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僕らの終末旅行日記  作者: ワサオ
第1章 九州脱出編
20/124

修学旅行5日目 午後0時24分

 

 午後0時24分……


 ホテルを脱出した時忠高校一行は何処かへと向かっている。生徒達は安堵の表情になり椅子に座るが、幸久はいくつもの疑問が浮上した。その1つとして、まずポニーテールの女の子のことを雅宗に聞いた。


「雅宗、何個か質問があるんだが……」

「な、何だ……」

「あの子、誰だ?」


 気まづい表情で言う雅宗と幸久だが女の子は雅宗の隣に座っていた。そして笑顔で挨拶をした。


「私は河村優佳(かわむらゆうか)。確か昨日の夜に帰る途中、変な人達に追われて高見橋の土手を走ってたら転がり落ちちゃった。気づいたら雪は降ってるし、変な人達にまた追われるし、街は静かだし訳が分かんないよ‼︎」

「実はだな」


 幸久はこれまでの経緯を説明した。


「本当にぃ〜?なにそれ映画みたい‼︎実は撮影中ってオチ?」

「映画でもないし、撮影中でもないし、自分のスマホで見てみろ‼︎」


 優佳はおもむろにスマホを取り出す。すると充電は20%を切っていた。


「あっ、充電がやばい……」

「僕、持ち歩き充電器持ってるよ」


 後ろから伸二が持ち歩き充電器を持って来た。優佳は素早く取り、充電を開始した。


「ありがとう、太っちょ君‼︎」

「ふ、太っちょ……」


 伸二はトボトボと猫背になりながら自分の席に戻って行った。そして優佳がネットで色々と調べている間、真沙美は雅宗の隣に座っている優佳の事が気になってしょうがない。後ろから執拗に確認するが頭しか見えず顔が全く確認出来ないのだ。由美がその様子に気づく。


「真沙美どうしたの?」

「い、いや‼︎な、なんでもないよ‼︎」

「まさか、雅宗君の隣に座ってる子が気になるの?」

「そ、そんな事ないわよ‼︎」


 慌てふためく真沙美に分かりやすい性格だなとニヤリと微笑む由美であった。

 綾音の後ろの席の雪菜は綾音がいる事が気に食わない様子だ。


「なんでお前がここに居るわけ?押入れにいたはずじゃないの」

「みんなが、助けてくれた……」

「はぁ?どうゆう事だよ?」


 すると斜め後ろの席の蒼一郎が話に割り込む。


「そのまんまの通りだ。俺達があの感染者の中、その子を助ける為に鍵を取りに行った。その帰りに……秀丸が」


悔しそうに拳を握りしめる蒼一郎。だが、雪菜は御構い無しに舌打ちをした。


「ちっ、ふざけやがって」

「お前があんな事しなければ、秀丸は今も‼︎」

「やめろお前達‼︎こんな時に、喧嘩してる場合か‼︎


 2人が喧嘩を始めそうな雰囲気になり幸久が止めに入る。南先生と西河先生が雪菜を抑え、里彦が蒼一郎を抑えた。


「とにかく落ち着け‼︎お前もだ、蒼一郎‼︎お前の怒りは充分伝わるが今は冷静になれ‼︎」


そんな中、前方では優佳が1人スマホを見ながら驚いていた。


「マジで⁉︎」


 あまりの大声に隣の雅宗は耳を塞いでいた。感染の事はすべて本当であり、鹿児島の封鎖の事も知り、優佳は絶句した。


「……うるさいなぁ」

「これ、本当なの……」

「あぁ、今起きてる事は全て本当だ。この事で俺達の学校の生徒は何人も死んだ……」

「わ、私親に電話掛けるわ‼︎」


 雅宗は説明に、優佳は親に電話を掛ける。


「うん、うん、分かった。私の部屋から荷物何個かお願いね、分かった。また後で会おうね……」


 先程と違い、喋り方が優しくなり、そして電話を切って深く息を吐く。優佳は教頭に聞く。


「おじさん?このバス、どこに行くの?」

「お、おじさん⁉︎わ、私はおじさんじゃなく、教頭だ‼︎」

「どっちでもいいから教えてよ〜」


 怒る教頭だが、南先生が前に出て話し始める。


「みんな‼︎このバスは今、志布志港に向かっているわ‼︎」

「志布志港?」


 志布志港は鹿児島県の志布志市に面する港であり、宮崎県の串間市の隣にある。南先生は更に詳しく話す。


「志布志港に大型テントが張られていて、そこで検査をして異常がなければ船に乗れるわ」


 優佳はホッとした。


「良かった、私の親も志布志港に向かうって言っていたから……」

「でも結構時間が掛かるみたい、そこは今鹿児島県で唯一使える港で大勢の人が押しかけて、かなり時間が掛かるみたいで」

「時間結構掛かるのか……」


 その時、伸二はふと窓から外を見ると


「あ、あぁ……」

「どうした?」


 顔が真っ青になる伸二。里彦も外を覗くと、車が電柱にぶつかり故障し、そこに感染者達が群がり、その車の中からは小さな子供と親子が必死にバスを見ながら窓を叩いている。

里彦は伸二の顔をバスに戻し、軽く顔を横に振った。


「諦めろ、無情だの悪魔だと思われるが、もう無理だ……」


 そして車の窓ガラスが割れ、感染者が車の中に一気に入り込んだ。里彦はその光景を見る事は出来なかった。


 バスは街を抜け、鹿児島湾の吉野町海沿いを走る。走り続ければ鹿児島市の隣にある姶良市(あいらし)に到着するが、志布志市まではまだまだ掛かる。

 一度外を見れば感染者が歩いている。雅宗達は外を見ないように窓のカーテンを閉めた。



 生徒一同は、昨日や今日の疲れからか殆どが眠りについた。


 この時、午後0時36分……



 バスは静かに進み志布志港を目指す……



 そして時は進み午後2時19分……



 場所は志布志市内……

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