単に捉えすぎていたのかもしれない……いくら多くの武装した屈強な兵を送ったとして、彼らが感染者の弱点や行動パターンを知っているのか?私はフェリーで多くの感染者や行動パターンを見てきたが、まだ謎が多い……」


 そしてアディソンが静かに話し始めた。


「今回の件で色々と調べましたが、あのフェリーで見た少女の正体は不明でした……」

「……そうか……」

「あのフェリーはどうするつもりですか?」

「現在、政府の対応を待っている……多分破壊し、政府は機械の故障で爆破したと隠蔽するだろう」

「えっ?」

「当たり前だ……四国周辺の海を航海している船から感染者が出たと判明すれば、国は大荒れだ……」

「でも、今の御世代スマホやSNSがあるから……」

「あぁ……いずれかは認知するだろう……死んだ人達の投稿によって……」

「……」


 ーーーーーーーーーーーー


 ネットではフェリーに乗っていた複数の人達によって、当時のフェリーの状況が生々しく残っていた。これは時忠高校の生徒の状況報告だ。

 ※この記事は最終投稿から30分もしないうちに削除され、スクリーンショットした人から貰った状況報告である。生徒の名前が書いてある箇所は○○○と表示する。


 2018年2月27日


 午後10時47分

 船がやけに騒がしい。エントランスから男の人の叫び声?が聞こえて来た。酔っ払いかな?


 午後10時52分

 悲鳴が更に大きくなり、3階の吹き抜けからエントランスを覗くと、血塗れの人が何人も倒れており、唸り声を上げている人もいた。僕はすぐさま部屋に戻った。怖くなって来た……


 午後10時54分

 副船長が船内アナウンスの途中に、何か悲痛な声を上げて、アナウンスが切れた。感染者がどうとかって言っていた……色んな場所から悲鳴が……怖い怖い怖い


 午後11時0分

 隣の部屋からも悲鳴が聞こえて来た。○○○の声が……何で近くにいる自衛隊の船は助けに来ないんだ……こんなにも怖い状態なのに……一緒の部屋の○○○も僕も怯えてて動けない……たすけてたすけて


 午後11時2分

 ○○○が部屋からでていった?、たすげを探してくるって言って。。。ボクもいほいで付いていく!


 午後11時5分

 目の前で○○○が感染者らしき人ににに噛まれれた。ぼくは急いで陰に隠れた、、て手がフフルルえて……‼︎


 午後11時8分

 噛まれた○○○が立ち上がった。○○○は生きていた‼︎感染者もいないし、たずげよう⁉︎


 午後11時12分

 ○○○にがまれだぁ……でのじゅうが効かないぃぃえげげ.へ」」んねつお^_^

 たすげめーーーおさあさんんんんんんんんんんんんんんん。


 ここで状況報告は終わっている。

 この高校生の安否は不明である。


 この記事はSNS・ネットニュースで一気に広がったが……テレビでは一切報道されず、この記事もすぐさま削除された……



 この時、午前7時29分


 時は流れ、午前10時49分……

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