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僕らの終末旅行日記  作者: ワサオ
第1章 九州脱出編

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修学旅行6日目 午後4時27分

 

 午後4時27分……


 国貞を捕らえた雅宗達だが、一瞬の油断で国貞が隠し持っていたナイフで真沙美を刺そうとした。それを雅宗が身代わりとなりナイフで刺され、意識を失った。すぐさま保健室へと連れていかれ応急処置を施された。



 保健室に幸久と龍樹も合流し、バスへと戻る事にした。蒼一郎が里彦を支えて、由弘と西河先生が雅宗を持った。


 だが幸久の頭には1つ不安が頭によぎって来る。


「バスに戻りたいが、外を見てみろ……」


 保健室の割れた窓からは多くの感染動物達がこちらを睨んでいる。ここに来た時よりは数は減っているが、それでも10匹近くいる。蒼一郎はため息を吐き頭を抱える。


「はぁ〜忘れてたぜ。あの感染動物共の存在を……」


 すると里彦が何かを閃き、全員に提案する。


「あいつらが感染者と一緒なタイプなら多分に血に飢えているはずだ……これの血を拭き取ったタオルが使えないか……」


 保健室には雅宗や里彦らの血を拭き取ったタオルが何枚も散乱している。幸久がそれらを見て頷く。


「タオルか……動物達が食いつく確信はないが使おう」


 全員が保健室の廊下に待機し、幸久が窓の前で血が染み付いたタオルを外にいる感染動物達に向けて全力で振り回す。


 すると感染動物達は血に反応し、こちらに鼻を向け始めた。そしてゆっくりと保健室の方向へと来る。


「そうだ……そのままこっちへ来い……」


 幸久の頭の中では徐々に近づいて来て、保健室にて気を引かせる。その間にバスへと乗り込むと言う作戦だ。


 作戦の成功を確信したその時、保健室外の窓下から黒く焦げた手が窓を掴んで来た。


「な、何だ⁉︎」

「ひひひ……ひひ……」


 蒼一郎もこの声を聞いた瞬間、体全体から鳥肌が立ち、恐怖も覚えた。


 何と雅宗達が倒した国吉が肌が焼けていて服も黒く焦げた状態で笑いながら保健室を覗き込んで来た。


「う、嘘だろ……不死身じゃねぇか……」

「こんなの有りかよ⁉︎」

「ひひ‼︎……ひひひ‼︎」


 不気味に笑う国吉は保健室の窓に足を引っ掛け、保健室に侵入しようとする。だが幸久はニヤリと笑う。


「勝ち誇った顔をしているが、勝ったのは俺達の方だ‼︎」


 幸久は血の付いたタオルを国吉の顔に投げつけ国吉の視界を遮った瞬間、全力で国吉の顔面を殴った。


「びっ⁉︎」


 そのままタオルが被さったまま吹き飛び倒れた。龍樹が殴った幸久を見て軽く微笑む。


「ふっ……いいパンチだ」

「うるさいから殴った……」


 殴られた国吉はタオルを外し、起き上がる。


「ひぃ……ひ……⁉︎」


 周りを確認すると感染動物達に囲まれていた。動物達は獲物を狩るように鋭い目をして、一斉に襲いかかった。


「ひ‼︎ひ‼︎ひぃ〜‼︎」


 幸久も目を逸らし、保健室を出ようとする。


「早く行こうぜ、あの男が気を引いてくれてる間にバスに乗ろう」


 全員急いで外に出て、バスへと向かう。その間も、国吉は動物達に襲われている。


「ひ……ひひ……」


 国吉は動物達に体全体を噛みつかれ、血が至る所から流れ始める。もはや死は免れないが、手を空に伸ばす。だがその内、手はゆっくりと地面に倒れ落ちた。

 真沙美や由美など、みんなは目を合わせないようにバスに乗り込んだ。


 雅宗をバスの1番後ろの席に寝かせて、真沙美が横に付き添いになった。そして全員の乗ったのを確認したのち、運転手はバスを発進させた。

 幸久は窓から学校を見て一言呟く。


「あの親子は……道を戻ることが出来なかったのか……」


 すると西河先生が前から幸久の席まで来た。


「戻る事が出来なかったんじゃない……戻りたく無かったんだ……」

「戻りたく無かった……?」

「あの人達は自分の妻を亡くした……だけどそれを信じたくはなかった……だから元には戻らなかったんだ……心の何処かでは妻が生きている、そう思っているんだ……あの人は……」


 幸久は返事をする事なく学校を見つめた。


 屋上で去って行くバスを睨む1人の男がいた……



 ーーーーーーーーーーーー


 バスは佐伯市に向けて、道に沿って北東に進んでいる。山道には相変わらず人の気配はなく、道外れに雑に止められている車がちらほら見える。

 バスの中は静かに寝ていたり、黙って外を見てる人など全員疲れているのがよく分かる。


 そして走り続ける事約2時間後……辺りは徐々に暗くなり、電灯などは一切点かない状態だ。

 寝ていた幸久は大きく背伸びをして起きた。


「……寝ていたのか……」


 幸久は窓を見ると、暗い街並みが目に映った。


「ここは⁉︎」

「佐伯市よ」


 南先生が前から答えてくれた。


「やっぱり人はいないみたいね」

「あの変な親子がいるよりかはマシですよ」


 運転手も佐伯港が見えて来たので全員に呼び掛ける。


「皆さん‼︎もうすぐで佐伯港です‼︎」


 寝ていたの生徒達も起き始め、窓に寄り掛かっていた真沙美も起きて雅宗を見るがやはり目を覚ましていなかった。


「……」


 運転手がバックミラーに猛スピードで接近してくる車を発見した。


「何だあれは⁉︎」


 幸久が後ろを振り向くと、軽トラックが猛スピードでバスを追いかけているのだ。

 運転しているのは……


「よくもワシの息子をぉぉぉぉ‼︎」

「あ、あの爺さんだ⁉︎」

「殺してやるぅぅぅ‼︎」


 何と怒り狂った国貞だった。

 軽トラックはバスの横に着き、並行しながら走る。そして軽トラックでバスに何回もぶつかる。バスの中は大パニックに陥る。


「きゃあ‼︎」

「あの爺さんも相当なタフだ‼︎」

「ちっ……」


  龍樹は国貞から奪ったバッグからボーガンと矢を取り出した。


「龍樹⁉︎何する気だ⁉︎」

「あのジジイを黙らせる」


 窓を開けて、窓に乗り出した龍樹はぶつかってくる国貞の軽トラックに標準を定めるのに苦戦している。

 だが国貞も窓から顔を出し龍樹達に怒りをぶつける。


「そんな事してもワシは絶対に倒れんぞ‼︎」

「あの爺さん執念深すぎるだろ‼︎」


 蒼一郎も呆れる中、龍樹は懸命に標準を定める。


「ちっ……」

「ははは‼︎当てれるものなら当ててみろ‼︎」


 ガンっ‼︎


 とトラックの荷台に鈍い音が聞こえる。


「なんじゃ⁉︎」


 後ろを見ると、国貞が使っていた日本刀が載っていた。

 その時右前輪が急に萎み始めて、コントロールが難しくなった。そして国貞は龍樹の方を見るとボーガンには矢が装填されてなかった。タイヤにボーガンの矢が刺さったのだ。そして後ろの窓の方を見ると真沙美が睨んでいた。


「貴様ぁ‼︎」

「雅宗の仇よ……」

「クソっ‼︎あっ……」


 視点を前に戻した瞬間、目の前の電柱に直撃した。軽トラックは凹み、運転席から窓ガラスを勢いよく突き破り、国貞が道路に投げ出された。


「ぐげっ‼︎」


 バスは国貞から通り過ぎ、佐伯港へと向かった。国貞は顔にガラスが刺さり、身体中から血が流れている。だが身体を震わせながら、ゆっくりと立ち上がった。


「わ、ワシはまだ……無念を晴らす為に……」


 すると周りから感染者達がゾロゾロと集まって来た。


「なんじゃお前らは‼︎ワシの邪魔をする気か‼︎」


 そして感染者達はゆっくりと国貞を囲み、国貞に噛み付いた。だが国貞は抵抗する訳でもなく、そのまま感染者に覆いかぶさられた。


「ワシは……ぜ、絶対に……」


 肉を貪る食う音と共に、段々と国貞の声は弱くなり、その内声が聞こえなくなった。

 軽トラックの助手席には家族の写真が置いてあるままだった……


 ーーーーーーーーーーーー


 国貞を撃退し、佐伯港に到着した雅宗達一行……真っ暗な中に1つだけ小さなライトがついた漁船が海に待機していた。


 運転手が先に降りて確認しに行く。そしてすぐに戻って来た。


「皆さん大丈夫です‼︎必要な荷物を持って降りましょう‼︎」


 先生達も生徒達をまとめて降り始めた。


「急いで降りなさい‼︎感染者達がいつ来るか分からないわよ‼︎」


 由弘と西河先生は雅宗を持って、蒼一郎は里彦の肩を持ち外へ出る。


 幸久と龍樹は国貞のバッグを見て悩む。


「持って行くか、それを……」

「持って行くかよこんなもの」


 国貞のバッグは残してバスを出た。哲夫、伸二、里彦、蒼一郎、優佳、由美、綾音、雪菜、教頭、真沙美、由弘、龍樹、幸久、西河先生、南先生、運転手、そして雅宗を入れた17人が漁船にぎゅうぎゅう詰めになって乗り込んだ。


 漁船の船長は沈んだ顔で喋りかけた。


「君達……大変だったね……でももう安心だ……帰れるよ」


 幸久が代表して頭を下げた。


「乗せてくれてありがとうございます……」

「そんな事はいいよ、それより早く出発しよう‼︎」


 船は発進し、四国へと向かう。

 夜風に吹かれながら、九州を離れる。全員は暗い九州を浮かない表情見つめた。たった数日の出来事だったが、とても長く感じた。

 鹿児島から始まり、次の日には他の県にも広まった。そして九州全域に広まった。多くの死を見てきた……だけど、もう帰れる……北海道に、時忠高校に……そして雅宗も助かる……











 1時間後……


 漁船は宿毛市の池島漁港付近に到達した。


 普通に電灯などもついており、一同は安直する。幸久と真沙美は雅宗を見て語りかける。


「もうすぐだ……雅宗、あと少しだ……」

「直ったらお礼言わなくちゃ……」


 由美や優佳もニヤニヤしながら真沙美を覗き込む。


「そうそうお礼をしなくちゃねぇ〜」

「色々なお礼をねぇ〜」


 真沙美は顔を真っ赤にして慌てふためく。


「う、うるさいわねー‼︎お礼を言うだけよ‼︎言うだけ‼︎」


 全員が笑った時、何処からともなく無数のライトが漁船全体を照らした。全員眩しさに目を隠した


「な、何だ⁉︎」


 それは何mもある無数の鉄塔からライトが照らされたのだ。そして拡声器から男の声が響き渡った。


「お前達は九州地方から来たのか‼︎」


 漁船の船長が受け答えた。


「そうだ‼︎あんたらは何者じゃ⁉︎」


 少し間が空き拡声器からまた声が聞こえた。


「お前達を感染予備軍として捕獲する‼︎‼︎」

「な、何⁉︎」


 幸久の目が慣れて来て、鉄塔の方を見ると銃をこちらに向けている人が何人もいるのが分かった。


「銃⁉︎……どうゆう事だ……」



 彼らは一体何者で感染予備軍とは……そして雅宗は助かるのか?


 まだ誰も知らない……



 この時、午後7時57分……





 九州脱出編……完

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