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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
一章 行き倒れた男
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82話 村の今!

 何時の間にこんな料理を作ったのか。テーブルの上には、食事が並んでいる。目の前に広がるのは、色とりどりの食材を使った料理だった。モニカとセリアの合作らしい。朝から重い食事になった。料理は、簡易冷蔵庫に入っていた物を大分使ったみたいだ。ほかほかの湯気を立てているボルシチ風のスープを美味しくいただく。昨日は特に寒い場所に出張したので、ありがたい。


「それで、今日の予定はどうするのだ?」


「そうだなあ。まずは、村を手伝いつつゴミ箱と化したイベントリの掃除。それからレクチャー屋だな。その後は王立学園を見学にでも行ってみるか」


「ん・・・了解した」


「わかりました」


 意外な事にセリアが学園に行く事を了承した。なんとなく、絶対行かないと言われると思ったんだが。

 朝食だったが、二人共に食べる量が半端ではなかった。

 その様子を見て、食べれない卵が余計な事をしゃべる。


「なあユウタ。こいつら食いすぎじゃね。慎みがないっていうかさあ」


「!?」


「ご主人様?」


「い・いや。俺じゃない。わかるだろ。タマゴが喋ってるんだ」


 懐からタマゴが顔を出す。顔というか卵の上側から声が聞こえてくる。

 卵は金色の輝きを放っていた。


「その卵。黄金竜の卵のようだな。蜥蜴のくせに偉そうだぞ」


「ふふん。僕が孵化すれば君の時代も終わりさ。ユウタと僕の時代がやってくる!」


「ほう?」


 卵の言葉を真に受けるセリアの雰囲気が変わった。つり目が引き絞られて、こええ。セリアの目つきが怖すぎるよ。タマゴさん、あまり調子に乗った発言されると、俺のHPが0になるよ。


「僕の名前はDDよく覚えておくことだね」


「ふん。駄目なドラかよく覚えておこう」


「ムキィ。そっちこそ駄犬の癖に!」


 懐から出て来た卵と謎の火花を散らすセリア。

 妙な所で反目し合う二人だ。卵相手にムキになるセリアも珍しい。


「ともかく飯を食べたら出発するから」


「わかった」


「はい」


「糞ぉ。僕だって、卵のまま人化してやるぞ!」


 プルプルと振動が伝わってくる。が、一向に卵が変化する様子は無かった。0歳児で人化するとか無茶苦茶だ。人化出来なくて俺はほっとしていた。


「どうした? DD」


「うぅ。駄目みたいです」


「言うだけか」


「そうみたいですね」


 DDは変身できないようだった。よかった、0歳で変身するとかどうなるんだ。そもそもなんで0歳で喋れるんだ。この世界の竜って、一体どういう代物なのよ。こいつだけが特別なのか。

 そんな自称竜のDDだったが、泣きが入っているようだ。


「ううっ。ユウタぁ皆がいじめるよ。こうなれば黒竜の奴を呼び出しちゃ・・・わないもんね。えへへ、やだなあセリアちゃんてば本気にしちゃうなんて」


「冗談でも、次はない。また、口にしたら潰すぞ」


「うっ。了解であります」


 セリアが、木製のスプーンを真っ二つにへし折っていた。懐のタマゴは、また透明な汁をどばどばと垂らす。もしかして、中身が出ちゃっているじゃないか。だんだんと心配になってきた。

 俺の股間が惨事だ。タマゴさん、汗出す場所考えてください。


「そのセリア。黒竜ってなんだ?」


「一言で言えば、強敵だ」


 強敵かよ。セリアの強さを基準に考えるなら、相当の大物なようだ。俺が出会ったらすぐ殺られるんじゃないか。危険すぎるな。DDも迂闊な発言は謹んでもらいたいものだが、こいつの性格治るのだろうか。


「セリアがそう呼ぶか。そんな危険な相手を呼び出そうとか。反省が足りないんじゃないかな。DD君?」


「は・はいぃ」


「ならよろしい。セリア、DDは口が滑る性格みたいだから大目に見てやってくれ」


「わかった」


 奇妙な金卵のおかげで、俺の股間がびしょびしょだ。

 俺達は食事を片付けると、着替えと装備を済ませてペタ村に移動する事にした。







 早朝のペダ村は、涼しげな感じで良かった。なんせ極寒とも言える雪国にいたので、尚更である。そんなペダ村だったけれど、人が多い。早朝だというのに、冒険者に獣人やら村人が動きまわっている。


「やあ、ユウタくんじゃありませんか」


「こんにちはゴメスさん。子供達は元気ですか」


「それは村長がしっかりやってくれているはずだね」


「ところで色々できたそうなのですが」


「それなんだがね、まあロクドさんが来てから詳しい事を話そうじゃないか」


 店の内部は特に変わった様子でもない。並んでいる品物は結構増えているみたいだった。

 ロクドさんが息を荒くしてやってきた。


「こんにちはユウタくん。待たせたね」


「いえ、早朝なのにすいません」


「ロクドさんも来たし、場所を替えるかね」


「というと?」


「村の中を見て回るついでに酒場で話す方が良さそうだ」


「そうしましょう」


 俺達は二人と道具屋を出る。

 通りを歩いて、村の外にある酒場に案内された。


「こんな所に酒場ですか」


「そうさ」


「エド君一杯もらえるかね。腿串とつまみを頼む」


 カウンターと思しき場所に座りながら、ゴメスさんが犬耳の給仕に声をかけた。俺とロクドさんも隣に座る。


「それで今日の話とは何かな」


「はあ、まずは・・・」


 生木の問題は既に解決されていた。ゴメス商会に関しては、いまいち売上の伸びが無いようだ。武器屋も防具屋も開設されたが、亜人のドワーフさんがやるみたいだし。

 ついで話題となったのは、木材が不足してきたという事だ。とにかく初期に取りまくった木がまだ残っているが・・・なんでもかんでもあげていいものだろうか。ちなみに今座っている椅子やらテーブルも、俺達が伐採してきた木から作られている。うーん。悩んだが、子供達を預かって貰う必要があるし。亜人達の家も用意しなければならない。

 ともあれ、木についてはなんとかする予定でいる。下水処理についても考えないといけないんだが、配管を作るのがまず大変時間がかかる。土管も輸入してこないといけないとなると、ゴルが不足するのは目に見えていた。となると、自前で作るしかないんだけどな。レンガくらいしか出来ていない訳で、モルタルすらまだまだ怪しい段階だった。

 コンクリートも作るには作れるみたいだが、肝心の機械とかなんとかないわけで。全部村人による手作りだった。村には石畳で作られた通路が出来始めているが、土管を埋めるならこれまた掘り返す必要がある。

 何もかもが足りないから、あながち原油の採掘とか鋼鉄の製造とかに目を向けるのもいいかもしれない。DDには無理とか言ってしまったが、小さな施設でいいからあると全然違うよなあ。

 

 以前から考えていた進行表からあまり変わっていないという事実。村には街灯がつけられているが、それもゴルがかかっている。ゴメスさんの兄貴ロドリコさんから安く手に入れたらしい。兄弟で商売をやっているというのは良くある話かもしれないが、仲の方はいいみたいだ。

 商売関係はゴメスさんにお任せするとして、労務に土木建設関係はロクドさん。裁判に調停と法務関係は村長さんと決めてある。上手くいくといいのだけど、肝心の警察力が未だにない。この辺りどうするべきか、まだ決められてない。自警団は、村人で構成されているみたいだ。騎士かそれに準ずる人間がいるといいのだけれど・・・

 

 とまあ村の内情はこんな感じで変わりつつあった。作れる物も増えているが肉屋が出来たのも大きい。ただ、ゴブリンの肉とかオークの肉とかちょっと無理だ。人語を喋らないとはいえ、人型だと難しい。

 自然とウルフ、ベア、蜥蜴肉が中心になるだろう。村では逗留する冒険者達が、蜥蜴狩りに勤しんでいるみたいだ。蜥蜴肉と聞いても、意外な事にDDは黙ったままである。てっきり五月蝿く喋り始めるかと思ったが、静かな物だ。

 肉屋に持ち込まれる事で食料問題も解決される予定だが。人口問題に食料と住居のほうもまだまだ道半ばで未解決だ。商工会でも作ってもらうことにして、会長ゴメスさん、副会長ロクドさんの予定を立てた。書類が出来次第発足するつもりでいる。俺の仕事は出来るだけ少なくして、楽がしたいからな。

 肉屋も料理店も新規で立ち上がっているし、冒険者が酒場運営なんてのもある。村人だけでも200人近い人間が、フルに動いている状況らしいので色々と仕事はある。小さい物では塵芥拾いから、蜥蜴駆除まで幅広いが。短期間で建造されているために補強や完成度が、問題になりそうな家の点検なんてのもあった。

 

 この酒場なんだけれど、サワオさんとルイムさんが切り盛りしている。ギルドメンバーが入り浸っている辺りがなんとも言えないが、料理が美味しいみたいだ。将来的にはペダ村の冒険者ギルドになってくれるとありがたい。実際、既に依頼が壁に貼られていたりするのだった。ゴブリンやオークに蜥蜴駆除クエストは委託金無し。薬草採取や土木建築といったアルバイトみたいなものまで様々な物が並んでいる。


 どういうやり方をしているのか。気になる運営方法だったが、ドスさんにセルフィスさんの姿が見えない。蜥蜴との戦いで大怪我を負っていたみたいだから、リハビリでもしているのだろうか。クエストについては、アーバインの冒険者ギルドからスタッフが派遣されているらしかった。

 スールさんも一度結婚の為に田舎に帰ってしまった。流石に、ドスさん達に怒られたみたいである。

 

 ゴブリンはこちら側に出てくる事が無くなった替わりに蜥蜴が出てくる。一難去ってまた一難だ。ゴブリンやオークは、アーバインの街方向に出てくるみたいだ。ぱっぱっと解決したいのだけれど、俺にはそんな力もない。今現在月日は火竜の月9日らしい。地、水、火、風、光、闇、地竜、火竜、風竜、光竜、闇竜の月となっているみたいだ。年月なんて気にしていなかったが、書類に掲載されているので恥を忍んで聞いてみた。


 代官になったことで、書類が僅かな間に溜まっていたのだ。酒場に着いてから、セリアとモニカが書類をてきぱきと片付けをしている。ちょっとした書類でも、片付けるのが手間食う感じだ。俺はというと、文字を書くのも読むのもいまいちだった。

 

 今後の予定について話を進める事になったが、やはり売り物が不足がちだという事だ。麦にしても芋にしても大量に売れる代物ではない。普通に売るのでは買い叩かれるので、パンにしたりお菓子にするわけだが。発酵系の食品には時間がかかる。武器防具にしても、また同じだ。となると、料理とか観光くらいしかない。

 

 そういうわけで、宿屋の質を上げる事と料理のバリエーションを充実させる方向で決まった。観光についても、ダンジョンを経営すると言ったら驚かれた。まあ、そうだよな。迷宮なんてモンスターが住み着く場所なわけで。そこを運営管理するなんて言ったら、いい顔をされる筈がない。

 さらに、土木魔術で簡単な土の砦を作ると言ったら、ロクドさんもゴメスさんも絶句した。

 

 此処までがペダ村での現状だ。

 書類整理を済ませたので、そろそろ会話を切り上げて木こりにごみ捨て、築城をしに行きたい。


「では、こちらを・・・」


「ゴメスさん。そろそろ出発しますので。後日でよろしいですか」


「そうかね。それでは手筈通りこちらで進めるが、いいかな」


「ええ」


 ロクドさんと相談して、建築の材料とか仕入れるみたいだ。俺は、水を飲むと席を立つ。


「済まないな。儲けがでれば、恩返ししたい所なのだが」


「いえ気にしないでください。子供達の事よろしくお願いしますね」


「任せてくれ。村長にはよく言っておくから」


 二人と会話を終えて、支払いを済ませる。【ゲート】で森の入口まで移動しよう。



 そこには・・・ 


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