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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
一章 行き倒れた男
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53話 森でトカゲⅤ! (シグルス、ユウタ、セリア、モニカ、アルル、エド、ジェフ、リザードマン)

 某日某時刻 変異した森


 真っ黒な木々の間を逃げるように、森の入口に向かう亜人達の集団。


 それを、護衛できるように前後に別れてパーティーメンバーを配置しています。


 最後尾を守るのは、主であるアル様。と、騎士見習いとして採用されたユウタ殿、それと私ことシグルスです。


 森に探索し、各所にあった蜥蜴達の産卵所を破壊し、蜥蜴達の防衛を退けました。


 さらに、森の中を進み、骨で出来たような産卵場と、その奥にあった洞窟を発見しました。


 ユウタ殿が、奥から現れた腐敗し刺激臭漂うドラコゾンビを倒し、大産卵所を破壊しました。


 同時に、我々は後方を突くようにして現れたドラコゾンビを崇拝する蜥蜴人達も倒して、生贄として捕獲していたであろう亜人達を解放しました。


 そして亜人達を守りながら森の出口まで誘導してきまた。ここまでは順調に進んでいます。


 それもここまでのようでした。前方を立ちふさがるように現れた蜥蜴共と、後方より接近する蜥蜴人達。


 左右にいる昆虫系のモンスターがこちらを伺っています。


「やはり亜人達を守りながらの脱出は難しいですね」


「そうですね、シグルス様。リザードマン達に対して先手を取りますか?」


 普通の兵士であれば、無謀の一言で斬って捨てられるでしょう。

 ユウタ殿の実力は、見知ったばかりですが評価できます。

 任せるのもいいでしょう。


「よろしいでしょう」


 ですが、このシグルスは栄えある王国の騎士です。

 この程度の蜥蜴人くらいではやられたりはしません。


 今回の蜥蜴人の数は・・・。

 先程の蜥蜴人達の2倍強ですね。亜人達を守りながら戦うには厳しい数です。


「アル様は亜人達をお守りください」


「・・・わ、わかった」


「それとアル様、覚悟を決めてください」


「な、何をだ」


 それ、もうわかっててやっているんでしょうか。


 あれですよあれ。


「それを言わないといけませんか?」


「わかっている! ユウタには言うなよ? ・・・」


「あのシグルス様、何の話なのですか?」


「女の子の恥ずかしい話ですよ。聞きたいのですか?」


「ハッ・・・失礼いたしました!」


 真っ赤になって離れるユウタ殿。本当に2人とも可愛いものです。


「アイツと本当にやるのか?」


「そういう覚悟は決めておいて欲しいものです。それとも、傷ついた民を見捨てて、惨めに逃げ出しますか? 導くこともできず、守ることも出来ない王族に、どんな価値があるのでしょうか」


「・・・わかってる。けど、厳しい、シグルスいっつもきついのだ」


「アル様が、状況をご理解いただけたのなら幸いです。このシグルス、王家に対して常に忠節と礼節を持って、粉骨砕身で行動しております」


「・・・ありがとうなのだ。シグルス」


 もってこいの状況がこうも早く到来するとは。

 嬉しい誤算ですが、いささか計算が狂ってしまいます。


 (サムライ)マスターや忍者(ニンジャ)マスターの連中が、余計な真似をしています。


 そのせいで、セリア殿とユウタ殿の距離が縮まって慌てましたよ。


 会合を開いて止めているのですが、部下がどうたらこうたらうんぬんと完全に私怨が入っています。


 ここから出たら、彼等を呼び出す必要が出てきますね。


 全滅の危機等来なければいいのですが、切り札を使う覚悟はしておいていただかねばなりません。


 気付いていないでしょうがユウタ殿は、神性接続(オルレクト)に必要な仮儀式をすでにアル様となされているのですし。


 あとは此処で回路接続(パス)を試して見るというのは、滅多にない絶好の機会です。よもや、まだ見ぬ人間がそれとできようとは。ユークリウッドの他に、できる人間はいないはず。だとすると? 多少雰囲気が違ってみえるのは、髪の色のせいでしょうか。


ともあれ、蜥蜴人達が包囲を展開する前に叩いてしまいましょう。


 隊列を組む蜥蜴人の前列から来る相手は3-4匹といったところです。


 どうやら連中もこちらに気がつきましたか。


 一気に距離を詰めて、先頭を歩いてくる蜥蜴人。

 盾で弾き飛ばし、切り裂いていきます。


 隊列を組んでいる先頭の蜥蜴人達は、混乱しているようです。


 盾で守るのではなく、武器代わりにして相手を弾きとばす。

 スキル【シールド・プッシュ】


 その効果は、文字通り相手を弾替わりに飛ばしていきます。人相手に私が使うと、少々悲惨な光景になります。


 対象が鎧を着ていないと、中身をぶちまけてしまうのです。


 私もあまり使うと、吐き気を催すような光景を作ってしまうので、人型に対しては自重しています。


 中々に堅い蜥蜴人達は、飛ばし甲斐があります。


 蜥蜴人達も数が多ければいい、というものではありませんよ。

 

 次々に仕留めていくとユウタ殿が放つ【サンダー】の電撃が蜥蜴人を灼いていくのが見えます。


 前列を崩壊させると、蜥蜴人達の死骸を踏みしだきながら前に進みました。


 倒れていく仲間をものともせず、斬りかかってくる蜥蜴人達。襲い来るそれらを、一刀にて切り倒していきます。


 彼等が、スピアを投擲してくるなら脅威なのです。

 が、お決まりのパターンですか?

 と言いたくなるような3方向から刺突してくる攻撃。

 これを、まとめて軽く盾で弾き飛ばします。


 返す盾で【シールド・プッシュ】を使うと。

 ドンと爆発するような音を立てて吹き飛んでいく蜥蜴人。

 それでもって、隊列を破壊していきました。


 これは盾をぶん投げてサモンする。

 【シールド・クラッシュ】を使うまでもないようですね。


 昔は盾を投げるとそのまま回収に走っていましたが、現在では盾自体を強制召喚で手元に呼び戻すタイプと引力が使用されるタイプとで別れています。大昔は最終奥義だったらしいのですが、現在では弱点も解消されつつあります。


2つ盾を装備して、交互に使うというダブルシールドタイプもあります。正統派の多い重戦士にいわせれば盾を武器にするなど、邪道と言われるそうですが、薙ぎ払い斬りに突きと使えて、防御も出来るので盾にして剣替わりの武器にして使用も、有りだと思うのです。

 無論、私は使えます。し、愛用の技もありますけれど。

 

 蜥蜴人達の中列後列に、ユウタ殿の【アイスミラー】が展開される。

 と、電撃で次々に蜥蜴人達は倒れていきます。


 ですが、そうそう上手くはいかないようです。

 蜥蜴人の中に鎧を着込み剣と盾を持つタイプが、出てきました。


 これは、そう簡単に切り倒せる相手でもなさそうです。蜥蜴人達が一斉に後退すると、左右には大柄な蜥蜴人リーダーを従えて剣士タイプの蜥蜴人が接近してきました。


「(シグルス! ユウタをこちらに寄越せ!)」


「(何が起きたのですか?)」


「(こっちは襲われている。虫だ! いや・・・巨大蟻だ。やるしかないのか・・・くそくそくそぉ!)」


「(ユウタ殿聞こえますか? すぐにアル様の元に向かってください)」


 アル様がまったくもって、言葉遣いが下品になってしまっています。悪い方向に毒されてしまって残念な子です。


 ユウタ殿の返事は着ませんが、気配は遠ざかって行きます。


 それにしても、アル様ご自身で呼べばいいでしょうに。アル様も気恥ずかしかったのでしょうね。


 間に合えばいいのですが、初心な2人で上手くやれるのでしょうか。


 蜥蜴人リーダーを下がらせたのか、目の前には170cm程度の大きさな蜥蜴剣士が、一人で進んできました。


「ワレ・・・イッキウチヲノゾム。ワレニカテバ、コノバハミノガソウ」


「驚きましたね、蜥蜴人が人語を解す等滅多にない存在ですね。しかし、そちらが勝てばどうなるのです?」


「ツマニ、ナッテモラウ。ソレデハイクゾ!」


  ハハ・・・何のご冗談を・・・またまた・・・。思わずのけぞってしまいました。


 この蜥蜴は何を言っているのでしょうか。


 遥か遠くから受け継がれる我が家と主神の血を引く私に対して、失礼にも程があります。


 蜥蜴人にモテてもしょうがないのですよ。そこまで男に飢えてはいません。


 こやつは見た目が蜥蜴に似ているとでも言うのですか!

 リザードマン。これも、オーク同様です。

 亜人異種交配は一応出来るそうですが。おぞましいにも程があります。


 そもそも勝つ気でいる事自体が、可笑しい事に気がつくべきでしょう。


 私の先祖とその血統で、蜥蜴の類に負けた者はいません。

 そしてそれによる擬似術則がこの身に獲得されています。


 その一つが曰く(ドラッツェ)の類に対して、その攻撃を無効化する。伝説の数だけ血統魔術とスキルを身につけています。


 私を相手に蜥蜴が勝利を語るのは、いささか失礼を通りこして無礼と言いたくなるのです。


 構えた蜥蜴剣士は、伝わってくる私の殺気に当てられて斬りかかってきました。


 斜めに振りおろされるロングソードをあっさりと弾き飛ばすと、返す剣で突き込みます。


 丸型の盾で防ぎますが、そのまま盾を貫通し蜥蜴剣士にマジックソードが突き刺さりました。


 ギャッォと悲鳴を上げて、丸型の盾を落とすと蜥蜴剣士は傷を無視して、上段から縦に斬りかかってきます。


 蜥蜴剣士の斬撃を躱す。

 と、半身を入れつつカウンターでガントレットによる突きを腹部に入れます。


 蜥蜴剣士の鎧がガボッと嫌な音を立てた。

 突きの威力で浮き上がる蜥蜴剣士に追撃を重ねます。


 蜥蜴剣士は必死に噛み付きで反撃しようとしますが。

 反対に蹴り上げハイキックを顎に突き刺しました。


 完全に浮かび上がった状態で、さらなる連撃に蹴りを三発ほど入れて浮かし直すと、完全に意識を失ったようです。


 気絶した蜥蜴剣士を抱えると、蜥蜴人リーダー達の所に持っていきます。


 気絶した蜥蜴剣士を蜥蜴人リーダー達は、それを丁重に運んでいきました。


 意気込みは買いますが、相手を選ぶべきですよ。


 自分で言うのもどうかと思いますが、並の騎士なら、私があっさり倒した蜥蜴剣士でも勝てるでしょう。


 残念ですが、相手の力量が読めないのは勝負以前の話です。


 同時に蜥蜴人の残党は、蜥蜴人リーダーの合図でやってきた方向に引き返していきます。まあ、このままやっても勝てるのですが、虐殺が趣味ではありません。


 撤退しようとする蜥蜴人達を見送ると、アル様やイープル達はどうなったのでしょうか。


 アル様達亜人の集団がいる方向を眺めると、眩い光が空間を埋め尽くしていきます。


 ああ、使ったのですね。それにしては時間がかかったようです。


「(イープル聞こえますか? そちらはどうですか)」


「(・・・申し訳ございません、シグルス様。モニカ殿負傷されております。至急こちらにおいで下さい)」


「(・・・言い訳は後で聞きましょう。トカゲ達はどうなりました?)」


「(は、セリア殿の活躍により追い払うことに成功しました。ですが、追撃するセリア殿の不在に蟻共の出現で、モニカ殿が負傷。亜人達の死傷は、軽微ですが出ております。亜人達は、アル様の秘術により加護を受けて森を脱出しつつあります。けどこれは一体なんなのですか?)」


「(イープル、よく見ておくことです。滅多に見られない物ですからね)」


 完全に蜥蜴人達の姿が見えなくなると、気配も遠ざかって行きます。約束は守るようですね。


 蜥蜴人達の死体は、放置するしかありません。すぐにアル様達に追いつかねばいけません。


 踵を返すと森の中を走り出しました。ドーンドーンと重い地響きが聞こえてきます。


「(セリア殿が帰還しまた。入口に到着したのですが、出口がありません。・・・アッ、空間をセリア殿が薙ぐと出口でました! 早くお戻りください)」


「(どうやらなんとかなりましたね。向かっています。)」


 流石セリア殿です。念話で会話しながら走ると、鎧が少々五月蝿いですね。ほどなくして光る膜を張る集団に、合流しました。


 蟻共はどうしたのでしょうか。アル様が追い払ったと見るべきでしょう。

 程なくして集団に追いつきました。怪我をしたドワーフが声をかけてきます。


「おお、ジギスムント様無事じゃったか。この音はなんじゃろう」


「話は後にしましょう。皆さん早く森を出てください!」


「な、なんだあれは!」


「皆さん、振り向かず前に走ってください!」


 あのような巨大な存在が接近してくれば、遠目でも振動で動けなくなるのですが、アル様の加護によりどうにか抑えられて走れるのです。


 早く走らないといけません。どうにか森を皆で逃げ出すことに成功しました。


 森の中同様に外はとっぷりと闇に包まれていました。


 森を出ると中からは、何の音も聞こえてきません。黒く染まった森は、やはりその姿を元戻す事が、難しいようです。


 そうそう簡単にはいきませんか。


「あれはなんじゃったんじゃ?」


「おそらく巨級の蜥蜴でしょう。噂には聞いていますが、剣を起動するか鎧を纏うかしなければ相手することは難しいですね」


アル様の張る光の膜が薄れて消えていきます。どうやら力を無駄に放出してしまったようですね。


 長持ちさせるにはもう少し、いえかなりの鍛錬と使用が必要ですか。


「この光のカーテンは一体なんじゃったんじゃ? 何の説明もなかったしのう」


「アル様のお力ですよ。これは精神の集中が必要ですから、話を出来る状態でもなかったでしょう」


 もとよりアル様の未熟な腕では、吸い出した分を昇華させることもなく力として、すぐ使ってしまったのでしょう。


 神官でも上級職である神官長クラスで、尚且つ【ホーリーカーテン】と呼ばれるスキルがあるそうですが、それもパーティー用です。


 これだけの範囲と人数をカバーしきれるようなものではないので、アル様のものはまさに神技といってもいいでしょう。


 人だかりの中にアル様を見つけました。どきなさい下郎共、と言うまでもなく道が出来たので、アル様に近寄ると倒れかかるお姿を支えます。


 どうやら意識が途切れたようです。そのまま両手で抱きかかえると村に向かいます。


「これからどこに向かうのですかの」


「あちらに村の灯りが見えますよね。あそこに向かいます。皆疲れているでしょうが、進みましょう」


「ま・待ってくださいジギスムント様皆疲れきっております。どうか小休止を!」


「では、休憩したい方はどうぞご自由にしてください。食事に寝床に、ありつきたい方は進みましょう。それにここにいては、また蜥蜴共に襲われないとも限りませんよ?」


 弱きを守るのが騎士道とはいえ、どこまでも甘やかすつもりはありません。


 ユウタ殿の姿を探すと、狐耳をした亜人に背負われているようです。モニカ殿も同様にセリア殿に担がれています。


「・・・」


「なっ爺さん?」


「ええ加減にせんか! このたわけ者!」


「えっ!? ・・・」


「ジギスムント様は、寝る所食物を用意してくださると言っておられる。その上なんだその態度は!皆、歩くぞい。ほれほれ急げ。エドよ・・・お前は二度とジギスムント様に意見するな。無礼にも程があるぞい。こんなにも親身に面倒を見てくれる騎士をワシは初めてみたわい」


「・・・はい」


 言いたいことをジェフが言ってしまったので良しとしましょう。


 残念ながらユウタ殿は、魔力を吸い尽くされて気絶しておられます。


 ゲートの使用が不可なのは痛いですが、村まで戻れば魔術士もいることですしどうにでもなります。


 このシグルス、幼稚な餓鬼ではありませんので腹を立ててエドを斬ったりはしません。


 ですが、アル様に不敬な態度を取れば、速攻で地獄を見てもらいます。私はそこまで寛容ではありません。


 主に対する不敬を許すような騎士や家臣とは、一体なんなのでしょうか。そんな臣下等、塵芥の存在です。


 私は全く許せるものではないと思います。たとえそれが神の如き力を持っていたとしても、どんな手を使ってもその存在を抹消することでしょう。


 とっぷりと暮れて、夜になってしまっています。懐から懐中時計を取り出すと7時過ぎていました。


 戦闘で壊れていないか心配でしたが、どうやら無事のようです。この時計お気に入りですが、帝国産なので少々値段が張ります。




 皆、疲れきっていました。が、どうにか村にたどり着けそうです。





 キューブステータス シグルス・ジギスムント 21才 十字騎士クルセイダー


装備 白銀の剣  ミスリルシリーズ プレートメイル上下 ヘルム ガントレット ブーツ


収納袋アイテムポーチ  (大剣、スターシールド、小道具及び雑貨)


スキル 剣技 盾技 共通術 気術 体術 治癒魔術


サブジョブ 治癒士 冒険者

閲覧ありがとうございます。感想も文法表現誤字脱字など作中の具体的なものをいただけると描写力伸びるかもしれませぬ。

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