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2-2


 防音の効いた静かな空間。

 少し硬いスプリングのベッドに腰掛けて、ルリコは部屋を見回して言う。


「しかしホテル暮らしなんて優雅だね。羨ましい」


 ベッドがふたつ置かれたビジネスホテルの一室。部屋にいるのはルリコとスミナだった。スミナが鞄を漁っている後ろ姿をルリコは何となしに眺める。

 ずいぶん痩せたな、と思う。それは美容ではなく、疲労によるものだろうとも思う。二年前はもう少し健康的だったけれど、今は細すぎる。陸上部に入っていたとは思えない。


「ルリコはどこに泊まってるんだ?」


 昨夜、駅の構内で対峙した時よりもやわらかな声でスミナが言った。

 それは友人に語りかけるような口調で、まだ友達と思ってくれてるのかなとルリコはスミナの背中に微笑む。


「色々だよ」ルリコが答える。「昼のうちにネットカフェかカラオケで寝ておいたり、どこかの屋上で野宿したり」


 何せルリコはまだ中学生で、気軽に外泊できる施設は無い。このご時世、身分証なしで子供が泊まれる場所は自宅かホテルくらいで、そのホテルだって不審がられたら警察に連絡が行くだろう。そうしたら親から捜索願が出されていることがバレてしまう。

 その点、バックに公安がついてるスミナ達『犬』は堂々とホテルに泊まれる。羨ましい限りだ。


「大変だな」

「お陰でぐっすり眠れたよ」


 江藤という男に協力することを約束すると、ルリコにもホテルの部屋が用意されたのだった。しばらくネットカフェのシャワーばかりだったが、久しぶりに湯船につかることができた。


「お前も馬鹿だな。あんな条件で引き受けるなんて」


 鞄を漁る手をとめてスミナが言った。背を向けたスミナの表情は見えない。

 ルリコは昨夜の江藤の言葉を思い出す。

 夜の駅の構内の静けさの中で、鋭い目つきのまま口元を歪めて江藤は言った。


「マユミを保護することができたら、スミナを解放しよう。友人なんだろう?」


 逆らえまい、と見透かしたような表情は(しゃく)(さわ)ったが、事実見透かされていた。

 幼なじみで、同じ中学に通っていた友人の背中を眺めながらルリコが笑う。


「お給料いっぱいもらってるんでしょ? 色々(おご)ってもらうからね」


 ルリコが茶化したように言うと、スミナは鞄からクリアファイルを取り出して振り向いた。


「ディズニーランドに行きたいな」


 どちらかと言えば凛とした態度のくせに、意外と女の子らしい趣味は変わらないようだ。ルリコはテーマパークがあまり好きではなかったので曖昧に笑ってごまかした。


「まあ、じゃあ、そのためにも作戦を聞きたいね」


 マユミを捕らえる手段についてまだ詳しく知らされていないルリコが言う。

 スミナはルリコと同じベッドの反対側に座ると、クリアファイルからいくつかの紙を取り出して広げた。

 いくつかの地図と、何かの資料。


「作戦は簡単で効果的」


 スミナが真面目な顔で言った。


「マユミの寝床を、お前の影渡りの魔法を使って奇襲する」



  * *



「痛いの痛いの、飛んで行け」


 同年代にやるのは恥ずかしいな、と思いながらリサは自分の魔法を使った。

 植え込みの端の石の部分に座っていた魔法少女はおっかなびっくりと立ち上がり、痛みが走らないことを確認した。

 目を赤く腫らした少女は驚いたように目を開いてから、リサの手を握る。


「ありがとぉ! 助かったよぉ! もう、ほんとに、どうしようかと……!」


 マラカスを振るように握ったままの手を上下させる少女に、リサは困ったように笑う。


「や、役に立ててよかったです」

「役に立ったよ! 立ちまくりだよぉ! 絶望の暗雲を晴らしてくれたよ!」

「い、いえ。なら、良かったです」


 興奮した少女に水をさすように、様子を眺めていたミカが少女に尋ねる。


「それで、なんで魔法少女が両足骨折してこんなところにいたの?」


 それはリサも聞きたかったことだった。

 ミカに街を案内している途中で見かけた魔法少女が、両足を怪我して泣いているのはちょっと想像できなかった事態だ。昨日まで自分以外の魔法少女(その名称も昨日聞いたばかりだ)を見たことが無かったのに、立て続けに遭遇する。しかもあまり平和的ではない。

 少女は何故か口ごもって視線を逸らす。

 どうしたのだろうか、とリサは疑問に思う横でミカが質問を変える。


「足の怪我は、マユミ?」


 ぎくりと分かりやすく少女が体を震わせる。

 それを見てミカはさらりと少女の正体を看破する。


「今マユミがわざわざ攻撃するってことは、きみ、『犬』?」


 ミカが睨みつけると、少女は機嫌を伺うようにぎこちない笑顔を作った。


「あ、あのぉ、あなた達は」

「マユミ派だよ」


 ミカが冷たく言うと少女は怯えた表情で一歩下がる。

 それを見てミカはため息を吐きながら首を振った。


「嘘。あっちにもきみ達とも関係ない。こっちの子は奈川の魔法少女で、この子もどちらにも所属してない」

「え、あ、そうなんだ。よかった。冗談はやめてよ、もう」


 少女は深く息を吐く。

 自分が『犬』であることを肯定したような反応であることに気づいていない様子で、リサは少し微笑ましく思う。

 それから少女は、自分の名前はアキネだと名乗った。数ヶ月前から『犬』をやっているらしい。


「馬鹿やっちゃってね、スミナに捕まって、もうこき使われてるんだ」


 近くにあった公園のベンチに座って、アキネが言った。

 空いた土地にとりあえず作ったような公園はブランコぐらいしか遊具がなく、平日の昼間ということもあって他に人はいない。


「馬鹿って?」


 リサが尋ねるとアキネは笑う。


「学校で虐められててね、虐めてきた人に復讐。気持ちよかったけど、すぐ捕まっちゃってね」


 コメントに困る、とリサは感想に詰まる。

 ミカはあっさりと流して聞きたいことを聞いた。


「それで、『犬』がなんで奈川市に? 例の儀式について?」

「んー、私は下っ端だから分からないけど儀式には興味がなさそうだったかな。儀式につられた魔法少女の保護が目的みたい。

 それも、一番の目標はマユミ。スミナも来てるから本気みたい」

「みたいね。ふぅん、儀式に興味はないんだ、そっか」


 ミカは何か考えこむように何度か頷く。

 リサはふと気になっていたことを聞いてみた。


「ねえアキネさん、そのスミナって人はどんな人なの?」

「え、スミナ? んー、そうだなぁ。真面目な人だよ、魔法の犯罪が嫌いで、正義感が強いというか。颯爽としてて、けっこうかっこいい」

「へえ、そうなんだ」

「何でそんなこと聞くの?」


 アキネが不思議そうな顔をした。

 理由を聞かれて、そういえば何故だろうとリサが考えた。ふと気になったと言えばそれで終わりだが、では何故気になったのか。


「何というか、その『犬』? のリーダーをやるなんて、どういう人なんだろうって」

「んー、別に好き(この)んでやってるわけじゃないみたいだけどね。破魔の魔法が保護に役に立つのと、性格的に正義感が強いってだけで」

「好きじゃないのにってことは、やっぱり脅されてるの?」

「まあね。何せ相手は国のお偉いさんだからね。向こうがその気になれば何でもできる。まあ、給料も出るからアメとムチかな」


 給料まで出るのか、とリサは驚く。

 そう思うと、アキネが急にすごい人に見えてくる。お金を稼いでいるなんて大人みたいだ。


「あっ!」


 と、アキネが急に大きな声を出した。

 何か考え込んでいたミカも驚いた。


「なに、どうしたの?」

「け、携帯取られてた! どうしよう……!」

「連絡取りたいなら貸そうか?」


 ミカがポケットからスマートホンを取り出しながら言うが、アキネは首をふる。


「番号、覚えてなくて」

「あーあ」


 呆れたようにミカが言う。

 アキネは慌てて立ち上がって、ふたりに頭を下げた。


「怪我治してくれて本当にありがとう! 助かった。私、一回ホテルに戻って誰かいないか探してみるから」


 慌ただしくそう言うとアキネは公園の出口に向かって走り、急に立ち止まると目を逸らしながら引き返してきた。

 不思議そうにリサとミカが眺める先で、アキネは顔を赤くして言う。


「こ、ここどこ? ホテルはどっち?」

「えっと、ホテルの名前は?」


 苦笑しながらリサが尋ねると、返事はなく沈黙が流れた。

 目を泳がせ続けるアキネに向かって、ミカが冷たく尋ねる。


「忘れたの?」

「……うん」


 それは虫の泣き声のようにか細い返事だった。



  * *



 規則的なバイブレーションの音。

 イチノセはクレープにかぶりついたままその音の方を見つめた。

 クレープ屋の前の道に置かれた安っぽいプラスチックの机の向こうに座っていたマユミがクレープを咀嚼(そしゃく)しながら眉をひそめる。それからシャレたシザーバッグに手を突っ込み、震えるスマートホンを取り出した。

 それは、少し前に『犬』の少女から取り上げたものだった。

 マユミはイチノセにその画面を見せる。着信中と文字と、「スミさん」という登録された発信者の名前が表示されていた。

 マユミは楽しそうに笑うと、通話ボタンを押した。


「遅い。定時連絡は?」

「よお、その声はスミナか」


 スミナという名前を聞いてイチノセの表情が強張った。

 それを見ながらマユミはスマートホンに当てた左耳に意識を集中させる。


「……マユミか?」


 しばらくの呼吸音の後、電話の向こうでスミナの固くなった声が確認してきた。それを聞いてマユミは笑う。


「尾行ってのは犯罪じゃないのか?」

「アキネはどうした?」

「両足折っただけで転がしといたから、早い内に探した方がいいんじゃないか? お前らの嫌いな騒ぎになるかもな」

「……忠告どうもありがとう。それで、お前らは何の目的で奈川市にいるんだ?」

「暇つぶし」


 マユミはそう言うと通話を切った。

 イチノセが心配そうな顔でマユミを見つめる。


「その携帯、大丈夫?」

「GPS機能はオフにしてるし、怪しいアプリも消しといた。心配なら機内モードにするか」

「捨てたほうがいいんじゃない?」

「なんか面白い情報入ってるかもしれないだろ? スミナのクソの番号も知れたわけだしな。後で男子便所にも書いとくか? 連絡待ってますってメッセージ付きで」


 趣味の悪い発言をしながらマユミはスマートホンをいじる。

 不安は拭えなかったが、マユミの言葉も一理あると考えてイチノセは納得する。それから話題を変えた。


「それで、(あるじ)の件だけど」

「見つかんねえな。まあ、初めからほとんど疑ってるから残念ではないが」


 それは、二人がわざわざ奈川市まで来た原因だった。

 魔法を消失させる儀式とやらはマギカフェを見て知っていたが、その儀式の主を名乗る人物からマユミにメールが届いたのだ。その内容は、儀式に協力してくれるなら、魔法を消失させる方法を教えるというものだった。

 それが本当なら『犬』や他の敵対する魔法少女に対して強力なカードになる、とマユミは奈川を調べることを決断したのだった。


「主とやらからも、メールは全然来やしねえ」

「奈川を調べさせてる魔法少女からも、それらしい報告はこないわ。スミナを見たとか、『犬』らしき魔法少女を見たとか、そういう情報は来るけど」

「手下が使えるってのは、わざわざ派閥をつくって良かったとこだな。流石に二人で奈川市全部を探す気にはならねえ」


 マユミ派のうち、動ける人間には奈川市を調べさせている。

 怪しい人物なり場所なりを見つけ次第連絡を入れるように命令してあるが、今のところは何も見つからないようだ。

 不意に流行曲の着信音が流れて、マユミは先程とは別のスマートホンを取り出した。


「情報屋だ」


 マユミはイチノセにそう言うと通話を繋いだ。スピーカーをオンにして机の真ん中にスマートホンを置くと、少女の声が少し割れた音になって聞こえた。


「もしもし? マユミ?」

「そうだ」

「一応調べたけどね、それらしい情報は無いね。佐賀で被害にあった子達が、本当に魔法を使えなくなっているくらい」


 情報屋は、魔法少女の世界でも裏のほうで有名な人間だ。どうやっているのかは知らないが大抵の魔法少女の情報を揃えていて、事件にも詳しい。本人が魔法少女なのかも、本当に声の通りに少女なのかも全て不明だが、情報だけは常に正しい。

 初めてマユミに電話をかけてきた時も、誰にも教えたことのなかったマユミの魔法の詳細を述べて自らの有能さを示したくらいだ。

 その情報屋をもってしても、儀式やその主については何も分からない。


「使えねえな」

「そう言われてもね」 情報屋が電話の向こうで困った声を出した。「不明なものは不明だ。ああ、けど、イチノセの言っていた、スミナの仕業(しわざ)という線は消えたかな。彼女の魔法を長時間受けると魔法が使えなくなるのは本当だけど、その場合は魔法に関する記憶も全て失うからね。

 佐賀の子達場合は、自分が魔法を使えなくなったと自覚している、つまり、魔法を使えたという記憶が残っているんだ。これはスミナの魔法によるものじゃないね」


 マユミがイチノセを見ると、彼女は肩をすくめた。

 儀式と主からのメールは『犬』による罠だとイチノセは危惧(きぐ)していたが、少なくともスミナの魔法によるものではない。

 マユミが情報屋に再確認する。


「スミナ以外に、魔法を消すような魔法は無いんだよな」

「そうだね。今、それができるのは彼女の破魔の魔法だけだ」

「そうか」


 情報屋に頼るのも無駄だったかとマユミはため息を吐く。

 それからもうひとつついでに尋ねた。


「『犬』にアキネってやつはいるか?」

「アキネかい? ちょっと待って……ああ、いるね。今年の1月に保護されて『犬』になっている」

「そいつはどんな魔法なんだ」

「別料金になるけど?」

「分かってる」


 マユミが了承すると、情報屋はその能力を示すように詳細を述べた。


「変わった魔法だね。魔法陣を書くと、色々な効果を発揮する、そういう魔法だ。納得できる魔法陣を書かなきゃいけないのが条件になるようだけど」

「なんだそりゃ」 マユミが呆れる。「納得できるってどういうことだよ」

「適当に丸を書いたくらいじゃ駄目ってことさ。幾何学模様をいれて、ラテン語なりイタリア語なりを書いて、本格的なものを作らないと効果が出ないらしい。思春期の男子が好きそうな魔法だね。あんまり大したことはできないみたいだけど」


 変わった魔法少女だな、とマユミが思う。

 こちらの陣営についていれば面白そうだったのに。

 情報屋との通話を切って、マユミは残っていたクレープを食べきる。

 手についたクリームを舐めながら楽しそうに笑った。


「まあ、謎は難しい方が暇つぶしになるな」


 イチノセは答えずに空を見る。

 輝いている夏の太陽は、真上から西の方に落ち始めていた。



  * *



 結局、リサの案内でアキネのホテルを探すことになった。

 必要な内容はスマートホンにメモして、場所も地図アプリを頼りにしていたのでそれがないと何も分からないらしい。


「アキネさ、もう少しちゃんとした方がいいよ」

「昔からよく言われます……」


 歩きながらミカが言うと、恐縮したようにアキネが頬をかいた。移動中に話していると、アキネが中学一年生であり、リサとミカが中学二年生があることが判明したので、アキネの口調は敬語になっていた。

 ミカはアキネのホテル探しにあまり積極的ではないようだった。リサが理由を聞くと、『犬』に見つかりたくないということらしい。


「私が説明すれば、見逃してもらえると思います。リサさんもミカさんも悪いことしてるところを見つかったわけではないですし」

「だといいけどね」


 アキネの言葉もミカはあまり信用していないようだった。

 というよりも、『犬』に対していい感情を持っていないようだ、とリサは思う。ミカが『犬』についての説明をしたときもあまりいい風に言わなかった。

 アキネが言うにはある程度寛容(かんよう)な組織らしいが、人聞きにしか知らないリサにはどちらの意見が正しいかわからない。

 少しピリピリしたふたりに挟まれて、妙なことになったな、とリサは思う。

 候補のひとつだったホテルが違ったので道を引き返してしばらくした頃、話題がアキネの仕事に移った。


「妙な命令だったんです。マユミを見つけ次第あとをつけて行き先を連絡しろ、って。私、普段は基本的に雑用が仕事なのに」

「へえ、人手が足りなかったとか」 リサが相槌をうつ。

「そうなんですかね。痛かったですし、怖かったですし、最悪ですよ。リサさんのおかげで本当に助かりました。リサさんの、便利な魔法ですね」

「本当は怪我を治すんじゃないけどね、痛みを飛ばすだけで。魔法でできた怪我は治せるみたい」

「充分便利じゃないですか。『犬』になったら重宝されますよ!」


 アキネがそう言った瞬間、ミカが咳払いをした。

 それからアキネを睨む。


「『犬』に誘わないようにね」

「……そうですね」


 アキネは少しの間目を伏せてから、リサに微笑む。


「重宝されますけど、ならない方がいいですよ」


 素直な態度が微笑ましいな、とリサが思う。

『犬』が嫌いなようなミカもアキネ個人に対しては邪険に扱わないのも、アキネのそういう態度が理由だろう。

 ふたつ目の候補に近づいた時、アキネが声をあげた。


「この道です! わあ、良かった! リサさんミカさん、本当にありがとうございました」


 アキネは髪の毛が置いて行かれるくらい勢い良くお辞儀をした。


「気をつけなよ」

「よかったね」


 ミカとリサがそれぞれ言うと、アキネはもう一度頭を下げる。


「アキネっ!」


 その声は少し遠くからでもよく聞こえるくらい大きかった。

 アキネが振り向くと、道の先から走ってくる人影があった。


「ス、スミさん?」


 痩せた少女は走るたびにポニーテールを揺らす。その後ろから追いかけるのは黒い帽子を被った少女でそちらの方はリサにも見覚えがあった。


「やばい……」


 ミカが呟きながらリサの手を取った。

 そして即座に後ろへ走りだした。引っ張られたリサも数歩たたらを踏んでから一緒に走る。


「何で逃げるの?」

「『犬』は信用出来ない!」


 後ろを振り返ることなく二人は走り、手近な路地裏に飛び込んだ。

 ビルに挟まれて影になった道は少し涼しく、それとは別の理由で二人の肝も冷える。


「やあ、昨日会って以来だね」


 黒い帽子を被った少女が道の先で微笑んでいた。

 先程まではホテルの方の道にいたはずなのに、とリサが驚いてから彼女の魔法を思い出す。

 瞬間移動。影渡りとも言うらしい。


「黒帽子……!」


 ミカが吐き捨てるように、その通り名を呟いた。

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