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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
一章 行き倒れた男
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62話 暗い場所から暗い所に! (ヘル、アングルボザ、アル、与作丸、ユウタ、レオ、ギンガ)

 俺は冥界とか言われる場所で棍棒になっていた。これだけ聞くと何がどうしてこうなったのかわからないって思うよな。人を武器扱いしやがっていい加減ムカついてきた俺の前にそいつは現れた。


「遅いぞアルトリウス。? ・・・げえぇ!」


「!?」


 光を纏って現れたのはどこからどう見ても完璧なスタイルの少女だった。何がと言われると薄い白く輝くローブを纏う姿はアルージュ様に比べて多少胸が出てたり誤差みたいな物だったけれどね。容姿じゃないんだなこれが! なんというか雰囲気がバッチリだ。どうバッチリかというと俺の心を掴んで離さないくらいさ。アン様の手から抜け出る。


「な、何。ひ、ひいいいぃ」


「こんにちはー」


 俺は少女に近寄ろうとするが、何か危険を感じた。咄嗟に何かを横に回避する。すると地面が真っ二つに割れる。それを避けたら光る空間に入った。俺は吸い込まれるように何処かに落ちていく。


「やった。かかった。バーカ、変態、強姦魔。かーえーれ、かーえーれ。」


「ヘル。せっかくお膳立てしてやったってのにねえ。まあ、これはこれでアタシには好都合だけどさ」


「ひさしいな、ヘル。せっかくのチャンスが・・・」


「アルーシュか。だってあいつ、変態だよ。裸でけがわらしいものを立てて近寄ってくるんだもん」


「そりゃヘル。あんたねぇ。あいつは只の人間さね。あいつが【魔力操作】とか【霊体制御】とか本来ジョブで持っているスキルをいろいろ修行させようとしてた最中だったのにねえ。まあ、もう遅いね」


「そうですわね・・・あとはこの・・・ア・・・」


 何か言っているが俺に聞こえるのはそこまでだった。


「(ユウタ聞こえるかい、アタシを信じな。ただ乱暴にあんたを扱ってるんじゃないんだ。あんたの事気に入ったから色々してやってんのさ。まだ、信じられなくてもいいさ、アタシの行動をみてなよ。どんな言葉を言おうとも行動が結果になる)」


「(はあ。あ・・・。あれ)」


 聞こえてくる。念話か。

 これを無意識のうちに俺もできるようになったのか。


「(それが【念話】さ。あんたにわかり易いのは【チャット機能】かい、出来るようなったじゃないか。だからあんたには色々足りないのさ。あ・・・だ・・・平地・・・変異型ダンジ・・・暗きも・・・がっこ・・・)」


 アン様は、まだ何か重要なことを伝えようとしていた。だが、聞こえるのはそこまでで俺の意識は光に溶けていった。







 何か夢を見ていたようだ。


「おい、少年出ろ」


「はい。」


 なんでこうなったのか。8日目にして俺は牢屋にぶち込まれた。俺はかび臭い匂いのする謎鉱石造りの部屋から出る。ご丁寧なことに両手には枷がそれに鎖でつながれてしょっぴかれていく。騎士に先導されながら、とことことついていくと石畳に木製の扉を開けて中に入っていった。

 ボロボロのテーブルは何かの血で染みが出来ている。魔術の灯りに室内が照らされていた。

 俺は小汚い椅子に腰掛ける騎士の対面に座らせられた。


「少年座れ」


「はい」


「名前と職業、年齢を言いなさい」


「名前はユウタ。冒険者をしています。16才です」


「ふむ。嘘は言っていないようだが、君の容疑は盗賊3人の殺害容疑だ」


「・・・」


「黙秘かね。黙っていてもこちらにはわかるんだぞ!」


「ぐっ」


「こちらの目を見給え。そうだ・・・。ふむ、あくまで黙秘するのか。なら分からせてやる。キヒッィ、おらおら吐けや。吐かんかい、コラー」


 ぐっこいつ。な・殴ったな。まだセリア位にしか殴られたことがないのに! 我慢だ。取り調べの騎士は何度も俺を殴りつける。ジワジワと口の中が血の味がする。殴られ過ぎて馬鹿になったらどうするんだ。

 殴られても踏ん張る俺に尋問する騎士は苛立ったようだ。


「チッ、小僧。しぶとい奴だな。これくらいどうってことないってわけかぁああん?」


「ぎゃあああ」


 悪人相の男は俺の指を掴むとあらぬ方向にへし折った。こ、この野郎やりやがった。1本丁寧に折やがった。


「小僧、吐く気になったか?」


「だ、誰が」


「ほう、気合はいってんな。んじゃまあ全部指いらねえってことだなあ、おい」


 ま、まてええ。と言う間もなく俺の指は折られていく。1本折るごとにこちらを見てニヤニヤしながら吐けと行ってくるんじゃねえ糞野郎。どおってことねえ、どおってことない。が、水が顔面に掛けられる。


「起きてるか? 指全部逝ったけど吐かねえのかい。くくくっ、こいつは吐かせ甲斐があるってもんだな」


「・・・」


「チッ、んじゃ次は爪剥ぎといきますかねえ。こいつが終わったらまた治療してやるからよ。ひひ」


 既に折られた指に力など入るはずもなく、指に細い棒が差し込まれる。


「・・・」


「へー、耐えるのかよ。どこまで耐えられるかあ。たーのしみだー。」


 これも試練か。うわ、眩しい。なんか光で眠らせないと言う拷問か。爪にズブズブと挿物がはまっていく。


「もう素直に吐いちまえよ。楽になれるぜぇ」


「・・・。」


「ケッまだ踏ん張るかよ。オラッ脱げや。つってもそのままじゃ脱げねえか。小僧立て、そして壁に手をつきな」


「ひ、ひぃい。断る!」


「あ”あん? お前今なんつったよ。この犯罪者が抵抗する気か」


 俺は強烈な一撃をもらって倒れこんだ。イモムシのような格好で地べたに転がる所に蹴りがくる。


「ごふっ」


「オラオラさっさと吐けや」


 腹部に蹴りが刺さって息が出来ない程だ。全身の骨という骨が折られていく。俺は海老のようにピクピクと身体を震わせるだけだ。どれだけたったのだろう。あまりの痛みに動けない。身体中の骨という骨が折れてどこかに突き刺さっているんだろう。このままだと俺は死ぬ。


「・・・」


「はあはあ、どうだ殺人小僧め。そろそろ吐く気になったか」


「糞野郎」


「このガキしぶとい奴だな。いい加減拷問吏を呼ぶとするか。あいつらの手にかかれば赤子の手をひねるようにしゃべり出すだろうぜ。ああそうそう、お前の女共も隣の部屋で可愛がってるからよお」


「あ、あれ?」


「なんでえ小僧しゃべる気になったのかよ」


「隣で可愛がるってセリアをですか」


「チィどうして切れたんだ。てめえ、破りがったか?」


「ということはこれは」


 ぐにゃりと景色が歪むと薄灯りのついた取調室の椅子に腰掛けていた。


「幻覚でも見せていたということですか」


「ふん、ばれちゃしょうがねえ」


「貴方は何者なんですか」


「わからねえか。ま、そりゃそうだよな。俺の部下を殺ってくれた落とし前をつけにきたってとこだ。幻術で死ぬようなタマなら、儲けもんだと思ったがそうはいかなかったな」


「なんで俺を殺さないんですか」


「はっ。正直だねえ。・・・殺すなと言われて、ハイ承知しましたとは言えねえのよ。部下に殺させてみてもまた殺せない可能性が多いにあるってこともあるから俺様直々に来てやった。物理的に殺るには、背中に抱えているもんがでけえ。部下に殺らせるにしてもこっちがやばい事になるからな。でっけえ程身動きがとれねえのよ、俺もな。ともあれもうお前には手を出させねえからな。部下の手前やって見せねえといけない立場があるってのによお。まあ、お前も忘れてくれや、その内ブスリといくからよ」


 悪人面の男は、顔を歪めるとそう言い放つ。白髪混じりの中年男で双眸の目は殺気で満ちている事に今更気がついた。その凶相とイメージはさながら飢えた鴉というところだ。一体何時の間に幻覚を俺に見せていたんだ。しかし、身体に走る痛みは本物同様に有る。幻視痛とでも言えばいいのだろうか、俺はそんな感覚に陥っていた。


「はぐっ。あんた盗賊やら忍者の元締めってことですか」


「ケッ、そんくれえ自分で調べやがれ小僧。ふん・・・常人なら2,3回は殺れる傷なのにな、タフなガキだ。ただの小僧にしちゃしぶとすぎるだろうが。いいだろう、俺の名は与作丸お前の敵よ。だが、さっさと忘れちまいなあ」


 そういって、扉から出て行く騎士。そうはいってもこっちが忘れるかよ。


「貴方は部下思いのお頭さんですよね。けどこのままで済むとそう思ってるんですか」


「んだあ? おかしな奴だぜ・・・。確かに済まねえな。けど、オメエみてえなお人好しは周りに手を出さなきゃやり返すことも出来ねえだろうがよ。お前1人を狙う分にはやり返せねえ腰抜けよ。んじゃあな、腰抜け小僧そこでくたばりやがれ」


 言われてみるとそうだ、黙るしかない。凶相のオヤジはそういって出て行った。残された俺は手足の枷でろくに動けない。あの極悪オヤジは俺を観察しきったってことなんだろうか。けど俺は黙ってやられるほどお人好しというわけじゃあねえ。あのヤク○のようなオヤジはとても騎士には見えなかった。暗黒街の頭目が城に忍び込んできたというのがぴったりな感覚だ。俺自身を見切った口ぶりだったが、糞野郎を始末するのに手段はえらばないぜ。


 けど、どうしてすぐに俺が殺ったのがわかったんだろうか。日本人的感覚だと殺られても殺るななんて言いそうだけど、俺は黙って殺られるつもりはない。この世界での基準はわからないが、正当防衛あたりで通るんじゃなかろうか。家内に入ってきた段階でアウトだと思うんだが。


 室内は寒くもなく暑くもないが只時間だけが過ぎていくのが嫌だった。どれくらいたったのか2人の騎士が入ってきた。1人は見知った顔だった。


「ユウタさん無事ですか」


「これはレオ様。はあ、無事と言えば無事です」


「それは良かった。ユウタさんが騎士団に囚われたと聞いて急いで駆けつけたのですが、お話を聞かせてもらえますか」


「レオ様、簡単に説明しますがよろしいですか」


「お願いします」


 俺は朝から捕まった経緯と出来事を話した。


「そうですね。結論からいいますと正当防衛が成り立ちます。ですが、盗賊とは言え殺した相手のキューブを取り出して提出する位はしたほうがよかったですね」


「そうなんですか」


「ユウタさんはどうやら色々と常識的な事についてあまり詳しくない様子ですから、図書館にいって勉強するというのも肯けます。出来ることならセリアさんと学園に通われるのをお勧めしたい所ですね」


「レオ様ありがとうございます。あの盗賊と言っても賞金首とそうでないのがいるんでしょうか」


「盗賊にも2種類いまして、縛り首になるタイプの者と密偵として飼われているタイプですね。前者ならば問題なかったのです。後者のほうは密偵やダンジョンの鍵開け等に利用されたりしますから、盗賊だからといって殺して無届けでいると今回のような事が起きますよ」


「以後気を付けます」


「今回の一件は盗賊達の背後には与作丸という密偵担当の幹部が関わって居た為に起きたんですよね。通常通りであれば、住居に侵入した賊を3人退治した。で終わると思います。今後気を付けてください、彼は執念深いですからね」


 与作丸か。名前はわかった。けど、一体何処で何をやっているのだろう。

 めんどくさそうな相手だ。さっさとぶっ殺すに限る。ムカツク野郎だった。

 それで、探りでも入れておくか。


「与作丸様は一体何者なんでしょうか」


「彼は王国の闇を担当する一人ですよ。つまり盗賊達に売春宿の管理をさせたり、カジノを仕切らせたり社会の暗部を扱っている人間ですね。騎士にして忍者マスターでもありますから忍者達の頭でもあります。あ、もしかして会いましたか」


「ええ」


「ユウタさんよく生きてましたね。彼の得意とするのは瞳術か幻覚を見せる幻術だと言われています。もちろん体術忍術もずば抜けていますが、術自体が証拠を残さないやり方ですからね。幻覚を見せられてそのまま後日死亡するなんてことはあるそうです」


 なるほど、とんでもない大物が出て来た。もう一人の騎士はひたすら書類を書いている。俺は幻覚で殺される所だったんだろうか。しかし、昨日の今日で捕まえに来るのも早すぎないだろうか。それとも何か治安を守るシステムのような物が存在するんだろうか。


「その与作丸様は密偵担当で治安維持もされているのですか」


「それは、恐らく探知魔術を使ったのでしょう。騎士ならばだれでも使えるのですが、この国内の人口の集中する都市では大抵これが使用されます。キューブの情報を介してると考えられるている魔術を利用して治安維持に当たりますので、国内での犯罪は楽に取締ができます。ですが、その分管理される息苦しさを感じる者もいるようです」


「人口が多いと探知魔術が使えるんですか」


「大都市が出来たからというよりは探知魔術が使える場所に人口が集まっているということでしょうね。兎に角、人というのは安心して暮らせる場所に集まる傾向が高いですし。ああ、探知魔術は色々ありますが【サーチ】と呼ばれるこれは物は便利ですよ。ちなみにダンジョン等がある場所では魔術で探知しづらいです。おかげでアーバインは盗賊達の取締が難しいです」


 アーバインで盗賊が跋扈しているのはダンジョンのせいか。


「書類出来ましたー」


「騎士ギンガご苦労様です。それではユウタさんお疲れ様でした。あ、セリアさんにはルナ様の所に顔を出すようお願い出来ませんか」


「えーと、それはわかりません。セリアの気持ち次第なので確約はできません。頑張ってみますが」


「お気持ちだけで十分です。よろしくお願いします」


 そう言うと俺は手枷足枷を外してもらい外に出よう。此処がどこだかわからないが、【テレポート】が使用できたかった。しょうがないので、外に出るため歩かなければならなかった。与作丸の奴に掛けられた術の影響で転びそうになりながら歩いた。



 娑婆の空気が美味いぜってこういう事なんだろうか。




閲覧ありがとうございます。


強敵が現れた! みたいな。

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