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担任と委員長

にっわ!


これはこれは・・・。

俺の職業は神魔騎士で、固有スキルが神魔槍。これら二つは俺が日本一にまで上り詰めたゲームで使用していたキャラクターの職業と専用スキルだ。世界で一人しかいない固有職業である神魔騎士。それがこの世界でも使えるとなれば・・・そうとう強いはず。


「どうだった?無理強いはしないが、教えてくれると助かる。今後の配属に役立てたい」


王様が再び近寄ってくる。

若い男の説明が正しければ、この世界では職業と固有スキルがものを言う世界だそうだ。もちろん努力すれば何者にも勝る力を手に入れられるし、職業も進化するそうなのだが、初期位置で成長速度は大きく変わるとか。

まぁその点で言ったらこのクラスは大丈夫だろう。


このクラスにいる大半のやつらの職業はなんとなく分かる。


あとは、俺のように特殊な職業、固有スキルを持ったやつがいないかどうかだが・・・・・・。

む、米林の様子がおかしいな。少し声をかけてみるか。


「米林、どうだった?」


「あ、横井君。あはは、僕かなり弱いみたいだよ。ほら」


米林からステータスカードを渡される。

そこには

『氏名:米林 元春 職業:学生 固有スキル:完全解毒』

と、書かれてあった。


俺と同じタイプでは無かったか。

まぁそれはいい。だが、このステータスは・・・・・・


「・・・かなり使えるな」


「え?」


「考えても見ろ。この世界ではお貴族様がいる。毒殺などの危険がある世界だ。それを完全に無くせるとなれば、この城での需要は凄まじいぞ。米林にしかできない役割になる。それに、これがもしも毒沼や毒地なんかを浄化できたとしたら・・・貢献値はとんでもない事になる」


実際のところ、俺のような戦闘特化は命を懸けて存在意義を証明しないといけないので、厄介職だったりする。その点、米林は自分の身一つ、それも事前準備無しで仕事が出来る。亜美とともに医療現場に行っても使い道があるのだ。


「おぉ、なるほど~。・・・・・・僕も頑張ってみよっかな~」


小さく拳を作ってガッツポーズする米林。

この男は特に秀でたものはないが、善悪のうち98%を善が占めるほどの男。ある意味異常者だ。それでいて、度胸がある。以前、このクラスが米国大統領と謁見し、その場で揉めていた臣下と大統領の間に割って入り、和解させた男。

誰よりも優しい心で、和解に導く才能を持つ。


・・・まぁ、こいつにその自覚はないんだがな。


Aクラスになれたのが不思議で仕方ないといつもこぼしているが、仲介人として大人気の男がBクラスではまずいだよな、これが。彼の信者が許さないから。



その後も数人に声をかけてみたんだが、俺と同じタイプの奴はいなかった。基本みんな向こうの世界で一流と称された得意分野で選ばれていた。


・・・もしやとは思うが、俺の一番の取り柄はゲームだから、そのキャラクターって事なのか?そんなことがあっていいのだろうか。それでは俺がズルしてるみたいな・・・。


「さて、みなの者。勇者はそれぞれに価値がある。私の命令だ。国賓級の扱いを心掛けろ、いいな?」


ほうほう、国賓級ねぇ。

貴族社会は大変だな。王よりも上にはできないのは当たり前だが、目の前のヤバイ女性に脅されている以上無下にはできない。国賓ってのも苦し紛れだろう。絶対に文句言われるだろうからな。

それに、この国にこれだけの人間に国賓レベルの食事を用意できるとは思えない。備蓄や狩りをしたとしても数ヶ月ともたんはず。


「勇者の人数を把握していなかったがために、部屋数が足りない。すぐに新たな宿泊施設を建てるが、それまでは数人で一つの部屋に住んでもらうことになる。申し訳ない」


なるほどねぇ。

こりゃこりゃ、ありゃりゃ。


「一部屋に一人給仕を付ける。困り事があれば彼女達に申せ。大体の望みは叶うはずだ」


ひとまず、部屋割りをしてから部屋に行くことに。

俺は亜美と一緒だ。間違いが起きようが自己責任。うちの担任はそのへん適当だからな。他の教師が「風紀が乱れている!」と喚こうが、あの担任は気にしないタイプなんだ。


そしてその担任から

「お前と委員長、あとで私の部屋に来い」

というお達しが。


計画立てかな。


まずは亜美と共に自室に向かい、荷物を下ろす。

バスに乗せてたバックはなぜか俺達の隣に落ちてた。単なる事故で飛ばされたわけではないことの証明だな。バスは来てないのに荷物だけあるとは。

今日の夜は昨日と別のホテルに泊まる予定だったので、運良くキャリーバックがある。あるかないかでだいぶ差があるからな。少し安心だ。


確認してみたが、携帯は使えない。

電源すら入らない状態だ。なにかしらの制限がかけられたんだろう。


「一緒の部屋になれて良かったね、新一」


部屋に入るやいなやそんなことを言う亜美。

いい笑顔ですね。


「だな。良かったよ。よくも知らない男子生徒と一緒に過ごすのは御免だからな」


ちょっとだけ亜美とイチャイチャしてから、部屋を出て担任の部屋に向かう。気を引き締めていかないとな。

途中で委員長と合流して駄べりながら進む。赤い絨毯と天井から照らす眩い光。なんというか、城って感じだわ。


ドアをノックすると

「入れ」

と、短い返事が。


この人に限り一人部屋だ。

遠慮なく入る。


「意外と早かったな。どこでもいい、座れ」


座れと言われても、椅子やら座布団やらは無い。仕方ないから地べたに座る。先生は椅子に座って足を組んでいる。スカートでは無いので俺達がもやもやすることも無い。楽しめないといえば楽しめないがな。


「私なりに色々考えてみた」


ほぉ?


「しばらくはここの連中の言いなりになってやる。だが、不満があればその都度アドバイスをさせて頂くことにする」


肉体的に刷り込ませるタイプのアドバイスですな、分かりますぞ。

つまりだ、苛められたら上下関係を教えて差し上げるから相談しろってことだろうな。


「ま、お前らがそこで遅れをとるとは思わんがな。私からお前らに命令することは一つ、裏からの侵略を進めろ」


裏支配するってことね。


この世界の常識がわからない以上派手には動けない。

だからこその俺たちだろうな。


「横井がよく分からん職業で助かった。お前には向こうの世界で行っていたことをこの世界でも担当してもらう」


俺の得意分野、情報収集だ。


課金するための金を稼ぐために始めた仕事だったが、これまた稼げる稼げる。なんというか、才能があったようだ。


「委員長はまず、騎士達の信頼を得ることからだな。こちらはまぁ簡単だろう。武勲を立てればいいだけだからな」


「分かりました。・・・もう既に騎士の一人から話を聞きましたが、案外好感触でした。この国は実力至上主義らしく、先生の評価は非常に高かったです」


相変わらずはやいな。

俺イチャついてただけなんですけど。


「そうか。私たちにとってはいやすい国かもな。私は明日から騎士団とともに訓練に入る。お前らはどうするつもりだ?」


「僕はまだ見ぬ宰相に会ってきます。しばらくは宰相と近衛騎士との信頼関係を築きにかかろうかと」


委員長は仲良しを目指すらしい。


俺達の安全が確保されるまでは俺達も警戒心マックスでいさせてもらう。危なくなった時に乗っ取ることが出来るまでに持っていく。


「俺は外に出る」


その言葉に担任の目が鋭くなる。


「なに?何を考えてる。外は何がいるかわからん。危険だ。魔物とやらが潜んでいるんだぞ」


その考えはもっともなんだが・・・。


「俺は自分の力について確かめに行くんだよ。これは必要なことだ。是が非でも認めてもらう」


「理由はそれだけか?」


「明日一日だけならな。その後は食料の確保が目的だ。神谷の農作業が実るのは時間がかかる。それまでの食い扶持稼ぎをせにゃならん。間に合わなくなる前にな」


それについては担任も考えていたのか、短い舌打ちをした。怖いわ。


「お前を一人にするわけにはいかん。少なくとも今はな。・・・今日の深夜、私、お前、委員長でここを抜け出してお前の能力を確認しに行く。私がいいと判断したらここから近い位置での狩りを許す。ただし、必ず生徒一名を同伴させること」


今日かよ。


「いいな?」


「へいへい」


「僕が巻き込まれたのはよく分からないけど、仕方ない。僕も少し興味がある」


あるんだな。

なんとなくスキルについては分かってるんだが・・・威力やらなんやらが分からんからな。どれだけ通用するのかも。


「よし、じゃぁ今日の夜、私がお前らの部屋に行く。横井、間違っても私に見られるんじゃないぞ?」


ニヤニヤすんな。


ここで今日の話は終わり。

ひとまず部屋に戻り、夜を待つことにした。


時間までは亜美を見て癒されることにしよう。


「・・・・・・ジロジロ見てどうしたの。普通に怖いんだけど」


そう言うなよ。


「君は可愛いな~・・・なんてね」


「・・・えぇ・・・キモイキモイ。やめてよ。私そういうの嫌いなんだってば」


そうでしたね。

この子は褒めると嫌がるんですよ。「可愛い」って言うと、「えー死んでー」って言う。まぁだいたいいつもの日常なんだけどね。


それが照れ隠しなのも知ってます。


亜美の手を引き、俺のベッドの方に引き寄せる。そっと彼女のことを抱く。言葉で言うと照れくさいらしいんですけど、こういうのはいいらしい。

女心は分からぬ。


こうした後はそれっぽいことを言っても怒られない。


「亜美、必ず君を守る」


危険のつきまとうこの世界だろうが、何を犠牲にしたとしても彼女だけは守りきる。

そのためにはこの力全てを把握する必要がある。一瞬たりとも気の抜けない日々が続くだろうな。


「・・・・・・よろしくお願いします、新一」


さっきよりも強く抱きしめる。

それを返すように亜美からのハグも少し強くなる。


そんな時


「入るぞ~」


若い女の声と共にガチャりとドアが開かれた。


慌てて離れる俺と亜美。


「し、新一!お、お茶でもね、い、淹れようか!?」

「お、おう!よろしく頼むぜ!」


わざとらしすぎると気付いたのは、言葉を発した後だった。


「・・・はぁ、ついさっき言ったばかりだろうが・・・」


担任が深いため息をつく。

冗談で言ったはずの言葉が今現実となってしまったわけだ。彼女との同室になればあぁなるだろ。ならんのか!?


「状況が変わった。今から行く。準備しろ」


「あ?早くねぇか?まだあんたの部屋を出てから一時間も経ってない。日もまだ完全には落ちてねぇような時間帯だぞ?」


「状況が変わったと言ったろ。篠田には悪いが、すぐにでも準備しろ。準備が出来たら謁見の間、玉座のあった部屋に来い。私は委員長にもこの話をしてくる」


「ちっ、分かったよ」


何があったってんだよ。

異世界初日で事件が起こるとは・・・。。


「亜美、悪いな。すぐに出る」


「はいはい、頑張ってね」


「あぁ」


準備することも特にないので、亜美に淹れてもらった紅茶をひとのみして、部屋から出る。謁見の間はさほど遠くないので、焦る必要も無いだろう。


数分歩くと謁見の間に到着する。


相変わらずデカイ扉だ。

こんなものに金をかけるに必要があるのかね。


一応の礼儀としてノックをしてから扉を開く。


謁見の間には多くの文官や騎士達が並んでいた。その先にはやっぱり王様がいる。その傍らにはお嬢さまと若い男、それから例の騎士と魔法使いだ。皆一様に険しい表情をしている。


「ボサッと突っ立ってるな。早く入れ」


いつの間にか後ろに立っていた担任に背中を押される。気配を消して歩いてくるのはやめて欲しい。心臓に悪い。

隣には俺と同じく異様な雰囲気に怪訝そうな顔をする委員長がいる。ここまで説明もなく連れてこられたのは委員長も同じらしい。


俺たち三人が王様と扉の半々ぐらいのところまで来たところで背後にある扉が閉めらる。その場で俺達も立ち止まり、中央に座る王様に視線を送る。


王様は重い口を開き、現状を語った。





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