触発
私、小虎太郎の作品を御覧になり有難う御座います。
ライトノベル思考ということで、変わった文章があり読みにくい所も多々あると思います。
それでも、頑張って書いてるので、どうか哀れんであげて下さい(ぁ
けたたましい喧噪が取り巻く市場。朝から夜まで光の耐えないここは
もう一つの眠らぬ街の形でもあった。
現在はお天道様が丁度賑わう人ごみの真上にいるため、人はまだまだ減らない。
「・・・」
その人が河のように流れる様を、少年は見下ろしていた。
「・・・」
何を思うわけでもなく、何を話すわけでもなく、ただその流れを見つめている。
人が押し込まれたその空間に、点々と存在する人形。
そのどれもが首から小銃を提げ、瞬きをせず少年と同じように流れを見ている。
一瞬、少年の眼光が闇を灯した。
目線は人形に向けられたかと思うと、すぐに流れに戻す。同時に眼が緩む。
「・・・そろそろ、か」
流れから眼を離し立ち上がると、大きく背伸びをして街を一望。
「何も変わらないか。この輪廻は、常に動いているのか」
くだらない。心の中で一瞥すると、時計台の窓へ飛び込んでいった。
秒針が一秒を刻み、分針が僅かに押される。その音が聞こえる程静かな工場。
あちこちに時計が掛かっている割に聞こえてくる音は2つか3つ、
あとの数台は精密すぎて聞こえないのだ。
秒針の音に混ざって聞こえるのはボルトが回る音や床に金属が落ちる音。
早すぎる秒針に送れてボルト、今度は2回ボルトが落ちる間に秒針が送れて1秒を刻む。
下手なリズムが部屋を踊る。
「できそうか?」
「あと少し」
少年は声に見向きもせず、目の前のソレと格闘していた。
「ん・・・」
カタンと最後のボルトをはずし終わると、カバーが外され中身が露呈される。
「こりゃひどい」
年季の入った声の主が、少年と並んで覗き込んだ。
「直りそうか?」
「ふん、バカいえ」
見飽きたのか、草臥れた老人は踵を返すと、
「直さなきゃ喰っていけん」
壁に掛かった用具を手にした。
「並々にな。豪勢とはいかず、パンとバターがあれば事もなしってね」
口を緩めて右腕にドライバーを握る。
「アラン。お前は次のモン持って来い」
「じじいに任せる義理はない」
アランと呼ばれた少年は構わず中の黒ずんだエンジンを持ち上げた。
「・・・ふん」