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僕らの終末旅行日記  作者: ワサオ
第2章 四国上陸編
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修学旅行6日目 午後9時09分 病院編①

 

 午後9時09分……


 3つに分かれた雅宗達……雅宗と里彦は担架で病院に運ばれて、由弘も病院の中へと連れてかれた……


 由弘は病院の3階へと連れて行かれた。そして307号室と書かれた電気がついている部屋の前で隊員は止まった。


 ドアを開けた瞬間、隊員が後ろから部屋の中へと押し、由弘はつまずきそうになる。


「いてっ‼︎何する……」


 ドアを閉められ、鍵を掛けられた。そして隊員は何処かへと歩いて行った。


「おい‼︎出せ‼︎俺は怪我人じゃねぇよ‼︎」


 由弘はドアを何回も叩いた。だがドアを叩く音が虚しくもその階に響くだけだった。


「おい‼︎お前‼︎」


 由弘が声に振り向くと、部屋の両端に2台のベットが置かれており、その片方のベットで片足立ててこちらを見ている髭を生やした作業服を着た金髪の若い男性がいた。チャラそうな男に多少警戒する由弘。


「お前も九州から出てきた人間か?」

「あ、あぁ……貴方もですか?」


 他人行儀な感じになる由弘。だが男性はにこやかに話して来る。


「俺は漁船でここまで来たんだよ。そしたら変な兵士共に囲まれて、俺の腕の怪我を見た瞬間、即座にここ行きさ」

「いつ頃から来たんですか?」

「今日の昼頃かな……他にも結構いるみたいだな」


 由弘は空いたベットに座り、考えに耽る。


「名前言うの忘れてたな、俺の名は和昇太(かずしょうた)。魚を捕るのが仕事だ」

「俺は片桐由弘」

「ってかお前の服どうなってんだ?すげぇ血まみれだぞ」

「あぁ……これはですね……」


 ーーーーーーーーーーーー


 由弘は九州で見た出来事を全て話した。そして雅宗達が担架で運ばれた事も話した。

 するとさっきまでにこやかだった昇太から笑顔が消えた。


「大変だったな……お前……修学旅行に来てこんな目に遭うなんて……」

「災難だと思いますが、俺達は仲間達の支えがあったからここまで来れた……だが今はバラバラになった……」


 暗い顔の由弘を見た昇太はベットの下を覗き込み、あるものを取り出した。


「これでも食って元気出せよ」


 そう言って由弘に投げ渡したのは、半分に切られたバナナだった。


「これは?」

「昼にここで渡された食事のデザートだ。俺はバナナが苦手でね。食えよっ‼︎あまり飯食ってないんだろ」


 にこやかに優しく接してくれる昇太に由弘は嬉しく涙が何滴も出て来た。すると昇太は軽く笑う。


「おいおい泣くなよ、男だろ‼︎」

「……ありがとうございます」

「男は黙って食え‼︎礼を言うのはそれからだ‼︎不味かったら礼も言いづらいだろ‼︎」

「は、はい‼︎」


 由弘は涙を拭って大声で返事をした。そして今度はお互いが知っている情報を言い合うことにした。


「さっきも言ったが俺は腕の怪我を見た瞬間、トラックに乗れって言われたんだ」

「俺はこの服の血を見られてここに連れてかれたんです。それに友達2人も足の怪我と意識不明の状態でここに……」


 昇太は何回か頭を掻き、考えた。


「まっ……分かることは感染疑いがある奴らの溜まり場って事か……」

「やはりそうですか……」


 由弘は他に昇太に質問した。


「この部屋から出れるんですか?」

「トイレとシャワーの時だけは出れる。もちろん兵士のおまけ付きでな」

「……」


 すると部屋のドアを叩く音が聞こえた。


「飯だ、これを食え」


 ドアを開けると銃を持った兵士とお盆に乗った食事をもった看護婦が来た。


「30分後に回収する」


 そう言うとドアを閉められた。お盆の上には、茶碗半分のご飯と茶碗半分の味噌汁、そして少なめの野菜炒めとちっちゃな焼いた鮭だった。そしてデザートのバナナだった……


「……」


 ーーーーーーーーーーーー


 その頃里彦は、雅宗と共に白衣を着た男達に担架に乗せられて何処かへ連れてかれている。


「おい‼︎俺を何処に連れて行くつもりだ⁉︎」

「……」


 男達は振り向きもせず、ただ使命を全うするように運んで行く。


「おい‼︎何か言……」


 大声で喋る里彦に運んでいる男は注射器を取り出し、針を里彦の首へ刺し、何かの液体を体に注入した。その瞬間、里彦は眠るように意識を失った。



 ーーーーーーーーーーーー


 由弘は時計もない部屋に閉じ込められて、1時間近く経った。お盆も片付けられ、昇太も退屈そうに寝転び、由弘も鉄格子が貼られた窓を眺める。


「そんなに外を見ても何もないぞ」

「何か……ないかなって……」

「俺も昼見たが、山に囲まれて何処だかさっぱり分かんねぇ……⁉︎」


 部屋の明かりが突如消灯した。


「電気が消えた……」

「多分消灯時間か何かのようだな……」


 そう言うと昇太は布団を被り、寝始めた。


「ここで外を眺めても意味はない。それよりもう寝ようぜ……」

「そうですね……」


 由弘も布団被り寝始めた。


 そして由弘は雅宗や幸久達の無事を祈り眠りについた……



 この時、午後10時01分……

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