表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
~希望が丘駅前商店街 番外編~ 黒猫狂想曲  作者: 白い黒猫
商店街のクリスマス~根小山家の場合~ (御伽の世界と現実の間にて)
6/6

quartet

挿絵(By みてみん)

 結婚して子供が生まれるとクリスマスはロマンチックなものから一気にファンシーなイベントとなる。

 我が家のリビングの暖炉の前にあるツリーの下で、四人の子供が、アドベントカレンダーの本日のお菓子を頬張りながら、まだ二日もあるのにサンタさんを待っている。今ここにいるのは、娘の優璃(ゆり)真透(まゆき)と姪っ子の透子(とうこ)と甥っ子の大輝(だいき)。ここの四人の認識では我が家はサンタクロースを迎え入れる体制が万全な為に、確実にサンタクロースに来てもらえる場所。

 というのは杜さんの張り切り方が半端なく全力でそういう世界を作っているからだ。娘に請われるままに杜さんは家を改装して暖炉まで作り、海外から取り寄せたサンタの服と髭で仮装セットもシッカリ用意してある。今年はさらにハリウッドでも使っているようなメイクセットまで購入していたのでよりサンタのクオリティーをあがりそうだ。夜中に杜さんの寝室から『フォッフォッフォ』という笑い声を練習している気配が聞こえている。それくらい全力なのだ。

 

 我が家のクリスマスのルールは、欲しいプレゼンを手紙に書き、十二月一日に飾るクリスマスツリーの高い所にある靴下に入れてお願いする。良い子にしてないとサンタさんは来てくれない。

 クリスマスの夜、サンタさんのくるツリーの下で寝袋で眠る事は出来るけど、万が一目が覚めてサンタさんを見てしまっても、忙しいサンタさんのお仕事の邪魔はしないように。決して話しかけないこと。眠った振りしてやり過ごすこと。コレは俺と姉の凜も子供時代、杜さんと澄さんに教えられたクリスマスと同じ。

 我が家にはツリーなんてなかったので、態々根小山夫妻にサンタさんの手紙を送り靴下に入れてもらい、クリスマスは根小山夫妻の家でサンタさんを待った。何故いつも住んでいる家にはサンタさんが来てくれないのか子供ながらに不思議に思ったものである。

 

 このようにそれぞれの家の都合もあり、クリスマスにはローカルルールが多い。それだけに子供たちの夢を壊さないように、かつよそ様とのクリスマスとの共存がなかなか難しい。現に託児所においても子供達間で熱く議論を戦わせる議題ともなり保育士さんも困っているらしい。

 

「お買い物、今から行くけどお手伝いしてくれる人~」

 気儘に過ごしている四人に俺は声をかける。お手伝いといっても何をしてくれる訳ではなく、ただちゃんとついてきてくれることが彼らのお仕事。四つの小さい手が上がり、カワイイ『ハーイ』という良いお返事が上がる。

 お姉ちゃん二人は自分でコートを着て、それぞれの弟にも着せ掛けてあげている。サンタさんに向けての【良い子アピールキャンペーン中】で、いつもより聞き分けが良く扱いやすくて助かる。四人は仕上げとばかりにお揃いの手編みの青いフード付きマントをつける。

 コチラは商店街の手芸用品店が考案したもので被るとキーボ君になれるマント。毛糸と一緒に作り方であるパターン図のコピーをサービスでお店に置いた所、この近所でちょっとしたブームとなっている。それを璃青さんと澄さんが編んで作ったもの。マントによって四人のミニキーボくんとなった子供達と共に俺は玄関を出た。

 

 エレベーターから優璃が走り出し、一階にある雑貨屋さんBlue mallowのショーウィンドウの窓をコンコン叩く。中で妻の璃青さんが高校生くらいの客さんとお話しているのが見えた。クリスマス前だけにプレゼントを買いに来るお客さんが多いだのだろう。この時期は特に忙しそうだ。

 璃青さんは店を覗くミニキーボくん達に気がつき驚いたように目を見開くがその表情はすぐに優しい笑みとなり手をふってくる。俺は唇だけで『頑張って』と言葉を伝え、璃青さんの接客の邪魔にならないようにミニキーボくん達に号令をかけて呼び寄せガラスから離れてもらう。

 そのまま五人で商店街へと踏み出す。ちゃんとお姉さんである優璃と透子が自分の弟の手を引いて歩いてくれているので、俺は四人が歩くのを背後から見守る感じ。


  希望が丘駅前商店街はいつも賑やかだが、十二月はまた別の賑やさが増す。街全体が赤と緑に彩られ、陽気なクリスマス音楽が流れお祭りムードがグッと増す。黒猫でもツリーを飾ってしっかりこのクリスマス商戦にのって頑張っている。とはいえ、日本においてのクリスマスは宗教とまったく離れているので、あまりにも自由でハッキリ言うとカオスな状態。サンタさんが大量発生して、あらゆるお店がクリスマス商戦に乗っているためにクリスマスって、そもそもどういうイベントだったのか? と分からなくなってきているのが現状である。

 希望が丘駅前商店街も中央広場で大きなクリスマスツリーを飾っているのだが、今年のツリーは少し変である。最初は希望が丘駅前商店街なので、ツリーの上には星の代わりに星を持った金のキーボくんのオーナメントがついている以外は普通のクリスマスツリーだった。

 元々は商店街とお客様とみんなで作り上げようという事で、基本のオーナメントに加え、商店街で買い物したらサービスに紙でできた色とりどりのキーボくんのオーナメントをプレゼントした。それをお客様もツリーに付けてもらい、『共に飾りつけを楽しみツリーを華やかにしていこう』というコンセプトだった。しかし誰が始めたかそのキーボくんのオーナメントの後ろには願い事を書かれるようになる。その為に商店街のクリスマスツリーは別の意味で多くの人の想いの籠ったものとなってしまった。そこに更に誰かがサンタ帽子とサンタ服姿のキーボ君二号の着ぐるみを吊るしてきた。

 今見上げると、そのキーボくんが風によって手をユラ~ユラ~と上下に揺らして、皆の願いを聞き入れ祈りを天に捧げているかのようにも見える。キリスト教ではなく何か別の信仰のオブジェになっている。

「わ~、キーボくんだ~! 頑張って~」

 子供達が手をふると、風が変わったのかキーボくんは手を横に揺らし始める。子供達には手を振り返しているようにも見えるのだろう。

「あっ、サンタさんもいる~」

 そう言って四人が駆け出していく。

「良い子はいねぇか~ 菓子やるぞ~」

 ツリーの下ではサンタクロース服を着た人が、サンタさんの台詞と若干違うような気がする言葉を発している。顔をみると篠宮酒店の燗さんで、子供に囲まれてカッカッカと楽しそうに笑っている。そして俺の方をみて人好きのする明るい顔で手を振ってくる。

「よぉ、ユキ坊に、チビキーボ―ズ!

 ん? なんか子供多いと思ったら、ダイの字のとこの子か! 大きくなったな~。

 お前達、楽しんでいるか~」

「こんにちは、サンタさんご苦労さまです。寒いですね」

 子供達の前なので、今は相手をサンタさんとして接しないといけない。

「クリスマスだから遊びにきたの~」

「コレ、オバアチャンが作ってくれたの~! いいでしょ?!」

「四人でね、仲良くお手伝いとかして良い子にしているのよ!」

 優璃と真透は普通に会話に加わっていう。そしてさり気なく良い子アピールしている透子ちゃん、子供ながらにあっぱれだ。

 しかし……子供達は今、相手がサンタとして話しているのか? 燗さんとして話しているのかがか分からない。

「おぉ、良い子なのか~なら菓子やらねぇとな! ホラ、好きなの持っていきな!」

 そう言って白い袋を広げてお菓子を子供達に選ばせる。

「ありがとう~サンタさん。お仕事頑張ってね~」

「おぉ! サンキュー♪ 皆もイイ子でいるんだぞ~!」

 四人は笑顔でそうお礼を言った事から、彼らの中では近所のおじさんではなく、サンタさん扱いでいるようだ。

 その後も四人のミニキーボくんはパン屋さんでも可愛く良い子アピールをしてクッキーを貰ったり、肉屋でハム食べさせてもらったり、楽しそうにモグモグと商店街ショッピングを楽しんでいた。子供って無邪気なようで、意外とチャッカリしているなと思う。


 夕方になり開店準備をしている間、奥のソファー席で子供達はココアを飲みながらサンタさん論を交わしている。Blue mallowが終わったら、璃青さんがここに寄って回収して上に連れていってくれることになっている。

「あのさ~、さっきのサンタさんって、角の酒屋さんのおじさんだよね?」

 大輝くんが聞いてくる。流石に子供達にも、バレていたようだ。

「そうよ!

 多分ね……サンタさんからお願いされてやっているんだと思う! ほら! ピザ家さんとかもサンタさんの恰好しているじゃない! あれと同じ」

 どちらもサンタクロースから依頼されてお菓子配ったり、ピザを配達していた訳ではないが、俺は黙って聞いておく。

「本物のサンタさんは今の時期、とぅっても忙しいもの! あんな所でお菓子配ってなんかいられないわよ」

 優璃の意見に大きく頷いた透子ちゃんは力説する。

「そういえばボク、フィンランドからイッパイのサンタさんが出勤するというニュースみたよ」

「へぇ、サンタさんって一人じゃないの?!」

 一番下の大輝くんが驚きの声をあげている。

「世界中の子供にプレゼントを配るのよ! 一人で出来る訳ないじゃん! サンタクロース軍団が手分けして頑張っているのよ!」

 透子ちゃんがキッパリと言い切る。

「だから、勇ちゃんのいうサンタさんとウチのサンタさん、なんか違っていたんだ」

 真透の言葉に子供達はウンウンと頷いている。


 子供って大人が考えているよりも、上手く現実とファンタジー世界の折り合いを柔軟につけて生きているようだ。

 もう色々な事にハラハラする必要はないのかもしれない。そして逆に俺達大人を御伽の世界へと素敵に誘ってくれる。妻と過ごす大人なクリスマス良いが、子供達のいるクリスマス負けずに素敵で、大人になんかホッコリとした幸せをプレゼントしてくれる。

 四人のクリスマスの朝の弾けるような笑顔が、今から楽しみだ。


コチラの作品書く際に相談に乗ってくださった、篠宮楓さま、たかはし葵さま 他商店街関係者の皆さまありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ