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僕らの終末旅行日記  作者: ワサオ
第1章 九州脱出編

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修学旅行6日目 午前8時58分


 午前8時58分……


 小林市のスーパーに寄った雅宗。そこの倉庫にいたバイトの赤松哲夫。そして外には主婦達のゾンビが開店を待ちわびている。幸久や真沙美の心配をよそに雅宗達は全く気づいていないのである。


 雅宗は哲夫にここから出るように説得する。


「とりあえずここから出ようぜ」

「うん……そうしよう……」


 哲夫はロッカーからバックを取り、逃げる準備をした。


 ーーーーーーーーーーーー


 外から雅宗達の様子を伺う幸久達


「電話して伝えたいが……音で気づかれたら終わりだ……何とか自力で脱出してくれ……雅宗……」


 電話を掛けたいが雅宗の居場所はバスの中からは見える事が出来ず、電話を掛けたいのに掛けれない状況である。そして9時になり、主婦のゾンビ達は一斉にスーパーの中に入って行った。


「……くっ……」



 ーーーーーーーーーーーー


 主婦のゾンビ達がスーパーに侵入し、散らばったガラスの破片や商品を踏みながらスーパー内を徘徊している。その音に雅宗達もようやく気づいた。


「ん?音が聞こえる?幸久達まさか来たのか?」


 倉庫のドアを開けるとスーパーの中にゾンビ達が徘徊しているのをはっきりと確認した。


「はっ……⁉︎」


 見た瞬間すぐに倉庫へと戻って行った。慌てた様子の雅宗に全員不思議そうにしていた。


「どうしたんだ⁉︎雅宗?」

「やばい……スーパー内に、ゾンビ達がいっぱいいやがる……」

「嘘だろ⁉︎」


 すると哲夫が手を挙げた。


「す、すいません……このスーパーの裏口からはダメですかね?」

「裏口⁉︎そうか裏口なら!!」


 雅宗はすぐさま裏口のドアを開けた。


「よし!これで!!」


 だが裏口のドアを開いた瞬間、店員のゾンビが目の前にいた。


「はっ……⁉︎」


 そしてまたすぐさまドアを閉めた。


「こっちもいやがる……何でだよ!!でもこっちなら1体だけだ……こっちから出るぞ」

「待て雅宗……スーパー内に食料を忘れて来てしまった……」


 由弘は雅宗を助ける為にバックを投げ捨ててしまった。


「そんな物命に比べれば軽いもんだろ!!」


 悩む由弘。食料入りのバックは倉庫のドアから約10m離れている場所にある棚の下に置いてある。頑張れば取りに行けるが、危険も伴う。


「せっかくここに寄ったんだ……食料は取りに行く!!腹を空かせている奴らの為に!」


 力強く言う由弘に雅宗も深いため息をした。


「はぁ〜お前なら行くって言うと思った……なら俺も手伝うぞ!」


 そこで作戦を考えた。南先生と哲夫は倉庫に待機。雅宗と由弘の2人で食料入りのバックを取る。そのまま裏口のゾンビをドアを開けた瞬間ぶっ飛ばし、バスに乗る。


「よし行くか!」

「君達……なんでそんな簡単に行こうとするんだい……あんな危ない場所に……」

「もう慣れたんだ……数日の間にな……」


 そして雅宗は木刀構え、由弘も戦う構えを見せる。だが雅宗は急に何か閃いたようにスマホをだす。


「その前に幸久に電話する」


 そして電話を掛ける雅宗。


「ん?雅宗から電話⁉︎雅宗!大丈夫か⁉︎」

「あぁ……ゾンビがうじゃうじゃいやがる。今はスーパーの倉庫にいる。そこでお前に頼みが……」

「何だ?」

「今からスーパーから脱出する。だからドアを開けてくれ。分かったな」

「もちろん……分かった」


 電話を切り、再び闘志を燃やす雅宗。そして倉庫のドアをゆっくり開け、由弘を先頭に食料入りのバックの元へと態勢を低くして歩いて行く。その間は小声で会話する。


「どこだ食料入りのバックは?」

「もうすぐだ……あと少しだ……」


 今の雅宗達には10mが100mに感じる程長く見えた。


「由弘!隠れろ!」

「⁉︎」


 ゾンビの1体が雅宗達の真ん前を通った。雅宗の声掛けのお陰で由弘は別の棚に隠れた。だが雅宗と由弘は棚と倉庫ドア前と別れてしまった,


「来い、雅宗」


 手でこっちに来いとジェスチャーをし、雅宗は小走りで由弘の元へと行った。


「あれだ。あの棚の下だ」


 由弘が指す場所には由弘のバックがある。だがその周りにはゾンビがうじゃうじゃいて、簡単にはとおれない

 

「どうする……」

「こうなったら……来い!雅宗!!」

「えっ?ちょ?待て⁉︎」


 由弘はバックが置いてある棚の方へと思いっきり走りだした。雅宗も動揺しながらもついて行った。だが由弘の前にゾンビが現れた。


「邪魔だ!!」


 由弘はゾンビにタックルをし、別の棚にぶっ飛ばした。そして棚の前を通り、走りながらバックを握りしめ、倉庫の方へと引き返す。周りのゾンビ達も雅宗の存在に気付き始めた。


「雅宗!早く戻るぞ!!」

「おう!!」


 雅宗は木刀でゾンビ達に応戦し、由弘は投げ飛ばし、店中のゾンビが後ろから迫る中倉庫に走る。そして南先生が居る裏口ドア前まで向かう。由弘は走った状態で南先生に叫ぶ。


「南先生!!ドアを開けて下さい!!」


 南先生はドアを開け、由弘は走った勢いで再びゾンビにタックルをし、外に脱出した。


「みんなも早く来い!!後ろから来てるぞ!」


 迫り来るゾンビに雅宗達はすぐに脱出し、ドアを閉めた。


「早くバスに戻るぞ!!」

「おう!!」


 由弘を先頭に裏口からバスへと戻る。

 幸久もバスの中から雅宗達が来るのを待っている。するとスーパーの裏から雅宗達がこちらに走っているのが見えた。


「来た!運転手さん!エンジンをお願いします!!」


 バスはエンジンを掛け、大きな音が響き渡る。その音は雅宗達、ゾンビ達に聞こえた。


「バスの音?急げ!奴らも気付き始めるぞ!!」


 倉庫に集まって来たゾンビがバスのエンジン音に気付きバスへと移動を始めた。幸久もドアを開け、雅宗達を遠くから手招きする。


「雅宗!早く来い!!」


 真沙美も窓を開け、雅宗に激励する。


「雅宗!!走れ!!!」


 もちろんその声は雅宗にも聞こえ、他の生徒達がバスの窓から見守る中、スーパーからゾンビ達が一斉に出てきた。雅宗とバスとの距離は10mを切った。

 そして由弘、哲夫、南先生がバスに乗り込み、雅宗も乗り込んだ。その瞬間ドアが閉まる前にバスが動き出した。


「ふぅ……助かった……⁉︎」


 ゾンビが1人ドアをつかんでいた。


「離れろ!こんにゃろ!!」


 雅宗はゾンビを蹴飛ばし、バスから突き落とした。

 助かったのは良いが、みんなが1つ気になっている事がある。それは哲夫の存在だ。


「雅宗?その人は?」

「この人はだな……」


 雅宗は哲夫の事を説明し、みんな納得した。そして由弘達が持ってきた食料も見せて、全員喜んだ。その後ろで哲夫は運転手に1つお願いをした。


「すいません……1度僕のアパートに寄ってくれませんか?」


 この時、午前9時18分……


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