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僕らの終末旅行日記  作者: ワサオ
第1章 九州脱出編
13/124

修学旅行5日目 午前7時32分

 

 午前7時32分……


首相の会見ニュースを見て多くの生徒は、自分の親に連絡を入れた。または、親からの連絡が来るものもいた。

生徒達の心配や不安が募る中、親は自分の息子達に電話を掛けて、安心を図ろうとした。


 そんな中、806号室の雅宗達は廊下を封鎖する為に有志を集める事にした。

まず雅宗は同じ部屋にいる里彦と伸二にこの事を話した。


「……8時から8階廊下をこのベッドで封鎖する。その為、仲間が欲しい。手伝ってくれるか!?……絶対とは言わない」


言った直後に里彦が手を真っ直ぐに挙げて、真剣な表情で雅宗に言う。


「先生の案か?」

「いや、俺達生徒が独断で決めた事だ」

「そ、それは大丈夫なのか⁉︎勝手にやっても?」

「ここで地道な行動をするより、一気に行く方が大事だ‼︎昨日のようにな‼︎」

「……分かった、なら俺は行く。ここから脱出する為に‼︎」


 真剣さを伺えるほど、真っ直ぐとして言い方に雅宗は頷いた。伸二はもじもじと迷っている。


「僕は……」

「無理にとは言ってないさ」


 優しく言う雅宗。伸二の答えは。


「僕は、やめておく……かな」

「分かった……なら里彦‼︎出来るだけ、ほかの部屋の連中にも連絡しろ‼︎今の作戦の事を‼︎」

「分かった‼︎」

「この作戦は多くの生徒の力が必要だ……絶対に成功させてやる……」


強く意気込む雅宗。その姿に里彦も頑張りを見せ、多くの生徒へと必死に説得しながら連絡した。


 ーーーーーーーーーーーー


 809号室……


 同時刻、幸久も由弘達に作戦を説明する。


「なるほど、ベッドで廊下を封鎖か。確かにそれなら安全に非常階段を下れるな。俺は参加させてもらうぜ‼︎」


 由弘は自分の胸を1発叩き、作戦に参加する事を決めた。


「俺はごめんだな」


 嫌そうに言ったのは、壁に寝そべってる龍樹であった。


「俺は昨日ので疲れたんだ。休ませてくれ」

「こんな時に何を‼︎」


 龍樹の言葉に怒る由弘だが、幸久はそれを止めた。


「いや、やるもやらないのも自由だ。奴の好き勝手にさせてやれ。それと由弘、他のクラスの連中にも連絡してくれ。俺も連絡する。少しでも多くの力が欲しいからな」

「分かった」


 そして西河先生が疑問に思った事を聞く。


「お前達、教頭からの許可でも貰ったのか?」


 その質問に幸久は真剣な表情で答えた。


「いや、俺達の独断です‼︎」

「何⁉︎」


すると西河先生の表情が変わり、穏やかな顔から無表情になり、不穏な空気になる。


「今、お前達がやろうとしている事を分かっているのか?」

「分かってます……危険なのは承知ですが……」

「その危険に自分から行くのがダメなんだ‼︎今は安全を考えて……」

「その安全が今、どこから出てくるのですか先生‼︎先生見たはずです。1階の惨劇を‼︎そんな中、我々はどうやって1階へと行く気ですか⁉︎」

「だからと言って、生徒達を危険な目に合わせる訳にはいかないんだ‼︎」

「7階には女子生徒達もいます‼︎それに、他の生徒達の士気も下がっている……このままで居れば俺達は野垂れ死ぬか、感染者になるかの二択になる‼︎」


幸久の言葉に、西河先生は呆れて何も言えなくなった。


「だから俺はなんも考えてないあの教頭に変わって、自分達の手で道を開く‼︎」

「分かった。先生達も手伝う。だが、失敗は許されないぞ」

「はい!!」


 ーーーーーーーーーーーー


 時は進み、午前7時58分。


 8階のほとんどの部屋に連絡が行き渡り、多くの生徒達が作戦に参加する事が決まった。多くの生徒はホテルにゾンビ達がいることは知らなかったが、連絡で無理やり知る事となった。中には納得のいかない生徒も多く、説得に時間が掛かったが何とか幸久や雅宗達が説得した。

そして幸久と雅宗は電話しながら作戦開始前に最後の確認をする。


『今から始める、1発本番‼︎失敗は許されんぞ』

「もちろんだ‼︎指揮を頼むぜ幸久‼︎」

『おう‼︎』


 午前8時……作戦が開始された。

 初めに幸久が1番非常階段に近い810号室に連絡する。


「義明、廊下にゾンビ共がいないか確かめてくれ……いたらすぐに連絡し、部屋に戻れ」

『分かった……』


 810号室の部屋長北村義明(きたむらよしあき)はゆっくりと部屋のドアを開け、廊下を確認した。廊下は何も無く、部屋の前にはゾンビに食われた光吉の死体だけだった。義明は死体が目に焼き付いた。


「何だ、あれ……まさか」


 この状況を電話越しに幸久は瞬時に気づいた。


「見るな‼︎義明‼︎状況を伝えろ‼︎」


 義明は口を押さえて我慢をした。そして状況を伝えた。


『な、何にもいない……あるのは死体だけだ……』

「分かった。部屋に戻って、休んでくれ……」

『すまない』


 義明はゆっくりとドアを閉めた。そして幸久はすぐさま201号室に連絡した。


「次は801号室だ。ベットを廊下に置け‼︎」


 801号室の生徒達は声をなるべく出さないようにしてベッドマットレスを2個を部屋から運びマットレスを横にし、廊下に配置した。マットレスは軽く1人でも簡単に運べる。2列にする様に並べたが、これだけでは簡単に押し倒される。


「次の部屋行け‼︎」


 どんどん部屋からマットレスを出して並べていき、6個を列にする様に並べた。


「俺達も行くぞ‼︎」

「おう‼︎」


雅宗と里彦も参戦し、その6個のマットレスの上に更にマットレスを2個程乗せる。


「他のクラスも来い!!」

「俺達も続け!!」


由弘や西河先生、南先生も加わりマットレスは10個を超えて高さは2mを越し、厚さも3・4mにもこれでゾンビ達からは生徒達の姿が見える事はなくなり、こちら側には通れなくなった。みんなは大いに喜んだ。雅宗と由弘も再会を喜び合った。


「由弘大丈夫だったか?」

「全然平気だ。お前こそ!」


 西河先生は先生の死体に布団を被せていた。血が滲み、異様な匂いを発するが嫌がる素振りを見せずに。そして先生らと一礼した。


「先生達、すみませんでした……」

「……これはしょうがない事だ。あまり重く受け止めはダメだ」

「……」


 西河先生は幸久の肩に手を置き、優しく言葉を掛けた。

 そして他の生徒が、部屋の机2個を横に倒し重り代わりとして配置した。その他にも重そうな音を重り代わりに置いた。

 幸久と雅宗、由弘3人が約12時間ぶりの再会を喜んだ。幸久が最初に口を開く。


「こんなに長く感じたことは無かった、本当に元気で良かった……」


 幸久の言葉に雅宗も元気そうに言う。


「当たり前だ‼︎そう簡単には俺達は離れねえって‼︎」

「そうだな。あんな奴らに負ける訳がないさ」

「あぁ、そうだな」


 元気そうな2人を見て幸久も安心する。

そして幸久は男子生徒全員を廊下に呼ぶ。そして先頭に立ち、注目を集めるように勢いよく言い放つ。


「説明が遅れたが、俺が中村幸久だ」


 騒めく廊下、生徒達は一斉に幸久の方へと向く。南先生が割り込もうとしたが、西河先生に止められた。


「西河先生!」

「今は彼に話をさせてあげましょう。彼が一番状況を把握していますから」

 

 騒めく声を無視するように今までの事をもう一度話す幸久。街もホテルもゾンビがいる事や鹿児島県は隔離区域に指定された事、死んだ生徒がいる事も全部話した。


「これが今の状況だ‼︎死んだ仲間もいるが悲しんでいる場合ではない‼︎午後にはバスが来る‼︎そして俺達はそこにある非常階段で脱出する‼︎分かったなみんな‼︎」


 また、ざわざわしていく廊下。いきなり言われても分かんねえ、状況が理解出来ないなど、多くの反感を買うが幸久は御構い無しに、更に強気で言う。


「生き残りたいのはみんな同じだ。だけど今は力を貸して欲しい」


 未だ騒つく廊下、すると里彦は手を挙げた。


「君は?」

「俺は松村里彦」


 里彦は騒つく廊下の生徒達のほうに振り返り、苦しい気持ちを抑えて昨日の事を生徒達へと伝えた。


「みんな聞いてくれ……俺は昨日はお土産を買いに行った帰りに、コンビニへ寄った。だがその時にあのゾンビ達に襲撃され友達を1人殺されてしまった。目の前で、友達が助けを求める中、俺は怯えてトイレの中に隠れるしか無かった……」


 里彦の話の前に廊下は静まり返る。さっきまでうるさかったのが嘘のように静かになった。里彦の話は続いた。


「俺はこのまま終わるかと思った。ずっとトイレの中に居るのかと思った。だがそんな時、あいつが来た……」


 里彦が指した先にいたのは雅宗だった。生徒達も一気に目線を雅宗に合わせ、いきなり指されてちょっと驚く雅宗だった。


「俺?」

「須藤雅宗、お前だった。こんな俺に勇気を与えてくれた。そしてゾンビに襲われそうになった時も助けてくれた。だから今もここに俺がいる。だから今は助け合ってみんな励まし合い、この状況を生き抜こう‼︎そしてみんなで学校に帰ろう‼︎」


 するとさっきまでうだうだ言っていた生徒達は静か拍手を始めた。そして幸久が前に出て叫ぶ。


「そうだ、みんなで協力しなければ帰ることは出来ない‼︎みんなで帰るんだ‼︎次は7階にいる女子生徒を救出するんだ、みんなで‼︎行くぞ‼︎」


 すると8階の男子生徒は全員で大声をあげ、士気が上昇する。

 龍樹も部屋の中で静かに微笑みながら寝転がってたいた。


「ふっ、意気込みがいい奴らだぜ」


 伸二も部屋のドア前で静か見ていた。


「帰れたらいいんだけどね……」


 南先生達は生徒達の話を聞き、心打たれていた。


「私達は乗り越えなければ行けない、恐怖や絶望から助け合って行かなければ行けない……」

「こんな中で生徒達がここまでの団結力を見せるなんて」

「みんなの気持ちが一つになったのでしょうかね……」

「ですけど教頭はこれをどう見ますかね……南先生」

「あの教頭の事です、あまりいい顔はしないでしょう」


 廊下の大声に流石の教頭も気付き始めた。


「何だか騒がしいですね……」


 この時、午前8時19分……

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