修学旅行6日目 午後1時35分
午後1時35分……
雅宗と里彦と蒼一郎、由美と綾音が学校の中のトイレへと向かっていたが、廊下の角を曲がろうとした時、謎の異臭を感じた。雅宗がこそっと見ると、目が白く濁っているアライグマが死んだ人間の肉を貪り食っていた。
里彦が雅宗の様子を見て尋ねた。
「どうしたんだ?トイレはその角を曲がったらあるんだろ?」
「しぃ〜!!静かにしろ!」
限界まで声を低くして里彦に伝える。そしてみんなに小声で伝える。
「その角を曲がった所に、変な動物が人の肉を食っているんだよ!!」
雅宗の言葉に疑問をもつ蒼一郎が言う。
「意味分かんねぇよ!」
「とにかく向こうを見るな!」
「一体何の動物なんだ?」
里彦がそっと覗くと肉を貪り食っていたアライグマと完全に目が合ってしまった。
「あっ……」
「シャアァァァ!!!!」
いきなり吠え始め、牙を見せて里彦の顔目掛けて飛びかかってきた。
「危ねっ!!!」
里彦はサッカー部で鍛えた身体能力でアライグマを避けた。アライグマは壁に激突し、地面に倒れた。静まり返った廊下にいる全員。そして雅宗が大声で叫んだ。
「に……逃げろぉぉ!!!」
一斉に逆方向へと逃げ、入り口に向かった。雅宗の存在に気づいたアライグマ達は一斉に雅宗達を追う。道中由美は大声で叫ぶ。
「私我慢してるのにぃ〜!!」
「俺だって足の速さに自信ないんだよ!!」
入り口に先行する蒼一郎と里彦。入り口付近に到着した瞬間、蒼一郎が見たものとは……
「あと少しだ……何⁉︎」
それは、別のアライグマ達が待ち伏せていたのだ。里彦達は慌てて戻り、雅宗達に近くあった階段を登るように支持する。
「2階に逃げろ!!こっちはダメだ!!」
「なんだってぇ⁉︎」
そして2階に駆け上がる。もちろんアライグマ達も追いかけてくる。2階は教室があり、雅宗は階段上がってすぐ隣にある教室に逃げ込む。
「こっちだ!この教室に逃げろ!」
雅宗達は教室に入り込み、ドアをキッチリと閉めた。アライグマは開けることが出来ずに、ドアを引っ掻いている。全員一旦落ち着き、雅宗が口を開く。
「あれは一体何の動物だ?」
すると綾音が口を開いた。
「あれは……アライグマ」
「アライグマ?アライグマってあんなに凶暴だっけ?」
「アライグマは愛らしい見た目に反して、凶暴な動物なの。でもさっきみたいに自分から人間を襲う事はないの……それにあのアライグマ。みんな目が濁っていた……」
由美が綾音に聞いた。
「綾音ちゃんそんな事知ってたの?」
「私、昼休みとかよく図書室で本読んでたから……」
そして里彦が導き出した答えは
「つまりあのアライグマは普通ではないという訳だ」
「うん……」
「考えたくはないけど……ゾンビになったアライグマって事なのか……?」
雅宗も言う。
「あの目は、ゾンビ達と同じ白かった……まさか動物にも感染すると言うのか……」
「つまりあいつらにも噛まれたら一貫の終わりって訳か……」
「そうとなれば連絡しなくちゃ!」
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その頃、外で待ってる幸久。
「雅宗達遅いなぁ〜」
由弘が笑いながら言う。
「よっぽど溜まってたんだろ。どでかいのが」
「そうかもな」
すると幸久の電話が鳴る。
「雅宗から?何だ?雅宗か?一体どうした?」
すると慌てた様子の雅宗が電話で話してきた。
「どうしたこうしたもねぇんだよ!ゾンビアライグマが俺達に襲いかかって来たんだよ!」
「な、何言ってんだ?」
「そのままだよ!そのまま!ゾンビと化したアライグマが俺達を襲ってるの!!俺達は今2階に潜んでるんだよ!!」
「そういえば……」
幸久は須木下田町の川にいた時、山にいたアライグマを思い出した。
「あの時のアライグマは目が白く濁っていた……」
「そうだ!分かったか!とにかくみんなを安全なバスに戻せ!!」
「分かった……お前はどうするつもりだ!!」
「何とか脱出するさ。こんな危機何回もくぐり抜けてる俺だぜ。心配せずに待ってろ!!」
「あぁ……由美や他のみんなを頼む……」
「任せとけ」
幸久は電話を切り、みんなに呼びかける。
「みんな!!一旦バスに戻れ!!」
すると伸二が、口に指を咥えてもう片方の指である方向を指している。
「あ、あれを……」
「な、何だありゃ⁉︎」
それは無数のアライグマのゾンビや犬、猫やネズミなど、多くのゾンビと化した動物達が高校を囲んでいたのだ。威嚇しており、ジワリジワリと幸久達を取り囲んでいる。
「何だ一体……」
南先生や西河先生もこの異変に気付いた。
「これって……」
「動物……ですが、様子がおかしい……」
真沙美や優佳も慌ただしくなって来た。
「可愛い猫ちゃん……じゃない……」
「どうなってんのよ……」
由弘は幸久に小声で聞いた。
「どうする?この状況」
「とにかくバスの中に逃げて様子を見るしか……」
すると、学校を囲む動物が一斉に幸久達へと走り始めた。南先生が大声で叫ぶ。
「み、みんな!学校内に逃げるわよ!!」
「でも雅宗が言ってたゾンビアライグマがいます!!下手に入ったら……」
その時、一発の銃声が学校中に響き渡った。それに驚いた動物達は、動きが止まり少しずつ後ろに下がって行く。
「じゅ……銃声?」
「誰が撃ったんだ……」
全員が疑問を思うと、高校の屋上から1人の渋い男の声が響き渡った。
「そこの者達!!早く学校に逃げろ!!動物達もそう待ってはくれないぞ!!」
全員が屋上に振り向き、幸久が答えた。
「貴方は誰ですか⁉︎」
「話は後だ!!早く屋上に来い!!」
動物達は、再び戦闘態勢に入る。そして西河先生がみんなに言う。
「とにかく今は学校に入るしかない……」
幸久が慌てた様子で言う。
「でも雅宗からあの動物達と同じく、凶暴なアライグマがいるって……」
「ここでバスで籠城するよりはマシだ。学校に行くぞ」
「……はい……」
そして再び屋上から一発の銃声が響く。
「早く来い!!」
南先生はみんなに声をかける。
「行きましょう!学校に!」
全員は学校の中へと急いで逃げて行く……
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もちろんその銃声は教室に籠る雅宗達にも聞こえた。
「何だ⁉︎今の銃声は⁉︎」
由美が震えた声で言う。
「ま、まさか殺人鬼……?」
「ここに篭っていて意味はない……」
雅宗は教室の掃除道具入れを探る。
「よし……あった!」
それを床に投げ捨てる。里彦が不安そうに言う。
「まさか……これって……」
「その通り!またやるぞ!!」
それはモップや箒だった。里彦は鹿児島中央駅のコンビニの時の出来事を思い出す。すると蒼一郎も生徒ロッカーからあるものを見つけた。
「おっ、いいもんみっけ!!」
床に転がしたのはサッカーボールだった。
「俺達と言えばサッカーボールだな。手をより足の方が使い慣れてるからな」
そして雅宗達はモップや箒を握り、蒼一郎はサッカーボールを持ち、部屋の外にいるアライグマ達の中を突破する事にした。雅宗が意気込む。
「よし!!突破作戦開始だ!!」
この時、午後2時09分……