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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
一章 行き倒れた男
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54話 村に帰還! (シグルス、ユウタ、セリア、モニカ、ジェフ、イープル、ドス、セルフィス、サワオ・バルト、ルイム、ジーク・フォン・ジギスムント)

台本形式をやめてみます。

 某日某時刻 ペダ村


「急がなければ」


森を出ると、すっかり夜に入ってしまった街道を歩いて村まで移動していきます。


「シグルス様何処に向かっておられるのですかのう」


 片手が手首から先のないドワーフが話かけてきました。


「ジェフ殿、ペダ村まで向かっているところです。村の者に、寝床や食事を用意させましょう。本来ならユウタ殿の役目ですが、過度の魔力減少で気絶しています。私が替わりに要請しておきましょう」


「それはありがたいことですじゃ」


「その後の身の振り方については、皆さんご自身で考えていただきましょう。村に留まるも良し帰国を目指すも良しでしょう。ジェフ殿、街道の先に灯りがみえますよ、そろそろつきますね」


 両脇に斑に木が生える街道の先を見れば、煌々と人家の灯りがつく場所が見えてきました。


「シグルス様ぁ。少々お時間が不味いことになってますよ」


「わかっていますよ」


 イープル、そんなことはわかっています。

 お尻に火がついている状態ですが急ぐ訳にも行きません。


 森から出て亜人達全員を見ると。

 数が減っている事に気がつきました。


「ジェフ殿、もしや蟻に何人かやられたのか?」


「じゃな。そこのお嬢ちゃんも必死に戦っておったが残念だったの。小僧が援軍に来て治療出来る者は治療しておった。んじゃが食われてしもうた者は、どうにもできんかったんじゃ」


「・・・残念ですね」


 爺が舐めた口をきく。お嬢ちゃんですって?

 いま両手がふさがっていなければ。

 間違いなくその素っ首を叩き落としています。


 ふー・・・。

 落ち着きましょうシグルス。彼に悪気はない。


 森から伸びる街道をひたすら歩く。

 と、田畑が一面に広がる景色が見えて来ます。


 その中にポツンと存在する村がペダ村です。


「あれが目的地の村なんですかの」


「そうですね、まあ休む所はありますよ。只、この時間に用意がすぐできるかどうか、ユウタ殿が起きていれば話は早かったのですけどね」


「ふむ、それは残念ですのお。中々立派な村のようですのお」


 一度ゴブリン達に焼き討ちにあっていますけれど。

 村の内部には整然とした家が再建されています。


 一番奥に立つ立派な村長宅から放射状に伸びるタイプの村です。


 村の周囲には全体を囲うように塀が出来ており。

 入口には門が備え付けられていましたが、今は開いています。


 村の外に小屋が建てられて。

 そこで、酒盛りに興じる冒険者達がいます。


 簡易・・・な。いえ、質素な酒場ということでしょうか。

 流石に夜中まで酒盛りで騒ぎ立てるのは、かなり五月蝿いですしね。


「うっぷ。あんたらどっから来たんだ?」


 麦酒を注いだ硝子製のコップを片手に上機嫌で尋ねてくる一人の冒険者。

 寄ってきました。


「私は、シグルス・ジギスムントといいます。栄えある王国の騎士です。貴方は?」


「お! おお。すまない。俺はドスというしがないモンスター狩りメインの冒険者さ。その亜人達の集団とか気になってつい声をかけてしまった。そういえばユウタくんのパーティーにいる騎士様だった」


 まあ、格好がぱっと見て解らないくらいに返り血を浴びて汚れていますけどね。 性別も判別不能というわけでもないですよね。


 白髪を逆毛にした中年男。王国でも流行りのクラシックシャツに簡単な服装に身を包み腰にはメイスを装備しています。男の色気を感じさせるドスは、我々の話を聞きたい素振りをみせていますね。


「まあなんだ、そのやっぱただ事じゃない感じだしな、ユウタ殿が気絶しているのか? あの背中についている物体はなんだ?」


 ふとセリア殿に背負われているユウタ殿を見ると、ヘルムを脱いだ頭部に白色と金色がまだらに輝く卵のような物体が、へばりついていました。

 卵から黒い足が生えているような。しかし、邪悪な気配は感じません。


「特に、危険は感じませんし。命に別段の問題はないでしょう」


「おっと悪い、話がそれてしまったね。あの後森に行ったんだそうじゃないか、森で蜥蜴共をやりあった結果がその亜人達なのかい?」


「そうですね、其の通りです。しかし、話が長くなりそうなのです。また後日、時間がある時にしましょう。それとセリア殿や亜人達を休ませてやりたいのですがよろしいか?」


「それは! ジギスムント様、それは申し訳ない事をした。それでは案内をつけよう。セルフィス案内を頼めるか?」


 一人の冒険者と思しき、銀髪の逆毛を寝かせた頭をした若者が寄ってきました。


「おう、ドスさん。っと俺はセルフィスっていう。麗しき騎士様。そうだな、俺達に用意された家と部屋が大分余ってるぜ。こっちについてきて欲しいぜ。食事はちょっと時間がかかるかな? 亜人さん方。まずは、風呂でもどうだい」


 褒めても何もでませんよ。


「ありがたい。ドス殿、セルフィス殿。ジェフ殿は彼の案内に従って欲しい」


「何から何までありがたい事です。それではお世話になりますぞ、セルフィス殿」


 ジェフを先頭にセリア殿やイープルと亜人達が続いていく。モニカ殿も気絶してイープルの背負われているようだ。


 私は、休憩するため村の外にある酒場小屋に向かって歩き出しました。ドス殿もどうやらまだ飲むようです。


「ドス殿。ご苦労さまです」


「なに、大したことじゃない。ユウタくんやジギスムント様に比べたらな」


「貴方は、お世辞がお上手ですね」


「そんなことはない。活躍をありのままに言ったまでだ。それはそうと貴方は休まなくていいのか?」


「私は、部下が戻れば王都に戻らねばなりません。魔術士がいましたよね。部下が戻り次第、ゲートをお願いしたい」


 背中に背負っているアル様の事があります。少々の時間も惜しいのです。まあ、すやすやと満足そうに眠っているアル様の事が、かなり気になるのですが。


「そうだね。それでは、それまで森の中であった事を簡単に説明してはもらえないだろうか」


「それでは、・・・簡単には言えませんが、森の変質化が進んで迷宮のような状態になっていますね。まあ、見に行けばわかると思いますが中は蜥蜴共の巣となっています。中の道を進もうにも右を向いても左を向いても産卵所に蜥蜴共。そして、人の身では相手出来ないようなモンスターが、跋扈しているようです。セリア殿の感覚がなければとても侵入と脱出は成功しなかったでしょうね」


 あの森は、どちらを向いても同じように木が生えていて。

 兎に角、迷いやすいはずです。

 が、セリア殿の先導に従って順調に殲滅していきましたからね。


 一緒に歩きながら、真剣な様子で顎に手を添えつつ。

 話に聞き入る中年男は、何やら考えこんでいる様子です。


 わかります。私も実際に目で見るまで黒く変色した森の中で蜥蜴達や蜥蜴人とやりあうと思いませんでした。


「それで、あの亜人達をどうやってジギスムント様は見つけたんだ?」


「それはですね、森の中で産卵所を破壊していたのです。そうしているうちに見つけた場所でドラコゾンビと対決するハメになりました」


「それで亜人達も・・・そこで見つけたのですかな」


「そうです、正確には蜥蜴人が捕虜にして連行した状態でした。ドラコゾンビの生贄用だったのでしょう」


 あれは、ファフニールの類とみました。私の勘ですが。

 簡易酒場にはちょっとした円卓と椅子が置いてあります。テーブル前に置いてある低い丸太椅子に座り、アル様を降ろすと膝に抱きかかえます。私も、少し酒とつまみが欲しい気分です。


「ジギスムント様は、酒もいける口かい?」


「無論です。一口麦酒とそうですね干し肉辺りを戴きたいですね」


「そうかいそりゃよかった。これをどうぞ」


 若い男がそういって麦酒と差し出してきます。何やら香ばしい香りを漂わせた焼いた肉が差し出されました。


 ガブリ、と肉に噛み付くと肉の旨みが舌を喜ばせてくれます。

 これは、良い物です。この感覚。生きているっていいことですね。


「美味いですね。これは何の肉ですか?」


「申し遅れました、私はサワオと申します。こちらはルイム。只の世話女です。そしてこれはありふれたブラウンベアの肉を加工してみた物です。中々の味付けになっていると思いますがいかがでしょうか」


「ひどっ。サワオひどい! 奥さんだよ! そこは。グスン」


 白い三角頭巾を頭にして丸い団子のようなエプロン姿。

 メイドか給仕と言ってもいい格好の少女が、しきりに抗議しています。


 そんな少女を無視するように話を続けるサワオ青年。


「いい味をしていますよ。ここに酒場を建てるのはいいと思われますが、どうにも雰囲気からすると上品な酒場になりそうですね。ええ、いい意味で食事と雑談を楽しめそうな雰囲気です」


「それはどうも、ありがとうございます」


 サワオと名乗る平民の男は、どうもキザったらしいところがない。

 服装もこざっぱりとした東方蛮族風の着流しという物でしたか?

 与作丸のニンジャ服にも似ています。いいものですね。


 嫌味がない所が調理の良さとあいまって、木でできた薄暗い掘っ立て小屋の雰囲気を引き立てています。


 灯りは蝋燭ですか?

 ああ、いけない。話が前に進んでいません。


「・・・話を戻します。我々はドラコゾンビと遭遇した。というところまででしたね」


「そうですな」


「そこで我々は正面にドラコゾンビ、後方には蜥蜴人と挟まれることになったのです」


「ほお、それでどのようにして切り抜けられたのですかな」


 中年男はグイっと麦酒を一気に嚥下すると、説明を求めてきた。

 酔ったでもなく、目は真剣そのものですね。


「身も蓋もありません。力押しですよ。逃げようにも左右は巨大な骨の壁。利用出来そうな物は何一つありませんでしたしね」


「しかし、何はともあれ無事に森を抜けられた。が、それにしては皆疲労感が漂っておりましたな」


「それについては・・・確かに我々というよりユウタ殿とセリア殿は、ドラコゾンビを倒したのです。ですがそれで終わった訳でもなく、依然として森の中には強烈極まりない相手が跋扈しています。外に出てみても、黒く染まった森はただならぬ様相を呈していますよ」


 ドラゴンゾンビに、ユウタ殿。あれに、ついて語るべきかどうか。

 更なる状況の悪化を考えると情報を流すべきかどうか迷いますね。


 金に変わる話でもないですし、素直に話しておきますか。


「一体どのようなモンスターが潜んでいるのですかな」


「1番脅威を感じたモンスター、その姿形を一言でいうならば、巨大蜥蜴というべきでしょうね。全長は何メートルあるかわからないくらいです。巨級と言われるモンスターの類です。ホットサウスという南方にある熱帯森に生息するそのモンスター。それがいるはずの森は、遥か南に位置するのです。ですので、その森とこちらが一体何故繋がったのか。そこのところは、未だ謎です。ドラコゾンビがボスというのは間違いではなかったのでしょうが、倒してからの周囲の変化を見るとせいぜい一部というところですね」


「ふむ、となると反対側から入るとどうなるのかが気になりますな。ゴブリンに加えてオーク、コボルト、さらには蜥蜴人共ですか。厄介なことになりそうですな」


「森に入っても旨みはないでしょう。はたしてどれだけの冒険者が森クエストに留まるのか厳しいことになってきました」


「そうですな。冒険者達も分相応なランクの者しか受けれないようになれば、森に入るものもいなくなりますな」


「そこが問題です。戦力が不足するのは困ったことになります」


 どうやらドス殿も悩んでいるようです。

 まあ私のほうは別の悩みですが。こういう探索は、難しい。

 下手につつけば、戦力の低下を招きますから。

 騎士団を動かせば簡単に上手くいくものでもないという事です。


 さらに、一杯の麦酒を戴きます。

 ゴクゴクと水のように嚥下される酒が美味いです。これは堪りませんねぇ。


 森のモンスターが、冒険者達の手に負えなくなるとなれば。

 いよいよ、騎士団の出番でしょうね。そうなるとルナも動き出すでしょう。


 歳下のくせに男を侍らす少女。

 光る金髪碧眼。少々小生意気な表情を浮かべた騎士の姿が目に浮かびます。


 もうしばらく施政のやり方を改め反省してもらうよう、謹慎させておきたかったのですが。止む得ませんか。


 ・・・私も随分と甘くなってしまったようだ。

 きっとこれはユウタ殿のせいでしょう。


「ジギスムント様。もう1杯いりますか?」


「いえ、もう結構です。丁度イープルも帰ってきたようですし」


「ふむ、ジギスムント様よろしいですかな。この不審な者を知りませんか?」


 カウンターの奥から引っ張り出されてくる2人の忍者と思しき中年の者男女が縛り上げられたまま転がされる。


 これが盗賊であれば問答無用で切り捨てて埋めるのですが。

 忍者ですか? 与作丸の手の者とみて間違いないでしょう。

 帝国のニンジャとは思えませんが。どちらにしても、面倒な事です。


 全く、まだ諦めきれないのですか?

 与作丸。手下を殺られて頭に血が上っているのでしょう。


 絶好の機会に、食い下がるのもわかります。

 が、村に入り込んであれやこれやと嗅ぎ回られるのはよろしくない。

 釘を刺しておかねば。


 我々まで疑いの目で見られかねないのです。

 せっかく見つけた獲物に逃げられては困りますよ。

 彼は。


「知らないといえば、嘘になりますね。この者達の身柄は私に任せてもらえますか?」


「・・・相応の処分は下されるのでしょうな? 民草の実行犯、罪人と疑わしきは殺してしまえが御主張でしたか? 次期白銀公」


 まだ、公爵ではありません。それに父上の後は弟のジークが継ぎますから。頭の奥から屑はさっさと冥界におくってやるべきだと囁きが聞こえてきます。


 忍者共は草。情報員であって盗賊、山賊の類ではないありません。

 考えを振り払うように首をちょっと回します。


 手下をここでさっさと殺して、埋めてしまうのが早いのですが。

 かの忍者マスターの面子もあります。


「そうですね、確かに私個人としてはそうですが、殺すのは簡単です。が勿体無いですよ。未熟な密偵活動がバレたのならば、堂々と此処の村に置いて村で監視してもらうのも手ですね。それで、村にどんな不利益があったのですか?」


「む、そうきましたか。それは・・・ユウタ殿についてやたらと聞き込みをする不審な男がいるという知らせを受けてですな・・・」


「ユウタ殿にたいする情報収集の疑いも、襲われて初めてスパイが確定するわけですよね。追放か目の届くところで監視が望ましいですね。勝手にこちらで処分するわけにもまいりません。処分については後日報告しますね」


「はっ、了解いたしました。・・・!? 襲われたとは・・・」

「・・・」


 しまった。なんとかこちらも苦しい言い訳でしたが、あちらの言い分も拙い。こちらが、責任を持って処罰することで解決といたしましょう。


 それにしても、足を引っ張ってくれます忍者マスター。

 与作、これが気に入らないのか。

 彼は名前で呼ぶと怒るんですよね。立派な名前じゃないですか。


「それでは、魔術師の方はどなたでしょうか」


 すると、しばらくして小屋で肉を焼いていた青年サワオが、フードとローブを身につけて出てきました。


「どうもお待たせいたしました。それではジギスムント様。王都行きゲートを開きますよ。ご確認ください」


 ゲートに代表される空間魔術。

 これを作った人間は、遺失魔術であったことをよく理解していなかった。

 今でこそ、普及しているが。

 亜人達のことをドス殿に頼むと代金を払いました。

 サワオ殿にゲートを開いてもらう。

 と、魔術師ギルド付近に帰還しました。


 ここからなら、少し歩けば王城に着きます。けれども、かなり気が重くなってきました。


「はー、シグルス様本当に大変な一日でしたネ!」


「イープル、これくらいいつものことですよ? それにもっと大変なのはこれからなのですよ」


「そうですよねですよネー、まさかシグルス様がついていながら帰城時間に遅れる! なんてなかったことですよネ」


 人の古傷を笑顔でえぐるかのような黄色頭。

 黄色い声でさえずる少女。もう私の怒りは限界ですよ!?


「・・・」


「は・・・はうううぅ?」


「重しをつけて騎士訓練所コース10周ね?」


「そんなー」


「私も始末書に書類と会議がてんこ盛りにやってくるのだから、そのくらい軽いものでしょう?」


「ぶーぶー!」


 私だけ困難が待っているのも不公平ですし、相応の分を負担してもらわないといけません。会合めんどくさいのですが。特に、暗黒卿や根暗フード魔女の相手は堪えます。


 門番に話しかけると、帰城しました。




キューブステータス シグルス・フォン・ジギスムント 21才 十字騎士クルセイダー


装備 白銀の剣  ミスリルシリーズ プレートメイル上下 ヘルム ガントレット ブーツ


収納袋アイテムポーチ  (大剣、スターシールド、小道具及び雑貨)


スキル 剣技 盾技 共通術 気術 体術 治癒魔術


サブジョブ 治癒士 冒険者

閲覧ありがとうございます。

時間がなく週1だったりしますOrz

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