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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
二章 入れ替わった男
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383話 キャメロット防衛(ベルナール

この小説を読んでいる暇があったら、彼女を探しに行くんだ!

間に合わなくなっても知らんぞ!!



 殺しに来ていると思った。

 それはそうだろう。

 左右、上からも迫る鎧を着た戦士たち。


 鈍色の盾が、淡い輝きを帯びている。付与魔術か。ユウタの魔術を防ぐのだ。

 生半な術ではない。


「死ねえええ!」


 襲いかかってくる敵兵は、表情が読み取れないものの。必殺の連携だ。

 右の方が速い。背中側の壁は、民家だろう。だが、構っていられない。体当たりするようにして崩す。

 人の気配を読み取って崩したので、死人は出ていないはずだ。


「逃げるか、魔術士」


 味方を散々倒されたので逃がす気はないようである。飛び込んできた戦士の穂先は、またスキルの光を帯びて怪しく輝いていた。1人だ。突っ込んできた相手の槍を躱して、腹の部分を打つ。相手の体は、押し戻されて膝をついた。


「ベルナール? 貴様ぁ」


「待て」


 更に、2人。細身の戦士だ。駆け寄ろうとして、止まった。


「一騎討ちを申し込みたい」


 というからには、先手の戦士が惜しいと見える。捕らえて、交渉に使えるかもしれない。

 だが、男を捕えるというのは趣味ではないのである。どうしたものか迷っていると、


「俺に、構うな」


 などと言い出した。手を動かそうとしているが、動かないようだ。蹴れば、すぐにも死ぬような風に見える。転移門を出せば、一気に襲いかかってくるか。それとも、増援が来るのを待っているのかもしれない。敵の戦力が、どの程度のものなのかわからないのだ。


(ここで、時間を消費する訳にはいかないな)


 火線の正体を知っているのか。それが気になる。防いだ魔術の構成だとか。

 ユウタの術を知っているのなら、手下にするか奴隷にするか。いずれも、考えておかないといけないだろう。

 門を作ると、蹴り込む。跳ばす先は、ラトスクの事務所だ。

 なんだが、留置所のようになっている。


「なっ、どう」


 滑るようにして間合いを詰めてくる。男の声と女の声だ。片方は、女なのだろう。

 だが、手加減をしたりはすまい。何しろ、術を防いでみせたのだ。

 民家の住人というと、逃げ出している。


 斜めに向けて放たれる槍は、足を狙っていた。飛ばそうというのか。狭い家の中では、突きこそが有利と見ているのだろう。牽制のつもりで放たれた先端を掴むと、


「ばっ・・・」


 距離を離そうとする。そうはいかない。足を払って、蹴りを入れる。間髪置かずに、剣が降ってきた。

 体勢は、崩れていない。連携としても拙い。待っていれば、頭から真っ二つにされるだろう。

 刃の腹を押して、肩を入れると体当たりをする。


 ふわっと浮いた相手は、唾を飛ばしていた。他愛もない。付与されていた魔術こそ驚くべきものだったのだが。沈黙した2人を門に放り込むと、外では味方の兵と敵が斬り合っているではないか。


 どうして、人は戦いたがるのか。混戦となってしまえば、ユウタにできることは雑草を抜くようにして倒すしかない。女が混じっていたのか。組み伏せた兵士が、隅っこでいたしている。ユークリウッドなら、許さなかっただろう。


 しかし、攻め込んできた敵だ。そして、命をかけた戦いの最中にやりだす行為を理解しがたい。


(やめろっていうのは簡単なんだけど)


 捕虜は、奴隷になるだろう。身代金を払えれば別である。手助けする事があるとすれば、横から足を打ち据えたりするくらいだ。アルたちは、略奪と人取りを禁じているものの敵を捕らえた際の細かな事項を定めていない。


(でも、きもいおっさんが嫁さんをゲットしようと思ったら兵隊になるしかないんじゃね? 冒険者やっても金を貯めるの大変だし。兵隊になれば、襲ってきた敵兵を捕虜にして一発逆転ができるもんなあ)


 かくいうミッドガルドも次男以降の扱いは、長男のスペアでしかなくて。

 戦争にでもいって、女を得ないといけないくらいだ。

 

 顔面も悪くて取り柄もなければ、行くところもないのではないか。冒険者だって、スキルが必要であり、女の冒険者など殆どいない。


 いても、ハーレムが自然に形成される。ユウタは、そこで寂しくなった。

 やはり、愛など存在しないではないかと。女が寄ってくるのは、金と権力なのだと。

 周りを見渡しても、ミッドガルド軍の方が優勢のようである。


 落下してくる気配を感じて、壁を駆け上がった。街を囲む壁の上でも戦闘が起きている。

 斬って斬られて、爆発したり、串刺しになったり。

 空中から、降りてくる。否、落ちてくるものがあった。


 船だ。朝日に紛れて進軍してきた敵の母艦であろう。長大な姿が、煙を上げて降下してくるではないか。

 直接乗り込もうとしているのか否か。間近で戦っている敵の頭を叩くと、血しぶきを上げる。

 胴を味方の兵が剣で貫いて、首を切り落として勝ち鬨を上げた。


 火線を放てば、燃え上がる。周囲に飛ぶ船というと、離脱していくではないか。

 味方の空戦部隊も、魔術を放っている。ただ、


(やばい。斜めに落下してくる)


 見ていれば、そのまま市街地に落ちて大惨事だろう。真っ逆さまに落ちて貰うのは、都合が良いのだが。 【土壁】から【土柱】を併用して、登っていく茶色の壁と柱を見送る。どんどん上がっていく地面で、船体をちょうど受け止めた。

 壁の上に立っていると、1人の男が兵の合間を縫ってくる。


「いや、流石。流石は、アルブレスト卿。見事な腕前ですな。敵の襲撃も、問題なく切り抜けられそうだ。ご協力感謝する」


 守備隊を指揮するベルガーだ。背中に合ったはずの外套が斬られて、短くなっている。兜が、凹んでいるので殴られたのかもしれない。


「はあ」


 壁と柱の上では、船が燃えていて火の粉が落ちてくる。爆発も起こしているので、尋常な状態ではない。 斬り倒された兵だとか、組み伏せたりしている兵を見て水晶玉を取り出す。

 アルトリウスの方は、と。探すのだが。


(何にも無さそうじゃないか)


 交戦する様子もなく、地上の兵はにらみ合いをしていている。

 見つけたのは、ロンドンから東に行ったところだ。

 ウェールズの軍は、寄せ集めのような気がする。


 戦力が出払っているところを急襲して、アーサー王子を取り返す。

 良い案だと思うのだが、防がれたらどうなるのか。戦うまでもなく、散り散りになるような気もしてくる。兵数を観察するに、アルトリウスの兵は少ない。


 各地の防衛に兵を取られて、徴兵がままならないからだろう。

 兵を募るのに、敵が入ってきては本末転倒だからだ。

 

(さて、どうするべきかね)


 と、見ている間に前衛の騎馬隊が走り出す。何が起きたのか。空中からは、要塞の兵が出てきて矢を放つではないか。敵の船がいないようだ。これでは、如何に精鋭であってもたまらない。制空権を取られて爆撃を受け放題だ。


(ひょっとして、ここにある船が敵の最大航空戦力だったりして)


 ブリタニア王国軍が、何処からか手に入れた船であろう。敵の戦力が欠けているということを、


『アルトリウスだ。聞こえるか』


『は』


『よくぞ、オライオン級及び随伴艦を沈めてくれた。褒美が欲しければ、なんなりと申すがよい』


 欲しいもの。愛だ。しかし、叶わない望みである。この世で、もっとも手に入らないものといえば老若男女を問わず、愛ではないだろうか。信用の置ける部下も欲しいものに挙げられるかもしれない。


『答えが決まっていないのなら、こちらで勝手に決めるか』


『結構です』


『そういうと思ったぞ』


 強制的に切ろうとしても聞こえるので、辟易する。使い切れない財宝だとかもらっても、使い道はなくて借金に持っていかれるという。結局、金で落ち着いた。よくよく考えれば、セリアだとかセリアだとかにどんどん持っていかれるので。


 参戦せずともいいようである。来ているであろう弟の様子を見に行く事にした。 

 


 

   

 空中戦は、危ない。

 ミッドガルド兵でも、エリートの中のエリートが成る職らしくて柄の悪いのはいなかった。

 騎獣の格で、生き残れるか否かが決まるのではないか。


『おい、レウス。外周に移動だ』


 任務は、過酷で寒いし肌を切るかのような風で体が冷える。

 上官で、先輩であるアキラは良くしてくれていると思っているが。

 乗っているのは、若い魔獣である。レウスの感覚を敏感に反応して従ってくれた。


 でなければ、敵の放つ術で焼け死んでいただろう。

 魔術が飛び交う戦場では、流れ弾で死にかねない。

 アキラからのスキルがあって生きているようなものだった。


(なんでこんなところにいるんだっけ)


 兄に近づくためだ。立派な屋敷に住み、何不自由ない生活を送っている兄。

 1人ではなかった。何人もの兄がいる。女の子も何人も連れている。

 そう成れるだろうか。


 アキラに言わせれば、ミッドガルド屈指の魔術士だという。 

 そう成れるだろうか。

 レウスの家は、貧しくて明日の飯にも困っていた。


 なれるはずがない。

 隣家の姉弟は、城に連れて行かれるし。レウスは、母親しかいなくなってしまった。

 戦場へ兵士としてでれば、金がもらえる。

 それだけだ。


 きついが、


『やばい。一気に下げるぞ』


 弩の撃ち合いをして、敵の障壁を削る。削りあいだ。普通は。

 レウスの職は、剣士で本来なら魔獣にも乗れない。

 だが、パーティー効果で乗れている。アキラのおかげだ。

 

 アキラが、魔獣使いを取っているからである。召喚だってできる。

 レウスは、何なのだろうか。可愛いと言われるが、それだけだ。

 戦場では、なんの役にも立たない。


『全隊、敵の護衛艦を叩くぞ。急速上昇。味方の魔砲に巻き込まれるなよ』


 隊長が、指示を跳ばす。レウスのような子供が戦場に出てくるのは稀らしい。

 巨大な船が、赤い光に貫かれてゆっくりと落ちていく。

 護衛艦は、光を捻じ曲げているようだ。


 何故だろう。


『付与魔術だな。確か、グラヴィティだかそんなんの上級であったかもな』


 知らない魔術だ。スキルなのかもしれない。レウスにとって、全てが未知のものである。

 空を飛んでいるのも。アキラが、妙に親切なのも。

 ついで、鷲の背中に乗るのも。


 赤い光で、倒せない船を狙って攻撃を仕掛けるのだ。だが、敵も兵隊を出してくる。

 同じような魔獣に乗って、弩から矢を飛ばしてきた。

 反撃に無数の矢が飛んで行くと、人体が見えなくなるくらい突き刺さって落ちていく。


 槍だって投げれば、石だって投げる。下に人がいれば、たまったものではないだろう。


『レウス、後退するぞ』


 なんで? と思ったが命令だ。従うしかない。敵の船は、沈まない。

 レウスというと、矢をつがえるのもやっとで落ちないか心配であった。

 寄ってきたアキラの巨大雀が、誘導してくれる。


『やっぱ、こっちは早いな』


 レウスから離れていくのと、船に大きすぎる石が命中するのと同じくらいであった。

 

エリアスに言われて森に出かけたユウタは・・・

挿絵(By みてみん)

na2wa10a1ki6mi様作品



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