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僕らの終末旅行日記  作者: ワサオ
第1章 九州脱出編
43/124

修学旅行6日目 午後4時17分

 

 午後4時17分……


 国吉を撃退し、国貞を拘束する事に成功した雅宗達。たが国貞は依然としてキレている状態だ。由弘と西河先生が国貞を抑えている。


「離せ‼︎離せ‼︎」

「とりあえず、俺達の安全を確保する為にあのバッグを確かめる」


 幸久は国貞が日本刀を取り出したがバッグの中を見始めた。


「こんなに武器が……」


 国貞用のボーガンや、包丁、ハサミなど家にあるような物も多く入っている。蒼一郎もバッグから出てくる武器を見て呆れた顔になる。


「人間武器庫かよ……」


 バッグの奥を調べると幸久はあるものを見つけた。


「これは……写真?」


 確認すると枠がボロボロで色褪せている写真だった。そこには着物を着た綺麗な女性と袴を着た男性、そして袴を着た小さな少年が笑顔で写っている写真だった。


 幸久が取り出した瞬間、国貞の様子が急に変わり、暴れ始め大声で叫び始めた。


「その写真に触るな‼︎ワシの宝物に汚らわしい手で触るな‼︎」


 いきなり暴れ始めた国貞を無理矢理押さえつける由弘。


「おい爺さん暴れんなよ‼︎」

「うるさい‼︎ワシの写真返せ‼︎ワシの……桐子を……返してくれ……」


 段々弱々しくなる声を聞いて、幸久は写真を国貞の目の前に置き哀れみの目で国貞を見る。


「由弘……離してやれ……もう爺さんの武器は全て取り上げた」


 由弘が離すと国貞は写真を拾い、大事そうに握りしめながら、泣きながら写真に語りかける。


「桐子……すまない……あの時……1人にしてしまって……」


 この光景を見て、雅宗も全員に静かに呼び掛ける。


「もう行こう……佐伯市に……この爺さんはもうほっておこう……」

「あぁ……」


 全員が屋上から立ち去ろうとして背を向けるが、まだ国貞は写真に語りかける。


「桐子も死んで……国吉も死んで……ワシにはもう何もない……なら……」


 国貞はポケットに手を突っ込み、軽く立ち上がった。


「貴様らを1人でも道連れにしてワシ死ぬ‼︎」


 ポケットから小型ナイフを取り出し、1番近くに歩いていた真沙美目掛けて走り始めた。


「……えっ……」

 

 真沙美が振り向いた時には、国貞はナイフを持って目の前にいた。


 真沙美は刺される‼︎と思い、目を瞑った瞬間何処からか真沙美の横腹を手で押してきた。


「危ない真沙美‼︎‼︎……うっ‼︎」


 雅宗が真沙美を突き飛ばした。だが、国貞のナイフは雅宗の右胸上部に突き刺さり、雅宗は倒れた。すると刺さった場所から血が滲み出てきた。屋上からは大勢の悲鳴が響き渡る。


「ま、雅宗⁉︎」


 そして国貞は仰向けに倒れた雅宗の上にまたがる。


「もう1発……死ねぇ‼︎」


 ナイフを抜き取り、もう1回刺そうとした瞬間国貞の顔面に1発の拳が頰にめり込り、雅宗の上からナイフごと吹き飛んだ。


 それは怒りの表情に満ちた幸久の拳だった。そして幸久は倒れた国貞にまたがり、服を掴み顔に引き寄せる。


「何故刺した‼︎何故だ‼︎」

「ワシの国吉を奪った罰だ‼︎死んで当然じゃ‼︎」

「ふ……ふざけるなぁ‼︎」


 幸久の目から涙が出て来て、歯を食いしばり右手で思いっきり国貞の顔を殴った。


「ぐはっ‼︎」


 更に何発も顔を殴り、国貞の顔は赤く腫れ、口から血が出始める。意識が朦朧となりながら


「ゆ、許してくれ……」

「まだだ‼︎よくも雅宗を‼︎」


 幸久の怒りが治らずもう1発殴ろうと拳を上げた瞬間、誰かが幸久の手を掴んだ。


「もうやめろ……」


 それは強く幸久の手を掴んでいる龍樹だった。


「だがコイツは雅宗を‼︎」

「お前がコイツを殺せば、コイツと同じになる……」

「くっ……」


 幸久は手を下ろし倒れている雅宗を見ると、綾音が必死に雅宗の胸に耳を当て、心臓の音を確認している。


 他の生徒達や先生達も雅宗を囲んでいる。


「大丈夫です‼︎雅宗さんの心臓はまだ動いています‼︎でも急いで応急処置を‼︎」

「分かった‼︎手伝え蒼一郎‼︎」


 由弘と蒼一郎が雅宗を持ち上げ、綾音と共に急いで保健室へと行く。


 その間真沙美は泣きながら運ばれる雅宗を見る。


「雅宗……私なんかの為に……」


 すると由弘は真沙美に優しく語りかける。


「自分を責めるな……雅宗だってそう言うはずさ……絶対に助かる……助けて見せる‼︎」




 全員が屋上から出て行く。幸久は国貞の武器が入ったバッグを持ち、屋上を出ようとする。そして幸久は出る間際に国貞へ一言言い放つ。


「武器は俺達が預かり、何処かで捨てる……だから俺達にこれ以上関わるな……」


 すると国貞は手で口の血を拭き取りながら、幸久に指を指す。


「ぜ、絶対に許さんぞ……国吉を奪ったお前らを……絶対に許さ……ぐえっ‼︎」


 喋ってる途中の国貞は急に顔を殴られ、地面に倒れた。それは龍樹の拳だった。


「お、お前……」

「うるさいから殴った……それだけだ……」


 そう言うと龍樹は静かに屋上を立ち去った。


 ーーーーーーーーーーーー


 雅宗は急いで保健室へと連れていかれ、すぐさまベットの上へと寝かされた。由弘は心配そうに雅宗に呼び掛ける。


「雅宗‼︎……まだ意識は戻らないのか……」

「まずは出血を止めます‼︎」


 綾音は包帯を持ってきて雅宗の上半身の服を脱がせる。そしてみんなが見守る中、刺された場所にガーゼを当て包帯を巻く。


「簡単な処置はしましたが……後は雅宗さんの意識を戻るのを待ちましょう……」


 南先生が綾音に頭を下げた。


「ありがとう……綾音ちゃん……」

「私はただ……」

「おーい……誰か助けてくれ〜」


 ベットの下から情けない声が聞こえて来た。その時、蒼一郎は思い出した。


「あ……里彦忘れてた……」


 里彦をベットの下から引きずり出し、今までの事を説明する。


「ま、雅宗が刺された⁉︎」

「あぁ……刺されてから意識が戻らなくて……」

「……」


 真沙美はベットの前に膝をつき、目を瞑っている雅宗を見る。目からは何滴もの涙が流れている。


「本当にごめん……雅宗……私が不注意なばかりに……」


 由美が後ろからそっと真沙美にハンカチを渡し、優しく語りかける。


「今は泣いちゃダメ……雅宗は絶対に戻ってくるわよ‼︎」

「うん……ありがとう由美……」


 そして西河先生がみんなに呼び掛ける。


「ここに居ても雅宗が助かるとは限らない……急いで四国に行って病院を探そう。多分九州の病院はもうやってないと思う」

「みんな‼︎急いでバスに向かうわよ‼︎」


南先生の言葉に全員が頷いた。


 この時、午後4時31分……

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