修学旅行6日目 午後10時54分トリオ編③
午後10時54分……
雪菜は道路で軽トラックに乗っていた中年男、大岩玄太と出会う。そして飯・風呂・服など色々と優しくしてもらっていた。伸二と綾音は町で雪菜を探すが道中で、ヘリからの捜索をしてる事をしる。
そのヘリからの呼びかけは雪菜と玄太の家近くでも聞こえた。
「ん?何だ?」
玄太は立ち上がり、カーテンを開けて外の様子を見る。
するとヘリのスピーカーから男の声が聞こえてくる。
「現在、隔離地方に指定された九州地方から政府公認の救助船以外で無許可で脱出した感染予備群の中で逃亡者が3名いる模様‼︎全員高校生くらいの歳で制服を着ている‼︎近隣の住民の方は外出を控えて下さい‼︎もし見つけた場合は、すぐに警察にご連絡を‼︎」
「高校生……3人……?」
玄太が雪菜の方を見ると、雪菜は沈んだ顔でこちらを見ている。玄太は恐る恐る聞いた。
「まさか、今のはお前……なのか?」
「……あぁ……そうだ……」
そう言うと雪菜は濡れた制服を掴み、すぐさま家を出て行こうとする。
「飯くれてありがとよ……」
ボソッと小声で言いながらドアを開けようとすると、玄太が雪菜の肩を掴んだ。
「離せ‼︎あたしは逃げる‼︎」
「逃げるって何処にだ……」
雪菜が玄太を見るとさっきまでの笑っていただらしない男にしか見えなかった玄太が、真剣な表情で話している。
「……」
「今はまだこの家にいた方がいい……下手に出るとあのヘリに見つかる」
すると雪菜は肩を掴んでいる玄太の手を振り払い、玄太に怒りをぶつける。
「何故⁉︎あたしは追われる身だ‼︎匿えばあんたは処罰される可能性があるんだぞ‼︎」
「だけど俺は雪菜ちゃん、君を助けたい……」
「⁉︎」
中年の男に急に言われてビックリする雪菜。だが玄太は真剣な表情で言っている。だが雪菜は再び怒り始める。
「……何であたしにそんなに優しくするんだ‼︎そんなの無駄な優しさなんだよ‼︎嫌なんだよ‼︎そんな事されるのが‼︎」
すると玄太はポケットから雪菜が見てた玄太とその嫁が映った写真を見せた。
「雪菜ちゃん……君は梨紗にそっくりだった……その金髪も性格も」
「……どうゆう事だよ‼︎」
「梨紗は君のように荒々しい性格でもあった。でもその中に優しさもあった。毎日が楽しかったさ」
「……じゃああたしが着ているこの服は……」
「あぁ……梨紗の服さ」
今、雪菜が身につけている服とスカート、それは玄太と共に写っていた女性、梨紗の物だった。
「そいつは何処にいるんだ……」
「10年以上前に別れたさ。俺が不甲斐なさに愛想尽かしちゃったようで家を出て行っちゃったさ。それから10年ずっとこの様だ」
「……」
「そしてさっき君の後ろ姿見た時、びっくりしたよ。制服姿だけど梨紗?って思って……」
「悪かったな‼︎梨紗って女じゃくて‼︎」
「……⁉︎」
その時玄太があることに気づいた。外からヘリの音がこちらに近づいて来る。玄太が玄関のドアから顔を出して、外を見るとヘリ数台が空から玄太の家をライトで照らして囲んでいる。
玄太はドアを閉めた。
「……な、何だあれ⁉︎」
「さっき外で言っていた奴だ。あたしを追って来たんだ……誰かがここにいる事を通報したんだと思う……」
すると外のヘリの1台がスピーカーで呼びかける。
「この家の所有者に告ぐ‼︎ここに逃亡したと思われる女子高生がいると通報を受けた‼︎ただちに差し出せ‼︎」
「ちっ……くそっ‼︎」
玄太は慌ててリビングへと戻り、黒いジャンパーを着て、右手にある物を握りしめ、ポケットに梨紗の写真を入れて走って来た。
そして雪菜の手を握りしめて、入り口から出た。
「な、何を⁉︎」
「逃げるぞ‼︎」
「はぁ⁉︎」
2人は玄関横に停めてある軽トラックに乗って、素早く鍵を指してエンジンを掛け、フルスロットルでアクセルを踏み、車を発進させた。
「男1人と女子高生と思われる女が軽トラックに乗って逃亡した模様‼︎地上部隊に連絡を‼︎」
ヘリはすぐさま雅宗達の漁船を捕獲した鉄塔に連絡し、その近くの車は一斉に軽トラックの捜索に向かう。
そして軽トラックは北の小深浦の山に向かう。その後ろをヘリが上空より追いかける。
「山の中に逃げるぞ‼︎」
「それより、何でお前も逃げるんだよ‼︎」
ハンドルを強く握る玄太は軽く微笑み言う。
「ならお前は歩いて逃げるつもりだったのか?」
「ちっ……」
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その頃伸二と綾音はヘリが集まっている玄太の家の場所に道路を走って向かっている。
それと同時にヘリが玄太の家に忠告を流している。
「多分あの家にいるはずだ」
「急ぎましょう‼︎」
伸二が足を止めた。
「あの中に行く気⁉︎僕達も捕まっちゃうよ‼︎」
「で、でも……雪菜ちゃんが」
突如ヘリがこちらの方へと向かって来た。
「うわぁぁぁぁバレた⁉︎」
すると目の前を軽トラックが猛スピードで通り過ぎた。その中に雪菜が乗っているのを伸二は目視した。
「あ、あれは⁉︎」
そして軽トラックは10mほど進み止まった。中から玄太が出て来た。
「あんたらもヘリに追われてる高校生か⁉︎」
「は、はい‼︎」
伸二が頷くと玄太は伸二達に手招きをする。
「早く来い‼︎荷台に乗れ‼︎」
ヘリのライトが軽トラックを照らし、周辺から車のエンジン音がこちらに向かってくるのが聞こえて来た。
「行こう‼︎綾音さん‼︎」
「う、うん‼︎」
伸二は急いで荷台に乗り込み、その後綾音に手を伸ばし、引っ張り上げ荷台に乗せた。2人が乗った事を確認した玄太は1度後ろへ振り返る。
「お2人さん‼︎しっかりと掴まってろよ‼︎」
玄太はアクセルを思いっきり踏み、ヘリのライトの中から逃げた。
「残りの高校生2人も確認‼︎全員あの軽トラックを追跡せよ‼︎」
ヘリのパイロットが指示を送り、周りの車は軽トラックを追い始める。
そして軽トラックは自衛隊の車に追われながら、山の中へと逃げて行くのであった……
この時、午後11時14分……