修学旅行6日目 午前8時24分
午前8時24分……
大分県を目指し霧島山から北上し、宮崎県小林市に入った。小林市は人の気配がなく、ゾンビに襲撃された跡だけが残っていた。だがゾンビの気配も全く無かった。そこで近くにある小さなスーパーに食料を調達に雅宗、由弘、南先生の3人は廃れたスーパーに行くことにした。雅宗はそこの倉庫で謎のメガネの青年に出会った。
南先生と由弘はスーパーの中で食べれる物を探している。残ったお菓子や飲み物をあるだけバックに詰めている。何か音が聞こえたような気がするが、2人は必死にバックに詰めているため、全然気づいていなかった。
「何か聞こえなかった?」
「いえ、何も?」
その頃雅宗は、青年に出会っていた。雅宗は驚いて少し後ろに反り気味になって何歩か後ろに下がっていた。
「誰だ……お前」
段ボールで出来た山の下敷きになっていた青年がやっとことさ出て来た。そして弱々しい声で自分のズボンの埃を払いながら雅宗に話しかけた。
「ご、ごめんなさい。あいつかと思って……」
「あいつら?感染者の事か?」
青年は小声で雅宗に言った。
「店長だよ、店長。さっきまで居たんだ。ここに」
「はぁ?店長」
雅宗が店に入った時には誰もいなかった。それに気配もなかった。なら何処だろう?と少し悩んだ。
すると雅宗の背後に人影が見えて、青年は身体を震わせ怯えた表情で雅宗の背後を指差した。
「あんた意外にもいるのか?」
「て、店長⁉︎」
「えっ?」
「う、後ろ‼︎」
「?」
後ろを振り向くと血が付着した緑のエプロンを着ている中年のゾンビが音もなく雅宗の背後いた。そして思わず大声を出してしまった。
「うっ、うわぁぁぁ‼︎‼︎」
そのまま雅宗は感染者に押し倒されて木刀で感染者の手を受け止めている。雅宗の叫び声は食料を探している由弘と南先生にも流石に聞こえた。
「今の声何⁉︎」
「雅宗か⁉︎どうした雅宗‼︎」
由弘は食料が入ったバックを投げ捨て、真っ先に倉庫に向かう。
「お、おい‼︎助けてくれぇぇ‼︎」
情けなく声を荒げて由弘に助けを求める雅宗。更に青年は身体を震わせ涙目になりながら手を口に突っ込んでいる。その間口を大きく開けた感染者の顔は徐々に雅宗の顔に近づいて行く。雅宗は全ての力を入れ、近づけないように奮起する。
「くっそぉぉ‼︎」
するとドアを勢いよく開けた由弘が感染者に押し倒されている雅宗を発見した。
「……どけぇ‼︎」
雅宗を助ける為に、由弘はタックルをして感染者は突き飛ばされて段ボールの山に突っ込んだ。すかさず雅宗に手を伸ばして立ち上がらせた。
「大丈夫か雅宗⁉︎怪我はないか?」
「あぁ、大丈夫だ。ありがとな……」
雅宗には怪我ひとつなく、安心して息を吐く。
「ふぅ、良かった……」
倉庫に南先生も追いかけるように来た。
「どうしたの?2人共?」
「この倉庫に感染者が、それに……」
雅宗が指さす方にはあの青年がいた。その時2人は同じ事を言った。
「だ、誰?」
感染者が段ボールの山で埋もれている隣で青年は少し感染者に目を向けながら自己紹介を始めた。
「ぼ、僕は哲夫、赤松哲夫です。昨日ここでバイトしてたんです。そしたら……」
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話を聞くと昨日の夕方6時頃、辺りも暗くなり始めた時哲夫はスーパーのバイトに入っていた。だけど感染者のニュースでこのスーパーも人でごった返していた。哲夫はエプロンに着替えている時に、店長に聞いた。
「今日は人多いですね」
「何でもニュースで九州を隔離する的な事を総理が言ってたよ」
「えっ?どうゆう事ですか?」
「ワシもそんな詳しく知らないよ。それより仕事してね」
「あっ……はい……」
哲夫はいつも以上の人を相手に必死にレジをした。その時みんな何かを恐れているように急いでいた。いつもなら袋の中に買った商品を綺麗に並べて入れる人もこの日は無造作に突っ込んで急いで帰って行った。
「何なんだ……一体……」
そして閉店の11時頃、店の商品の殆どが売り切れており、店長や他の店員もレジや商品追加などで疲れ果てていた。そして残ったのは哲夫と店長だけだった。
「外の自販機も殆ど売れ切れですね……」
「一体何が起きているんだ?この世の終わりか?」
「僕段ボール畳んで来ます」
哲夫は倉庫の奥で空っぽの段ボールを畳み始めた。店長は商品棚で売り切れた商品のチェックをしていた。すると、外から入り口を叩く音が。その音に店長が見に行くと。
「うわっ……!!」
「て、店長……た、助けて……」
さっき帰ったはずの女性店員が血塗れでドアを叩いていたのだ。
「だ、大丈夫か⁉︎」
店長はすぐさま鍵を開け、店の入り口から店員の肩を持ち上げて入れた。だが突如店員が店長の首元に噛み付いたであった。
「き、君何をするんだ!!!や、やめないか!!」
店長の声が響き渡り、哲夫は倉庫のドアを開け店内を見渡すと、店長の首からおびただしいほどの血が流れていた。
「店長⁉︎」
店長は哲夫に口で何かを伝えているが、首をやられて声が出なくなった店長では何を伝えたかったのか分からなかった。だが哲夫にはその横にいる女性店員が感染者だと言うのはすぐにわかった。
「まさか……あれが店長が言ってた感染者……なのか……」
哲夫はびびって倉庫に戻り、残った段ボールの山で壁を作り、倉庫に残っていた水やお菓子で一夜を過ごしたのであった。
だが起きた時、段ボールの隙間から見たら倉庫に店長が入って来て、ずっと徘徊していたのであった。そこに雅宗達がやって来たのであった……
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8時40分頃……雅宗達を待つ幸久達は……
「まだこないな……雅宗達……」
幸久はドアが開いているバスの前で待っている。すると、スーパーの駐車場の入り口付近に多くの人影が見えた。
「人か?……いや……まさか……」
幸久はすぐさまバスに戻り、運転手に告げる。
「運転手さん!早くエンジンを切って!みんなもカーテンを閉めろ!!」
驚いた由美が不安そうに言う。
「どうしたの?幸久。そんな慌ただしく……」
「奴らが来た!奴らは音や人の気配に敏感だ!」
「どうして?」
「ホテルから出る時、奴らはバスの音に気づいてバスを囲んでいた。それに人を見た瞬間追いかけて来た。奴らは音と人に反応する」
バスはカーテンをすぐに閉めた。優佳はカーテンを少し開け、怖いもの見たさにこそっと外を見た。
「これ……どうゆう事?」
すると主婦のゾンビ達はエンジンを切ったバスを通り過ぎて店の前に並んだ。そこに幸久が説明した。
「詳しくは分からないが、多分奴らの生前の行動だろう……俺達がホテルにいた時も、生徒のゾンビが自分の部屋の前で立っていたんだ……」
「この人達は……」
「あぁ……生前と同じく、買い物に来たんだろう……」
それを言った瞬間、ある事に気付いた幸久。すぐにカーテンを開け、店の開店時間を見た。
「開店時間9時だと⁉︎」
今度は真沙美が心配そうに言った。
「つまり9時にあの人達は……店の中に……」
「あぁ……一斉に入るだろう……そしたら店内はゾンビまみれになるだろう……雅宗、由弘、南先生……」
そんな事は知らずに倉庫で哲夫の話を聞いている雅宗達……
この時、午前8時58分……