修学旅行7日目 午前2時28分
午前2時28分……
フェリーへと向かった大杉達は大量の感染者達がいるのを確認した。1機のヘリが注意を引いている間に、大杉達20人の隊員はフェリーへと降り、生存者を探す事になった……
暗い船内……客室階で目がえぐられた女子生徒の感染者に出会った大杉達は空いている客室へと逃げ込んだ。だが感染者は大杉達に気づく様子もなく、逃げた客室を通り過ぎた。
「通り過ぎた……」
「助かったん……ですか?」
大杉はそのまま部屋から顔を出し、感染者へとヘッドライトを当てると、感染者はドアが閉められている部屋の前に立ち止まっている。
隊員の1人が疑問に思う。
「何故あそこで止まっているんですか……?」
「……謎だ……だがこれも収穫の1つだ……」
そして大杉は真っ青な顔の三越を慰める。
「もう行けるか……」
「は、はい……すみません……私のせいで隊を乱して……」
「心配ない……あれを見ていい気分になる人間なんていないさ……」
ガサガサ……ガサガサ
隠れている部屋の端から何か物音が聞こえて来た。
「何か物音が……」
「私が見て来る……」
1人で行こうとする大杉に、三越が前に出て来た。
「僕が先頭に行きます……感染者の可能性があります……」
「……気をつけろ……感染者としても下手に撃つな……撃つのは緊急時のみだ……」
「分かりました……」
音が聞こえるのは、部屋のベッド横からだ。三越を先頭に銃を構えて、ベッドに近づく。
「生存者か……生存者なら返事をしてくれ……」
ベッドへライトを当てると、そこにいたのは……
「……⁉︎あれは……」
それは時忠高校生の女子生徒であった。この女子生徒の身体も血塗られていて、感染しているのが一目瞭然だった。口周りには血が付いており、まさかと思った三越は女子生徒の下にもライトを当てた。
「⁉︎」
「どうした⁉︎」
そして女子生徒が覆いかぶさっているのは、別の女子生徒だった。感染者となった女子生徒は別の女子生徒を食べていたのだ。そしてこちらに気づいた感染者は立ち上がり、ゆっくりと足を震わせて、歩いて来た。
「た……た……す……て……」
感染者は苦しそうに何かを訴えるように唸る。大杉を除く隊員全員が驚き、動きが止まった。
「何か言ったのか……」
「た…………て……」
そして動けなくなった三越の前で倒れた。大杉には助けて……と助けを求めるように聞こえた。そして大杉は女子生徒の元で座り込み、手を合わして目を瞑った。
「大杉さん、危ないですよ‼︎」
「いや……させてくれ……」
大杉は無言で黙祷を捧げた。そして立ち上がり、全員に指示を出した。
「さぁ……この階の生存者を探すぞ」
「は、はい……」
そして別の部屋の前に立つ感染者に気づかれないように歩きながら3階客室を調べる。中には鍵が掛かっている部屋もある。そこには軽くノックを掛け、いるかどうか聞くようにする。
「……この部屋に入ります……」
三越がすごい掻き傷がある部屋のドアを開け、部屋を確認すると部屋は綺麗に掃除されており、荷物もきちんと整理されていた。
「何だ……やけに綺麗に整理されている……」
部屋を調べると、ベッドの掛け布団も綺麗に畳まれ、一切汚れた様子はない。
「ここの人は別の場所で感染したのか……?」
シャワールームを調べると……
「はっ……⁉︎」
三越は絶句した。水が入った浴槽に服を着たまま沈んでいる女性の死体と、シャワーホースで首を絞めた男性の死体を発見した。
「くっ……自殺……したのか……」
すると大杉が後ろから話しかけてきた。
「精神的にキツかったんだろう……ドアの傷を見る限り……感染者達に追われていたんだろう……」
「……」
廊下側のドアの傷……感染達に追われて部屋に戻ったが、ドアを引っ掻いて来る感染者達に精神がやられて自殺に至ったカップル……と自分の中で予測した。
そして三越も静かに男女に黙祷を捧げ、静かに別の部屋を探し始めた。
「吹き抜けか……」
先に進んだ大杉達は吹き抜けのある客室廊下に到達した。
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森や光井ら2班は1階エントランスを銃を構えながら捜索している。吹き抜けがあるエントランス内は壁やガラスに血が飛び散っており、椅子や花瓶などは無残にもそこら中に転がってボロボロになっている。
「やはりここにも感染者によって制圧された後か……」
「そうだな……絶対に警戒を怠るなよ……」
4人は暗く静かなエントランスを隅々まで探すが、人影は全くない。森がエントランスの階段をゆっくりと上る、すると階段の上に小さな人影が見えた。
「だ、誰だ⁉︎」
ライトを当てるとそれはパジャマを着たクマの人形を大事そうに持っている幼女だった。
「女の子?人がいたぞ‼︎」
「何⁉︎」
光井ら3人はすぐさま階段の下に集まって、全員ベッドライトを幼女に当てる。
森は幼女に近づいた時、ある事に気付いた。幼女の背中から夥しい程の血と肉がなだれ落ちていた。そして幼女が真っ赤な口と牙を見せて来た。
「う、うわぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
「どうした⁉︎」
びっくりした森は後ろに一歩下がり、その時に階段を踏み外して、階段から転がり落ちていった。
「ぐわっ‼︎」
階段の1番下で止まった瞬間、握っていた銃が暴発し、吹き抜けに向けて銃を何発も放ってしまった。
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この銃声と悲鳴はに各地の隊員達はすぐに気付いた。大杉達の4階でももちろん音が響いた。
「何だ今の銃声と悲鳴は⁉︎」
「1階からでしょうか?」
すると廊下で突っ立ていた女子生徒の感染者はこちらに気づいてしまった。こちらにゆっくりと歩いて来る。
「くっ……」
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ヘリから船外を見ているアディソンもある異変に気付いた。
「船前方に異変が……」
ヘリによって前方に集められている感染者の内、後ろの方にいる感染者達10体程が突如エントランスの方へと移動を始めた。
「……はっ⁉︎あれは⁉︎」
突如アディソンは目を疑い、手が震え始めた。アディソンが見たものとは一体……
「動いている感染者の中に……何故、手を上に伸ばしている女の子が……」
アディソンが見たのは、船前方に集まっている感染者群の中に1人、ヘリに向かって手を伸ばす黒く長髪の白く一切の汚れがない綺麗なワンピースを着た高校生くらいの少女がいた。
その女の子は何故か微笑んでいた……
「あの子は一体……」
この時、午前2時45分……