修学旅行6日目 午後2時26分
午後2時26分……
蒼一郎について行った雅宗達、だが間違えて2号館についてしまった。そこでアライグマが消えるのを教室で待つことになった。だがその教室のベランダで、頭に穴が空いている女性の死体を発見した。雅宗はさっき銃を放った人物に疑問を持った……
里彦がベランダの方へと近づいてきた。
「どうした?雅宗?」
「これを……見てくれ……」
「うわっ……!そ、それは……」
「死体だ……それも銃で撃たれた跡っぽいんだ……」
蒼一郎も近づいて来た。そして死体を見てしまった。
「そ、それって……まじかよ……」
由美や綾音も近づいて来たが、里彦が引き止めた。
「そこに何があるの?」
「あ、あまり見ない方がいい……死体だ……」
「う、嘘でしょ……」
雅宗は不安に思った。幸久達は大丈夫なのかと……
ーーーーーーーーーーーー
その頃幸久達は屋上に到着した。そして真沙美が入り口の逆方向に行くとキャップとベストを着た老人がいた。真沙美は勇気を出して話しかけた。
「あなたが私たちをここへと呼んだの……ですか?」
老人は何本か無い歯を見せながらニヤリと笑い、答えた。
「君達か〜いや〜大丈夫かいお嬢ちゃん?」
「わ、私は大丈夫ですけど……私の友達がまだ……」
「友達ぃ〜?他にもいたのかい?」
すると後ろから教頭がそそくさと駆けつけて、すぐさま頭を下げて来た。
「この度はお助けいただき本当にありがとうございます」
「いやいや〜お礼なんて別に……」
老人は突如、椅子に掛けてあった猟銃を手に取り教頭に照準を向けた。
「ひ、ひぃ〜!!!」
幸久達がすぐさま来くるが、全員動きが止まる。そんな中、アライグマの血を服全体に浴びた由弘が前に出てきた。
「銃を下ろせ!」
老人は無言で銃口を由弘に向ける。
「……」
由弘は無言で老人を睨み続ける。すると老人は銃を下ろし、帽子を脱ぎ再びニヤリと笑った。
「いやいや冗談だよ、冗談」
「ひぃ〜助かったぁ〜」
完全に腰を抜かし生気を失った教頭を引っ張る幸久。呆れ果てた幸久は教頭に怒る。
「しっかりしろ!」
すると老人は誰かを指した。
「そこの女の子ちょっと来なさい」
「わ、私?」
老人は優佳を呼びつけた。優佳は小走りで老人へと近づいた。
「な、何ですか?おじいちゃん?」
「いや〜ちぃ〜とばかり肩が凝ってね。肩揉んでくれないかな?」
「私なんで良いんですか?」
「もちろん、あんたみたいな子に肩を揉んでもらいたいんじゃ。名前は?」
「ゆ、優佳です……」
「そうか優佳ちゃんか……いい名前だねぇ〜よろしく頼むよ」
みんなが見守る中、緊張する優佳は老人の肩を揉み始めた。
「おじいちゃん痛かったらすぐに言ってくださいね」
「いやいやこれくらいで丁度いいよ」
老人が楽そうにしてる間、由弘はゆっくりと幸久に近づき小声で話す。
「幸久……あの老人どう思う……」
「なぜ俺達に銃を向けたんだ……」
その時、後ろの方で雪菜がタバコを吸おうとタバコを口に咥え、タバコの火をつけようとライターを取り出した瞬間、老人は素早く足元にある銃を拾った。幸久は瞬時に大声で叫んだ。
「全員伏せろ!!!」
パンッ!!
老人は空に銃を一発放った。優佳も真沙美も耳を塞ぎ、幸久達は全員身体を伏せた。雪菜もびっくりして咥えていたタバコを落としてしまった。そしてまた老人はニヤリと笑った。
「いや〜金髪のお嬢ちゃん、そんな歳でタバコはいかんよ〜」
「うるっせぇよ、私の勝手だろ」
「さぁ……ワシに渡しなさい。そのタバコも、ライターも……」
「……」
だか雪菜は渡そうとはせず、老人も少しずつ笑顔が消え始めた。それを察知した南先生は即座に雪菜のライターとタバコを没収し、老人に渡した。
「おい、ちょ……!」
「これでいいんですよね……」
老人はまたニヤリと笑った。
「そうそう、素直に渡せばいいんだ。すまなかったね優佳ちゃん、肩揉みの続きをお願いね」
「は、はい……」
幸久はこの老人の素早く銃を拾うのを見て、何かおかしな事に気付く。
「明らかに取るスピードが早い……一体あの老人は何者なんだ……」
ーーーーーーーーーーーー
さっきの銃声はもちろん雅宗達にも聞こえた。雅宗達は死体を避け、ベランダから別の教室へと移動していた。雅宗が一号館の屋上を見て言う。
「今のは……また銃声?」
由美が不安そうに言う。
「何かあったの……?」
雅宗が再び携帯を取り出し、幸久に電話する。コールが何回か続き、電話に出た。
「もしもし幸久⁉︎今の銃声は⁉︎」
「いや〜残念、幸久君じゃなくてごめんねぇ〜」
電話から出たのはあの老人だった。
「だ、誰だお前は!」
「ワシは……磯村国貞、この街の住民じゃ……」
幸久達は全員携帯を没収され、真沙美と優佳だけは老人の隣で立っている。そして幸久達は猟銃を向けられている。
「何でお前が幸久の電話を!」
「いや〜面倒事には巻き込まれたく無いんでねぇ〜もうすぐで、そっちにも来ると思うよ……」
バンッ!!
その瞬間、一発の銃声と共に廊下から血が飛び散り、雅宗が恐る恐る教室を覗くと窓に血がべったり付いている。
「な、何だ……」
バンッ!!バンッ!!
「いや〜あいつは加減を知らないからな〜」
「一体……誰だ……」
教室のドアを強く開けられ、キャップとベストを着て銃を持った背が高い痩せ型の中年男性が入ってきた。だが普通の男性と違うのは、全身はアライグマの血で塗れ、目の焦点が合っていないのだ。
「ふ……ふしゅる……」
この光景にベランダにいる全員は身体が固まってしまった。そして国貞はニヤリと笑い言う。
「遊び相手になってくれないか?我が息子、国吉の……」
幸久が電話越しに大声で叫んだ。
「逃げろ雅宗!!!」
「うるさいねぇ〜」
バンッ!!
電話越しに一発の銃声と共に電話は切れた。
「えっ……幸久……」
この時、午後2時42分……