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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
二章 入れ替わった男
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406話 小学生じゃ

 仲間を集める。

 なんと難しい話なのだ。

 ユウタは、ぼっちだし男が嫌いだ。


(上か下かでない会話のできる野郎ならいいんだけど)


 学生の頃は、どうであっただろうか。視線が合ったら、殴り合いのような気がする。

 もっとも、相手にされていないのが現状だ。

 壁には、時計こそないがなんとなくわかる。


(うがー、いくら待っても誰もこねえよ。まあ、その当然なんだけど)

 

 見た目は、小学生のコスプレである。中身は、歳のいったおっさん。

 木箱にすわっていたって、誰も声をかけてこない。

 高校生の女の子が、にこにこしながら手を振ってくるくらいだ。


「おみゃーさん、迷宮に入らないのにゃら邪魔にゃんだけど」


「ですよねー」


「冷やかしなら、商売の手伝いくらいしてほしいにゃ」


 もちろん、断って扉を開ける。すると、今度は豚顔の鎧武者を発見した。

 どうにも、定位置から見えないようになっていて動かないようだ。

 手には、槍と丸い盾を持っている。


 見えないのだろうか。走り寄ってこない。


(さてと、どうしようか)


 キューブには、まだレベルがなかった。ユウタのレベルはどこへ行ってしまったのであろう。

 わからないが、骸骨の魔物は倒せた。ならば、豚兵だって倒せるはず。

 鉄の剣で、倒せるか不明だが。


 そろりと近づいていく。気がついたようだ。くぐもった鼻息と共に、槍を突き出してくる。

 腹か。篭手で受け流し、鎧の継ぎ目から剣を差し込む。

 腕を動かそうとしたところで、踵を股間に添えた。


 天井で赤い茸が生まれる。地面に落ちてくると、池になった。鎧を剥ぎ取る。

 盾と槍は、使い込まれたのか。年季が入っている感じだ。

 

(引き返すと、どうなるんだろうか)


 倒して、また生まれるのだろうか。わからないが、やってみる価値はあるだろう。

 槍は、先の穂だけが鉄のようだ。長いというわけでもなく、短いというわけでもない。

 重さは、物干し竿よりも重いといった程度。


 丸い盾は、これまた木製だ。

 鎧は、血だらけで剥ぎ取る気分になれなかった。

 そのまま引きずっていくと、どうなるのか。引きずれるのか。

 

(売れる、かねえ)


 豚兵の死体。インベントリがあれば、中に入れてしまえばいいのだが。

 そうもいかない。引きずっていくに、消える様子もない。

 外へと扉を開けて、出る。


 だが、豚兵の死体は消えていた。扉から出れば、消えるようだ。

 持ち出せないアイテムなのだろうか。槍と盾は、持って返ってこれた。

 猫は、高校生の男女と話をしている。後ろで待つ。


 血も消えている。手には、豚の血と思われるものがついていたのに。

 扉を開けて、中に入って見ると死体はなかった。


(どうなってるんだ。これ。死体は、何処に消えた)


 豚の頭に茶色の毛が生えていた雄と見られる死体は、なくなっている。

 扉を開けたまま、往復してみても変わらない。

 不思議だ。


 すれ違う学生たちは、普通にすれ違っている。

 謎だ。一緒に入っても、中では一緒にならないのか。

 入り口は一緒でも中は違うようだ。


(とりあえず、盾は要らないな)


 嵩張る。槍というと、持っていける。剣の鞘と帯が必要だ。

 猫商人の前から、人がいなくなった。

 残念だが、小学生では高校生のパーティーに入るのは不可能に思える。


 会話の糸口がないのだ。


「おみゃーさん、入ったと思ったら出たりして何やってるにゃ」


「帯は、ない?」


「それにゃ、3枚にゃ」


 新品とはいえない帯を渡された。剣を吊り下げる帯もインベントリにあったのだが、入ったままだ。

 腰には、目薬やら何やらが入った袋がある。邪魔な事に、貨幣を入れる袋が当たっていた。

 

「毎度ありがとにゃ。ゴムみゃ、あれ、なんの意味があるみゃ? 売ろうとしたら、めっちゃ怒られたにゃ」


「誰に、ですか」


「上司にゃ、それ以上は言えないにゃ」


 言っているではないか。しかし、猫の上司なんて知らない。

 したがって、売らないというのは利害なのだろう。

 売らない理由を考えても仕方がない。


「それで、何に使うのにゃ」


「はあ、まあ、繁殖の抑制としか」


「抑制? 意味がわからないにゃ。そういう事に使うのに、抑制ってできなくするにゃ?」


「出来なくしたいんだよ」


「猿人は、変なのばっかりにゃ。できなくして、どうするにゃよ」


 できると、困るのだ。高校生で、子供を養っていくとか。考えられるだろうか。

 盾を1つ売りに出そう。背の小さな猫に渡す。


「これも買い取りでいいにゃ? それとも置いといて売りに出すにゃ?」


「うん」


「折れた剣が、売れてるにゃ。1本だけだけど」


 物好きがいたらしい。1本で、銅貨3枚だった。激安なのか普通なのか。

 わからないが、パン1個で1枚なのだ。安いような気がする。

 高校生たちからは、相手にされない。


(もう、これ、クリアを目指していいな)


 残念だ。本当に残念だ。高校生たちからしたら、小学生なんぞを相手にしている暇はないのだろう。

 扉を開けると、先に進むことにした。


「おみゃーさん、飯はパンかにゃ。定食とか売ってるにゃよ」


 どうやって、増えていくのだろう。扉の横にある箱には、布だとパンだのが入っている。


「ひょっとして、要望だしたら中のが増えてくの?」


「そういうことにゃ。全部は、無理だけどにゃ」


 心配もいらなさそうだ。むしろ、全員がクリアできるように手助けしてくれるようである。

 箱に硬貨を投入した。パンと水だ。水が、重要だろう。そして、パンをかじった。

 水入れだけでも、重い。これまた、箱に入っている。


 誰かが、要望を出したに違いない。


「んじゃ、いくよ」


「そうにゃ。毎度ありがとにゃん」


 茶色と黒の猫が答えた。眠くは、ない。疲れもない。脱出すべきだろう。

 アルーシュたちが戻ってくるのを、期待していたところはある。

 だが、戻ってこないならば進んでいるのだろう。


 扉を開けると、進む。曲がり角のようになっているが、真っ直ぐな道だ。

 罠もないようである。

 槍で叩いて進むのもいいだろう。槍があるのだ。


(さてと、豚の武者がいたところは、と)


 次には、四足で歩く化物だ。色が、黄色い。黄色いというのが、目にくる。

 壁は、石の色。つまり、鼠色だ。どう見ても保護色ではない。

 槍を投げたら、どうなるのであろう。


 アイテムとしての扱いだと、弾かれるとか、そもそも投げれないとかいう事象が起きてもおかしくない。


 ユウタのスキルは、空白で槍投げなどない。

 投げやりに、放つ。

 槍は、黄色い生命体の眉間と思われる部分に突き刺さった。


 立っていた某かが、潰れたようにして腹を地面につける。

 

(死んだのか?)


 動かない。死んだふりかもしれない。油断なく近寄る。口が、ぱかっと開く事を期待しながら足を動かす。槍の柄をとった。動かない。どうやら、死んだようである。槍投げのスキルは、持っていたのだが発動の痕跡はない。


(倒したら、トリガーになってて敵がめっちゃわいてくるとか。ないかねえ)


 その様子は、ない。

 武器をもっていないと、ハズレな魔物に思えてきた。蛙にしては、顔面が大きい。

 全体的に大きなビッグフロッグに似ている。

 

 であるなら、何かを食べていないといけないのだ。だが、石でも食っていたのか。

 餌になる魚も鼠などの小動物もいない。


(迷宮にしちゃ、雑というか)


 生態系としてなりたっていない。無理やりに、置いている。という感じだ。

 インベントリがないので、蛙もどきの死体は放置になる。

 肉が取れそうだが、その光景たるや酷いに尽きるのだ。


(無理無理)


 馬車に猫が轢かれているのでも、嫌なのだ。もちろん、戦場では何処にでも転がっているものの。

 肉の焼けた匂いなどは、吐き気を催す。

 スキルが中和しているのだろう。そうとしか思えない。


 蛙の死体を放って、進むと次に遭ったのは骨だ。ローブを着ている。

 杖を持っているに、生前は魔術師か。マジシャン系なのだろう。

 杖には、玉がついていた。回収した槍で死ぬだろうか。


(まあ、ままよ!)


 ゲームだと魔物が仲間になったりするが、骸骨だ。最弱というイメージがある。

 死者の王とかいう豪華な名前の不死者になったとしても、ピンとこない。

 ゲームでは、体力も低くされがちだし。火とか炎に弱くて、自キャラとして使うときにはすぐ死ぬ。

 

 槍を投げれば、頭に突き刺さって下半身はさっさと退場した。

 茶色く汚れた布と杖が残る。しかし、杖もローブも必要ない。

 

(馬でもあれば、アイテムを持っていけるのかね)


 持っていけないのだ。両手が塞がっている。骸骨の頭を外すと、鎧が動き出した部屋に入る。

 鎧の遭った部屋は、動く鎧が待ち構えていた。

 上段にかまえている。他に鎧の姿はない。


 槍を突き出す。首に吸い込まれたが、動きが止まらない。剣を弾いて、軌道を反らせた、

 槍で殴れば、槍が折れる。横薙ぎだ。足で踏みつければ、そのまま地面へと倒れる。

 動く鎧は、剣を手放せないようだ。


(うーん。なんとも。人間じゃないなあ)


 人間であれば、手を放して短剣に切り替えてきただろう。自動人形のようだ。

 兜を取れば、動かなくなる。金属製なのだが、被ってみるつもりはない。

 身体を乗っ取られたら、大変だからだ。


 鍵穴は、1つだけだ。剣を突き立てると、扉が開く。

 動く鎧の剣を折る。折って槍の代わりに持つ。短くなった槍は、そのままだが使い用がない。

 腰に入れようにも、折れた木が身体に突き立つのだ。


(槍が、脆すぎる。ひょっとして、セルフ武器破壊しちゃったか)


 自分で、武器を壊している気がしてきた。ゴーレムだ。

 次は、ボスである。ひょっとしたら、隠しボスがいるのかもしれない。

 隠し要素は、探しておくべきだろう。


 途中には、魔物がいなくてゴーレムは部屋の真ん中で待ち構えている。

 天井は、高い。魔物の援軍は、あるのかないのか。頭が弱点そうに思えた。

 逆の意味で、胴体が小さくなって身体よりも大きくなっている。


(どうやっても、連携して倒せ、ってことなの?)


 ユウタには、フレンドはいない。アバターもない。

 しかし、だから、どうしたというのだ。

 5人いれば、5人分のアバター。それがなくとも、どうにでもなる。


 ゴーレムは、どこまで近づけば動くのか。


(案外、頭が弱点だったりして)


 すると、頭が近づいてくる。否、板のようにして降りてくる。ねずみ返しのように。

 装甲が薄くなるお約束のようだ。思い込みは、いけない。殴ってみることにした。

 板を避けて、押し上げ、乗り込む。球体の頭が見える。


 拳を叩きつけると。まさに回転し始めた板が、地面に突き刺さった。

 そのまま止まる。  

 鼠色の頭部は、球体だ。叩けば、亀裂が入った。なおも叩くと、転がる。

 ぐりんぐりんと、前後に。そして、体ごと転がった。

 

(どっちにしても、回転しやがる!)


 部屋の中を独楽のように移動するではないか。折れた剣を突き立てるべく振り下ろした。

 が、剣は弾かれる。


(かったい、これは剣じゃ無理だ)


 ゴーレムの頭部は、変形して元の姿ではなかった。乗ったまま移動できる。

 さらに殴れば、へこむ。へこんだ場所を重点的に殴っていると、動かなくなる。

 回転が収まって、床に飴細工か何かのようにどろっと溶けていく。


 残ったのは、石だ。鑑定が使えれば、何かあるのかもしれない事がわかる。

 

 ゴーレムの石を手に入れた。


(初回は、金貨の袋だったけど。次は、明らかにグレード下げてる)


 銀の箱だ。レアアイテムを期待していたが、金箱と違う。

 中は、貨幣であった。ただし、銀貨だ。


(レベルもねえ、スキルもねえ、女の子はいねえ)


 いくらなんでも、平原に欲情する男はおかしい。常識が、縛っている。

 年上からは、相手にされないのだ。10歳でいたしているロシナが変態なだけ。

 ユウタは、自分がまともだと思っている。


(やれるのか、どうか。じゃねえ)


 好きだとか嫌いだとか。


(好きじゃなくたってセックスできる? わかってるよ)


 だが、やれない。お家の都合だとか。そんなものが、突き刺さっている。


(愛してなくたって、気持ちいいもんな。わかってる。愛なんて存在しないって)


 わかっているのだ。やれれば、いいのだと。


 エリアスたちとずっといれば、鼻くそだってほじくる彼女たちの見たくもない部分を見てしまう。

 見た目は、そんじょそこらに居ない幼女。幼女の時分にあってすら、わかる。

 

(愛だと? 糞食らえだ)


 幻想は、幻想のままだから美しい。

 レベルがなくても、突破できる。スキルがなくとも、魔術が使えなくとも。

 

 ゴーレムから、先の部分は見えていない。扉を開けることにした。

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