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僕らの終末旅行日記  作者: ワサオ
第1章 九州脱出編
23/124

修学旅行5日目 午後7時30分

 

 午後7時30分……


 雅宗達は一部の生徒をバスに残してデパートに食料調達へ行った。龍樹は里彦と雅宗を引き連れ100円ショップで武器を調達に行った。西河先生と幸久と伸二は日用品を買いに行き、南先生と真沙美と由美と綾音、そして由弘が食料調達に行った。だが九州が隔離地方となったニュースを聞いた人々が暴徒の如く物の奪い合いが始まった。その奪い合いに由弘達食料班が巻き込まれた。

 だがその頃西河先生達は……


 日用品を探していた。箸やコップ、絆創膏や薬など使いやすい物をカゴに入れている。西河先生は南先生に頼まれたガスコンロを探していた。幸久はチャッカマンを探していた。

 伸二はスマホでニュースを見ていた。現場の女性アナウンサーが福岡県のデパートの前で中継をしていた。大勢の人がデパートの中に入っていき、大荷物を抱えている人もいる。


「総理会見のニュースから1時間以上が経ちました。公共交通機関の停止や九州地方から出る事が禁じられ、市民の人々は限りある食料の調達為、ご覧の通りデパートには大勢の人が出入りを繰り返しております。今のところ政府は食料問題は対応中とのことです。それを聞いた人々は暴徒のように物を奪い合い、警察も各地で出動している模様です」


 場面は代わり開門橋(かいもんきょう)前、こちらも女性アナウンサーが中継を行なっていた。


「こちら開門橋(かいもんきょう)前です!30分ほど前に開門橋や開門トンネルなどの九州と本州を繋ぐ道も政府により封鎖されました!多くの市民が怒りの声を上げているようです!」


 開門トンネルや開門橋、山陽(さんよう)本線と山陽新幹線の本州へと繋ぐ道は全て自衛隊や警察により封鎖された。特に開門トンネルや橋は大勢の避難している人がいるが、橋やトンネルには車と人が溢れんばかりに溜まっている。


「本当に僕達、九州に取り残されたのか……」

「いくら嘆いてたって何も起きない。なら今出来る事をやるだけだ」

「う、うん……」

「やけに向こうの方が騒がしいな……」


 向こうとは食料コーナーの事だった……



 ーーーーーーーーーーーー


 一方由弘達は……


「くっ……どうすれば……」


 男達数名が由弘達を囲んでいる。すると……


 パンッ!!


 と銃声のような音が店中をこだました。


「なんだ⁉︎今のは⁉︎」


 驚いた男達が後ろを振り向くと……


「さぁ!そこを退いてもらおうか!おっさん達!!」


 それはドヤ顔で緑の棒を持ち、銃を上にあげて撃った雅宗であった。龍樹と里彦も雅宗同様緑の棒を何本も持っている。いきなりの登場でびっくりする由弘達と周りの人達。


「ま、雅宗⁉︎なんだその銃⁉︎それにその棒……」

「この武器は100円ショップで買ったんだよ!」

「100円ショップ⁉︎」



 ーーーーーーーーーーーー


 10分前……雅宗達は武器となる物や役に立つ物を物色していた。龍樹は1人でうろちょろしている。雅宗と里彦はコソコソと話している。


「武器って言ったってゾンビと戦うつもりなのか……」

「さぁね……でもあって困る物でも無いしね」

「でもな映画みたいに銃で倒せれば困らないんだけどなぁ〜」

「日本は銃はダメだからな……」


 そう言っていると、龍樹が何やら緑の棒を持ってきた。


「これは使えそうだ」

「何だこれ?」

「支柱だ」


 龍樹が持ってきたのは園芸などに使われる1m以上ある緑色の棒。それが支柱(しちゅう)である。先端が尖っており武器に最適である。


「もう一つはこれだ」

「銃⁉︎おもちゃの?」

「そういえば昔よくこれであそんだな〜」


 雅宗が言った通りおもちゃの銃であるが、これは火薬が多少含まれており、撃つと大きな銃声のような音が出て銃からは少し煙が出る。


「これは何に使うんだ?」

「主に威嚇に使う。これで少しは怯む筈だ」


 龍樹が説明していると下の階から叫び声が聞こえて来た。物資の奪い合いが始まった。


「何が起きてるんだ⁉︎」

「ニュースを聞きつけた奴らが食料確保に来たんだろ。醜いもんだ」

「でも何でこんなにも焦っているんだ」

「俺達を含め九州にいる人間はこの大きな島に取り残された。政府が物資を持ってくるとしても限度がある。1度に九州全員の食料を運ぶなんて無理だ。雪とは違うんだよ……規模が……」

「なら由弘達も危ないんじゃ……」

「……急いで行くぞ。これも買うんだ」

「これは……」


 ーーーーーーーーーーーー


 バットを震えて持って怯えた表情をした中年男性がバットを構え雅宗に突撃する。


「うわっ!!」


 すると龍樹が前に出て支柱でバットを弾き飛ばし、中年男性の腹を膝で蹴った。


「ぐはっ!!」


 中年男性は腹を抑えて地面に倒れた。この光景で周りの奪い合いをしている人達も静まり返った。


「お前、何を⁉︎」

「俺が守らなかったらお前はバットで殴られてたかもしれないんだ。相手が戦う姿勢を見せたら容赦なく倒せ……それが俺の戦い方だ」


 周りを確認した南先生。みんなに号令を出す。


「みんな行くわよ!!」

「先陣は俺に任せろ!!」


 雅宗と由弘が先頭に立ち、レジに向かい一万円札を投げた。


「お釣りはいらないわ!!」


 人でごった返し、物が散乱しているデパートの中をカートを押しながら走り抜ける南先生達。途中日用品のコーナーに立ち寄り、西河先生達も呼び込む。


「西河先生⁉︎急いでバスに戻るわよ!」

「も、もう?」

「お勘定を済まして早く!!」


 南先生に急かされる西河先生、財布から丁寧にお金を数えていると


「これでいいわね!!」


 また南先生が1万円札を誰もいないレジに叩きつけた。唖然とする西河先生。


「行くわよ!」


 全員デパートから出てバスの方へと走って行く。道中幸久は南先生に聞く。


「食料買えましたか⁉︎先生!」

「何とか買えたけど……」

「早くここから出た方がいい……暴徒だ……早く逃げるぞ!!」


 雅宗の言葉に幸久は頷き、一行はバスへと戻る。



 ーーーーーーーーーーーー


 その頃バスの中……


 雪菜が窓を開け、ポケットからタバコを取り出し吸い始める。その姿に蒼一郎は怒りを声をあげる。


「タバコ吸うの辞めろ!煙たくてしょうがない!」

「いいだろ!窓開けてるんだからよ!教頭も何も言わないしよ!」


 蒼一郎が教頭を見ると、教頭は頭を抱えて震えている。どうやらこの状況にビビっているようだ。


「役に立たない教頭め!」


 雪菜は前の方にいる落ち込んでる優佳の方に目を向ける。


「おい!優佳って言ったな!」

「うん……何?」

「お前、親と離れたって言ってたな。そんなに親が大事か?」

「大事だよ……家族だもん」


 雪菜はタバコを外に投げ捨てた。


「親が大事なんて変な奴だよ」


 優佳は雪菜の言葉に後ろを向き話す。


「あなたは親が大事じゃないの?」

「あたしは親が嫌いさ。あんなくそったれな親が……」

「どうゆう事……?」


 雪菜が口を開こうとした瞬間、南先生と西河先生がカートを押しながらバスに向かってきた。

 生徒達は全員乗り込み、そして買った物を全て空いている座席に詰め込みカートをそこら辺に投げ捨てた。


「出発してください!何処でもいいから!!」

「は、はい!!」


 するとバスに先程、由弘達へ襲いかかろうとしていた中年男性1人がバットを持って追いかけてきた。


「それを寄越せ!!!」

「させるかっ!!」


 最後尾にいた雅宗が支柱の尖っていない反対側を持ち、男性の腹を強く突く。男は吹っ飛びその間にバスに乗り込む。


「今のうちに発進を!」


 ドアは閉まり、バスは発進した。無造作に止められた大量の車の間を潜り抜けデパートを出る。デパートの外は大勢の人がデパートに押し入ったり、コンビニや小さな商店からも食べ物を求め、奪い合いが起きている。


「今から何処に向かえばいいんだ……」


 悩む西河先生、そこで後ろから声が


「なるべく高い山だな……」


 龍樹だった。そして龍樹は語り出す。


「高い山?何故だ?」

「山の上なら人も少ないし、ゾンビも少ない。そこで一晩は過ごせる」

「まさか野宿するつもりか⁉︎」

「あぁ……むやみに動いてもバスの燃料が減るだけだ。なら安全な場所で正確な情報を集め、人目を避ける。それが一番だ」


 するとバスの運転手が大声で言う。


「なら霧島山(きりしまやま)高千穂峰(たかちほのみね)に行きましょう!そこなら安全なはずです!」


 霧島山は鹿児島県と宮崎県に広がる火山群の総称である。雅宗達はその山の2番目に高い山である高千穂峰に向かおうとする。標高1500mもある山。


「お願いします!霧島山に!」


 一行は霧島山の高千穂峰へと向かい、一晩過ごす事となった……



 この時、午後7時57分……


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