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僕らの終末旅行日記  作者: ワサオ
第1章 九州脱出編

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修学旅行6日目 午後4時10分


 午後4時10分……


 雅宗はアルコールランプの液体を漬けたモップに火をつけて、国吉を撃退する事に成功した。だがその光景を国貞が見て逆上する。龍樹は国貞が何するか分からないからと屋上へと急ぐ……


 屋上では国貞が泣きながら柵を強く握り締め、国吉の名を叫ぶ。


「国吉ぃ〜‼︎国吉ぃ〜‼︎返事をせんか〜‼︎」

「今の内に逃げるぞ……」


 幸久がコソッとドアの方へと歩こうとした瞬間


 ドンッ‼︎


「⁉︎」


 国貞がドアに向かって銃を発砲したのだ。国貞の顔からは涙が流れているが、表情は怒りに満ちていた。


「絶対に逃がさんぞ‼︎この人殺しがぁぁぁ‼︎」



 ーーーーーーーーーーーー


 雅宗達は屋上の階段にいる……龍樹が状況を再び確認している。


「今のジジイは逆上してやがる……分かってるな」

「……」


 全員静かにうなづく。蒼一郎は一度つばを飲み込む。


「行くぞ‼︎」


 雅宗は燃えるモップ片手に屋上へのドアを開けた。


 ドアを開くとみんながいた。だがどこか不安そうな顔をしている。雅宗達は屋上に入った。


 バンッ‼︎


「⁉︎」


 雅宗の足元に1発銃を発砲した。雅宗が見た先には真沙美1人が国貞に柵の端で捕まっており、右手で銃を持ち、左手で日本刀を持ち真沙美の首筋に刀向けられていた。


「ま、真沙美⁉︎」

「雅宗……助け……」

「いや〜ここまで来るなんて思わなかったよ……」


 すると鬼気迫る顔で雅宗に言う。


「この人殺しがっ‼︎」

「お前の息子の方が人殺しだ‼︎お前に言う資格など無い‼︎何が目的なんだ‼︎」

「まずはその忌々しい物を地面に置け‼︎そして消せ‼︎」


 雅宗達が持つモップを捨てろと国貞は言う。


「……モップを下ろそう……」


 雅宗達は燃えた2本のモップを地面に置いて、踏み消した。


「いやぁ……物分かりが良い……」

「何で俺達をこんな事に巻き込んだ‼︎」


 国貞は雅宗に銃口を向ける。そして静かに語り始める。


「ワシは国吉に友達をプレゼントしたかったんじゃ‼︎」

「友達⁉︎」

「あぁ……国吉には友達がいなかったんじゃ‼︎」1人で寂しく育った国吉の気持ちが分からんのか‼︎貴様ら‼︎」

「俺だって最初は1人だったさ‼︎趣味や好みがその人と合うか話す前に考えると何も言葉が出てこなかった……だけど話しかけない事には何も始まらない‼︎伝えないと人は応えない。伝えるから人は応えてくれるんだ」

「ワシだって自分の過去を捨てて新しい生き方を見つけたかった‼︎だけど脳裏には妻の事が浮かんでくる……」

「……どうゆう事だ……」


 ーーーーーーーーーーーー

 何十年も前の話……国吉は宮崎県の街中に住んでいた……


 昔の国吉は普通に笑い、普通に喋り、普通に遊んだ……5歳の頃……


 ある日、庭で国吉は笑顔で土を木の棒で突っついていた。若かった国貞は笑顔で聞く。


「国吉ぃ〜何してるんだい?」

「これ見て‼︎」


 それは地面に国貞の似顔絵が書いてあった。不恰好な絵だが、国貞は笑顔で言った。


「すごいねぇ〜‼︎国吉ぃ〜‼︎本当にすごいよぉ〜‼︎」

「えへへへ」


 この頃、国貞の奥さん桐子(きりこ)は病気で倒れており、寝たきりになっていた。


「大丈夫かい……桐子……」

「えぇ……貴方も無理はしなくていいのよ……」

「大丈夫……今週は国吉と遊園地に行って来るから少し家を空けるけど大丈夫か?」

「全然大丈夫よ……少しくらいは動けるわよ……」

「あぁ……」

「楽しんで来てね……」



 遊園地の帰り、夕日を浴びながらお土産を国吉が持って国貞と手を繋ぎながら帰っていた。


「僕の選んだお菓子、ママ喜んでくれるかな?」

「あぁ喜ぶとも‼︎絶対に‼︎」


 すると、家の方角から煙が上がっていた。


「家の方向⁉︎国吉、急いで行こう‼︎」

「う、うん‼︎」


 駆け足で家に帰ると家全体がバチバチと燃えていた。消防も来ており、消化を始めている。だが火の勢いは一向に治らず、国貞は慌てて野次馬の中を突破し、家に入ろうとするが消防隊にとめられる。


「桐子がっ‼︎」

「ダメです‼︎今入っては危険です‼︎」

「桐子‼︎桐子‼︎あいつは足が悪いんだ‼︎助けないと‼︎」

「もう手遅れです‼︎早く後ろの方に‼︎」


 そして家がゆっくり倒壊した。その瞬間、国貞は膝をつき泣き崩れた……


「うわぁぁぁぁ‼︎‼︎」


 国吉はお土産を落とし、無表情で目ん玉を丸くしてただ火を見ていた。


「火が……火……ひ……」


 火の原因はガスコンロからだった。桐子は帰って来る国貞達の為に、無理して料理を作ろうとした時に倒れて、そのまま引火したのだ……


 あの日以来、国吉は喋らなくなり、笑顔が消えた……


 国貞自身も借りたアパートで桐子の遺産で酒を飲む毎日、周りの人からは変な目で見られ始め、国吉は学校に行かずほったらかしの毎日だった……


「あの時……遊園地に行くから……こんな事に……」


 桐子の写真を見ながら泣く国貞。


 ある日暇つぶしに国貞はイノシシ狩りに国吉と共に山奥へと行った。


 バンッ‼︎


 銃弾はイノシシから外れ、イノシシは逃げてしまった。だが国貞の顔は真っ赤で、地面には缶ビールの空き缶が散乱していた。


「ちっ……‼︎外れたか……」

「……」


 無表情の国吉が猟銃に手を伸ばして来たのだ。


「お前も撃ちたいのか?ダメだ、免許が必要だしまだ撃つのは無理だ」

「……」

「ダメだって」

「……」


 いくら言っても手を引っ込めない国吉に国貞は、銃を貸した。


「どうせバレはしない……」


 国貞は国吉に銃の撃ち方を教えた。


 バンッ‼︎


 銃弾はイノシシにヒットし、一撃で仕留めた。


「中々の腕じゃないか‼︎」

「……」


 それでも国吉は笑わなかった。だがイノシシの死体を目の前で見た瞬間にニヤリと笑った。


 そして国吉が15歳になると、問題を起こす事が多くなった。


 暴力、窃盗など街中で問題になった。無差別に人を襲い気味の悪い笑い声と共に犯行に及んでいた。だが国貞は一切認めなかった……


 大勢の人が国貞の家の前に集まり、抗議する。


「出て行けぇ‼︎」

「そうよ‼︎出て行って‼︎」


 するとドアが開き、猟銃を構えた国貞が出て来た。


「ワシの愛する国吉に文句言う奴は誰じゃあ‼︎‼︎」

「キャァァァァ‼︎」


 大勢の悲鳴と共に一斉に抗議しに来た人達は逃げ帰って行った。


 その後国貞は人目を避けるようにこの高千穂町へと逃げた。


 こんな家族……こんな人生……こんな運命が国吉や国貞を変えたのだろうか……



 ーーーーーーーーーーーー


 国貞は泣きながら銃口をあらゆる方向に向けて言う。


「大切な人が死んだワシや国吉の気持ちが分かるか‼︎」

「あぁ……俺の大切な友が死んださ」


 蒼一郎が雅宗の前に出てきて言った。


「目の前で死んだ。叫び声も血も顔も全て目の前で見た……俺はその事が忘れられなくなった……だが、そんな事じゃこれから生き抜く事は出来ない、そう自分を鼓舞した。進まないと前が照らされないんだ……それがあんたらにはなかった……」

「う、うるさい‼︎国吉がお前らの友達になってくれれば、昔の国吉に戻るかもしれないんじゃ‼︎」


 すると雅宗が怒りを表して言う。


「友達を作りたいなら、真っ直ぐと正面から来やがれ‼︎そして挨拶の1つもするもんだ‼︎そこからが自分の問題だ‼︎」

「減らず口を‼︎」


 銃を撃とうと引き金を引こうとしたした瞬間、国貞の右手を真沙美が噛み付き、銃を落とした


「うっ‼︎このガキが‼︎」

「真沙美‼︎」


 国貞は日本刀を噛み付いた真沙美に振り下ろそうとした時、左手の甲にボーガンの矢が刺さり日本刀も落とした。


「ぐわっ‼︎」

「お前さんの武器がこんな所で活躍するとは思わなかったぜ」


 龍樹がボーガンを放った。そして、蒼一郎が落ちた銃を雅宗の方へと蹴飛ばした。


「これももらっとくぜ」

「幸久‼︎」

「さっきのセリフ最高に痺れたぜ雅宗」


 日本刀は幸久が拾い、由弘と西河先生が国貞を取り押さえたが、老人とは思えない力で抵抗する。


「大人しくしろ‼︎」

「クソっ‼︎ふざけるな‼︎人殺しが‼︎」


 国貞の前に雅宗が立つ。


「人を殺す事に慈悲を持たないあんたにそんな事を語る資格はない……」



 この時、午後4時17分……

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