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修学旅行4日目 午後9時2分

 

 午後9時2分……



 コンビニのトイレに立て篭もっている雅宗とサッカー部の里彦。コンビニ内は肉を貪る暴徒が5.6体うろついており、外にも大量にうろついている。

 雅宗はトイレの小窓から暴徒達に見つからないようにコンビニ内を確認している。


「行けそうか……」


 後ろから小声で話しかけてくる里彦。


「全然ダメだ……寧ろ暴徒の数が増えている」

「そもそもあれは本当に暴徒なのか⁉︎まるでゾンビだ‼︎」


 冷静に考える雅宗と怯える里彦。トイレからは今のところ暴徒が見えないが、今は死肉を漁っている。


「奴らは死体に群がっているようだな……」


 雅宗は自分が握っているお土産のはずだった木刀を見つめてひたすら考える。木刀でこの状況を抜けられるか……


  「くっ……」


 ーーーーーーーーーーーー


 その頃由弘は、周辺の繁華街にいる生徒達をホテルに避難するように一生懸命説得している。今も女子生徒達を説得してる最中だ。


「今すぐホテル戻るんだ!」

「わ、分かったわ……行こ」

「うん……」


 2人の女子生徒は恐れてホテルへと向かっていった。


「ここら辺も人が全く居なくなったな……」


 先程までの人の賑わいは無くなり、店も全部閉められている。まるで静かなゴーストタウンのような雰囲気となっている。そして1人の男子生徒が路地裏へと入って行くのが見えた。


「あれは、まさか……」


 何かを察し急いで路地裏へと入って行くと、綺麗な顔をした不良生徒が膝に手をつけ、息を荒く吐いていた。


「龍樹か⁉︎」

「……由弘か……」


 由弘を知っているこの男は鷲田龍樹。あの先生達が話していた不良生徒だ。すぐさま姿勢を綺麗に正し、平然を装う。


「お前も追われていたのか……」


 由弘が聞くと冷静に答える。


「さっき血まみれの変な親父が急に遅いかかって来た。そいつを思いっきり殴って、逃げて来た」

「怪我はないか?噛み付かれたとか?」

「そんなもんねぇよ……」


 ほっと胸をなで下ろす由弘。そして龍樹に注意する。


「今すぐホテルに戻れ。ここは危険だ」

「あぁ?何かあったのか?」

「なんて言ったら分からないが、人がゾンビみたいになって人を襲ってるんだ……」


由弘の言葉に呆れる龍樹。


「お前ヤクでもやってんのか?」


 すると道路側から女性が大声で助けを求める声が聞こえて来た。龍樹は恐る恐る路地裏か顔を覗かせた。


「下手に出るな!」

「お前の戯言に付き合ってる暇はないんだよ!」


 由弘の言葉も遅く、龍樹は路地裏から出て見た。暴徒2人が女性に覆いかぶさるように首元を噛み付いている姿を目撃した。


「何だ……これ?」


 龍樹はすぐさま路地裏へと戻った。そして由弘は必死に語りかけた。


「分かっただろ。今の状況を……」

「ちっ……分かったよ。ホテルへ戻ればいいんだろ。後で教えろよ、この事について……」

「あぁ……この付近の生徒はみんなホテルへ戻ったはずだ。俺もホテルへ戻る」


 繁華街は暴徒の数が増え始めている。迂闊に出ると自分達が捕まる事になる。

 

「さっきまでいなかったのに……増えて来たな……」


 由弘が焦りながら言う。駅前から着々と繁華街方面へと暴徒が増え始めている。


「どうやってホテルに戻る気だ。この中を突っ切るのか?」


 頭を抱えて悩む由弘。繁華街からはホテルが見える。だが道路を超え、もう一本の道路を超えないとホテルへはたどり着かない。ここに居ても意味はない。篭っていては何も状況は変わらない……深く考えた末、由弘は決心した。


「一気に行くぞ……何が追いかけて来ても振り返るな、そして噛まれるなよ……」

「噛まれなければいいんだな……」


 龍樹は拳を強く握り、ニヤリと笑う。


「もしもの場合はこの拳でぶん殴って良いんだよな」

「行くぞ!」


 2人は勢いよく路地裏飛び出て、行動を起こした。


 ーーーーーーーーーーーー


 ホテルの玄関前……南先生と西河先生は戻ってくる生徒達をホテル内へと誘導している。南先生は持っている名簿を見て嘆く。


「まだ半分も戻って来てない……もう10分以上経っているのに……」


 その様子を見て、西河先生も心配そうに話しかける。


「一応外出中の生徒達には連絡を入れたのですが……」


 ホテル員が心配そうに話しかけて来る。


「お客様はお部屋に戻りになって下さい。生徒の皆様は私達がここでお待ちします」

「いえ……私達は自分の目で生徒の安全を確認します。お気遣いありがとうございます……」


 南先生はそう言うと軽く一礼した。すると2人の目の前に無造作に頭をかき乱したような髪の金髪で、壊れかけのロボットのような歩き方で女子生徒が現れた。

 それは真っ青で死んだような顔をした雪菜だった。おぼつかない歩き方でこちらに向かって来た。明らかに様子がおかしい雪菜に南先生はすぐさま寄り添った。


「雪菜ちゃん!大丈夫⁉︎他のみんなは⁉︎」


 雪菜は話を耳にいれず、そのまま歩きホテル内へと入って行った。


  「一体何が……」

「私……探して来ます。みんなを……西河先生、雪菜ちゃんをよろしくお願いします!」


 そういうと南先生は急ぎ足で繁華街の方面へと向かって行った。その表情はどこか恐れているように西河先生には見えた。


「……」


  すると西河先生は玄関内で待機している、明石先生に伝えた。


「さっきの薪雪菜って生徒をよろしくお願いします!」

「えっ⁉︎」


 いきなりの事に動揺する明石先生だが、そんなことは御構い無しに、西河先生は歯を食いしばり南先生を追うように全力疾走で繁華街へと向かった。

  明石先生は玄関を出て雪が落ちて来る空をもの苦しい目で見上げる。

 すると暗い歩道から、時忠高校の制服を着ている女子生徒が薄っすらと見えた。だが足を引きづっている。明石先生はすぐさま気づいた。


「大丈夫か君!!」


 明石先生は女子生徒に近づくととある事に気づく。服が血まみれな事に、そして口を大きく開け、血が滝のように流れて地面に一滴一滴落ちている事を……


「血……どうしたんだ!」


 女子生徒に1メートル内に接近した瞬間、いきなり明石先生の首元を思いっきり噛み付いて来た。


「ぐわっ!何をするんだ!!」


 すぐさまホテル員2人が駆けつけて来たが、女子生徒は噛みつきをやめない。


「大丈夫ですか!!」


 ホテル員2人は女子生徒を明石先生から離そうと引っ張るが、1人が腕を軽く噛まれた。


「痛っ!!」


 何とか明石先生から引き離したが、先生の首元は血が多く流れている。


「お怪我は大丈夫ですか⁉︎」

「これくらい大丈夫です……多分彼女は気が動転してるんだと思います……安全な場所に……」


 暴れている女子生徒はホテル員2人がかりでホテル内へと連れて行かれた。

 明石先生は別のホテル員に救急室へと連れて行かれた。


 この時、午後9時11分……



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