55話 森でトカゲ続き1 (ユウタ、セリア、モニカ、シグルス、アル、ジェフ、エド、ライチ、リザードマン)
そろそろまた戻りで。
某日某時刻 森の中
リザードマン達から亜人を解放するとそのまま村に連れて帰ることになった。
なんでも小柄な体型な爺さん姿をしているドワーフさん。
彼がシグルス様と交渉したみたいだ。
森の中から脱出するために皆で出口まで向かうことになった。歩きでっていうのがポイントなんだけど、ゲートが開けない。これはやばすぎる。
シグルス様とも話をしたのだが。
とんだ恥を晒してしまった。
セリアが先導する形でモニカとイープルは前衛として警護することになった。セリアとイープルはともかくモニカが心配だ。治療出来る奴いないんじゃ不味いよ。
亜人達の集団にも武器や防具を持たせることになった。
が、リザードマン達から回収した分では足りそうもない。
なので武器防具の配給も行う。
あれこれやってみるがはたして無事脱出出来るかどうかは未知数だ。
亜人達は犬耳猫耳狐耳ウサギ耳熊耳多種多様だ。頭から耳を生やしている。
本来耳がついているハズの横には何があるんだろうか?
皆、髪でその部分を隠しているので見えない。
かと言って見せてくれとも言えない。
いきなり変な事を聞かれても困るだろう。
それにしても生贄用なのか女性が多い。
十人十色と色とりどりの髪をした女の子を見ていると。
なんだかやる気が漲ってきた。
獣人達のお尻から生える尻尾を見ていた。
尻尾がもふもふやらフサフサしているのには飛びつきたくなるよな!
兎に角、なんというのだろう。ケモナー成分に自分でも自覚していなかった。
セリアがいるじゃんって?
まだ死にたくない。セリアの尻尾に飛びつくのは諦めていたんだ。
セリアもそうなのだが、この世界の獣人達は頭に耳とお尻に尻尾で体毛がほとんどない。代わりにスキルを使って獣化すると。体毛が増加するらしい。
そんな記述をスキル本で見たような気がする。
セリアも毛深くなっていくんだろうか。考えた瞬間、背筋が寒くなるような殺気を感じた。やめておこう。追求すると訓練が酷いことになりそうだ。
「おい、ユウタ」
既に集団は歩き出していて、不意に声を掛けられる。
「は。これは・・・。アル様、何用でしょうか」
「退屈だ、何か話でもしてみろ」
めんどくせええ。
ちょっとまて。この王子様。いきなり何を言い出してくるんだ。
黄金の鎧を身に付けているがリザードマン達の血がかなり汚れている。
ヘルム装着したままで表情は伺えない。
が、どうやらシグルス様がドワーフと話をしながら歩いているのが気に食わないのか? こっちにとばっちりが来た。
容姿といい言動といい。
この人、駄目だ。見た目も相まって、幼さに拍車がかかってきているな。
「あの獣人の女の子可愛くないですか? ほら耳がピクピク言っててとってもいい感じなんですが。」
「ん、あれか? ふん、大した事ないな。私のほうが可愛い。・・・」
何言ってんだ、こいつは。
「・・・ええ、そうですね」
あ・・・あれ。どうなっているんだ。急に黙られても困る。
なんかおかしい。
今日のアル様はどうもおかしい所が満載だ。そろそろツッコミ入れるべきだろうか。そういえば気になっている事が沢山あるのでこの際聞きやすそうな事を聞いておくべきだな。
「アル様、話が変わるのですが。お聞きしてもよろしいでしょうか」
「ん、・・・そうだな。・・・いいだろう質問を許す。話せる事でいいならな」
突っ込みどころ満載だからな。ぶっちゃけていいんだろうか。
「では・・・アル様は王族ですよね? なんでこんな危険な事をしているですか? 修行とか別に城でやればいいんじゃないんですか?」
「はあ」
やれやれといった風だ。なんか、むかつく。
アル様は兜の下で盛大にため息をついた。
「ユウタ・・・。臣下になったのだから常識くらいは身につけるべきだぞ。これでは私の器量が問われる。魔術に弓矢、槍に剣と使えるにもかかわらずこの程度も知らないとは・・・そもそもお前、幼年学校には通ったのか?」
「いいえ・・・。その幼年学校とは一体なんなのですか?」
「記憶にないのか? いやすっとぼけている風ではないか・・・。・・・満8才から12才までの国民ならばだれでも無料で通うことの出来る王立学校だ。大体の町や都レベルの規模都市には開設されているはずだぞ。常識がない臣下か・・・困ったな。他の学校の事も教えておいてやるか」
「はっ、ありがたき仕儀でございます」
このやろう。
ドヤ顔だ。アル様どうだと言わんばかりにふんぞり返ってやがる。糞、学校にでも通うべきなのか?
「無知なお前に教えてやるとしよう・・・。12才になると幼年学校は、そこで卒業となるわけだ。その後は、商人養成所や騎士養成所といった、ギルドの下積み組が王立冒険者学園の中にありそこで教育される。養成所とは別に、騎士科や商人科というのもあるから気をつけろ。また、ここ2千年位のうちに侍科や忍者科なんていうのもできているからな、もうなんでもありになりつつある。これまた、斥候養成所であったりする所と衝突は、絶えないから注意が必要だ。ここまでで、何か質問はあるか?」
「あの、何歳まで通えるんですか?」
「それは、続きで説明するところだ。先走るなユウタ。まあいい・・・。ユウタの疑問に答えるが、おおよそ16才までだ。そこから先は、冒険者として学園に通う場合か、冒険科に在籍することになるな。それでも大体20才までだ。20才を目安にそれ以降は研究者か教師として勤務する者だけが残る。私も学校に通ってみたいのだがな。世の中ままならないものだ」
なんでだろ、王様が絶対王制でも敷いているのか?
「なんで、アル様は学園に通っちゃ駄目なんですか?」
「ユウタ、お前なあ。王国は・・・絶対神制だからな。覚醒するか、王位を継ぐことで擬似神性をもつと大体、この大陸には敵がいなくなる。武力、権力は強大無比で、並ぶ者はいない。そんな王族と机を並べられる者はいない。悪意を持って接近すれば、自我が自壊し、善良であっても強固な意識がなければ、自意識を取り込まれて案山子になってしまう。なんでも出来るからこその孤独という奴だ。・・・そのうち、お前もわかるようになる・・・。いや、通うのもいいか」
「それで、アル様はいつもは何をされているのですか?」
「それは、お稽古事なのだ」
「・・・お稽古事?」
「・・・言い間違えた。剣術の修行だったり、法令や法律の整備、商法の学習だったりだ。・・・王家が、何故力を持っているのか分かるか?」
「権力があるからですか?」
「それもあるが、国を、民草をおかしくするのは何時も金だ。この国の王は、司祭であり、騎士であり、商人でもある。信仰と富と権力は、不可分の力なのだ。ならば、信仰、権力を利用して公正に富を集め再配分する。故に我が国では、商人や貴族が莫大な富を蓄積し、非道な行いをすることが出来ない。とあるやつの所業でこうなった。こいつは・・・おいとこう。こんな所か、また折に触れて教えてやるのだ」
「はっ、ご教授ありがとうございました」
とあるやつというのが気になるが。
その後も、何気ない雑談という名の雑学話になった。なんだかアル様も大変なんだな。
王族も大変なんだなってのがわかりましたよ。
時折、襲ってくる昆虫タイプのモンスター。
これも、シグルス様の剣で倒される。
出番がないのも、嬉しいような悲しいような複雑だ。
途中で、どうやら獣人達亜人さんが疲労を訴えかけてきた。
なので、適当な場所で休憩することになった。
休憩時間に暇なので、火を点けて麺料理を作り始める。
皆、腹減っているだろうしね。
魔術で水を作り出し、イベントリから取り出した鍋に貯めていく。
すると。セリアが、側に近寄ってきた。
「ここで、火を点けるのは不味いぞご主人様」
どういうこと?
「けど、皆腹減って動けないんじゃ不味いよ。疲労回復のためにも食事しないと士気も上がらないよ」
「確かにそうだな、だが・・・」
ああ、火ね。
「わかっているよ、セリアの言いたいことも。大丈夫だって」
「ちょ、ちょっと待てご主人様私も手伝うのか?」
「そろそろ、セリアも淑女としての身だしなみを整えたほうがいいと思う」
「・・・し、しょうがないな。・・・ご主人様!?」
照れてる。ちょっと可愛い。
なるほど。しまった。確かに、セリアの言う通り。火が、モンスターを呼び寄せるよね。だけど、皆疲れているっぽいんだよね。
気分を盛り上げていかないと、座りこんで動かなくなりそうである。照れるセリアにも手伝わせて、出来立てホヤホヤの麺をどんどん亜人さん達に、食べさせていく。木こりの材料で出来たお椀に、どんどん注いではお替りがくる。
そうこうしているうちにアル様が、こっそりと抜け出そうとしているのが見える。どこいくんだろう。
「あの、アル様何処に行くんですか?」
「!? ・・・聞くな。失礼だぞユウタ」
「はっ、失礼しました」
お花摘みか。小便だとはいわないんだな。
亜人さんと一緒になって大量に食ってんだもんな。
そりゃあトイレが近くなりもするさ。糞かもしれんけど。
あれ、シグルス様もいない。まあいいか、大分さばけたところで鍋をしまって後片付けをする。亜人さん達はどうやら満足した様子で、休憩している。これなら、出発しても大丈夫そうだ。
見るからに、ドワーフといった短足寸胴なオッサン。
と犬耳をした青年に虎耳をした女の子が、近寄ってくる。
「ワシはジェフ。こちらはエドとライチという。食料の提供、一同を代表して感謝を述べたい」
「はあ。それはどうも。俺はユウタよろしくお願いします」
「うちは、ライチっていう。ユウタに質問なんやけど、うちら何処に向かってんの? さっぱりわからんのや」
この子可愛い。ちょっと口調が独特だけど。
胸がやばい。ぐふふ。スタイルいいなあ。
隣にいるワイルド系青年が邪魔だ。
「森の脱出口です。そのあとはペダ村ですよ」
「出口までは何の位あるんだ?」
「それは、セリア位にしかわかりませんよ」
「セリアとはどなたですかな?」
「あっちで警戒している狼耳をした銀髪の女の子です」
「あっちゃーあの子かいな。これはちと厳しいでジェフはん。あの子、今気がたっとるさかい下手な事いうたらぶちのめされるで」
ゴクリ、端正な顔立ちに泣きボクロ、金髪と黒髪が混じったこの子相当な巨乳だ。胸がその存在を誇示するかのようにたわわに揺れている! 貧弱な防具では隠しきれないようだ。コイツは堪らない。ロケットおっぱいなんだろうか。どんだけあるんだ。
「ああ・・・俺でも分かるってことは、相当だな。まあ、礼が言いたかったわけだし身体を休めよう、ジェフさん」
「残念じゃが、そうじゃの。それでは失礼する。ユウタ殿頼みにしておりますぞ」
そう言って立ち去っていった亜人さん。
セリアが怒っているのも珍しいな。
まあしょうがないってことで。
休憩が終わると、再び移動を開始することになった。しっかし、真っ黒な森の中を歩いて抜けるなんて朝の時点じゃ想像もしていなかった。さらに、森の中で亜人さん達を確保するなんて事も、村の人口拡大には持って来いである。女の子が、多いのもグッドだ。野郎なんて、いつの間にやらやってくるのでほっといても大丈夫だ。
ああ、でも寝るとこ仕事に食べ物も確保しなきゃいけないんだよな。だんだん頭が痛くなってきた。どうしよう、亜人さん達は40人弱か。男女比でいくと10:1位で圧倒的に男が少ない。
襲われたら、全滅だぞこれ。
セリアとシグルス様が、いるからなんとでもなるか?
むしろ、脱出したその後が問題だ。亜人さん達の商売とか生計をどうするか。
冒険者達を取り込んでの商売となると。
酒場に宿屋に道具屋武器屋防具屋は集中させたほうがいいし。
村の内部を全面見直しとなると。
村の全面改装とか道の舗装が必要になってくるな。
俺・・・。ゴルは一体どこから都合つける気なんだろうか。
家を建てるのも材料もゴル無しだったし、なんとか無料で通すしかないような。
利益が、出るようになるまでは領主の特権ていう。
あれか、賦役ってやつで皆でがんばろう作戦だなあ。
なんかがんばろう日本を思い出す。
が、言うだけで何もしない政府とか政治家って一体なんだったんだ。
復興のために税金を上げておきながら使い込み、庶民を苦しめる。
息を吐くように嘘をつき、約束なんて破るためにあるなんていう人間にはなりたくない。○○党まさに売国奴。
色々考えながら森を大分歩いた所でシグルス様が何やら防具を取り出して言う。
「ユウタ殿、前方にトカゲ共が道を塞いでいるようです」
「えっ」
「次に後方をご覧なさい」
「げえっ」
前門のトカゲに後門のトカゲだ。
後方を見ると、そこには松明を片手に接近してくるリザードマン達。
その行列が見えました。
まいったな。
閲覧ありがとうございます。
ご指摘を戴いたので手直し開始しております。ストーリーについてもご意見ご感想はいつでもお待ちしております。




