私メリー、貴方に幸せを届けに来たよ
前に投稿したメリーさんの前日談と考えていただいて結構です。
冬の寒い日、俺は一人で街中を歩いていた。
別に大したことはない。ただのバイト帰りだ。
しかし何かが可笑しかった。いつもならこんなに人で賑わうはずがない、こんなに華やかに町が輝く事はない。
今日は何かのイベントか?まぁ、俺には関係のないことだ。
俺はそんな華やかな街から逃げるように家に戻った。
「ただいまぁ」
そんな事を言ったところで誰も返してくれるはずもない。
俺は両親と離れて暮らしている。まぁ、単に通っている学校への通学が面倒だっただけだがな。
…とても静かだ。
いつもうるさい隣のカップルの声も聞こえない…あぁ、そういえば町中で見かけたな。なんかいつも以上にバカップルを演じていたようだが…町のあの華やかさにでも打たれたのか?…ま、どうでもいい事だがな。あいつらがいるとこっちはイライラしてくるんだよな。…なんて言うんだっけな?ぁあ
リア充爆発しろ!
心の中でそう叫んだ。とても虚しいものだ。
purururu
無機質な電子音が聞こえてきた。よく見ると部屋に備え付けの電話だ。
「…オカンからか?」
両親以外此処の電話にかけてくることはない。言わずも主に携帯に着信が来るからだ。
受話器を取り耳に当てる。
「はい?もしもし」
『わたしメリー、今秋雨大学にいるのフフフ』ガチャ
ツーツー
「…もしもぉし」
イタズラ電話か?よりにもよってこんな俺に?馬鹿馬鹿しい話だ。
受話器を電話に戻し俺はお湯を沸かし始めた。
数分後、カップ麺にお湯を注いでいるとまた電話が鳴った。
「はい、もしもし」
『わたしメリー、いま秋雨デパートの前にいるのフフフ』ガチャ
ツーツー
「…またか」
さっきと同じ声で変なことを言って切りやがった
「ほんと物好きなやつだな…ん?」
そういえば今『メリーさん』って言わなかったか?
「…まさかな」
ありえるわけないと納得し、俺はカップ麺が出来るのを待った。
また数分後、再び電話が鳴った。
「もしもし」
『わたしメリー、今五月雨ベーカリーに居るのフフフ』ガチャ
ツーツー
「……まさか、本物か?いやいや待て待て…たしかメリーさんはまっすぐ俺のとこに来るはずだ」
そう、そうだ。五月雨ベーカリーはデパートの中、デパートの前に居たのになんで中にはいるんだ?
「…やっぱりイタズラだな。ハァ脅かしやがって」
嫌な汗かいた銭湯に行って汗を流してくるか。
銭湯から帰ってくると…電話がなっていた。いや、鳴り続けてた。
「竜也さん、あんたとこに電話だよ、まったく十分以上なってるんだからね」
と、大家さんに怒られた
「も、もしもし」
『あ!やっと出てくれtコホン。わたしメリー、いまいいヘックシュン!!』
受話器の向こうから盛大にくしゃみが聞こえた…そして鼻水をする音…
『い、今!春の湯の前にいるの!フ、フフフフヘクッシュン!』ガチャ
ツーツー
「…まさか数十分も戦闘の前にいたんじゃ…ん?春の湯?」
それっておれがさっきまでいた銭湯じゃ…
「入れ違いか」
数分後、また電話が鳴った。
「もしもし」
『ケホッケホッ、わたしメリー、今貴方のアパートの前にいるの。クシュン』ガチャ
ツーツー
「風邪引いてた。つうかアパートの前?」
すると玄関の方から咳とくしゃみを女性の声が聞こえてきた。
ピーンポーン
「わたしメリー、いま貴方の部屋の玄関の前にいるの」
マジか
急いで玄関のドアを開けると…
パーン
爆発音が聞こえ俺がびっくりした。そしてクスクスと笑う女性の声
よく見ると赤いおかしな服に赤い帽子、金髪で顔を赤らめて笑う女性。そして手にはクラッカー
「わたしメリー、貴方に幸せを届けにぃ…」
そう言いかけ女性は俺の方に倒れこんできた。
「ちょ?!」
俺はその体を受け止めた。その体はとても冷たく額は暑かった。
すぐに俺は女性を部屋に入れ布団に寝かした。
十数分後、女性は目を覚ました。
「…あれ…私は…!!」
女性は俺の顔を見るなり何かを思い出したように跳ね起き俺の方を向き座り直しこういった。
「わたしメリー、貴方に幸せを届けに来たよ」
飛び切りの笑顔で彼女はそういった。俺はその顔にドキッとしすぐに顔を背けた。
「…やっぱり駄目、ですよね。ハアアアアア」
彼女は顔を手で覆うとどんよりとした雰囲気を出し始めた。
「えっと、その…きみは一体」
「…あ!大事なこと言い忘れてました!」
どんよりとした雰囲気を一気に振り払い、立ち上がる
「へ?」
俺は何?って顔をしていると彼女はさっきの飛び切りの笑顔で
「メリー《・・・》クリスマス!」
ヒュウウウウウ
「…」ブルッ
一瞬寒い風邪が通り過ぎた気がする
「…あのごめんなさいかえりまクシュン!」
「いやまだ外寒いし…それになんで来たのか…教えてもらってない…」
「え?…あれ?わたしの荷物は?」
「荷物?…まだ外にあるんじゃないかな?」
さっきは荷物にかまってられる状況じゃなかったし…
玄関に向かい扉を開け外を見ると…袋が落ちてた。
「これ?」
「そ、そうそれ!」
彼女は袋を受け取るとそこから箱を取り出し、そこから中身を出した。
「ケーキと!」
もう一つの袋からラッピングされたビンを取り出した。
「…ワインです!ちゃんとワイングラスもありますよ!エヘヘ♪」
…あぁ、そっか今日は
クリスマスだったか
「さあ!今日はパーっと騒ぎましょ、しょクシュン!エヘヘ♪」
彼女は風邪か恥ずかしさで顔を赤らめ笑っていた。
俺はそんな彼女を眺め一緒に笑った。
スマン全国のリア充俺も今日だけはリア充だ。
…はい、こんな作品ですが読んでいただきありがとうございました。
では皆さん良い聖夜を
piririri
「わたしメリークリスマス!なんちゃって♪」ガチャン
ツーツー