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僕らの終末旅行日記  作者: ワサオ
第2章 四国上陸編
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修学旅行6日目 午後9時09分 トリオ編①

 

 午後9時09分……


 3つに別れた雅宗達……その頃、伸二と綾音は怒って先に行った雪菜を追いかける事にした……


 雪菜が走った道の方向へと追いかける綾音と伸二。伸二はまだスマホの心配をしている。スマホに入った水を抜くために必死で上下に振っている。


「やっぱり動かない……はぁ……」


 そんながっかりする伸二を見て、綾音が伸二を励まして来た。


「だ、大丈夫ですよ……きっと直ります……よ」

「ありがとう……えぇ……っと……」

「私は望月綾音です」


 伸二は慌てて詫びる。


「ごめん……綾音さん……僕は勝岡伸二……よろしく」

「よろしく……伸二君……」


 ギクシャクな会話をしつつ2人は雪菜を歩きながら追った……



 ーーーーーーーーーーーー


 その頃、先に早足で歩いている雪菜。町の方角へと暗い道路をただひたすら歩いている。行く宛もないのに……


「ちっ……コンビニはねぇのか‼︎コンビニは‼︎」


 濡れたスカートのポケットから財布を取り出す。


「金はいくら持ってたっけ……」


 財布の中身を見ると1000円札は全部濡れて別の1000円札に引っ付いている。


「クソっ‼︎何とか離す事が出来れば……」


 濡れて引っ付いた1000円札同士を離そうとゆっくり軽く引っ張った瞬間、引っ付いた1000札は半分に破れてしまった。


「チキショウ‼︎ふざけやがって‼︎」


 雪菜はイラつき、破れた1000円札を地面に強く投げつけた。お札が全滅した雪菜は今度は小銭を確認した。


「……249円……ちっ……」


 そして雪菜は再び町の方角へと歩いて行った。


 ーーーーーーーーーーーー


 それから30分程が経ち、雪菜は未だに道路に歩き続けるが家や建物はあるもののコンビニは一切無い。

 夜風は段々と強まり、雪菜の身体を凍らせにくる。


「ふ、ふざけんじゃねぇよ……何であたしが……」


 道端に落ちてる小石を蹴飛ばす……すると背後から眩い光が雪菜を照らす。


「そこの姉ちゃんよ‼︎何1人で歩いてるんだよ‼︎」

「あぁん?」


 手で目を覆いながら振り向くと軽トラックが止まっていた。軽トラックの窓から顔を出しているのは、あご髭を生やした中年男だった。不思議そうに震えている雪菜を見ている。


「ん?どうした?寒いのか?」

「……うるせぇ……」


 すると男はトラックの助手席側を片付けて、助手席側のドアを開ける。


「乗れよ姉ちゃんよ‼︎ワシの家に連れてってやるよ‼︎」

「……行かねぇよ……見ず知らずのおっさんの家なんかに……」


 笑顔で言う男とは真逆で、暗い顔で男を警戒する雪菜。


「そんな濡れた服じゃ凍え死んじゃうぜ‼︎ワシの家にカップ麺もあるしよ‼︎」

「……」


 自分の腹を摩るとゴロゴロと腹が鳴った。


「……本当にか……」

「あぁ本当だとも‼︎今は身体を温めるのが大事だ‼︎そんなに早く死にたくないだろぉ‼︎」

「……分かった……」


 優しく話しかける男に雪菜は軽トラックに乗り込む。

 ゴミが散乱しており、キツイ臭いが漂う。


「くせっ‼︎」

「すまんすまん女の子を乗せる車じゃねぇしな」


 鼻をつまみながら乗り、そして軽トラックは町へと走って行った。


 ーーーーーーーーーーーー


 伸二と綾音も30分くらい歩き続ける。

 綾音は先程以上に震えており、今にも倒れそうな勢いだ。


 伸二はそんな綾音が気になってしょうがない。助けてあげたいが、今スマホもない状態じゃ何も出来ない……

 だがその時、里彦が言ってた言葉を思い出した。



 ーーーーーーーーーーーー


 中学生の頃……放課後女の子に呼ばれた里彦だが行かずに伸二と帰っていた。


「行かなくていいの?せっかく女の子に呼ばれたのに」

「俺……女子と喋ると苦手なんだ……」

「えぇ⁉︎」

「行きたいけど行けないんだよ……」


 赤面で照れる里彦だが、伸二は一生懸命行く事を進めた。


「行きなよ‼︎こんなチャンス二度とないよ‼︎僕よりはあると思うけど」

「う〜ん……」


 結局里彦は、女の子が待つ公園へ行った……そして10分後、伸二の元へと戻って来て報告した。


「えぇ⁉︎友達から始めよう⁉︎」

「まぁ……なんだ……いきなり付き合うよりはもっと距離を縮めてからの方がいいと思って……相手もOKって言ってたし」

「里彦がそう言うならいいけど……」

「俺を好きになるのは嬉しい……だけど、中身を知らないで付き合うのは俺は納得いかないな。お互いの良いところを見つけてから付き合う……それがオレ流のやり方だ」

「ふ〜ん」

「好き嫌い関係なく人に優しくしろ……親はそう言っていた……優しさはなによりも惹きつける……ってね」


 結局里彦は数ヶ月後に別れたらしい……


 ーーーーーーーーーーーー


 その言葉を思い出した伸二は、スマホをズボンのポケットに入れ、濡れた制服を脱ぎ綾音の肩に羽織った。


「えっ?」

「さ、寒そうだから……これを……」

「あ、ありがとう……」


 すると雪菜が軽トラックに乗る瞬間を伸二と綾音は目撃した。


「あっ‼︎あれは‼︎」

「雪菜……ちゃん?」


 追いかけようとするが、すぐさま軽トラックは何処かへと走って行った……


「何なんだ……今の……」

「雪菜ちゃんを追いかけないと……」


 綾音は濡れた伸二の制服を羽織った状態で小走りで追いかけた。


「ちょ、ちょっと待ってよ‼︎」


 2人は雪菜を追うことにした……そして雪菜は何処に行くのか?



 この時、午後9時57分……

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