56話 森でトカゲ続き2! (ユウタ、セリア、モニカ、シグルス、アル、リザードマン、巨大蟻、
目の前には、てらてらと光る鱗を身にまとう人型をした何かが、隊伍を組んで接近してくる。闇夜にも鮮やかな瞳は真っ赤だ。身体には、申し訳程度の布と防具らしきものを身につけている。
まぎれもなくリザードマンだ。蜥蜴人なんて言い方もされる。
屈強な体格と武器を使った攻撃で、オーク共よりも一段上の魔物だろう。
そんなトカゲ共に前方を塞がれ、後方からも接近してくる。
リザードマン達がなんだか不気味だ。周囲は不安げな顔を見せている。
騎士達だけでも逃げるか。亜人を見捨てるなら、楽に振り切れると思うけどな。
ああ。
ままならないもんだ。どうや俺達は、前に後に囲まれているみたいだ。
「やはり、亜人達を守りながらの脱出は難しいですね」
「シグルス様。リザードマン達に対して先手を取りますか?」
「・・・」
シグルス様は、何か考えている。返事はなかったけれど、どうやら、リザードマン達を殺るつもりのようだ。美人なんだけど、かなり堅い女教師というのが俺の中で出来上がっている。
ふんわりとした雰囲気をまとったお嬢様とか。涙が似合いそうな癒し系娘とかいいなあと思うんだけどな。どうしてか出会いがない。求めよ、さらば与えられんって誰か言っていたような気がするんだけど、求めても出会わなければやっぱ運がないってことなのか?
お固いシグルス様は、アル様に何か話かけている。
「アル様は、亜人達をお守りください」
「・・・わ、わかった」
「それとアル様、覚悟を決めてください」
「な、何をだ」
上ずっているアル様は、お留守番か?
2人で、こそこそと話し込むのでつい聞き耳を立ててしまう。2人して何を言っているんだ。シグルス様に何かわからないが、言葉を言われて顔を真っ赤にする長い金髪をした騎士。
諭すように話をするシグルス様に動揺しまくっているアル様は、言葉を詰まらせている。
「言わないといけませんか?」
「わかっている! 言うなよ?・・・」
「あのシグルス様、何の話なのですか?」
「女の子の恥ずかしい話ですよ。聞きたいのですか?」
へ?
「ハッ・・・。失礼いたしました!」
うわ、藪蛇だった。聞いたところで、ロクなことにはなりそうもないな。周囲にいる亜人さん達を見ると、皆怯えている様子だ。先頭のほうでは、既に戦いが始まっている様子だ。セリアは大丈夫だろう。
が、モニカが心配だ。俺と違って【ヒール】やら回復技能があるわけでもないからなあ。やはり編成を間違えたんじゃなかろうか。シグルス様がどうしてもこう分けると言うのに押し切られてしまった。
回復魔術【ヒール】は高性能だ。うーん・・・。異世界か。だからか、腹を刺されたり肩から袈裟斬りに斬撃をもらったりしても、傷を治癒出来るくらいだ。
多分だが、ショック死等、即死さえしていなければなんとかなる。まあ、死んでも他人なら【リザレクション】しちゃうんだけどね。なんで蘇らせられるのかね。そこのところは謎だ。せっかく使えるのだし、使わにゃ損と言う感覚でいるのだけれど。あまり、深く考え出したらきりがなさそうだ。
話が終わったのだろうか。シグルス様は一人になると突然リザードマン達に走り寄っていく。ええ? こっちに声位かけてくださいよ。シグルス様といいアル様といいこの国の騎士は、どうしてこう突撃大好きな特攻娘なんだ。
単騎で、急速に接近するシグルス様に気がついたリザードマン達は、隊伍を組む。けれど、シグルス様の盾に吹き飛ばされ、剣で斬り裂かれていく。特に、盾の突き飛ばしが異常だ。ボーリングの玉がピンに当たるそんな感じで隊列が乱れていく。
リザードマン達は槍で牽制しようとする。が、穂先からまとめて弾き飛ばされ懐に潜りこまれると。ドンッと、派手な音を立てて吹き飛んでいく。やっと追いついた。見とれていた訳じゃないんだ。けっして。
木陰からシグルス様を援護するように【サンダー】を放つ。電撃が命中すると、ビクビク痙攣しながら崩れ落ちるリザードマン。強固な鱗も、電撃の前には役に立たないようだ。
それにしても、リザードマン達は構成が悪すぎる。敵ながら心配だぞ、これ。後列まで見ても後衛がいない。ショートボウを持った奴すらいなくて、もちろん魔術を使うメイジ、ウィザードといった亜種も居ないようだ。
前衛と中衛で相手を圧倒してきたのだろうか。前列には盾剣か盾槍を構えるリザードマン、中列も似たような感じだ。
せっかく隊伍を組んでみても、シグルス様のようなタイプには効きはしない。森という場所、数が展開するには不向きな場所というのもある。槍という長物を自由に振り回すには本当に技量がいるだろう。
例えるなら、セリアのように器用にもくるくると取り回す位には。そういうことを考えつつも【サンダー】で焼いていくのだけれど。流石に魔力のほうが心配になってくる。
ちなみに、今の俺。
全然魔力が減った気はしない。5発位撃った所で【アイスミラー】を使う事に決めた。強力なスキルを持った奴がいるとか、【サンダー】の電撃がまるで効かない奴がいるとかそういうのは居ないようだ。
中列から後列に向けて掛かるように【アイスミラー】を展開させると、凍りつく地面に足を取られて転ぶリザードマン達。そこに【サンダー】を打ち込んでやると氷の上乗っているリザードマン達がまとめて倒れていく。
足に防具も無いようなので直でもらっているんだろう。【アイスミラー】は強力だけど相手が使ってきた場合どうするのか? という危機感みたいなものはある。【レビテーション】か剣なりなんなりを利用して飛び退くか。
はたまた同じ地形変化スキルなり魔術で対抗するくらいだろうな。ともあれ、考えながらで惰性でリザードマン達を処理していくと、一際立派な装備をしたリザードマンが出てくる。左右には大きなゴツイ奴を連れている。
既に前列のリザードマン達はシグルス様の盾技で隊列が崩壊している。中列及び後列のリザードマンは俺の【サンダー】を受けて地面に転がっている。だがまだまだ後続がいる。後続のリザードマン達は潮が引くように下がると。
中から、リザードソードとでも言うべき剣士のような奴が現れた。
「(ユウタ殿聞こえますか? すぐに、アル様の元に向かってください)」
「・・・!?」
ビックリした。突然頭の中に声が響いてくるのに驚きを隠せない。何がどうなって、この声が聞こえてくるのか。返事の仕方がわからないので、取り合えず亜人達を護衛している地点まで戻らなければ。
シグルス様はどうするんだ? まあ、あの人が殺られる姿は想像も出来ない。穏やかな笑みを浮かべながらリザードマンを鏖殺しているよな。盾スキルなのかわからないが盾を構えて突進すると、盾がリザードマンに触れた瞬間風船のように爆散していくのにはどん引きだった。
あの剣士タイプのリザードマンが同じ目に合うのか・・・。しかし、リザードマン達の後続まで皆殺しにするんだろうか。まだまだ100匹以上いるけどやりかねないな、あの人なら。
夕闇に溶け込んでいく森の木々を走り抜けて亜人達の所に戻ると、そこは阿鼻叫喚でした。亜人達を取り囲むように立ちふさがる巨大蟻。馬鹿でかいにも程がある。
人体の倍の大きさ奴までいる。外骨格の限界を超えてた体躯が大きすぎるだろ! ほとんどが子犬位の大きさなのだけれど数が多すぎる。追い払うかのように武器を構える亜人達だったが、間一髪で間に合ったか?
【ファイアウォール】をバンバン展開して防壁にするとギィギィといいながら燃え堕ちていく蟻達。なんとか亜人達、集団としての崩壊だけは、避けられたみたいだ。
「(遅いぞユウタぁ! どこだ。こっちにこい。)」
返事の返しようがないのですが? 亜人達に駆け寄ると虫の血でキモくなった騎士が一人出てくる。バンバンと弾けるような音を立てて燃える蟻達だったが。
【ファイアウォール】がない部分から亜人達に襲いかかる。必死に防戦する亜人達だったが数が違い過ぎる。時間が無いのに!
それでも、アル様の前に行き跪く。
「遅すぎるぞ、ユウタ」
「ハハッ、大変申し訳ございません。シグルス様の元より急行したのですが、少々時間を取りました」
「主を放置しておいて・・・。臣下としてどう責任をつもりだ?」
めんどい。よしきたっ。
「ハッ、今日限りで、騎士見習いを辞める所存でいかがでしょうか」
「こ、こら。馬鹿者! そこまでは言っていない。・・・お前のような頼りない男とこのようなことをするのはいささか不本意ではある。だが、そうも言っていられないようだ。そこをそのまま動くなよ? じっとしていればすぐに済む」
「ハハッ、・・・えええ? !?」
アル様が片足をつき膝をつく俺に接近してくる。あの。ち、ちょっと近い、近すぎではないですかね。えっと・・・。アル様は片手を俺の肩にそっと添えると蒼の目でじっとこちらを覗き込んでくる。ま、まて。これはこの体勢は不味い。慌てて飛び退こうとした。
が、アル様の手は万力のように押さえつけ、俺が離れることを許さない。殺される!? その恐怖に怯えると、美形な少年の顔がさし迫ってくる。
俺、ホモじゃないっす。ノンケですよ。
あのに、俺の唇とアル様の唇が触れる。その、これは強引過ぎるだろ。おお、神さま。雰囲気も何もあったもんじゃないだろ。アル様の唇が強引に押し付けられるとグイグイと入り込んでくる。アル様は舌を入れてくる。
「(気持ちいいだろう? 接続するぞ。ユウタはすぐに身も心も委ねるようになる)」
「プハッ。ちょ、たんま。ちょっとまってくださいよ」
こいつ待て。待てってっ。人の話を聞けえええ、続きを言いたいのだけれど遮られる。アル様が何なにをするのかわからないが、その黄金の鎧に包まれた身体がぼんやりと光始める。
ぼんやりとした黄金の輝きを放つモヤモヤした空気を身に纏うといった感じだ。ウプッさらに貪るように唇が押し付けられてくる。何か大事なものが失われていくような、身体から力が抜けていく。なぜ、全身から魔力が・・・。
そう、根こそぎ持っていかれる感触がする。
「(シグルスのいう通りだ。これはアルルの奴に渡すのは無い。やはりか。・・・忠勤に励めよ。最初は頭のおかしな男だと思ったけどもな。ふんふん。外見は偽りか。中身は暑苦しいのに。穏やかで何度も身を引き裂かれるような傷を負ってもまだ立ち上がってくるとか。大抵の者は男だと燃え上がる憎悪と悲しみ絶望に打ちひしがれて道を踏み外すのだが。なんて味わい深い天然物だ。こんな者滅多にないな。ま、もう手放す気はゼロだ。良い夢を見てろ)」
はは。な、なにを言っているんだ。この我が儘王子かつ少年騎士。いきなりキスしてきやがって、その上女のような言い回しばかりしやがるコイツは間違いない。真性のホモか?
いずれにしてもここを脱出したら関わりにならないようにしないと! でも手放す気はないとか言っている。周りを見る余裕もなく、目の前の騎士に抱き抱えられながら意識が暗くなっていく。必死で抵抗しようとするものの、既に身体はピクリとも動いてくれない。
ユウタは使徒を獲得した!
くそっ、どうしてこうなった。周囲の喧騒は、うるさいはずなのに全く音がしなくなり、やがて暗闇に意識が沈んだ。
キューブステータス サナダ・ユウタ 16才 冒険者
装備 ミスリルの剣 ハーフプレート チェイングリーブ プレートヘルム 硬い皮のブーツ 対魔術の盾 銅の篭手 オークの弓 オークのワンド
邸宅有り セリア 人狼 モニカ 鍛冶士
スキル テレポート PT編成
特殊能力 なし
固有能力( 人形使役、人形化 、幽体離脱、生命操作、力吸収、ダンジョン生成、竜化)
▽
[冒険者LV67]市民72村人70戦士 70剣士 71弓士 71勇者 71狩人 71魔術士 66商人 66薬剤士 64騎兵 64弓騎兵64格闘士 64英雄 64治癒士 64料理人 64魔獣使い 62付与術士 62錬金術士 64木こり58下忍 58神官55人形使い55死霊王13生命王13闘技士26騎士26槍士26 村主22 竜人3ダンジョン生成士3使徒1
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ホモなの?




