修学旅行6日目 午後10時08分 収容所編③
午後10時08分……
シャワーユニットに入る収容者達。そこに女性シャワーユニットにカメラを隠し起き、盗撮していた男がいた。それはこの収容所を任されている自衛隊員皇だった。そして皇はシャワーを浴びていた真沙美に興味を持った……
約1時間後……シャワーを終えた収容者達は部屋に戻され、1人1人薄い掛け布団を1枚だけ配られた。
男部屋では蒼一郎が掛け布団1枚に自衛隊員に向けて文句を垂れた。
「これだけかよ‼︎敷布団と枕もくれよ‼︎」
「ふん……‼︎」
無視するように部屋から出て行き、廊下以外の部屋の電気を消された。
「クソっ……‼︎何なんだよ‼︎あの態度‼︎」
すると西河先生が、そっと蒼一郎の肩を叩き、優しく話し掛ける
「落ち着くんだ。飯とシャワーと寝床があるだけマシだ……ここも九州の騒動が収まるまでの辛抱だ……終わったら私達は解放されるだろう……」
「終われば……いいんですけどね……この騒ぎが……」
「あぁ……終わるさ……多分」
龍樹は鉄格子から入ってくる月の光を浴びる場所に寝転がる。そしてそこから月を眺める。
「隣いいか」
幸久が龍樹の隣に寝転がる。
「あ?どうしたんだ」
「お前と話をしたくてな……」
「話……」
龍樹は外の月を見ながら、幸久は天井を見ながら話す。
「龍樹は由弘の事は心配か」
「ふん……自分の事で他の奴の事なんぞ知らん……むしろ、お前の方はどうなんだ」
「自分の事も心配さ……でも仲間の事も心配さ……」
「よくそんな事考えられるな、自分が死ねば、他人はすぐ自分の事を忘れる……そんな扱いでもいいのか……」
「そうかもしれない……でも俺は絶対に忘れない……死んだ奴の気持ちと共に、街に帰る……気持ちだけでも一緒に……」
「ちっ……変わった奴だなお前は……俺はもう寝る」
「あぁ……俺は変わりモンさ……今も昔も……」
小声で呟き、幸久は目を瞑った……
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女性部屋でも1人1枚薄い掛け布団が渡され、部屋の電気が消された。
「汚いし、薄いし……変な匂いするし……」
愚痴る優佳に真沙美が話しかける。
「そんな事言っても、いい布団が来るわけじゃないんだから寝ましょう……」
「そうそう‼︎寝よう寝よう‼︎」
由美は布団を被り、すぐに寝た。
南先生と梨沙も2人で喋り合っている。
「先生の仕事って楽しいか?あんな生徒達の相手は大変だろ。それのこんな状況じゃ……」
「えぇ大変です……でも私は好きでこの仕事を選んだんで、悔いはないですね……確かに手に負える生徒はいっぱいいます。でもそんな生徒達と触れ合いのが楽しいんです……」
「ふ〜ん……まっ、あっちみたいなのよりマシかもな」
「?」
暗闇の中、梨沙が目を向けた方には、謎の宗教団体の彰子が真ん中に寝ていて、それを囲むように他の女性達は円になって彰子を囲みながら、静かに寝ている。
「あんな不気味な集団を引き連れるよりかは、あの子達を引き連れる方が圧倒的に楽しそうだね。見てて飽きないわ」
「そうかも……しれませんね……」
苦笑しながら答える南先生。その後真沙美達が寝ているのをしっかりと確認し、南先生達も就寝した。
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真沙美達が寝てから1時間が経ち、午後11時頃……
元校長室からモニターを見ている皇と神咲。今度は5つのモニターから教室を覗いている。皇はニヤけて不気味な顔になっている。
「全員寝たな……」
「はい。赤羽真沙美は2-5の部屋です」
「神咲、連れてきてくれるか。連れてきてくれたら褒美をやるぞ」
「褒美なんていりませんよ、私は皇さんのためにやるだけですから……」
「頼んだぞ神咲……」
「はい……」
ニコリと笑い、細い目からは何を考えているのか分からない神咲は、微笑みながら帽子を深くかぶり出て行った。
神咲は1階から2階へと上がり、2階教室の周りを徘徊する自衛隊員に話しかける。
「ご苦労様」
神咲が話しかけた瞬間、自衛隊員は姿勢を綺麗に整え敬礼した。
「神咲さん‼︎夜遅く御苦労様です‼︎」
「君も初日で疲れてるでしょ。私が代わりに見張ってあげるよ」
「い、いいんですか⁉︎」
「あぁ……国民も部下も安全を確保するのが仕事だからね」
そう言うと自衛隊員は、鍵を渡して来た。
「これがこの階の鍵です。もし体調が悪くなったりしたらすぐにご連絡ください。すぐに交代いたします‼︎」
「お気遣いありがとう。君もしっかりと休んでくれ」
「はい‼︎ほんとうににありがとうございます‼︎」
そして自衛隊員は嬉しそうに階段を下って行った。
足音が聞こえなくなるのを確認し、再びニヤリと笑う。
「こんな事が外部にバレたら首が飛んじゃうからね」
ゆっくりと音を出さずにゆっくりと鍵を開ける。
廊下は電気が付いているため最低限自分が通れる分だけドアを開けて、真沙美のいる教室へと入る。
「この子だったな……」
優佳・由美・真沙美の順番で横になって寝ていた。
「失礼しますよっと……」
ぐっすり寝ている真沙美をお姫様抱っこのように持ち上げた。真沙美は熟睡しており、軽い寝息をたてている。
そして神咲はゆっくりと出て行き、鍵を閉めた……
「確かにこの子は皇さんが好みな子だ」
「う……うん……ん?」
真沙美が目を薄っすら開けた。
「おや?お目覚めかい?」
「えっ⁉︎あなたは⁉︎」
自分は誰に連れて行かれていると、分かった真沙美は暴れ始める。
「降ろして‼︎降ろしてよ‼︎」
「ちょっとその願いは聞けないね〜あの人の命令でね〜」
そのまま真沙美は抵抗むなしく、元校長室へと連れてかれた。
ドアを開けると、モニターが置いてあった形跡を無くすかのように何も置いていない校長室の机の前に不気味に微笑む皇が立っていた。
真沙美が皇に気を取られていると神咲がドアを閉め、校長室に残る。
「あなたは誰⁉︎私に何の用⁉︎」
「私はこの四国臨時収容所所長……皇峰明。よろしくね、赤羽真沙美さん……」
「……」
身構える真沙美に対し、皇は微笑んでいる。
「さっ……座って下さい」
綺麗なソファーの上に座らされる真沙美。机の上には袋に入ったクッキーが何種類も置いてある。
「さぁ食っていいよ」
「要らないわよ‼︎そんなの‼︎私に何の用なの⁉︎」
「なら……現在君達は国が決めた約束を破った状態なんだよ」
「どうゆう事……?」
「テレビで先日の総理の会見を見たかい?」
「は、はい……」
真沙美は昨日の朝、総理がニュースで言っていた事を思い出した。
緊急隔離地方……感染者……交通機関の停止……
色々と思いだすが、検討もつかなかった。すると皇が口を開く。
「九州からの外出を禁ずる……もし政府の許可なく出た者は監禁し厳しく罰する……事さ」
「えっ⁉︎いつの間に⁉︎」
「今日の5時頃かな?神咲」
「……はい5時頃ですね……」
軽く頷く神咲。さらに皇に話す。
「君達は感染予備群……我々は君達収容者達に異変がないか監視しなくちゃいけないんだ。1ヶ月程ね……」
「1ヶ月⁉︎そんなに⁉︎」
「君はこんな生活1ヶ月もしたくないだろ?少ない飯に、薄い掛け布団に……監禁生活に……」
「……」
真沙美は拳を強く握り、深く考え込む。こんな監禁生活を1ヶ月……雅宗に会えないし、情報も全く分からない……みんなの精神状態も変になる……そんな事が頭によぎる。
「そこで私からの提案だ……君達一行を解放してあげよう。君達は高校生だ。こんな所じゃ成長が止まってしまうんじゃないかと思ってね」
「えっ‼︎本当に‼︎」
笑顔が戻る真沙美。だが皇がニヤリと笑い、ある条件をだした。
「ただし条件がある……」
「何……?」
「私の女になれ……‼︎」
「はぁ⁉︎」
思わず大声を出してしまった真沙美。この皇と言う男……やばい奴なのか⁉︎
この時、午後11時21分……