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ヘタレの異世界無双   作者: garaha
二章 入れ替わった男
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369話 ポーション売り

 よく夢を見るようになった。

 内容は、大体がエリアスのエロシーンである。

 それは、つまり。「感じちゃってる?」

 「これで、もう俺たちセフレだよね」だのと。

 ずっこんばっこん。聞こえてくる淫音。寝取られの性癖などないのだが。


(うーん。わからん)


 寝取られたら、衝撃の余り立ち上がれないかもしれない。

 ただ、エリアスがユウタを好きかどうかが問題で。

 衝撃を受けないかもしれないのだ。

 寝取った相手を肉片に変える事を考えれば、高ぶってくるではないか。


(男女が平等は・・・平等じゃねえもん。恋愛なんて、存在しねえって。わかっているだろうに? キモ豚は、世界の片隅で黙って死ぬしかねーんだよ)

 男は、1人で子供を作れない。が、女は子種さえあれば作れる。

 圧倒的に不平等ではないか。


 思えば、日本は恋愛至上主義に陥っていた気がした。

 イケメンであるか。或いは、金持ちか。そうでなければ、犯罪者になるしかない。


 己が好きになったとしても、どうであろう。相手が、好きだと言わねばならないし。

 そもそも、人の身体だ。元の、日本人らしい寸胴な身体ではない。

 おかしな位、顔が整っていれば。ベッドから壁にかかった鏡を見る。

 己のものとは、信じられないくらい整った顔があった。


(やばいよな。この顔。そりゃあ、ね。ガキの頃からこんだけ顔が良かったらさ。モテるよなあ)


 要は、顔だ。顔が良いからモテるのであって、そこに愛などないのだ。

 恋も、性欲である。


(皆、よく我慢してたよなあ)


 日本人の結婚できない、或いはしたこともない男たちの事を思い浮かべ。


(男女平等なんて言われてたっけ。男女共同参画とか1億総活躍とか。全部、失敗だったけど)


 政治は、失敗続きで。民間が、下の方から崩壊するまで。

 理解できないし、現実も見えないのである。政治家という生き物には。


(あーだーこーだ言ったって、出生率が半減して大正辺りの時代まで人口が逆戻りするんだ)


 頭を起こすと、ちらかり放題の動物園がそこにあった。

 羊から蜥蜴まで、ごろごろと床に寝っ転がっている。

 これを片付けているのは、メイドをしてくれている人たちだろう。

 感謝すると、今日の鍛錬の為に着替える。


 濃い茶色をした四角い衣装入れの扉を開けた。


(イケメンは、殴り殺すくらい行ってもおかしくないのにな。黙って引きこもりするだけってさあ。民度が高すぎだわ)


 日本人といえば、どこの国よりも大人しい民族だ。

 翻って、ミッドガルドを見ると決闘ありの姦通罪ありのだ。仇討ちに。

 殺し殺され、夜討ち朝駆けと。

 奴隷制度があって側室制度もある。

 

 隣合う領土で敵対する部族が、皆殺しにあったり。また、小さな川の水を巡って殺し合う。


(なんとかしなきゃなあ)


 人口を増やすのは、国力を増やすということ。為政者としての努めだ。


 寝息の聞こえる部屋を出ると、廊下に出て階段を降りる。

 石の階段だ。金が掛かっていそう。

 1階の玄関口に出たところ。


「おはようございます。マスター、今日は何処へ向かわれますか」


 メイド服を着た桜火が立っていた。寒くないのだろうか。ふくよかな胸に飛び込みたい衝動が生まれる。

 何故か、黒髪のかつらを渡された。それをインベントリに入れる。


「そうだねえ。とりあえず、ペダ市の視察かな」


「わかりました。朝食の準備は済ませてあります。いつでも、お声をかけてください」


「ありがとう」


 聞かん棒がぎんぎんになっているのに、気が付かれただろうか。

 悩ましい事に、棒はでかい。天幕を張るのを隠すのには、ローブがうってつけであった。

 そういう意味もあって、股間はゆったりとした作りのだぶだぶだ。


 外人の棒は、ヤバすぎる。 

 玄関の扉を開けると、一面に霜が降って雪が積もっている。まだ、秋なのだが。

 異常気象で、薪が売れていそうだ。


 木とみられる剣をを振っている子供が2人いた。クラウザーとアレスだ。

挿絵(By みてみん)

「おはようございます」


「おはようございます」


 と、返す。アレスは、視線を下にした。なよなよしている男の子だ。

 髪を長くしているので、女に間違われそうである。

 木剣の素振りで、筋肉でも付けているのだろうか。ちらちらと、視線を送ってくる。


「兄者は、剣の振らないのですか?」


「振ってるよ。でもね、振りすぎて関節がどうもね。痛むんだよ」


 セリアと一秒間に何回振れるのかという勝負をすると。それはもう激痛が走る。

 ヒアルロン酸でも注射しないといけないかもしれない。 


「はあ」


「何事も、やり過ぎは身体に毒ってことだね」


 クラウザーは、まっすぐに見つめてくる。尻が痒くなってきた。


「兄者、その、是非稽古をつけてください!」


 2人は、やる気のようである。だが、どうしたものか。戦場にいきなり連れて行って経験を積ませるのは危ういことだ。両親に怒られるだろうし。まずは、ペダ市のダンジョンにでも連れていくべきかもしれない。高レベルの冒険者を量産する施設になっている。


(八男されちゃ困るけど、まあ)


 弟なのだ。形式上でも。シャルロッテとの血のつながりは、微妙なところで過保護な弟になりそうだが。


「ご飯まで、ダンジョンへ行ってみるかい」


「いいんですか?」


「ちょっと待った。俺も連れてけよな」


 腰に手を当てて、スカートをひらひらと揺らしながら歩いてくる幼女がいた。

 アルストロメリアだ。かすかに、小便の匂いがした。ひょっとして、またも漏らしているのではないだろうか。何処で泊まっていたのやら。


「えっと」


 アレスが、様子を伺うようにして顔を向けてくる。相も変わらず、視線は下だ。


「いいよ」


 転移門を開くと、桜火がお辞儀するところだ。




 ペダ市は、順調な広がりを見せている。

 電力を作るのに、魔力を使うという施設ができていたり。

 道には、電柱が並んでいる。


(まあまあだな。どんどん人口が増えてくれれば、問題ない)


 朝から働いている人間は、居ないようだ。遠目からでも見える。


「兄者、ここは?」


「俺様が解説してやろう。ペダ迷宮だぜ。元は、何もなかった場所らしいけどな! 安全の為か、内部から魔物を出さねえ構造になってんだよ。ほれ、入り口に兵士が立ってんな」


 進むと、顔パスであった。他の人間は、というと。


「冒険者カードを作れって言われたんですけど」


「ステータスカードのことな。パラメーターは乗らねえみてーだが、まーあれだぜ。餓鬼の時分から、潜ってる奴だっている。俺様なんかがそうだな!」


 クラウザーとアレスは、冒険者ギルドで登録するところから始めねばならなかった。

 幸いにして、ペダ迷宮には冒険者ギルドの出張所が存在するので事なきを得たが。


「つ、つまんねえー。もう帰んの? そりゃねーよ」


「しょうがないじゃん。2人は、朝食の時間だし。学校があるんだよ」


「馬鹿だなー。学校なんて、意味ねーっつうの。いいじゃん、そいつら転移門で送り返して迷宮に行こうぜ」

 ギルドで作ったカードを食い入るようにして、弟2人は見ている。


「兄者。え、えっと。学校が終わったら連れてってもらえますか」


 それはできない相談だ。何時終わるともしれないので、約束ができない。


「こいつも忙しいからよ。こっからは、俺たちで遊ぶから。おめーらの時間なんてねーの。わりいな」


「兄上、この方は」


 ただの錬金術師で、いつの間にか家に入り込んでいる幼女だ。それ以上でも、それ以下でもない。


「エリアスの知り合いで」


「しょ、じゃない。友達ってわけよ。よろしくな」


「はあ」


 アレスからは、呆れたような何とも言えない嘆息が漏れた。誤解されている気がする。

 転移門を開いてみれば、トゥルエノが入ってきた。

 学校は、どうしたのだろうか。


「な、なんだよ」


 彼女は、じぃーっとアルストロメリアを見下ろしている。ただならぬ雰囲気だ。


「主さまに不埒な真似をすると聞き及んでおりますので。いざとなれば、斬り捨てる覚悟です」


「ひっ。ま、まさかー」


 アルストロメリアに、何かできるはずがない。戦闘力といえば、拳銃くらいである。

 鞄の中へ手を突っ込むと。


「おいおい、こら、何しやがる。人の武器を勝手に取るなよ」


 拳銃は、黒い。ワルサーだかなんだかのようである。撃鉄で起こして、叩きつけるタイプのようだ。

 

「私は、あくまで護衛です。そして、昨夜、天啓を得ました」


「はあ? 巫女ってわけかよ。勘の良いことで」


 弟たちを送り返して、向かうべきはどこか。朝食にしてもよかった。

 パンを取り出して、肉団子とマヨネーズを差し込む。ひとかじりすると、


(まあまあだ)


 片手で持った拳銃を試し撃ちするべく、隅へ移動して転移門を開く。


「ええ? ちょっと置いてくなっての」


「この世全てに善をしかんとする者を助けよ、と」


 なんとも恥ずかしいことだ。





 朝だからか。真っ白い。

 右を見ても、左を見ても人の姿は見えず。


「ここは・・・メラノか?」


 幼女は、すっと前へ出ていく。怖くないのだろうか。太陽は、登っていて東の空から姿を見せ始めていた。同じ方向へと進む。おかしな霧だ。火をつければ、払えるだろうか。


(突風よ)


 身体の表面に熱を感じる。まとわりつくような何かだ。進んだアルストロメリアというと、とんぼ返りで戻ってくる。

「魔物だ」


 動く死体だった。その数は、3。見張りの人間かもしれない。

 吹き飛んだ霧を、さらに吹き飛ばす。銃を構えて、引き金を引く。

 手応えは、ない。


「そこに悪しき魔を感じます。せい!」


 刀を抜いたと思いきや、反対の手から短刀が飛ぶ。真っ直ぐに伸びていった先を風が洗うと。


「ほう。中々、どうして…」


 牙の生えた男が立っていた。

 にやっと笑いを浮かべ。葉巻を口にしていた。

 指と指の間には、短刀を挟んだまま。そこから煙を立てている。

 

(吸血鬼ね)


 或いは、剣牙獣か。見た目は、ひょろっとしているのに。放っている圧力は、無視できない。

 イベントリを開いて、風を送り込む。

 どこまで入るのか。わからないが、霧が問題だ。霧さえどうにかしてしまえば、敵は弱体化するはず。

 範囲を絞ってやることで、味方を巻き込むこともない。


「ウォオオオーーーーーー」


 叫び声を上げているのは、件の男。必死にふんばろうとしているが。

 霧に身体を紛れ込ませようとしていたのだろう。

 

「オノレ、オノレ、オノレーーー」


 断末魔の叫びか。絶叫を上げる男の身体が、半分ほどなくなったところへ短刀が飛び。

 雷光が、乱れ飛ぶ。相も変わらず敵は、それを受け止め、


「ギィッ」


 と短く叫んで爆発した。凄まじい電撃だ。刀をすっと腰へ収めると。


「す、すげえ。40、41、42。まだまだ上がりやがる。たった。たった、一匹で…どんだけ上がるんだよ。今のボスクラスか?」


 ということは、死んだと思いたい。経験値は、即ち魔素。それを吸収して冒険者は成長するのだから。

 

「主さま。魔を祓いましてございまする」


 なんとも慣れない口調に、吹き出しそうになったが。それは、失礼だろう。


「ありがとう。それじゃあ、ちょっと小屋に人が残っていないか調査しようか」


「おう」


 トゥルエノは、見下ろして何かを待っているようにもじもじしたが。何かをやれる物はない。

 



 生存者は、12人。外で見張りについていた兵がやられたようである。

 しかも酒を飲んでいたらしい。


「ったくよう。とんだ出費だぜ。あと、銃を返してくれよな」 


「はい」


 素直に渡す。

 銃は、苦手ではない。が、対魔物にしろ退魔業にしろ効果が薄いのだ。

 武器としては、矢以下の扱いを受ける。なんといっても、矢を斬って落とす世界。

 ステータス値が上がったところで、火薬で飛ばす武器の威力が上がったりしない。


(うーん。銃士系(ガンナー)のジョブを持っていれば、違うのかもしれないけどなあ)


 そもそも、武器が破格の威力であるから修練の仕様がなかった。

 弾丸を改造するにしたって、魔物の甲殻を貫けない。

 銃を使う者は、まずスキルとジョブを持たない人間だった。


 PTで使うには、前衛が邪魔で仕方がない。迷宮の中では、ほぼ射線上にいる味方を射ってしまうだろう。

 弓であれば、曲射なりが使える。魔術なら、放物線を描くように投げればいい。

 木の長椅子に座っていると。ひよこが前に現れる。


「どうしたの」


「うーん。うー」


「唸られてもわからないんだけど」


「んー。仕方がないかー。ちょっと来て」


 ひよこが、呼ぶ。転移門を開いて、中へと手招きするではないか。


「ちょっと、待てーって。置いてきぼりにすんなよーーー」


「ああ、でも後始末しなくていいの」


「しょうがねえから、いいんだよ。手当てで儲けは、無くなりそうだけどな」


 進んだ先は、どこか。壁と壁の間。陽の照らぬ路地だ。雪が地面に積もっているから、寒い場所なのだろう。何があるのか。路地から出ると、そのすぐ横で。

 硝子の砕ける音がした。


「何度言ったらわかる。ポーションは、錬金術師ギルドの専売だ。困るんだよ。こんなところで、売られちゃあ」

 また、硝子の砕ける音。体格のいい大人が、幼女を囲んでいる。

 幼女の目は、死んでいないが隈が見えた。ポーションから察するに、違法販売か因縁と思われる。

 穴の空いたグローブから、指が見えた。肌は、かさかさに乾燥していそうだ。


 もう、溢れ出る汁が止まらない。目が開けられなくなってきた。


「待て、この、糞共が」


 幼女が、悪いとしても。一生懸命に、生きようとしているのだ。

   

もちた様作画。

残業が激しいので、更新は週1です・・・多分。

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