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僕らの終末旅行日記  作者: ワサオ
第1章 九州脱出編
25/124

修学旅行5日目 午後11時30分

 

 午後11時30分……


 雅宗と幸久がバス内で見張りをする事1時間が経った。バスの中では2人を除いて全員寝ている。真沙美と由美は肩を寄せ合って寝て、由弘はいびきをかき、その前の席に座ってる龍樹は平気そうに寝ている。その後ろの伸二と里彦や隣の列の席にいる蒼一郎はいびきに魘されている。


「相変わらずあいつのいびきはうるさいな〜」

「あぁ……今まさに生きてるって感じたな……」

「それにしても退屈だな、見張りって……眠いし」

「退屈だけどみんなを守る為だ。それにあと少しだから我慢しようぜ雅宗」


 外を見る2人だが何もなく何も動いておらず、退屈なようだ。雅宗がウトウトと頭が下がり始めた。それを見た幸久は雅宗に話しかける


「おい雅宗大丈夫か?」

「あっ……すまない……眠気が襲って来て……」

「気持ちは分かるさ。昨日も今日も走りっぱなしだし、腹は空くし大変だよな」

「そうだな……ふわぁ〜」


 雅宗は目を擦り、大きく口を開けあくびをして眠そうなのが一目で分かる。


「何か話そうぜ。気を紛らわせれるぞ」

「そうだな……」


 幸久は笑顔で話題を変える。


「お前真沙美とは上手くいってんのか?」

「え、あ、な、何言ってんだよ!!」


 いきなりの事に驚きを隠せず、顔を赤らめる雅宗。暗い中だがどんな表情なのかは幸久には予想出来た。


「こんな所で何言うんだよ!」

「お前の生き生きしている姿を見たくてな。今日の事を少しでも忘れてもらおうと思ってな。それに今は由弘のいびきで聞こえないって」


 これも幸久の優しさ……少しでもみんなに元気であって欲しいという思い。そう思い雅宗は照れ臭そうに話す。


「今日は……全く話をしてないな」

「真沙美より優佳ちゃんと話してた方が多いじゃないか?最近何かあったのか?」

「いや……それがな……」



 ーーーーーーーーーーーー


 今年の2月14日、バレンタインデーの話。雅宗は真沙美に照れ臭そうに義理チョコだと言われ照れ臭そうに雅宗は袋を受け取った。


「チョコの味……美味しかったか教えてね!」


 と真沙美に言われ立ち去って行った。人生初のチョコレートに幸久達の前ではしゃぐ雅宗。その帰りに幸久と由弘がいる中、雅宗は袋を開けた。幸久と由弘もその袋を目を丸くして覗いた。


「おっ⁉︎これは?」


 幸久が驚いた理由とは、意外にもシンプルな丸い卓球ボール位の大きさの球体型チョコが4つ入っていた。


「いいチョコ貰ったじゃん雅宗君〜」

「羨ましい奴め〜」


 両端から野次を突っつかれる中、雅宗は1個取り出し口の中に丸ごと頬張った。


「ん?ん〜」

「どうなんだ?味は?」

「美味いのか?不味いのか?」


 バリバリと口の中から噛み砕く音を響かせ、何とも言えない無表情で噛み続ける。


「何だよその顔……」


 そして1個食べ終えた。依然と無表情のままだ。幸久が心配そうに話かける。


「お、おい……大丈夫なのか?毒とか入れられてたのか?」


 その質問にやっと口を開けた雅宗だが……


「う〜ん普通だな」

「はぁ?」

「普通というか……予想と違うと言うか……」


 腕を組み片足を地面に何度も踏みつけ考える。


「どうゆう事だよ……」

「テレビとかでよく見る……なんだっけな〜あれだよ!あれ!人気の奴!柔らかいチョコ……名前何だっけぇ?」


 幸久が思いついたのは


「生チョコの事か?」

「そうだ!それそれ!生チョコだよ!生チョコ!それの丸っこい奴をテレビで見たんだ!それを想像して食べたら普通のチョコだったから……」


 幸久は思わず頭に手を当てた。


「お前な〜生チョコを作るのは難しいんだぞ。色々と工程があってだな〜」

「お、おい……幸久……」


 由弘が何か恐れている顔をして、雅宗の後ろに指を指す。それに気づかず雅宗は言う。


「生チョコを人生で一度は食べてみたいもんだなー!!」

「へぇ〜私のチョコでは不満だったと……」

「えっ?」


 後ろから殺気を感じるような声に雅宗が恐る恐る振り返ると、鬼のような形相で睨みつける真沙美がいた。


「ま、真沙美⁉︎い、いや!お前のチョコが不満って訳では……」


 ビシッ!


「ぐえっ!!」


 一発のビンタが雅宗の頰を襲った。強烈な一撃に雅宗は倒れた。


「痛ってぇな!!」

「ふん!!」


 怒った真沙美は歩いて帰ってしまった。



 ーーーーーーーーーーーー


 この話に幸久は涙を出しながら腹を抱えて笑っている。


「はっはっは!!やっぱりそれはお前が悪いわ!この話は!はっはっは!」

「笑い事じゃねえよ!あのビンタのせいでその日1日頰は痛いわ。電話しても真沙美が全く出てくれないわ!散々だ!」

「ケンカする程仲が良いって言うじゃん!」

「うるさい!」


 顔の涙を指で拭き取り、話題を別に変える幸久


「由弘も意外とチョコ貰ってたよな」

「あいつは何やかんやで人気らしいからな……俺と違って……」

「まぁ俺も結構貰ったけどな」

「自慢気に言うな!」


 その時雅宗はある事を思った。


 ーもう真沙美と会ってそんなに経つんだー



 ーーーーーーーーーーーー


 高校2年の頃雅宗は帰宅部であり、放課後は幸久と由弘を待つ為、よく図書室で本を読んで時間を潰していた。


 だけど7月のある日、西河先生にテストの点数が良くない者は1週間補習の刑と言われた。雅宗は授業中寝ている事が多く、テストの点数も良くなかった。

 雅宗はサボる気でいたが、どうせ幸久達を待つんだからと暇つぶしの為行く事にした。HRが終わり4時頃指定された特別教室に行くと、20人分くらいの机が配置され結構キツキツな教室であった。4時30分に始まるのに早く来すぎた為誰も居なかった。


「まぁ後ろでいいかな……」


 一番後ろの窓際の机に座った。待つ事20分が経ち、補習を受ける生徒達が続々と集まって来た。そして30分になると西河先生が入って来た。


「補習を始めるぞ」


 と教卓の前に着いた瞬間、ドアが開いた。


「遅れてすいません!」


 入って来たのはポニーテールが特徴の女子、真沙美だった。真沙美は頭は良いとは言えず、点数が高い由美とは真逆で結構頭が悪い方であった。


「いや大丈夫だ。ギリギリセーフだ」

「ありがとうございます!」


 深々と礼をし、頭を上げると真沙美は雅宗と目が合った。


「ん?」


 真沙美は笑顔で雅宗の隣の席に座った。そして小声で話しかけて来た。


「貴方が雅宗君?」

「え?き、君は由美の……」

「私よ私。由美の友達の真沙美よ!名前覚えてよ〜」

「あぁ……ごめん」


 当時の雅宗は、真沙美の事は少しは知っていた。当時から付き合っていた幸久の彼女の由美の友達とは知ってたが、名前は全く知らなかったのだ。そしてこの日始めて喋ったのである。


「君も補習なの?」

「私?うん、私もテストの点数余り良くなくて……」

「ふぅ〜ん……」


 当時の雅宗は女子と喋る事は全くなく、真沙美と喋るのもかなり気を使っていた。

 だけど真沙美は雅宗が分からない所を丁寧に教えてくれた。


「この数式は……」

「なるほど……」


 始めて女子とこんなに喋った雅宗はかなりドキドキして汗もかなり出てきた。


「汗すごい掻いてるけど大丈夫?」

「あ、いや、全然大丈夫!」


 そんなこんなで補習は終わり、雅宗は幸久を待つ為、図書室へと行きいつも通り本を読んで時間を潰すが


「雅宗君⁉︎」

「えっ?」


 真沙美が図書室に来ていたのであった。


「本読んでるの?」

「まぁね……俺はいつもここで幸久と由弘の部活終わりの待っているんだ」

「へぇ〜私もせっかくだから由美を待つんだ。その間暇だからここに来たんだけど面白い本ない?」


 雅宗は動物の図鑑などを見せる。真沙美は楽しそうに見ていた。部活が終わる6時頃までそれは続いた。そして部活終わりの幸久と由美が図書室前へと来る。


「おっ?」

「これは〜」


 幸久達が見たのは、雅宗と真沙美が楽しそう図鑑を見てる姿だ。幸久と由美はニヤニヤと見ている。


「あの2人結構お似合いじゃない〜」

「あんな楽しそうな雅宗始めて見た気がするぜ」


 そこに由弘も合流した。由美が先に気づいた。


「おっす!由弘君!」

「2人共どうしんだ?」

「来てたのか由弘。図書室を見ろよ、雅宗の奴楽しそう顔してるだろ〜」


雅宗の楽しそうな顔を見て軽く笑う由弘。


「自分で帰宅部のキャプテンと言ってた奴とは大違いだな」

「青春だね〜雅宗」


すると雅宗は幸久達の姿を発見して慌てて本を片付ける。


「ゆ、幸久!由弘⁉︎来たなら来たって言ってくれ!!」

「いや〜楽しそうでしたね〜」

「う、うるさい!!」


 由美と真沙美も楽しそうに話している。


「待っててくれたの?」

「補習終わりに待ってたんだ。雅宗君と一緒に」


 そして由美と真沙美は帰って行くがその時真沙美が振り向いて雅宗の目を見て言う。


「バイバイ雅宗君!また明日!」

「あ……バイバイ」


 雅宗は赤面で軽く手を振った、雅宗はあの時の笑顔が顔から離れなかった。もちろん今も……


 それ以来放課後は真沙美と一緒に図書室で幸久達を待つ事になった。何か話す事もあったが本を読む事も多かった。趣味が合うわけでもないが話すのが楽しかった。ただ学校の話をしたり、お互いの昔話をしたりとそれだけでかなり話せた。


 そんな事が何ヶ月も続き、気づいたら真沙美と話すも慣れて呼び方も変わって来た。

とある日の放課後、いつも通り図書室で本を読んでたら真沙美いきなり言ってきた。


「ねぇ雅宗」

「⁉︎」

「大丈夫⁉︎」


いきなりの呼び捨てに椅子から転げ落ちそうになる。


「ど、どうしたんだ⁉︎いきなり?」

「ちょっと雅宗君って言うのも何だし雅宗で言ってみようと……」


ちょっと照れ臭そうに言う真沙美。


「私の事も真沙美って言ってみて!」

「えっ……え……」

「ほらほら早く!」

「ま、真沙美……」


雅宗が照れ臭そうに言うと真沙美は笑顔で言った。


「はい!」


すると雅宗は後ろを向いてしまった。


「どうしたの?雅宗?怒ってる?」

「い、いや……怒ってはいないけど……」


真沙美の笑顔を見た瞬間雅宗の顔は真っ赤になり、恥ずかしくて前を向かなくなったのだ。その時の真沙美の顔も今でも忘れられないのである。



 ーーーーーーーーーーーー


「雅宗?大丈夫か?」


 幸久に揺らされ起きる雅宗。昔の事を考えていたら少し寝ていたようだ。


「あ……いやちょっとまた眠気が……」

「まっ、真沙美にもうちょっと優しくしてやれよ!」

「あぁ……」


 幸久はスマホを見ると11時58分と記されていた。


「もうすぐで交代時間だな……」

「あぁ……明日の俺達、どうなるんだろうな……」

「さぁな、それは誰にも分かんないさ。死ぬのも生きるのも俺達次第だ。死ぬならカッコよく死にたいけどな」

「不吉な事言うなよ」


 すると幸久は窓を開け寒い風がバスの中に入り込む中、外に体を乗り出す。思わず雅宗の眠気も吹き飛ぶ。


「おい⁉︎何やってんだ⁉︎」

「こんなに綺麗な空をもっと見たいなって」

「何だよそれ……ロマンチストかよ」

「ふっ……男はロマンチストの方がモテるんだよ」


 そして窓を閉めた。再びスマホを見ると0時になっていた。


「交代の時間だ。由弘と龍樹を起こすか」

「あぁ……」


 雅宗はぐっすりと寝ている真沙美を見て、一度


「ふっ」


 と笑い、由弘達を起こしに行った。



 この時、2月27日午前0時0分……



 そして時は流れ午前7時2分……

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