6話 町だ!騎士団だ! (ユウタ、アベル、ガイ、マーク、レオ、セリア、モニカ)
某日某所某時刻 騎士団詰所にて。
決して狭くはないが、優美な雰囲気を装飾品が醸し出す一室。そこでは、ルナの身内とも言える騎士たちによる会議が行われていた。幼い風貌を持つ騎士でルナの四天王とも言える一人。そのレオが、冒険者が持ってきた賞金首について懸念を話し始めた。
「あのルナ様、昨日の冒険者に対する賞金は上乗せ過ぎでは?」
「たしかに。だけれど、我々が手こずっていた盗賊達を全滅に追い込んだのよ。それに対してしかるべき報酬があっていいわ。それに悪化する治安回復に期待できるの。外も内も我々騎士団メンバーが巡回しても捕まらなかった。強い相手から逃げ、弱い相手を叩くやり方は効果的に地域の弱体化させるし。周辺の町や村に悪影響も出始めていたの。それを単独で乗り切ってきた彼には、今後の期待ができるわ」
「なるほどそうだな。我々も一層の精進が必要だ」
レオとルナの会話にワイルド系の騎士が、相槌の口を挟んだ。
「ルナ。それはわかる。が、マークしなくてもいいのか? 彼は狙われるぜ」
「そのための上乗せよ。彼はやり手の冒険者。ガイの言う通り狙われるでしょうし、見た目は頼りない少年だけれど。乗り切る実力はあるように見えました」
ガイと呼ばれた騎士とルナの間に、さらに割り込んでくる。中年にも青年にも見える騎士がガイを見つめて、
「ふむ、ああ見えて中身は竜虎の類だろう。侮るのはよくないぞガイ」
「マーク卿の言うとおりですよ。ルナ様、ところで、その件に関係するものです。昨日の旅亭放火未遂事件の被疑者が、自宅で毒による自殺しているのが発見されました」
痛ましそうに眉を寄せるルナ。彼女は、黙祷する。それから、紙の束に目を通す。
「ええ。仕事が早いのねアベル。これで手掛かりとなるようなものが出てこなければ、一件落着になるのだけれど。事件に繋がる盗賊団に関する情報を上げて頂戴。マーク卿はご意見ございませんか?」
眼鏡をかけたアベルから青年騎士に視線を移す。マークは、重々しく話をする。
「ルナ様。芋吊る式は期待できそうもないが、彼に関しては暗殺者を3人も倒している。騎士団に勧誘したいくらいだ。だが、彼は冒険者。それが残念だ」
「チッ。マークのおっさんまで高評価かよ。暗殺者なんて不意打ちさえなきゃ雑魚だぜ」
「嫉妬はみっともないぞ、ガイ。お前も負けちゃいないさ」
「そこまでよ、アベル。ガイ、レオ、マーク、アベル、騎士団の皆さん。王国の闇を晴らすのに力を合わせましょう。」
「「イエス、マイロード!」」
騎士たちが斉唱する。だが、ルナは苦笑しながら口に手を当て。
「もうやめなさい、それは。みんな仲間なんだから!」
照れるルナ。それに真面目な反応を示す騎士団一同。
彼彼女らの雑談に、話が弾んでいった。
◆
異世界と思しき場所で目が覚めるのも3日目だ。セリアとモニカを連れて外に出ると、テレポートを発動する。光る門に入る前に出口の確認し、その上で二人に跳んでもらった。宿の中に入ると、カウンターで女将に部屋を変更してもらう。
「おやおやお客様。御手が早い。両手に花ですね。中の上でダブルなどいかがでしょうか。220ゴルになりますよ」
無言で頷き、俺はゴルを支払い鍵を受け取る。先頭を切り、部屋に入る。
「えーと、改めてまして。俺の名は、サナダ・ユウタ。職業は、冒険者をしている。2人ともよろしく頼む。これは武器防具だ。装備したら、家探しに行くから」
銅の剣x2皮の鎧x2皮のブーツx2をイベントリから出す。武器防具を受け取る少女達だった。しかし、不安な表情を浮かべる茶髪の少女がいて。名前は、確かモニカだったな。顔立ちだけはボーイッシュな少女がおずおずと、口を開いた。改めて見ると、背がたけえ。
「あの、ご主人様。武器防具って、これを装備するってことなのでしょうか」
「うん、そうだよ。ダンジョンには一緒に入ってもらうし、狩りも手伝ってもらうからね。俺、文字読めないし。文字も書けないからね。代読とか代筆頼むこともあるよ」
「待って欲しい。ご主人様は冒険者なんだろう。文字書けない読めないで良くやってこれたなと思いますが」
ウッ、やばい。銀髪少女セリアの視線が冷たい! ここは、どう弁明するべきだろうか。読めない事はない。わかるというか。なんでわかるのかわからないが。わかることはわかる。ただ、本当なのかわからないだけだ。そうなんだ。兎も角にも俺はご主人様なのだ。なので、強気でいくべきか?
迷うな。が、何故か。下手に出る事にした。
「そこをカバーして欲しい。よろしく頼む、あとこれ読んで欲しいんだ。おいおいだけど、文字覚えていくから見捨てないで欲しい」
俺は、リュックから冒険者ガイドブックを出す。スキルの内容と詠唱文がわかれば、多分使えるはず。何がどうなっているのかさっぱりだが。だが、このままじゃな。正直にいって、複数相手の戦闘はきつい。
「すいませんでした。てっきり愛玩用に買われたのだとばかり思い込んでました。装備のほうは、着替え終わりました。それでは、これを読めばよろしいのですね」
「そうそう。お願いする」
もちろん愛玩用だとも。くくく。とは、ぶっちゃけれないのが悲しい。男の性で股間は、元気はつらつ! セリアの手に収まらないだろう胸とモニカのメロン胸を見て、とっくにやばい状態さ! 着替えで揺れるのを見て、俺はもう辛抱堪らん。
なあ。男ならわかるだろ? そういう状態だ。モニカに冒険者ガイドブック読んでもらった。だが、スキル名しかわからなかった。スキルが載っているものの、内容もほとんどなかった。さらに魔術の詠唱文がないってどないやねんだ。
回復に【ヒール】。状態異常解除の【キュア】【キュアネス】。
移動用に【ワープ】【ゲート】か。 初級魔術全般こっちだな。初級各種職業スキルよりも。スキルが使えない謎を追うよりも、使えそうな魔術を学習しよう。図書館でも行って、この順で調べてもらうしかない。
反抗的なセリアは、調べ物とか拒否しそうだよな。早くも後悔し始めている。何だか、運命的な物を感じるのであったが。これは、気のせいだっただろうか。セリアにはなんか頼み事をしづらい。それで、モニカに下手に出るのだ。
「あのモニカさん、スキルについて図書館で調べてほしいんだけどいいかな。図書館に入る条件とかあれば教えて欲しい」
「あのご主人様、お願いではなく命令するべきです。さんは余計ですよ。図書館はアーバインの町にもあります。ですが、ここの図書館に入るには貴族の紹介状と委託金が必要ですよ」
「え・・・・・・それマジですか」
なんだってえ。貴族の推薦状か。そんなものがいるとは、無念だ。いやまてよ? 騎士団詰所にいけば。あるいはなんとかなるかもしれない。ルナちゃんに会いにいくといういい口実だ。
「推薦状は、なんとかなるかもしれない。頼む。セリアは一緒に来てくれ」
「わかった。護衛すればいいんだな? しかし、奴隷にいきなり武器防具を与えるとは・・・・・・甘すぎるぞご主人様」
「俺といっしょに戦ってもらうからね。まあ護衛よろしく頼む」
まだ、納得してもらえていない様子だ。背丈の高いモニカが不安がっているな。装備更新に家に生活用品に多過ぎる! 何か、忘れているような。うーん。盗賊たちか。びびってもしょうがない。でてきたら、後腐れなく成敗よ!
俺達は海豚亭を後にすると冒険者ギルドにテレポートする。冒険者ギルドを出てから騎士団詰所に向かうのだった。そうすると。ちょうど、イケメンブルーが隊員5人をつれてでてくるところだった。イケメンブルーに【鑑定】をかける。
アベル 18才 騎士 PTメンバー 冒険者 騎士 騎士 魔術士 治癒士
ステータスは見えない。これが、ゲームなら見える筈だ。だが、そんな事はなかった。ここがゲーム世界である事は、可能性としては低い事になる。早計かな。見た感じバランスパーティーだな。良すぎる。アベルさんのそれ。パーティーの構成に隙がなさすぎだ。
「おや。冒険者のユウタくんじゃないですか。騎士団にまだ何かご用ですか?」
「こんにちわ、アベル様。少々お時間よろしいでしょうか」
「ええ。構いませんが?」
アベルのまわりにいる隊員は、薔薇でも出てくるかのような男前だった。幸いだ。こちらから声をかける手間が省けたな。下賤な者を見るような視線が気になるが、置いておこう。どうせ、平民ですよーだ。
「その。実は、図書館に入りたいのです。ですが、貴族様の紹介状が必要らしいので困っていたのです。それでなんとかならないかと、相談にあがった次第です。アベル様ならばどなたか紹介いただけるのではないかと思いまして。ゴルで解決できるならば、そうしたいのですが」
「なるほど、そういうことでしたら私が書いておきましょう。しかし、ユウタくんに名乗った覚えがないのですが。私も有名になったということなのでしょうか」
「えっと、ちょっと会話を聞いておりまして。それで、覚えていました」
「そうですか。では、少々待っていてくださいね」
イケメン流石だな。そして無駄にカンがいい! そして、なんという気前のよさ。育ちがいいとはこういうことか。知性的な奴は嫌味な騎士というのが定番なのだがね。ふむ。けれども、そんな事はなかった。俺的に、認定する良い奴候補であるアベルさんが詰所に戻る。
それから、しばらくして紹介状を持って出てきた。
「ユウタ君、紹介状はこちらになります」
「ありがとうございます。」
「ええ、また気軽に来てくださいね。では失礼する」
俺としては、すんなりもらえたことに複雑だ。しかし、ありがたいなあ。普通、一介の冒険者の名前覚えているものなのだろうか。おかしいとは思う。冒険者ギルドに戻ると、2人を連れて図書館まで歩いていくことにする。
なんというか2人を先に歩かせている。連れというより、俺が下僕で後ろにくっついてる。そんな光景にしか見えないな。後ろから、お尻を堪能するけれど。しばらくして、周囲の目が気になった。なので話をして、左右にきてもらう。
だが、これはこれで連行されてる感がいっぱいだ。そして、おぱーいが揺れているところが見えないのである。何、ガン見しろだと? 無茶だ。行先は武器屋、防具屋、道具屋、服屋と確認していく。用意するべき物をチェックだ。
必要な物を購入する前に、図書館に着く。それから、モニカに調べ物をしてもらう。彼女には1時間後には迎えにくると告げた。騎士団詰所での話では、盗賊団壊滅したといっていたし。でも油断できないけど、他にやることあるしなあ。
町の外に出なきゃ安心だよな。PTメンバーなら位置も感覚でわかるし。まずは武器屋だ。セリアの武器を更新しよう。
「セリア。武器の希望とかないかな。得意な武器とか」
「ご主人様の武器以上の物は持てない。これで十分だ」
いいのかよ。ああ、ネットゲーを思い出してきた。常に最高の武器を。常に最高のスペック。最新最高の装備競争。それに追われる毎日だったな。この世界がゲームならとんだハードゲームなのだが。普通は、ユニークスキルを自分だけ授かってゆとりプレイが出来る。
そういうネット小説がごろごろしていたからな。おかしいな。俺には、チートがないのか。いいけどさ。防具道具家のこともあるのでしょぼそうな槍や手斧を購入しとくか。モニカ用槌もわすれてはいけない。牛人とドワーフのハーフなのだし。
背丈がドワーフそれを大きく裏切っている。ひげもない。
銅の槍x5、銅の斧x5、鉄のハルバード、鉄の槌。
それらを買ってから、イベントリに収納する。6000ゴルほど飛んでしまった。どれも使い捨て用とも言える。ふむ。次は、防具屋によってみよう。
「セリア。防具を良くしようか」
「ご主人様。まだ何の働きもしていないのに、施しをされても困る」
謙虚なのもいいが、すぐ死なれても困るのだが。
皮のメットx2、銅のメットx1、チェインアーマーx1、木のバックラーx1、皮の盾x1、皮の篭手x2、銅の篭手x1と。
もろもろを買って、イベントリに収納する。8000ゴルほどかかったな。次は、道具屋に寄るか。
「セリア。ポーション瓶も持っておこうか」
「ご主人様。私にはイベントリがないのだが? お気持ちはありがたいがな」
「そうか」
うおおお。冷たい視線だ! そのつり目、まなざしにもう逆にゾクゾクしてきそうだ。リュックに入るだけでもいいんでなかろうか。俺だけ回復アイテムを持っていてもな。ゲームなら、状態異常を解除役が石化や麻痺にかかって全滅する事も多い。
そういう経験から、毒消しx2、麻痺石化睡眠解除セットを購入する。モニカの分も忘れない。魔力回復ポーションも買っておくか。テレポートつかっているので1本飲んどこう。激マズであった。所持金から7000ゴルほど飛んだ。
まだ時間にはかなり早いが迎えにいくとするか。俺とセリアは、図書館前にテレポートする。うーん、おかしいな。モニカは移動したのか? 何故か図書館にはいないような。突然、不安に襲われてきた。心臓がバックンバックンいいだした。
「ご主人様、モニカの臭いはあちらの方向に向かっているぞ。他にも人間がいるようだな」
「え? はあ? 何でだよ? とにかく急ごう」
なんで勝手に移動してるの。セリアが指さす方向は、スラム街の方向だ。俺とセリアはアーバインの町の中を走り出した。糞が。嫌な予感がするぜ。まだ半日もたってないだろう。手を回すのが、早すぎるだろうに。俺としては今度こそ、盗賊達と縁を切りたい。
走る俺の気分は最悪だ。盗賊たちが、モニカを連れて移動してるのか? だからか、時間かかってるようだ。モニカを連れた人間に、すぐに追いついた。そもそもパーティーに入れているメンバーの位置は感覚でわかるのだ。折角購入した奴隷だ。勝手に連れていかれては、今後に支障をきたす。
見れば、そいつらはモニカを前後で抱えていた。剣を投げつけて後ろの奴を倒す。それで、先頭の奴がこちらに気がついたようだ。振り返り、驚きにゆがむ盗賊の顔面。そこに、次いで投げる剣がめりこんでケリがついた。ああ、しまった。倒してしまって、手掛かりがなくなった。
こいつらのアジトを聞き出す。とかできなくなったじゃないか。
「セリアこいつらの臭いと同じ臭いがするやつの場所がわかるか?」
鼻のきく獣人らしい働きを期待してみる。
しかし。
「いやご主人様今は撤退したほうがいいな。囲まれる。5、6人・・・・・・不味いな。もっと増えているぞ」
「わかった」
テレポートで光る門を出すと、モニカを連れて逃げ出した。ここは逃げるしかない。奴隷の護衛とはこれいかに! 二人を守るのがメインになった。キューブを見るか。
【冒険者LV9市民25村人22戦士21剣士21斥候19勇者21狩人24魔術士15】
という風になっていた。まあ。2人を守るのが最優先だし、ここは逃げるが勝ちということもある。モニカをぐるぐる巻きにするとは! おぱーいが変形したらどうするんだ! 盗賊共め、許さんぞ。ジワジワと嬲り殺しにしてやる。
いや、それは外道か。ま、盗賊共はさっくり殲滅すべきだな。3人で海豚亭に戻る。それから、ぐるぐる巻きの簀巻きになっていたモニカを開放した。俺は泣きじゃくるモニカを抱えて、部屋に戻る。ぐふふ。役得だぜ。セリアの目が突き刺さって怖いけど。しょうがないじゃん。ぐふふ。
ふー。しょうがないなあ。落ち着かせよう。モニカが落ち着くまで抱きしめていた。いい匂いがした。もちろん股間はギンギンのフルMAX状態だ。天を突く勢いよ。モニカの好感度が大幅に上がった。そんな気がする。話をモニカから聞く事にした。
すると、図書館で調べ物をしていたモニカ。そこで初級魔術を書き写していたが、その途中で呼び出されたと。ほいほい知らない人間について行ったら、そのまま誘拐にあったらしい。ご主人様が呼んでいるから来てくれといわれたそうだ。
あぶねえ。パーティー組んでなきゃ危ないところだ。あと、セリアがいなきゃ終わってた。
「セリア、ありがとな」
「どうということはないぞ」
偉そうだが、セリアの鼻と耳に大感謝だ。つい頭を撫でてしまったら、ガブリだった。痛い。篭手なきゃちぎれてるぞ。
「ご主人様。怒るぞ?」
「うう・・・・・・。グスン」
怒っちゃいやん。いやもう怒ってるやん。切れ長の目がすぼまって怖い。でも、なんか怒ってないような気もする。プライドが高いんだろうな。でも、これでエッチとかできんの? 無理じゃね。
あ。これで、初級魔術途中までをゲットしたわけだ。しかし、たったこれだけでも一騒動だ。次は、家かな。旅亭は危ない。モニカも落ち着いたみたいなので、セリアやモニカと家を見に行くことにする。家。欲しいよね。宿だと、なんか不安なんだよ。旅亭が悪いわけじゃないけど。
アーバインの町で家は、ちょっと不味いかもしれないと思った。治安が最悪だ。さらには、盗賊達から的にかけられているのである。隠すなら林の中森の中ってことで、王都にすることにした。人が多いだけになんとかなる! そんな気がする。
でも、なんか嫌な予感がする。気のせいだろうか。
キューブステータス サナダ・ユウタ 16才 冒険者
装備 鉄の剣 チェインアーマー 銅のメット 皮のブーツ 木のバックラー 銅の篭手
セリア 人狼 モニカ 戦士
スキル テレポート PT編成
特殊能力 なし
所持金62万弱ゴル