2月28日 修学旅行7日目 午前1時12分
午前1時12分……
フェリーの異変に気付いた艦長大杉。フェリー周辺を自ら偵察に行き、すると海に多くの感染者がいた。そこで多くの部下を失う。部下に喝を入れられた大杉はヘリで再び、フェリーへと向かう事を決意した。
皇から送られたヘリ2機が輸送船の甲板に到着した。そして中から隊員が5人程出てきた。
「ただ今到着しました‼︎」
「ご苦労、我々も何台かヘリを出す。すぐに出発だ‼︎」
するとヘリから白衣を着た女性が降りてきた。
「やぁ〜大杉さん〜お久しぶりです〜」
「き、君は……アディソン・サージェリー君か?」
笑いながら近づいてくのはメガネを掛けた金髪の若い外人女性だった。日本語ペラペラで、両耳にはアメリカ国旗のピアスを付けている。そんなアディソンを見て、三越は不思議そうに大杉の耳元で囁く。
「誰ですかあの美人の人は……」
「あれは今回の件で感染者の研究や傾向などを調べているアメリカから来た研究長だ」
「あんな若そうな人が研究長ですか?」
「あぁ見えて彼女はハーバード大学で分子細胞生物学を学んでいた……彼女は成績上位でよく、細胞研究をしていて、独自で様々な発見をし、若くして多く論文を発表していた。もちろんそんな彼女に世界中から勧誘が多発した。だが彼女は日本を選んだ……彼女はちょっと変わった性格だからな……」
「失礼ですがあの人と大杉さんはどんな関係で?」
「彼女の父としばし関係が合ってね……」
そしてアディソンは大杉と三越の手を握り、元気よく敬礼し挨拶して来た。三越は思わず赤面になり、固まってしまった。
「なっ⁉︎」
「アディソン・サージェリー‼︎ただ今参上しました‼︎」
固まる三越を他所に、大杉は平然と喋り始める。
「何故君がここに来た?」
「昨日までは九州で感染者の解剖とかを行なって居たんですが、九州は危険だと言われて、皇って言う私をジロジロといやらしい目で見てくる男の収容所行ったの、あんな所やる事ないから大杉さんがいるここに来たの」
「ここは危険は場所だ。半端な気持ちで来てもらっては困る。多くの命が失っているんだ。そこをちゃんと考えてくれ‼︎」
大杉が軽く怒ると、笑っていたアディソンから笑顔が無くなり、メガネを外して鋭い目で大杉を睨みつけた。
「私だってね命張って来てんのよ‼︎日本を救うためにここに来て直接動いている感染者を見るために来たんだよ‼︎遠くから見るより近場で見た方がもっと何か掴むことが出来るから私もヘリに乗らせてもらうぜ‼︎」
先程の優しい喋り方からいきなりのキレた発言に三越を含め、周りの隊員達も固まった。だが大杉だけは険しい顔をしていた。
「……分かった。だが危ない行動はとるな」
そしてアディソンはメガネを掛けるとさっきのまん丸の目に戻って、ヘリに乗り込んだ。
「はーい‼︎なら早く行こう‼︎早く‼︎」
「……な、何なんですか……あの人……」
若干引き気味の三越、そしてため息を吐く大杉。
「あれが彼女の変わった所だ……」
「……」
すると森と光井が大杉の元へと走って来た。
「大杉さん‼︎この輸送船のヘリの準備が出来ました‼︎」
「いつでも出発OKです‼︎」
「分かった……全員出発だ‼︎」
光井、森、三越、アディソン、輸送船からの隊員10名とヘリから来た10名、そして大杉を含めた25名がフェリーに行く事になった。アディソン以外全員、万が一の為に武装して行く。
ヘリ4機は輸送船から発進し、フェリーへと飛び立つ。道中、大杉は光井に聞く。
「フェリーは何人くらい乗っていたんだ?」
「はい、志布志港での事ではっきりとした人数は不明ですが、1000人くらいは乗っていたみたいです」
「1000人もか……」
アディソンも目を光らせてはしゃぐ子どものようにヘリからフェリーを覗き込む。横にいる三越が呆れた顔で見ている。
「あれが感染者塗れのフェリーかぁ〜」
「テンション高いですね……」
「当たり前だよ〜‼︎」
そしてヘリはフェリーの真上に到着した。大杉は無線で全ヘリへと通信した。
「降下できる場所を探してくれ‼︎」
各ヘリはライトを照らし降下できる場所を探すが、プールサイドやデッキなどはどこもかしこも感染者がうじゃうじゃいて、降下出来る場所が全くない。
「何という数だ……」
「全員感染者……なのか……⁉︎」
大杉はある事に気付いた。感染者達は、ライトを照らしているフェリー前方に飛んでいるヘリの方角へと集まって来ている。すぐさま無線で全機に連絡を入れる。
「2番機はその場に待機‼︎他のヘリは一時的にフェリーから離脱しろ‼︎」
「何故です⁉︎」
「奴らは動くものに反応する……今感染者達に一番近い2番機へと集まっている。ここで多くの感染者を引きつけてから後方デッキへ降りるぞ‼︎」
2番機以外のヘリはフェリーから離れて、一時的に待機、その間も2番機の元へと感染者が集まって来て、押される感染者達もいる。中には押されて海に落ちる感染者も多数確認した。
森や三越も口を開けて眺めている。
「すごい……どんどん前方に集まって来る……」
「あぁ……」
大杉は後方に感染者がほとんど居なくなったのを確認すると、再び全機に連絡を入れる。
「これから2番機以外は後方デッキに降下する‼︎行くぞ‼︎」
大杉が乗ったヘリは後方デッキに着陸し、大杉、三越、その他数名が降り、全員が89式5.56mm小銃を構えて全方位を確認する。そしてヘリが離陸し、今度は別のヘリが着陸していった。アディソンはヘリ上空から感染者達の動きを観察する。
全員が降りるのを確認すると、銃を構えた状態の大杉は指示を出す。
「なるべく1人になるな……全員円陣を組みながら移動しろ……」
すると森が静かに1つ聞く。
「もし……仲間が感染者に噛まれた場合は……」
「……諦めてその場から撤退しろ……」
「分かりました……」
「4班に別れ、生存者の捜索に当たれ‼1班は車両甲板、2班は1階、3班は2階、我々4班は3階だ。4階は3階までの安全を確認してから行く。実弾は︎感染者が襲ってきた場合にのみ、打つ事を許可する。無闇に撃つんじゃないぞ……」
「はい‼︎」
全員が返事をするとヘッドライトを点けて全隊は進んで行った。大杉と三越の4班も円で囲むようにフェリー内部へと移動する。
「我々は客室を調べる……気を張れよ……100%ここに感染者がいないとは限らないぞ……」
「はい……」
フェリー前方で多くの感染者を食い止めているとは言え、やはり怖い……もし出会ったら……と思うと額から冷や汗が流れてくる三越であった。そして3階は暗く狭い廊下は密閉空間。廊下のあちこちの壁に血のついた手の跡がある。外から聞こえていたヘリの音も殆ど聞こえない状態だ。聞こえて来るのは自分達の心臓の音だけ。
すると、三越の足が何かグニュっとしたものを踏んだ。
「?」
「どうした」
「いや……何か踏んだような……⁉︎」
三越が頭を下げて、地面に照らすとそれは無残にも食い荒らされた時忠高校の男子生徒だった。頭上部の半分が無くなっており、三越が踏んだのはその学生の脳みそだった。
「う……」
「やめろ‼︎」
三越が驚き、大声を出そうとするのを、大杉が三越の口を手で押さえる。
「今騒いだら、感染者が来る‼︎静かにしろ」
「は、はい……うえっ‼︎」
手を離した瞬間、三越は膝をつき地面に思いっきり吐いた。大杉はその背中を優しくさすった。
「大丈夫か……」
「だ、大丈夫です……心配ご無用です……」
「分かった……」
「大杉さん‼︎前方より人影が‼︎」
「何⁉︎」
別の隊員のヘッドライトが照らす先には、人が1人ゆっくりと右足を引きずりながら歩いてくる。今度は時忠高校の女子生徒だ。服には血が多数付着している。
「生存者か‼︎」
応答を待つが、何も反応はしない。
「顔にライトを当てろ……」
「はい……」
隊員はライトを女子生徒の当てると、隊員の顔を急に青ざめた。
それは両目がない女子生徒の感染者だった。足も折れているのか、引きずっている。こちらに気づいていないのか襲ってくる様子がない。
「どうします……大杉さん」
「とりあえず空いている部屋に逃げるぞ」
近場の部屋に逃げて感染者の様子を伺う事にした。
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ヘリから前方の感染者達を見るアディソン。先程の笑顔は無く、真剣な表情で見ている。
「……分かっているのは動くものに反応する事ともう一つは音に反応する事……そして脳を破壊すると活動停止する……他に感染者達に何か傾向があれば……何か対策が打てるんだが……」
更にアディソンは、感染者の動きを見て思う。
「感染者は、死ぬ少し前の状況を元に動くと聞く……九州にはその動きをしている感染者がいた……まだまだ謎が多すぎる……」
この時、午前2時38分……