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僕らの終末旅行日記  作者: ワサオ
第1章 九州脱出編

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12/127

修学旅行5日目午前7時14分

 

 午前7時18分……


 809号室……総理の会見後、幸久達は南先生らと今後の方針について話し合っている。最初に幸久が話を切り出す。


「今の俺達は緊張隔離区域の鹿児島県の中央にいる事になる。しかも1番感染者が多い場所に」


 そのことに南先生も口を開く。


「その感染者はまだ少ないし、自衛隊が助けに──」

「そもそも救助が来れるかすら分からないのにか?」


 南先生にタメ口で口を挟んで来たのは、ベッドで寝そべってる龍樹である。


「こんな雪が降って危険な場所、好き好んで救助に来るバカはいねぇよ」

「口を慎め龍樹‼︎こんな状況だ。誰しも最善の答えを出すのは難しいんだ」


 この状況にキレる龍樹、そしてその態度に怒りを表す由弘。一触即発しそうな状況にあたふたする南先生。


「……はい、はい‼︎分かりました‼︎それでは」


その裏で部屋の隅で電話していた西河先生。ペコペコと頭を下げて電話を切った。


「教頭先生から連絡が来ました。バス会社に連絡して午後までには来てもらえるとの事です」

「来てくれるんですか⁉︎こんな状況で?」

「はい‼︎救助の代わりに来てくれるとの事です‼︎」


バスの馬力なら雪の中を走る事が出来、更に一度に大量の生徒を乗せることが出来る。それは、現状一番の最善の策である。

 そして幸久が冷静に言う。


「……バスに来てもらうのはいいかも知れませんがどうやって下まで行くんですか?このホテル内で」

「そ、それは……」

「自分で体験してないから言えるんだ、簡単には行けねぇんだよ」


 再び食ってかかる龍樹。すると幸久のスマホがなる。その人物とは……


「……これは」


 ーーーーーーーーーーーー


 ホテル1階女子トイレ


 雪菜が個室トイレに座り込んだまま寝ている。トイレの中は暖房は効いておらず、あまりの寒さに目を開けると目の前にはトイレのドアがあった。


「あれ、あたし……いつの間に……」


 ゆっくりと立ち上がり、個室トイレのドアを開ける。そして手洗い場で鏡を見ると自慢の金色の毛が掻きむしったかのように乱れており、綺麗な顔は未だ青ざめている。そして雪菜は昨日の出来事が本当だった事を実感する。


「やっぱり本当だったのか、昨日の事……」


 手を見ると小刻みに震えている。昨日の取り巻き達の事が頭をよぎる。


『ゆ、雪菜……助けて』

「何であの時……」


 助けを求める声や悲痛な声、全てが脳内に残ってループの如く再生される。まるで、自分自身を同じ場所へと引きずり込もうとするように。


「や、やめろ‼︎私の頭の中から出て行け‼︎」


 頭を抱えて取り巻き達の声を追い払おうとする雪菜、トイレから出てホテル1階ロビー付近の廊下に出る。


「え、これ……何……」


 血まみれの残忍な光景が目の前に広がって、雪菜の思考回路を一時ショートさせる。


「はっ、あれは?」


 気を取り直し、廊下の奥を見ると女子生徒感染者とホテル員感染者が徘徊していた。

 その瞬間、雪菜は思い出した。取り巻き達を殺した奴らの特徴を……白い肌、血まみれの姿。


「まさか、アイツらが」


 雪菜は更に取り巻きの真矢が殴った時、一切ダメージを喰らわなかった事を思い出し、今の自分では勝てない。それを察してすぐにトイレに戻った。トイレのドアに背を掛けて頭を抱える。


「何なんだよ、こんな所にいるなんて……遥子」



 ーーーーーーーーーーーー


 7階705号室……


 暗闇の押入れの中で一晩を過ごした綾音。寝そべっている中、寒さに震えて目を覚ました。だが、起きて最初に思った事は出たいというより、別のことだった。


「メガネ、私のメガネ……」


 それはメガネであり、綾音にとってはメガネは生命線とも言えた。そして暗闇の中、必死でメガネを探す綾音。


「あった……」


 メガネを見つけて付けるが、綾音は部屋に違和感を感じた。


「人の気配がない……誰もいないの?」


 押入れからは部屋の音が一切聞こえず、朝食を食べに行ってると思い込んでいる。綾音だけ、この状況をまともに理解出来てないのだ。


「私もお腹減ったな……」


 お腹を摩るとゴロゴロ〜とお腹の鳴る音が押入れに響き渡る。


「昨日の出来事は何だったんだろう?早く出たいよ……」


 ーーーーーーーーーーーー


 8階806号室の雅宗は再び幸久に電話を掛ける。


「幸久‼︎さっきの会見見たか⁉︎」

『もちろんだ』

「先生達は何か連絡は?」

『教頭が午後にバスが来るって……』

「バス?」


 しかめっ面になる雅宗。


「簡単に言ってくれるぜ、あの教頭。こんな状況でバスなんかが」

『俺もそう思うんだが、バスの馬力なら雪の上をある程度は進めるみたいだし、一応は来れるようだ』

「だとしても、一階にはどう行くんだよ」


幸久も頑張って1階に行く方法を考えた。


『たしかに、何とかして1階に安全に行ける方法があればいいんだが……』

「安全に行ける方法か、ちょっと待てよ⁉︎」


 とある事を思いついた雅宗は電話を切らずに、部屋の中を探し回り、とある物を見つけた。


「幸久‼︎あったぞ」

『何か見つけたのか?』

「これだよ、これ‼︎廊下の間取り図だ!!」


 雅宗が幸久に伝えたのは、廊下の間取り図だった。それは8階廊下の部屋番号やエレベーターの場所が示されている。雅宗が目をつけた所とは。


「非常階段だ‼︎」

『非常……そうか‼︎非常階段って手があったか‼︎』


 非常階段とは火災などの非常時に使用される外に設置されている階段である。

 このホテルの非常階段は廊下の隅にある810号室の隣に壁に設置されている。だが1つ疑問を言う。


『でも問題はもしゾンビ達が来たら……』

「何とか壁か何かで防げればいいんだが……」


 新たな課題に悩み、更に部屋を見渡す雅宗。するとある物を見つけた。


「これだぁ‼︎ベッドだよ‼︎ベッド‼︎」

『ベッド……そうか壁になる』


 ホテルのベッドは縦約2m程の長さがあり、横約1m程あるベッドもある。


「これを横にして廊下に置けば少しは時間稼げるはずだ‼︎」

『いい案じゃねえか……雅宗』


名案だと、ニヤリと笑う幸久。


『雅宗……やるか‼︎』

「でも勝手にやっていいのか?」

『あの教頭を信じるよりかいいと思うぜ』

「たしかに」


 こうして2人は8時頃に決行する事に決めた。


 この時午前7時32分……




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― 新着の感想 ―
[良い点] 緊張感があって良いと思います。 [気になる点] 初期のゾンビ騒動で亡くなるモブキャラは名前を出さずに「〇〇の取り巻き」みたいにぼかして書いて、人物名を減らすと読みやすくなると思います。 …
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