晴れ間
掲載日:2007/06/07
息が白い。
空は重く、灰色だ。
寒い。ひどく寒い。
僕は凍えた指先に息をはいた。
少しも温まりはしない。
なぜ僕はここにいるのだろう。
1度も来たことが無いはずなのに。知らないはずなのに、
ひどく懐かしい。
目の前を通り過ぎてゆく、人、人、人、
誰も僕に気づきはしない。
誰も僕に気づいてくれない。
たまに、僕のほうを振り返る人がいる。
僕は死んだ。確かに死んだ。
何も覚えてはいない。
ただ僕の心で燻っているのは、
「死」という残酷な記憶。
僕の足元には、綺麗な花が置かれている。
僕が死んだのは、ずっと昔ではないらしい。最近だ。
僕の家族。友達。いたかは分からないけど、愛しい恋人。
何も覚えてはいないのだから、
僕に語りかけていた「家族」も、ピンとこなかった。
多分、父であろう人は僕に「なぜ自殺なんかしたんだ」と言っていた。
僕は、自殺したのか。
そう思ったけど、別に悔しくはなかった。
今、僕の足元で僕の名前を呼び、泣き崩れている女の人は、多分恋人。
僕の愛していた人だ。
そう思うと熱くなった。
僕はここで「誰か」を待っている。
漠然とだが、分かる。
とても逢いたい。
ただ、今ここで泣き崩れる恋人でも、家族でもないことは分かる。
早く逢いたいな、
その「誰か」が来てくれるまで、僕は待つよ。ここで。
いつまでも、
逢わないと、僕は楽になれないと思うから。




