修学旅行6日目 午後2時59分
午後2時59分……
雅宗達と磯村国貞の息子、国吉による殺戮ゲームが始まった。雅宗は巧みに逃げて国吉を倒し、国貞の所へと向かうことにした。だが国吉は予想以上に手強く、里彦の足が撃たれた。そして追い詰められた雅宗の前に現れたのは……龍樹だった……
その頃屋上では、国貞が男達の人数を数えていた。そして女性達は、国貞の近くに置かれた。
だが龍樹がいなくなった事を気づいていない。由弘は幸久を呼びかけて話しかける。
「幸久……大変だ、龍樹がいなくなった……」
「な、何⁉︎逃げたのか⁉︎」
「いや……あいつは逃げる奴じゃない……それは俺が良く分かる……あいつは戦いに行った……」
「あの銃を持ってる奴にか⁉︎勝てるのか⁉︎」
「あぁ……俺が中学の時、あいつはかなり喧嘩慣れしてた……」
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龍樹は中学の頃は、かなり荒れていた奴だった。何かと教師とトラブルを起こし、上級生や他校の生徒とも争いの絶えない日々だった。だがテストの点数や体育の出来は良く、教師も言うに言えなかった。
そんなある日、由弘が帰ろうと河川敷を歩いていると……橋の下で言い争いが起きていた。龍樹が他校の生徒8・9人に囲まれていた。そしてリーダーらしき人物が龍樹にガンをつけて言い寄る。
「お前が龍樹って奴かぁ?俺の可愛い後輩をよくも痛ぶってくれたな?」
「弱いそいつらが悪いんだよ!!!」
そう言うと不意打ちのように、リーダーの顔面に殴り掛かる。
「痛ってぇ……お前らやっちまえ!!」
そう言うとリーダーを除く全員が一斉に龍樹に殴り掛かる。龍樹も抵抗をするように殴り返すが、数の暴力の前に押される一方だった。
それを見かねた由弘は龍樹の方へと向かう。
「お前ら!!1人にそんな数で……それでも男か!!」
「ふっ……そんなの関係ねぇよ!!!あいつもやれ!!」
3人が由弘の方へと殴り掛かるが、1人は背負い投げ、もう2人は上着を掴まれ川に投げ飛ばされた。リーダーは怯えた様子で下がって行く。
「な、何だお前……ひっ!」
すると龍樹も襲いかかった全員を倒し、リーダー1人になった。そして由弘を指して言う。
「お前は……誰だ⁉︎」
「俺は時忠中学の柔道部!!片桐由弘だ!!覚えておけ!!」
「ひ、ひぃ〜!!」
そう言うとリーダーは両手を上げながら逃げて行った。すると龍樹が由弘を睨みつける。
「人の喧嘩に邪魔しやがって……」
「1人にあんな寄って集って暴力をするのが許せないんだ」
「ちっ……次は邪魔したらお前だろうがぶっ飛ばす……だが感謝する……」
「あぁ……良いって事よ……」
これが龍樹と由弘との最初の出会いだった……
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その頃雅宗達は龍樹が到着し、予想外の展開に驚く雅宗と蒼一郎。
「お前は……龍樹⁉︎」
「何でここに……」
龍樹は雅宗達の方へと向かずに国吉を注視しながら語る。
「このままいたら屋上の奴らもこいつの餌食になる。だからこいつを倒す」
「幸久は大丈夫だのか⁉︎」
「あいつは大丈夫だ……ちょっと顔の横を掠ったがな」
この事を聞いて雅宗と由美は安堵する。
「……良かった……」
「そんな事より、早くお前達は何処か行け。戦いの邪魔になる……」
「……分かった」
雅宗と蒼一郎は怪我した里彦の肩を持ち、1号館へと向かう。
そして1階にある保健室の前で、里彦を由美と綾音に託した。蒼一郎が由美達に言う。
「ここで里彦の怪我を包帯か何かで応急処置を頼む!」
里彦も力を出してしゃべる。
「お前らはどうする気だ……」
すると雅宗が答える。
「俺は龍樹の奴の援護に行く!!幸久に怪我させた分たっぷり返してやる!!」
「もちろん俺も行くぜ!!」
由美も雅宗に共感し、拳を前に出した。
「あの変人と屋上の奴に、私や綾音ちゃん、それに里彦君の分も殴って来なさい!!」 「あぁ、もちろんだ!」
雅宗と由美は拳を交わし、蒼一郎と共に2号館へと戻って行く。
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2号館の2階……
龍樹は戦闘態勢を取り、相手を睨みつける。先程の不意打ちの攻撃で国吉は膝をついて口の血を拭き取っている。そして落とした銃は国吉から1m先に落ちている。龍樹から銃は2m程ある。
この距離なら拾おうとした瞬間、素早く動き国吉の手や顔なり蹴りを食らわす事が出来る。だが、もし間に合わなかったら……死……
「……」
「ふ、ふふふ……」
龍樹がズボンの右ポケットに手を入れた瞬間、国吉が左手で銃を取り左手だけで銃を放った。
バンッ!!
片手で撃った為に軌道がズレ、銃弾は壁に当たる。その時、龍樹はポケットからカッターを取り出し、カッターの刃を出しながら国吉の手に投げた。
「ぐしゅっ!!」
カッターは左手の甲に刺さり、銃を落とした。国吉は痛みの声を上げ、左手を押さえる。その瞬間、龍樹が国吉に急速に接近し国吉の右頬に1発全力のパンチをフルスイングした。
「ぐひゃっ!!」
国吉は怯み、何歩か後ろに下がった。その間に国吉の猟銃を拾う龍樹。
「これがお前の武器か?」
そう言って奪った猟銃を国吉に向ける。
「今の発砲音は何だ⁉︎」
龍樹が背後を振り向くと雅宗がいた。
「貴様……何しに……⁉︎」
すると国吉は手に刺さったカッターを抜き、それを龍樹目掛けて刺し掛かろうと手に持った瞬間、背後から何かが走ってくる音が聞こえた。
「里彦の仇ぃぃ!!!」
「ぐべっ!!」
国吉が振り向いたと同時に、蒼一郎の飛び蹴りが国吉の顔面に直撃した。この攻撃で国吉は倒れ、カッターを手放した。それも龍樹がすぐさま拾う。
「ちっ……余計な事を……」
蒼一郎が龍樹を見て軽く微笑みながら言う。
「せっかく助けたのに何だその言い草わぁ〜?」
「ちっ……まぁ感謝する……」
「もっと良い言い方ないのかよ〜」
「こいつ……本当に倒したのか?」
そう言って雅宗が倒れた国吉に突っついた瞬間、国貞が突如起き、雅宗を突き飛ばし一号館へと左手を押さえながら走って逃げて行く。
「待て!!」
龍樹が銃を向けたが、弾が入ってないことに気づいた。
「ちっ……弾なしか……」
蒼一郎が雅宗に手を差し伸ばしながら言う。
「まぁいいさ……武器を失ったんだ……」
「だと……いいんだがな」
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その頃、国吉は体育館倉庫にいた……
「ひ……ひひひ……」
不気味に笑いながらとある物を握っていた……
この時、午後3時12分……




