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僕らの終末旅行日記  作者: ワサオ
第2章 四国上陸編

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修学旅行6日目 午後8時14分

 

 午後8時14分……


 雅宗達時忠高校の生徒達は3つに分かれた。感染予備軍として捕獲された幸久達13名。怪我している雅宗達3名。船から海へと飛び降りた雪菜達3名に分かれた。幸久達と雅宗達はトラックで何処かへと運ばれて行き、雪菜達は海岸に上陸した。


 雪菜の目が暗闇に慣れていき、辺りを見回すと木が生い茂っていた。


「木……それに奥は山か……」


 奥には山があり、ここは池島町だった。そして3人が凍えていると、鉄塔がある方向から無数の足音が聞こえて来た。


「茂みに隠れろ‼︎」


 3人は急いで茂みに隠れる。すると銃を持った武装した自衛隊員数名が来て、辺りを見渡した。


「さっきここから女の声が聞こえたはずなんですけど……」

「辺りを探せ‼︎」


 3人は息を潜ませて、静かに自衛隊員が立ち去るのを待つ。雪菜は茂みから様子を伺う。


「くっ……何が起きてんだよ……」


 数分間探したのち、自衛隊員は何処かへ立ち去った。再び草むらから少し顔を出して、自衛隊がいないか確認した。


「やっと行ったか……」


 いないのを確信して、茂みから出て綾音と伸二の顔を見てため息を吐き、頭を抑える。


「はぁ〜どうしたもんかな〜本当に何でお前ら何だよ」


 すると伸二が怒った顔で雪菜に文句を言う。


「僕だって、何で海に落とされなければ行けないんだ‼︎寒いし、スマホ壊れるし、最悪だよ‼︎」

「何だと⁉︎あたしだってライターとタバコが濡れたんだぞ‼︎つーかあたしがいなければお前らはどうなってたんか分かんないんだぞデブ‼︎」

「デブとは何だデブとは‼︎それに何で僕達何だよ‼︎」

「隣にいたからだよ‼︎」


 飛び降りる時、暗く誰かも分からずに適当に引きずり下ろしたのが伸二と綾音だった訳であった。

 話し疲れ、イライラする雪菜は2人を置いて行くように体を震わせながら歩き始めた。すぐに伸二は追いかけた。


「ど、どこ行くの⁉︎」

「こんな所にいたら凍え死ぬ……とにかくコンビニに行く‼︎」

「他のみんなはどうすんの⁉︎」

「知るかそんなもん。あたしだけでも生き残ってやる……」


 そのまま雪菜は1人で道なりに沿って歩いて行った。

 2人になった綾音と伸二は、しばし無言になりお互いを見つめた。


「……僕らも行こうか……」

「は、はい……」


 伸二と綾音にも雪菜を追うように歩いて行った。その間も伸二はスマホが付かないかボタンを押しまくる。

そして3人が現在考えているのはただ1つ……寒い……


 ーーーーーーーーーーーー


 その頃、血まみれの服を来てるだけで、ろくに確認されずに怪我人扱いされた由弘と雅宗達は、30分近くトラックに乗せられ何処かへと運ばれている。由弘は銃を持った無表情の兵士に話しかける。


「あ、あの……何処へ行くんですか……」

「……」


 こっちを向かず、何も答えてくれない。正に使命を全うしているみたいだ。

 里彦はこんな状況なのに呑気に寝ている。


「何でこんな時に寝てられるんだ……」


 するとトラックは急に止まり、その瞬間運転席の隊員は慌ただしく降りてきた。


「さぁ早く降りるんだ‼︎」


 銃を構えた隊員達がトラックの外から怒鳴り込む。 由弘が降りるとそこは山に囲まれた大きな建物だった。至る部屋に光が灯され、異彩を放っている。


「これは病院……なのか……」


 建物のてっぺんには病院の十字架のマークがある。だが病院と言うには程遠く、壁にはヒビが入り草が纏わり付いている。

 そして病院から白衣を着た男達が担架を2つ運んで来た。


「こいつらを早く連れてけ‼︎」


 隊員の1人が言うと雅宗と里彦は担架に乗せられ、すぐさま何処かへ連れてかれた。いきなり担架に乗せられて、飛び起きた里彦。


「な、何だ⁉︎」

「雅宗‼︎里彦‼︎」


 そのまま2人は病院の中へと連れてかれた。


「……」


 呆気にとられる由弘。だが後ろから銃を突きつけ、再び怒鳴り込む隊員。


「お前も中に入れ‼︎」

「俺達をどうする気だ‼︎」

「いいから入れ‼︎」


 この態度……普通じゃない……由弘も隊員に従い、病院の中へと入って行く。



 ーーーーーーーーーーーー


 幸久達も雅宗達とは逆の方向にトラックで30分以上も走らされる。

 由美は幸久の隣で心配そうにする。


「私達どこに連れてかれるのかしら……」

「俺にも全然皆目見当もつかない……それに雅宗や由弘達、それに……」


 幸久の心の中には自分の事以外にも、友達や他のクラスメイトの事でいっぱいだった。逆に座っている真沙美の方を見る。優佳が真沙美を励まそうと必死になっている。


「だ、大丈夫だよ‼︎雅宗君絶対に助かるよ‼︎」

「うん……ありがとう優佳ちゃん……」


 一生懸命不器用ながら励ましている優佳の横で教頭も両手で自分の顔を広げたり抑えたりして発狂している。


「くぅ〜‼︎何で何でこんな事にぃ〜‼︎安全に北海道に帰るはずだったのにぃ〜‼︎」

「うるさいよおじいちゃん‼︎」

「おじいちゃんじゃなくて教頭だ‼︎」


 優佳におじいちゃん呼ばわりされ、怒る教頭。

 そしてトラックは山の中に入り、とある門をくぐり、突如止まった。急に止まったため、トラックの中に強い衝撃が走った。


「いって‼︎」

「安全運転しろ‼︎」


すると険しい顔をした隊員がトラックの中を覗き、耳に響くほどの大声で叫んだ。


「降りろ‼︎」


 隊員が囲む中、全員降ろされた。4階建ての建物があり、その周りの山を見て幸久はある事に気付いた。


「有刺鉄線⁉︎」


 周りには塀があり、その上には有刺鉄線が張られていた。そして至る所に銃を持った兵士達がうろついている。


「収容所かここは……?」


 自分達が乗ってきたトラックの他にも、無数の同じトラックが停めてある。


 そして隊員達に囲まれながら、建物の中へと連れてかれた。建物の中は小汚い汚れが目立つが電灯は新しいのかとても強く光っている。


 2階に連れてかれた時、隊員が幸久ら男性達を階段に登るのを止めた。


「男性はこの階だ。来い‼︎」

「幸久‼︎」


 由美が幸久の所へ行こうとすると南先生が止めた。


「由美ちゃんダメ‼︎今はこの人達に従うのよ……」

「……はい……」


 そして男性と女性が分けられ、男性は2階の会議室と書かれた部屋に入れられ、鍵を締められた。その部屋には、何もなく黒板が前と後ろに貼り付けられている。そして天井にはブラウン管テレビが置かれており、部屋の至る所に監視カメラが設置されている。

 無理矢理入れられた後、蒼一郎がサッカーのボールの蹴るフォームで壁を強く蹴る。


「クソっ‼︎何で死ぬ思いまでして脱出したのにこんな扱いなんだよ‼︎」


 幸久が窓を開けると、幸久は唖然とした。


「鉄格子……」


 窓全部に鉄格子がつけられていた。そして暗い部屋で監視カメラで部屋の様子を見る男がいた。


「ふっふっふ……」



 この時、午後9時09分……

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